【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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アンケートを締め切りました。投票してくれた方々ありがとうございました。
予定では当作品完結後に執筆する予定です。
今のところはゲート→86→コードギアス(1期)の予定です。86?アンケート後に視聴してはまったから入れただけですが?


第三十八話「最悪の戦況」

 北極海を渡ったBETAはカナダのヌナブト準州に属するクインエリザベス諸島やアムンゼン湾に上陸した。一部はグリーンランド北部にも上陸したが無人の地であったために今のところは問題がないと言えた。

 しかし、アムンゼン湾に到達した以上防衛を行わないといけないが今のカナダにそれを行う余裕はない。理由は単純である。まず、カナダは人口が少なく、それに伴って兵士も少ない。自国だけでの防衛は不可能だった。そして、次の理由が最も大きいがただでさえ少ない人口はBETAとの戦争が始まって以来減り続けている。別にカナダがBETAと直接戦闘をしているわけではない。原因は1974年にハイヴが落下したことだ。

 1974年7月6日、カナダのサスカチュアン州にハイヴのもととなるBETAユニットが落着した。カシュガルハイヴの前例がある以上アメリカは先手必勝と言わんばかりに戦術核を用いて破壊。ハイヴの建設を阻止する事に成功したがその代償として周辺一帯は放射能による汚染が広がり、カナダ西部はほぼ居住不可能となったのだ。それゆえにもともと住んでいた人々はアメリカや東部に移住する事になるが大半がアメリカに行ったことで人口は減少したのだ。アメリカも戦術核を自分たちが使った結果であるとして手厚く保護したためにアメリカへの移住者が増える要因となっていた。

 結果的に西部はほぼ無人の大地となり、今回の上陸に対して迅速な行動が出来ない状態となった。カナダ軍やアメリカ軍が現地に到着するころにはアムンゼン湾から上陸したBETAの数は数万にまで及んでいた。

 

『阻止するぞ! ここでBETAに橋頭堡を作られれば本国も危険になる! それだけは避けるんだ!』

『『『『『うおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!』』』』』

 

 アメリカ軍は数が少ないカナダ軍に代わり主力を務め、上陸してきたBETAの殲滅を開始する。BETAは突撃級を前衛に、中衛に要撃級、後衛にレーザー級を配置し、その周りを無数の戦車級が埋めるという最近では珍しくもないBETAの基本陣形で進んでくる。

 とはいえこの陣形はかなり厄介である。まず、突撃級は正面装甲が異様に硬いために回り込むなどして倒すしかないがそんな事は戦術機くらいしか対応できない。つまり、戦車などの兵器にとっては最悪のBETAと言えた。

 そしてその後ろを固める要撃級は防御力こそ高くはないが前にしか進めない突撃級と比べて小回りが利き、両腕の鎌で器用に攻撃できる。鎌自体の硬度も突撃級の正面装甲と同じであり破壊できないものだ。

 そして、レーザー級は戦術機の天敵と言える。人類が確認できているBETAの中で唯一遠距離攻撃が出来るこれらはたった一撃で以て戦術機を破壊できる火力を持っており、射程距離も長いためにうっかり高度を上げれば撃墜されてしまう程だった。

 ならばとレーザー級を倒すべきかもしれないが最後尾にいるという事と数の多い戦車級がそれを邪魔してくる。戦車級は特筆すべき能力はない。どこの硬さも戦術機の火器で倒せるし小柄ゆえに力も他に比べれば低い。だが、小柄を活かした攻撃の当てづらさとその圧倒的な数が最大の脅威だった。特に一度戦術機にしがみつけば自力ではがすことは難しい。仲間の援助がなければゆっくりと解体されて最終的に破壊される。実際にそのように死んでいった者は多い。

 そんな個々の特性を活かした陣形は人類を確実に追い込んでいるが人類も負けているわけではない。突撃級を倒すために地雷を仕掛けたりミサイルや砲撃などの頭上からの攻撃をするなどして対応しているし、光線級吶喊(レーザーヤークト)という損耗率は高いがレーザー級を確実に殲滅する行動もとっている。人類が倒したBETAを合計すればかなりの数になるだろう。

 しかし、それでもBETAは倒した数など比較にならない物量で以て圧してくる。そもそも疲労も睡眠も食事も必要としないBETAは昼夜問わずに侵攻する。そんなのを常に相手にできる程人類は強くはなかった。

 

『うわぁぁぁっ!!!???』

『中隊長―――! くそ! くそ!』

『また一機やられたぞ!? これで何機だよ!』

『20だ! このままじゃ全滅するぞ!』

『やべぇ……。アムンゼン湾にさらにBETAだ! 数は数万!』

『はぁっ!? ここと合わせれば倍になるじゃねぇか!』

『司令部! 至急援軍を! このままじゃ全m……!』

『ひ、ひいぃぃぃっ!!!???』

 

 必死に抗うアメリカ軍はまるで津波に飲み込まれるように数を減らしていく。戦術機が飛べばレーザーが落とし、走れば戦車級と要撃級が群がる。1匹倒すと10匹増えるBETAに戦術機は次々と破壊され、中の衛士は食い殺されていく。それはまさに人類とBETAの力関係を明確に表していると言えた。

 5月1日。カナダ軍とアメリカ軍はグレートスレーヴ湖に頼りない防衛線を構築する事に成功。一時的にBETAの侵攻を抑える事に成功した。とはいえそれは一時的な物であり、BETAの殲滅に成功したわけではない。アメリカ軍は自国に迫る明確な脅威を前に他国への支援を行う事が出来なくなり、カナダに上陸したBETAに全力を注いでいくようになる。

 

 

 

 

「人類はもうだめね」

 

 香月夕呼は友人であるまりもと共に京塚食堂に来ていたがそこのテレビで報道されたBETAとの戦況報道を見てそう結論づけた。若干17歳にして帝大への編入が認められる若き天才だが自分の能力を使うまもなく人類は滅びるのではないかと思わせる程BETAの動きは早く、そして広範囲過ぎた。これまで人類がBETAと曲がりなりにも戦争できていたのは()()()()()()()()()()()からだ。今回のようにアフリカと南米を除くあらゆる場所が戦闘範囲となった以上人類はこれまで以上戦線の兵士・物資の数が足りなくなる。そうしてずるずると消耗を続けていけば待ち受けるのは種の絶滅である。

 

「夕呼! いくら何でもここで……!」

「そうね。確かに人前で言う言葉じゃないわね」

 

 幸いにもこの話を聞いたのは食堂の女将とその娘、それを除けば夕呼の目の前に座る神宮司まりもだけだ。これだけなら問題ないと判断したとはいえ軽率な発言であることに変わりはない。そのことを夕呼は素直に詫びた。

 

「……確かに夕呼のいう事も分かるわ。だけど」

「そうならないように頑張っている人たちがいるって言いたいんでしょ? あたしだってそのくらいは理解しているわ」

 

 戦況報道では欧州方面に話が移り、ユーゴスラビアからの完全撤退と陥落、西ドイツ領の放棄、イタリア半島のほぼ全域の陥落等が報道されており、人類に希望を与えるようなものは何一つとして報道されていない。それだけ人類が劣勢であると伝えていたのだ。

 

「インドは亜大陸以外をほぼ喪失。東南アジアでは国連の指揮下に入る事を嫌った国々で大東亜連合を設立すると同時にインドシナ半島から撤退を決めマレー半島の防衛に全力を注いでいる。尤も、マレーを蹂躙しているBETA群を何とかしないと防衛もままならないでしょうけどね。そしてオセアニアではパプア島守備隊の壊滅にオーストラリア政府の機能消失、ニュージーランドからの撤退と陥落。あら、たった半年でここまで追い込まれたわね」

「……ねぇ、夕呼。なんでBETAは日本に上陸しないのかな?」

 

 まりもの素朴な疑問。それと同じ疑問を持つ者は世界中にいる。何しろBETAの無差別侵攻が始まってから大陸に近い日本は唯一その戦火を免れていた。中には日本はBETAと共謀していると言い出す者まで出てくる程だが夕呼は冷静に、だが冷徹に答えた。

 

「あたしが異星人どもの考えなんて分かるわけないでしょ。……って言いたいけど多分確実に殺すためね」

「確実に、殺すため?」

「そ。台湾が良い実例よ。四方八方から上陸して住民を逃さない。確実に殺す。BETAが人間を食べるのは知っているでしょう? それが栄養になっているのか知らないけど人類を食べて力をつけているとしたら……」

「……逃げられないように囲んで一気に食べる。まるで漁じゃない!」

 

 そう、BETAが行っているのは狩りや漁と変わらないのだ。BETAと戦っている群を虎やサメなどと考えれば市民は逃げる事しかできない草食動物や小魚だ。どちらがコストに見合っているかなど言うまでもないだろう。

 

「多分ハワイを落としたのは太平洋に拠点を持つため以外にも日本の逃げ道を潰したっていう理由も大きいわ。そして、時が来たら四方八方から上陸して喰いつくす。島国という逃げ場のない場所にいる5000万の日本人をね」

 

 かつて日本に上陸したBETAによって日本の人口は半分となった。それでもこの狭い日本列島に5000万もの人間がいるのは魅力的に映るだろう。出来る事なら無傷で捕まえたい。それがBETAの考えだと。

 

「実際、政府はそう考えているじゃないかしら? でなければ甲信地方に四方八方を囲む要塞なんて作らないわよ」

 

 最近着手された甲信地方の要塞建設。住民のすべてを強制移住させることで始まったこの要塞はまるでここ以外のすべてが陥落したときに備えているかの如き様相となっているが夕呼の話を聞いてまりもはようやく理解できた。

 

「……ほんとうに人類の終わりの時は近いのね」

「それなのに人類は一致団結するどころか互いに疑心暗鬼になって足の引っ張り合い。BETAとの戦争が始まる前から酷かったけど最近はもう手が付けられないわね。まるで、B()E()T()A()()()()()()()()()()()()()

「ありえないわ。あんな異形の異星人がどうやったらそんなことが出来るのよ」

「あら? 案外ありえなくないわよ。もしかしたらBETAは人間を作り出しているかもしれないし、洗脳という手だって使っているかもしれないわ。B()E()T()A()()()()()()()()()っていう思い込みがあるだけで」

「……」

 

 しかし、それが真実であれば今以上に人類は疑心暗鬼に陥るはずだ。今こうして目の前に座る友人がBETAかもしれない、操られているかもしれないと思ってしまえば重要な場面で信用できるだろうか? 背中を預けられるだろうか? 自分は出来るだろうがと考えつつまりもや大半の人は出来ないし、友人以外を信用できるとも思えない。結局、夕呼の考えは人類にとって()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。

 

「どちらにしろBETAはこれからどんどん苛烈に行動するはずよ。たぶん次は南米にでも現れるんじゃないかしら?」

 

 そう予測をした夕呼は食事を終えて立ち上がり会計を済ませると食堂を出た。まりももあとを追っていくがそんな彼女に夕呼は言う。

 

「……見てなさい。あたしはあたしに出来る事で異星人どもを倒して見せるわ。だから、まりもはまりもに出来る事を頑張ってみるといいわ」

 

 BETAの話をする前に言ったまりもの夢。今のご時世でそれを叶えるのは難しいが夕呼はそれでもまりもの夢を応援する。二人の道は大きく分かれようとも自分達の夢のために……。

 

 

 

 

 

 

『くそ! くそ! なんでこんな……!』

「まずい! 新井! 避け……!」

『神宮司! あぶn……!』

 

 そして、その夢は二度と叶わぬ儚い夢として散った。

 





【挿絵表示】

半年後の地図

次話は2022/12/02 23:17投稿予定です。

夕呼先生の処遇

  • 人類と運命を共に
  • 繁殖場に
  • 脳くちゅ
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