勢力圏が増えるに伴い、管理するのが大変になってきた。既にハイヴは15あり、BETAに至っては1000万近くは存在するんじゃないかと思える程だ。とてもじゃないがすべてを管理するなんてだるくてしたくはない。そこで、本格的に各ハイヴに委任しようと思う。
やる事は単純だ。俺の意志とは独立したハイヴに指揮権を付与。勢力圏の増加をしてもらうわけだ。これはボパールハイヴと鉄原ハイヴに行ってもらう。インドは陥落寸前だし、日本も……、さすがに台湾の時とは大きさが違い過ぎるからな。西日本くらいはこちらにとどめておきたい。
「そうだ! 君たちもBETAを指揮してみるかい?」
そこで思ったのがアイリスディーナ達にも指揮をさせてみるという物だ。もちろん誰でもいいというわけではなく、指揮させてもいいと思った人物のみ限定だけどね。現在だけで言えばアイリスディーナ、グレーテル、などの指揮経験もある中尉達。そして俺が作った人間の中で最高傑作と言ってもいいアルフレートとかだな。他にも十数名程いるがそういった者たちなら面白い指揮をしてくれるかもしれない。
「……指揮を執る事に異論はないがどうすればいい? 何か失敗してはいけないことなどはあるのか?」
「んー、強いて言うならハイヴを落とされるかその周辺まで後退する事だけど別に問題はないな。取られたなら
「……!」
ハイヴ建設に必要な頭脳級はそれだけを作ったとしても数百は一気に作れる量と作成速度がある。一つ二つ攻略された程度なら何の問題もない。このカシュガルハイヴを攻略されるのはまずいけど海底部に建設中のハイヴが建設完了すればそこにバックアップを置くことが出来るしトゥーランにはバックアップが存在するからな。
「……私がこの体にされたときもそうだが貴方は本当に恐ろしい。人類が手を伸ばしても未だに一つとして攻略できないハイヴ。それが一つ程度簡単に補填できてしまうと人間が知れば一体どんな反応を見せるのか……」
「ふふ。その時は是非とも顔を見てみたい。きっといい表情をするだろう」
「……指揮の件だが私は了承した。何処を担当すればいい?」
「別にどこでも……。ああ、希望とかある?」
「強いていうのであれば欧州以外が望ましい」
「……ならオーストラリアにしようか。BETAも軍隊も少なくて泥沼の様相を見せているし、戦線を後退でも前進でもさせたいからさ」
「わかった。早速やってみよう」
アイリスディーナは了承か。そして欧州以外ね。改造したとはいえかつてはともに戦場をかけた相手を直接滅ぼしたくはないんだろうなぁ。その気持ちは何とかなく分かる。さすがにそんな彼女に欧州を掃討させるような鬼畜の所業は趣味じゃないからさせられないな。
「あら、それなら私もやってみたいですわ」
アイリスディーナの次に名乗り出たのは男のくせに女口調という何とも言えない性格に仕上がったガブリエル君だ。本人はたまにガブリエラっていう女性名を名乗る事もあるが、何でこんな性格になったんだろうなぁ……。面白いから特に調整とかしてないけど。
「私に日本攻略をさせていただけませんか?」
「日本を? 別にいいけどしくじらないでよ? ここはいまだに5000万という魅力的な人口があるんだから」
「もちろんですわ。私、一度日本人のようなかわいらしい方たちを可愛がりたかったのですよ」
「……そ、そう? ほどほどにね?」
……マジでなんでこんなになったかなぁ。
「それなら私はカナダの軍勢を指揮したい」
次はグレーテルか。カナダってことはアメリカを潰したいのかな? 改造前は東ドイツに忠誠を誓っていて西側を嫌っていたみたいだしある意味では当然と言えるか。でもその近くに君たちの
「別に良いけど近くにソ連とかあるよ?」
「? それが何か問題あるのか?」
「ん、特にはないね」
真顔で言ってしまうあたり改造の成果は出ているのか?
「私はちょっと……」
「私も特に興味はありませんので」
ファムとヴァルターはやらないと。となると今のところは三人のみか。別に最初だし、単なる思い付きだし強制ではないから問題はない。
「リィズは多分テオドール君と子育てで忙しいだろうしカティアとシルヴィアは指揮経験ないから任せるのは難しい。アルフレート達はそもそも仕事中。今はこれで様子見だな」
みんなが一体どんな風な指揮を見せてくれるのか。それを新たな楽しみとするのもありかもしれない。最近は戦術機の開発にも飽きてきたし何か刺激が欲しいと思っていたからちょうどよかったかもな。
「まさかここで戦う事になるとはな……」
トルコ共和国軍のイブラヒム・ドーゥル中尉は自分が所属する第94戦術機甲大隊“コブラ”の面々と共に中東の聖戦連合軍に合流していた。歴史的背景から仲が悪かったトルコと中東がともに戦場を駆け抜ける事態はそれだけBETAに対して劣勢であるという事を示していた。実際に中東諸国は宗派の枠を超えて聖戦を宣言して連合軍を結成している。迅速なその対応によっていまだに中東は持ちこたえられており、初動の遅れからドイツやイタリアを失った欧州や東南アジア、インド亜大陸各国との違いと言えた。
一方で、トルコは東西北から迫るBETAに対抗しきれずに全土をBETAに奪われている。その際にイブラヒムはロードス島の難民キャンプの人々を救うために行動しており、ロードスの英雄と言われる程の活躍を見せていた。そのせいで部下を死なせ、大尉から中尉に降格させられていたが。
「中尉、聖戦連合軍はすごいですね。世界では疑心暗鬼が広がっているのにここでは一致団結して戦っています。……地理的要因もあるでしょうけどあの日からいまだにすべての国土を失った国家がいないのはすごいことですよ」
「そうだな。だからこそ祖国の国境部からBETAがやってくる可能性が出てきた以上我々も全力を尽くす必要がある」
トルコを蹂躙していたBETAは既に中東に進み始めている。それらが合流すれば聖戦連合軍は苦境に立たされる。それを防ごうとイブラヒムたちコブラの面々は決意を新たにした。
「そういえば最近また石油の価格が上がりましたね」
「仕方ないだろう。産油国は中東に集中している。そこが戦場となった以上今までのように安定した供給は難しい。そして、供給が追い付かなくなれば自然と石油を用いた兵器も動かせなくなる」
「人類にとっての生命線ってことですね」
「そうだ。幸いにも戦況は緩やかな劣勢。戦線を崩壊させなければ反抗も可能な戦況だ。一匹でも多く駆除して人類の反抗の地にしようではないか」
「そうなれば中尉にはまた箔が付きますね。ロードスの英雄の次は人類の英雄ですね」
「……私は英雄なんかではない。本当に私が英雄と呼ばれる人物に相応しかったのなら、部下を死なせる事はなかったはずだ」
「中尉……」
ロードス島の難民を救う結果として部下を死なせてしまった事。それをイブラヒムの中では大きなしこりとなっていた。難民を救ったことに後悔こそしていないがもっといい方法があったのではないかと思えてならない。それがイブラヒムの中で日に日に大きくなっていた。
「そもそも我々が情けないせいで多くの国民を殺してしまっている。知っているか? 国土がすべて奪われた時点で国外に脱出できた者は僅か500万ほどだ。分かるか? 10人に1人しか逃げ延びられた国民はいない。もちろん、政府が把握していない者もいるだろうがそれでも国民の大半が死んだ事は事実だ」
「中尉……」
イブラヒムの言葉に部下は何も言えなくなった。実際に、奇襲を受けたトルコは壊滅的な被害を受けた。この損害を回復する事はほぼ不可能と言ってよかった。そして、それをただ受け入れる事しかできなかった自分では英雄には足りえないとイブラヒムは感じているのだ。
「……だからこそですよ! 生き残った国民を助けるためにもここで頑張りましょうよ!」
「……そうだな。確かにその通りだ。過去を変える事は出来ない。ならば未来ある国民を助けるべきだな。……よし! なら早速一匹でも多くのBETAを駆逐するぞ!」
「はい!」
部下の言葉に納得し、イブラヒムは戦場へと向かう。彼らの後ろには今も数百万の国民がいるのだから。
そして、トルコ軍を受け入れた聖戦連合軍は今後も善戦し、BETAと一進一退の攻防を繰り広げていくのだった。
次話は2022/12/05 23:49投稿予定です。
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