【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第四十二話「水面下」

 指揮を任せてみたが、やはりそれぞれで個性があり、見ているだけでも面白い。

 アイリスディーナはBETAを効果的に使っている。囮や陣形を駆使して人類の裏をかく。突然戦術を用いたことで驚いている面もあるのだろうが流石は第666戦術機中隊を率いていただけの事はある。

 グレーテルはカナダで防衛線を敷くアメリカ軍を相手に面白い戦い方をしている。簡潔に言えば戦線の突破よりもアメリカ人を殺す事に重きを置いている。兵の損耗を狙っているのか、それともアメリカが嫌いだからしているのか分からないが確実にアメリカの負担になっているのは事実だろう。

 一方のガブリエルに動きはない。鉄原ハイヴというか朝鮮半島にBETAを集結させているが今のところ日本を落とすつもりはないようだ。具体的には聞かなかったが1998年ごろを目安に準備をしているらしい。まぁ、今の日本は西日本の壊滅的被害を受けてからそちらが無人の地になっているようだし何か目的があるのかもしれない。後3年程は動きはないとみるべきか。

 

 うーん、そろそろやる事もなくなってきたぞ。G元素の生成工場は順調に稼働している。今はそこまで生産量こそ微々たるものだがいずれ安定した供給が出来るようになる。BETAもオートメーション化が完了して勝手に生産されている。近いうちにBETAが地球を埋め尽くす事になるだろう。

 すると俺がするべき事がなくなった。戦術機も作成も飽きてきたし他の事で出来る事はほぼない。となると必然的に暇を持て余すこととなってしまう。今はみんなの指揮の様子を見ているのが楽しいからいいけどこれもそのうち飽きてくるだろう。そうなった場合に備えて何か趣味を見つけるべきかもしれないな。……出来る趣味があまりにも限られているがな。

 

 せめて人類側でも面白いことをしてくれているといいんだけど……。何故かあまり詳しい情報が入ってこないんだよなぁ。秘密裏に動いているっぽいけどそれが何かは分からない。アメリカが持ってるG弾でもぶっ放すのかねぇ。

 

 

 

 

 

「無理を聞いてもらい、感謝します」

「何、私としても君の話は信ぴょう性が高いと踏んだからだ。礼を言われる程の事ではないよ」

 

 国連本部の一室にて香月夕呼は国連の高官と会談を行っていた。会談そのものが公式どころか知る人間すらほとんどいない密談であり、お互いに長く話は出来なかった。

 

「むしろ私たちが謝らなければいけない。このような状況にしてしまったと」

「……では、やはり?」

「ああ、残念ながらB()E()T()A()()()()()()()()()()()

 

 高官の言葉に夕呼はやはりという気持ちと同時に人類の絶望的な状況が確定してしまったことに顔をゆがめた。

 BETAが人類を使って、あるいは()()()()()()行動していると夕呼は考察していた。あまりにもBETAに都合のよすぎる、まるで人類を意図的に分裂させるかのような一連の動きが見え隠れしていたからだ。

 しかし、BETAがそのような手を用いるとは理解しづらかった。オルタネイティブ3の唯一の成果と言っていいBETAの思考リーディング。結果的に米ソの対立を生み出し、人類の一致団結を不可能とするなどの最悪の結果となったがそれでも『人類を生命体と認識していない』、『BETAにも高度な知能はある』という情報が得られていたが戦略的動きを見せるとは考えられてこなかった。

 そもそもBETAは人類を生命体として認識していない以上裏でこそこそと動く必要はない以上そのような手を使ってくるとは思えないというのが通説であったがそれを打ち崩すように去年から一部のBETAの動きが変わった。

 まず、オーストラリアではこれまでのごり押しから一変、まるで歴戦の軍人が指揮を代わったかのような高度な戦術的行動をとり始めた。結果的にオーストラリア政府は臨時政府を構えたダーウィンを落とされ再び崩壊する事態に陥っていた。

 次にカナダ。ここではオーストラリアとは違いまるで人間を殺す事に注力を注ぐかのような動きを見せている。防衛線の突破ではなくそこに張り付く人間の殺害。それを念頭に置き始めたのだ。更に、関係あるかは分からないが鉄原ハイヴでは大規模なBETA群が確認されており、日本再上陸の可能性が示唆されている。

 このようなBETAの動きから、BETAは人間の特徴を知っていて、それを基に行動している可能性が浮上。その結果が人間側にBETAの手が入り込んでいるという物だ。それを夕呼は国連内でも権力を持ち、経歴がきちんと確認できた者に提出。可能性を考えていた国連もこの話を受け入れて秘密裏に捜査を開始したのだ。その結果が最悪なものであったが。

 

「これによって君が発案したオルタネイティブ4は秘密裏に行わないといけなくなった。悲しい事に国連内部にも()()()()()()()が複数いる。これ以上人類側の情報の流出は避けたい」

「わかっております。そのためにも予算や人員は表向きの理由が必要だと思いそちらもまとめています」

「早いな。だが助かる。私としても誰をどこまで信じていいのか分からなくなってきたところだ。確認して問題ないようならそのまま採用させてもらうよ」

 

 BETAの手が入り込んでいるのが分かったからと言って出来る事はほとんどない。下手に拘束や粛清などすればBETAがどのような手を使ってくるかは分からない。そもそも判明したのは世界中で100名ほど。それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけだ。確実に巧みに潜伏している者がいるのが確かであり、結果として軽い疑心暗鬼に陥ってしまっていた。

 

「……アメリカも今回は協力してくれると言っている。オルタネイティブ4はオルタネイティブ5となるはずだったG弾の集中運用を隠れ蓑にして実行される」

「アメリカがよく折れましたね」

「G弾の情報が抜き取られている可能性が高い。そうなれば発射しても迎撃出来る手段を取るかそれとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 使ってBETAを倒せるならともかく、それが出来ない可能性が出てきたのだ。人員をいくら整理しようとも疑心暗鬼がぬぐえるわけではない。ならばこそ大々的に動いて囮にするべきだとアメリカは苦渋の決断をしたのだ。

 

「アメリカとしても今回の決断は望んでいるものではない。オルタネイティブ4が失敗すれば彼らは責任追及をしてくるはずだ。そして……」

「G弾の全弾投下、ですね?」

「G弾は核よりも厄介な代物だ。その分威力も高いが果たしてそれでBETAを駆逐できるか……」

「そうなってしまえばBETAも人類を本気で潰そうとしてくるでしょう」

 

 今までの様子から、BETAは奥の手を残している可能性が高い。軍事関連の専門家ではない夕呼から見てもBETAには余裕が感じられた。それが人類の動きが分かっているからか切り札があるからかは分からないがその余裕をつく事さえできれば人類がBETAに勝てる可能性が見えてくる。逆に言えば本気になったBETAに人類は勝てないと言ってよかった。

 

「香月君。君はこれからも秘密裏に準備を進めてくれ。国連も出来る限り支援をすることを約束しよう。だが、それもかなり慎重かつ小規模になる。済まない……」

「いえ、むしろこういったやり取りがBETAに察知される原因となりえると考えればそういった支援も本来は受け取らない方がいいのかもしれません」

「……ふ、国際機関の我々が人目を気にしてこそこそと動く。本当に状況は最悪なのだな。……こちらも信頼できる者を集めよう。お互い、人類の勝利のために頑張ろう」

「もちろんです。あたしもまだ死にたくはありませんので」

 

 夕呼と高官は互いに握手を交わすとオルタネイティブ4の準備に向けて動き出した。人類は暇を持て余すあ号標的に見つからないように反抗の準備を始めるのだった。

 





【挿絵表示】

1994年地図です
次話は2022/12/06 23:00投稿予定です。

夕呼先生の処遇

  • 人類と運命を共に
  • 繁殖場に
  • 脳くちゅ
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