1998年。まずはこの年になるまでに起こった出来事を簡単に語ろう。
欧州のスウェーデンではストックホルムでいまだに攻防戦が起こっている。意外にも粘っているが兵の大量投入によってなんとか防衛できているだけの話であり、数年以内に陥落するだろう。隣国のノルウェーではいよいよ首都オスロにまで我々が迫ってきているために防衛線が構築されている。この二国では国民の大半が疎開しているためにいるのはほぼ軍人のみだ。とってもうまみがないゆえに適当に走らせているからいまだに落とせないのかもしれない。
フランスはついにイタリア方面の要塞であるアルパイン線を突破された。これはバルカン半島で暇していたBETAを向かわせたらあっけなく突破出来てしまったよ。現在はこれ以上侵攻されないようにと必死に防衛しているが要塞線での防衛ではないために犠牲者が格段に増えているうえに少しづつ侵攻を許している。いずれフランス全土が落ちるのも近いかもしれない。
イタリアでは半島を制圧。シチリア島に追いやっているが連中は半島の保有をあきらめていたようでシチリア島は頑強な要塞となっていて突破は難しかった。その腹いせとしてコルシカ島を落とし、サルデーニャ島を狙う動きを見せてやった。これだけで欧州連合軍は犠牲者を増やすか見捨てるかのどちらかの選択肢を取らざるを得ない状況になったはずだ。
中東では腹立たしいことにほとんど進展はない。トルコ軍も合流した彼らはまともな防衛線もないのにいまだに抵抗を続けている。これまで散々宗教対立をしてきた中東が世界で見れば一番結束しているのは皮肉とも言えるな。正直ここはこれ以上の力おしでも厳しい場所だ。インドを落として空いたBETAをすべて向かわせて圧力を強めておく程度にした。ここは今は放置で問題ない。
インドは言ったとおりに亜大陸から完全に追い出した。何やら反抗作戦も行われたようだがまともな成果を残さずに失敗している。とは言えインド軍はスリランカに政府機能を移し終えていたためにそこで抵抗を続けている。まだ完全に戦闘が終了したわけではない場所だ。
東南アジアは大東亜連合が事実上崩壊した。一番軍勢がいたマレー半島は南北から迫るBETAによってほぼ全滅。シンガポールも全滅から一月ほどで陥落した。これにより東西を結ぶマラッカ海峡及びクラ海峡が封鎖された事になる。オーストラリアや北極でも活動している為、事実上海運は東西に分断された事になる。
シンガポールを落とした後は隣のスマトラ島に上陸。中央部の制圧を完了し、北部の敵の掃討と南進しての隣の島のジャワ島にあるインドネシアの首都ジャカルタの制圧を目指している。大東亜連合はさっきも言った通り壊滅状態だ。おそらく今年中には完了するだろう。
フィリピンではミンダナオ島を残してすべての島を失い、ボルネオ島から東進したBETAによってスラウェシ島が落ちた。今はニューギニア島のBETAと合わせてオーストラリアの上陸を示唆する動きをしている。
オセアニアはもはや陥落が時間の問題だ。ダーウィン陥落時にオーストラリア臨時政府が崩壊して以降は分裂状態となっており、アイリスディーナの巧みな指揮も合わさっていいようにやられている。既に東半分は落ち、僅かな軍勢で広大な戦線を支えようともがいている。ここも年内には陥落しそうな勢いだ。
アメリカ大陸はあまり動きはなかった。カナダでは特に勢力圏が増えたわけではない。グレーテルがここ数年ずっと軍人殺しを主目標としていたからだがおかげでアメリカ軍の人的損耗率が爆上がりしている。そりゃ一日1000人単位で殺す勢いだ。そのくらい当然と言えるな。だが、そのせいか最近では戦術機すら前線に出なくなり、後方からの大火力で防衛を行っている。物資の消耗が今まで以上に跳ね上がっているが人の命よりはマシという事だろう。いや、人を育てるよりも物資を作る方がコストも時間も低いからか?
南米はパタゴニア地方で勢力圏が広がったくらいだ。予想以上に南米連合軍が良い動きを見せている。最近じゃ欧州から逃げてきた難民も入隊して防衛に参加しているようだ。おかげで
全体的に見れば俺たちの優勢だ。というか劣勢となっている箇所がない。一番人類側が頑張っている中東ですら押されているのだからな。それでも人類はいまだに抵抗する力を有しているようだ。そして、
となると地道に情報収集をするべきだがそちらもあまり期待できない。所詮俺が作った人間は戸籍がない者たちばかりだ。国家の中枢に入るにはアクスマンのような協力者が不可欠だがそう簡単に見つかるものでもない。あれは運が良かっただけだからな。
そうなるとどうすればいいかって事だが……、正直に言って動く必要はないと思っている。別にここで動いたところで何かが変わるわけではない。というよりも動きようがないと言った方がいいか。どうせ本当の意味で団結する事は人類には無理だ。人間は疑い、他者をうらやみ、自分が持っていない物を欲しがるどうしようもない生物だ。そのくせ知能があり、理性があり、集団性がある。だからこそここまで増え、発展できたんだ。だが、それが人類の団結を阻む障害となっている。呉越同舟なんて言葉は所詮は理想論、そうあるように見えるだけの言葉だ。
人類が団結してこちらに挑むのならそれでもいい。G弾を連発されてもこちらには対抗手段にバックアッププランも存在する。海底のハイヴも建設がまもなく完了する予定だ。本当はマリアナ海溝にでも作ってやろうと思ったがさすがに水圧でこちらが持たない。人類の攻撃では届かない箇所に建設出来れば十分だ。
それに、今更人類に何が出来る? ユーラシア大陸の大半が落ち、東南アジア、オセアニアはほぼ手中におさめた。南北アメリカ大陸にも上陸し、両大陸の国々に出血を敷いている。残ったアフリカも、世界最貧国の集まりだ。簡単に制圧できるだろう。
「ああ、待ち遠しい。早く来てくれよ。この物語の主人公さんよぉっ!!!」
どれだけ調べてもそれらしい人物は見つからない。日本の一般人の戸籍をいろいろと調べたが全く出てこない。きっと物語が始まると覚醒するとかの流れなんだろう。第一、今も生きているかさえ分からない。さすがに日本を半分破壊するのはやり過ぎたか? そこに主人公の親族がいたとしたら致命的なミスだがそれならそれで安心して人類を殺し、資源を回収すればいい。地球をすべて支配下に置いたら次はどうしようか? 別の星を侵略するか? それとも友好関係を築く? 一生地球で神様のように好き勝手して遊ぶのもよさそうだ。もしくは、
……やめとこう。地球以外にもBETAはたくさんいる。重頭脳級だけで億は超えているみたいだし俺だけで対抗するのは無理だ。創造主がどんなやつらで、どんな文明を築いているのかさえ分からないんだ。無謀な行いは控えるべきだな。
まぁ、どちらにしろ俺は観察するだけだ。ガブリエルの日本上陸。それがどれだけ面白い物になるのか今から楽しみだな。
精々、俺を楽しませろよ?
次話は2022/12/07 23:04投稿予定です。
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