【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第四十八話「明星作戦2・G弾」

「ついに始まったな」

 

 1999年8月5日。今日この日についに人類の反抗作戦が始まった。見る限りかなりの戦力が参加しているな。……これは海王星作戦を超える量かもしれない。

 

「艦砲射撃が始まりました」

「見りゃわかる。相変わらず凄まじいがな」

 

 この世界の日本帝国は戦艦をいまだに保有している。というより航空機の無力化によって空母がお払い箱になっているし、火力の高い戦艦がいまだに活躍出来ているわけだ。そして艦砲射撃によって横浜ハイヴ周辺のBETAが吹き飛んでいく。レーザー級による迎撃が戦艦の撃沈も行われているが数が違う。よく見れば日本海側からも攻撃をしているようで挟み込むような重厚な攻撃だ。日本列島の形をうまく活かしていると言えるか?

 

「おいおい、大分削られているが大丈夫なのか?」

「地上のBETAは相当数がやられるでしょう。ですがハイヴ内にはかなりの数が健在ですので問題はないと思われます」

「そうか」

 

 流石は軍人だけあってアイリスディーナは落ち着いているな。言い忘れていたが今は3人が余裕で座れるソファーで右にアイリスディーナを、左にカティアを侍らせて観戦中だ。やはり観戦のお供は美少女だろう。

 

「カティアはどう思う?」

「わ、私ですか!? えっと……。艦砲射撃は短期で終わらせて戦術機を投入すると思います。さすがにハイヴを攻略するのなら艦砲射撃では出来ないので」

「ふむ」

 

 というか現状だとそれ以外のハイヴ攻略法はないようだし仕方ないか。それにしても意外とカティアはこういったことをスラスラと答えられる。第666戦術機中隊では新兵みたいな感じだったが西ドイツでしっかりと軍人として教育を受けてきたという事だろうな。

 ……そうだ!

 

「なぁ、カティア」

「? どうしましたか?」

「ずっと聞きたかったけど西ドイツが陥落したじゃないか? どう思った?」

「どうって……」

 

 カティアはなんでそんなことをと思っているようだが俺はカティアがどうこたえるのか楽しみで仕方ない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()。それよりもいきなりどうしたんですか?」

「……いや、何でもないさ」

 

 ああ、顔が歪んじゃうよ。あれだけ東西ドイツの統合を願っていた少女が今じゃ祖国をどうでもいいと! 興味がなくなっている! ああ、やっぱり癖になる。脳内で大切なものが変わってもそれを受け入れてしまい、なんの疑問も抱かなくなる! 楽しい! 楽しい! これが終わったらこれで遊ぶのもよさそうだ。というか遊ぼう! 絶対に楽しいから! いや、いっそのこと主人公で遊ぼうか。ヒロインとかを使って絶望を与えるのもよさそうだ。その時は一体どんな顔を見せてくれるのか……!

 

「あ、アイリスディーナさん。なんか物凄く怖い顔してるんですけど……」

「気にするな。たまに悪だくみを考えている時にこんな顔になる。スルーしていればいい。そのうち収まるからな」

「そ、そうですか……」

 

 おっと、今は観戦してたんだったな。そっちに集中するか。

 艦砲射撃は大分続いているな。数だけで言えば万近くがやられているんじゃないか? まぁ、艦艇の方も被害が結構出ているがな。それにしてもハイヴ内から大量にレーザー級を出しているがどんだけ資材をため込んでいるんだ?

 

「鉄原ハイヴにいた時からG元素はため込んでいたようです。おそらく頭脳級を黙らせない限り無限にわき続ける。そう思えるだけの数が出てくるはずです」

「となると戦術機は厳しい戦いを強いられるというわけだな。果たしてハイヴを攻略する事なんて出k……」

 

 その瞬間だった。視界は一瞬で光に包まれた。正確にはモニターが、だが。突如として何も映らなくなり、音も聞こえない。……これは感覚をつなげていたBETAが一掃されたという事か? とりあえず無事だったハイヴ内のBETAと感覚をつなげつつガブリエルに通信する。

 

「ガブリエル。一体何が起きた?」

『そ、それが私にも分からず……。今確認するために地上に上がっているところです』

「は!? 馬鹿野郎! 今すぐ戻れ! そんなのはBETAにやらせれば……!」

『ですg……』

 

 瞬間、モニターが再び真っ白に染まると同時にガブリエルとの通信が途絶する。明らかに先ほどの攻撃と同じものだ。そして、これは艦砲射撃ではない。こんなバカみたいな威力を出せるはずが……!

 

「まさか、G弾か?」

「G弾? ですが米軍は今回の作戦に参加していないと……」

「そんな動きも見せていなかったから油断したが確実にそれだ。でないとこんなバカみたいな威力は説明がつかない」

「あ、あの! ハイヴ内に戦術機が降下し始めてます! これ指揮をとらないといけないんじゃないですか?」

「っ! そうだな」

 

 カティアの言葉にハッとする。そうだ、最低でも委任モードにしないと指揮官を失ったあいつらは棒立ちになってしまう。とりあえず迎撃だけ命じるがもうあそこは無理だな。

 

「G弾。まさかこんなところで使ってくるなんて……!」

「ですがG弾の威力を確認できたことは幸いと受け取るべきでは? 結果的に横浜ハイヴを失う形になりますがむしろそこを失う程度で済んだとみるべきでしょう」

 

 アイリスディーナの意見は尤もだな。やはりデータで知るのと実際に見て知るのでは違ってくる。そしてこれだけの威力なら連発はしてこないはずだ。何しろ威力がでかすぎる。代償も考えれば決戦時に使うくらいで普通の戦争では使う可能性は低い。追い込まれれば遮二無二使いそうだがな。

 

「ガブリエルはG弾で吹き飛んだとみるべきか。……まぁ、死体が残らないで死んでくれたようだし特に気にする必要はないな」

 

 別に失って困る人材でもない。今はそんな事よりもG弾の方だ。これは作戦に組み込まれていたとみるべきだろう。爆破後の戦術機の動きから見てもここまでは想定通り。後はハイヴ内のBETAを掃討し、頭脳級を破壊して攻略完了ってところか。さすがにこんな決着のつき方は予想外だしなんも対応も出来ないじゃないか……。

 

「……仕方ない。今回はG弾の威力を知れたって事で無理やり納得するしかないな。それに西日本は落としたんだ。目標は完了している。これ以上望むのは身を滅ぼしかねないな」

 

 バックアップも含めて準備は着々と進んでいる。いずれG弾なんて気にしない物量や力で人類を詰ませる事は可能だ。今日はこれで満足しよう。

 

 

 

 

 

 

 

『こりゃひでぇ……』

 

 横浜ハイヴ内に突入した国連軍の戦術機は目の前に広がる光景にそれしか言えなかった。二発のG弾によってBETAをほぼ吹き飛ばす事に成功したらしく、ハイヴ内にはほとんどBETAは残っていなかった。

 そしてそんな彼らが最奥の場所で見つけたのが脊髄と脳だけの状態にされた人間たちだ。顔も胴体もなく、生きているのかさえ分からない状況のそれに吐き気を催してしまう者も出てきていた。

 

『とりあえずこれはこの状態で専門家を呼ぼう。俺たちが気軽に扱えるものじゃない……』

『隊長! この奥に頭脳級が存在します!』

『よし! 俺たちは奥に行くぞ! ……すまない。必ずここから出してやるから少しだけ待っててくれ』

 

 隊長と呼ばれた男は脊髄だけとなった人間たちに謝罪すると頭脳級のもとにむかっていった。

 

 それゆえに、その中の一つで気泡が生まれ、何かを訴えているように見えたことに気付く事はなかった。

 




次話は2022/12/12 23:35投稿予定です。

夕呼先生の処遇

  • 人類と運命を共に
  • 繁殖場に
  • 脳くちゅ
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