【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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雪かきで死にました


第五十六話「甲21号作戦1・ブリーフィング」

「これより甲21号作戦の概要を説明する」

 

 ある日の横浜基地にてハイヴ攻略ブリーフィングが行われた。武は訓練兵を卒業し、正式任官した事で横浜基地のA01部隊に配属となっていた。そんな彼にとって初めてとも言えるハイヴ攻略戦であり、自然と拳を握りしめていた。

 

「これは佐渡島ハイヴの攻略を目的とする大規模作戦である。本作戦には帝国と国連両軍が参加する事となっている。

まず、第一目標はハイヴの攻略乃至無力化だ。そして第二にハイヴ内での情報収集である」

 

 横浜基地の基地司ラダビノットはそこまで言うとそこからの説明をA01の隊長、伊隅みちるに引き継いだ。

 

「本作戦における我が部隊の任務は戦闘ではない。正確には投入される新型兵器の支援及び護衛である」

「はっきり言ってしまえば今回の作戦はこの新型機のテストのために組まれた作戦と言っていいわ。つまり投入される戦力は全てこの新型兵器の護衛と言えるわ」

 

 それはつまりハイヴの攻略戦を行える戦力すら上回るポテンシャルを持っている可能性がある兵器という事であり、誰もがごくりと喉を鳴らす。武とて前の世界では聞いたこともない新型兵器に注目していた。

 

「護衛対象はこれ。滅亡しかけている人類を救える可能性がある対BETA戦略の切り札。

XG-70b 凄乃皇・弐型よ」

 

 みちるより言葉を引き継いだ夕呼はそう言ってメインモニターに新型兵器を映し出す。映し出されたそれは明らかにこれまでの兵器とは一線を画すものと一目でわかる姿をしていた。

 まずその巨体が目に入る。人が映っている事でどれだけの大きさなのかが一目瞭然であった。そして次に戦術機にしては手足がなく、要塞と思わせる姿をしている事。最後に試作段階なのか一切の武装が見えないことだ。これがどんな武装を持っているのか外見からではよくわからないものだった。

 

「もともと米軍が研究していた兵器で単独でハイヴまで吶喊して破壊・攻略をしてしまう事を目標とした機体の2番目の試作機よ。搭載された抗重力機関から発生する重力波でBETAのレーザー攻撃を無力化し、重力制御で生じる莫大な余剰電力を利用した荷電粒子砲による攻撃でハイヴを殲滅するのよ」

 

 抗重力機関も荷電粒子砲も元の世界では空想上の兵器でしかなかった。それがこの世界では既に実用化がなされている事に武は驚愕する。

 

「もっとも、そんな夢の兵器だから完成せずにお蔵入り。モスボール処理されてた機体を接収・改修したってわけよ

今回が実戦テストだから不測の事態に備えてこれだけ厳重な護衛を敷いているけどこのテストの結果次第では次回以降のハイヴ攻略作戦は今回の100分の1以下の戦力で済むようになるわ」

「っ!」

 

 100分の1以下の戦力。それが一体何を意味しているのかは武にも分かる。この世界は前の世界でオルタネイティブ5が発動した後よりも悲惨な状況となっている。つまり戦力が足りていないのだ。そんな中でのこの新型兵器が戦場に出るようになればそれも解消され、本格的に人類の勝利が目に見えてくるというわけだ。

 

「この作戦の成否次第で人類の道は大きく変わるわ。頼んだわよ」

「「「「「了解!」」」」」

「作戦の概要は決行の前日に通達する。以上だ」

 

 ブリーフィングはそれで終わり、基地司令や夕呼、みちるは部屋を出ていった。残された面々は今回の作戦について話していたり決意を固める者がいるなかで武も同期と話をする。武たちにとっては本当の意味での初陣となる。クーデター時に戦術機と戦闘を行っているがそれでもBETA相手では初の戦闘である事に変わりはなかった。

 

「(今度こそ、人類を……)」

 

 武がそう決意を胸に士気を高めていく中、相手も大きく動きを見せる事になる。

 

 

 

 

 

 さてはて、人類は決断したみたいだな。()()()()()寿()()()。それも早める方に。いいだろう。俺も乗ってやるよ。お前たちがそんなに死にたいのなら望み通り殺してやる。どうせ人間の必要数は確保しているんだ。ボトルネック効果が不安だが別に近親相姦と言える程酷い結果にはならないだろうし多少は問題ないだろう。元々人類は遺伝的多様性がなくなっているからな。

 

「やつらは佐渡島ハイヴを攻略するつもりのようだ。ぶっちゃけ海からの支援も受けられるし攻撃目標としては最適と言える」

「ですが攻略出来れば日本帝国は本土の全土奪還が視野に入りますよ。BETAはハイヴの頭脳級よりエネルギーを供給できないと機能を停止してしまいます。佐渡島ハイヴが落ちれば最短の補給所は鉄原ハイヴです。九州中国地方ならともかく北陸や東海までを維持するのは難しいです」

「日本は島国だからな。さすがにBETAも海の中では移動速度が落ちる。補給距離が足りなくなるか」

 

 やはり経験豊富な軍人がいるのは心強い。アイリスディーナを始めアメリカから呼び戻したグレーテル、意外と戦略的・戦術的視点で物事を見れるカティア、他にも第666戦術機中隊で指揮をすることもあったファムとヴァルター等が参加してくれている。他にも京都防衛戦では小隊の指揮を執り、撃墜された中隊長に代わり指揮を執っていた篁唯依も参加しているが彼女は学習という面が大きくなっている。

 

「佐渡島ハイヴ攻略作戦、甲21号作戦は12月25日に行われる。それに合わせてこちらも人類の滅亡を目指す終焉の日を開始する。段階としてはこうだ。

第一段階。各国に配置された人間級によるクーデターや襲撃を開始。国の中枢を破壊もしくは掌握する。東ドイツおよびソビエト連邦はほぼ掌握が完了している。これらは第二段階の主力として活動する。

第二段階。ソビエト連邦、東ドイツ、中華帝国を主力としてアメリカの早期撃滅を目指す。それが出来なくともアメリカの継戦能力を潰す事が目的だ。それが確認でき次第第三段階に移行する。

第三段階。各国の主力部隊を殲滅する。大体の国家は軍勢をほぼ前線に張り付けている。そこを戦術機級を投入して叩きつぶす。戦術機級の性能はストックホルムの一件で確認済みだ。撃墜される機体も出るだろうが各ハイヴに設置済みの予備機に意識を移してすぐに出撃。破壊してもその日のうちに次の戦力を投入できるようにする。

そして第四段階。各戦線をBETAに突破させ、人間を殲滅する。可能な場所は沿岸部からも上陸して複数の戦線を作り上げて人類を圧迫していく。第三段階が完了した時点で人類の継戦能力はほぼ喪失している。確実に手が回らずに蹂躙できるはずだ。

なお、ここまでの過程でアメリカによるG弾の投下が懸念されるがそこはこちらも開発したG弾で迎撃する。まぁ、各発射基地を第一段階で襲撃する予定だ。G弾を全弾撃つことは不可能だろう。

ここまでで質問は?」

「はい」

「なんだカティア?」

「もし第一段階や第二段階で躓いた場合はどうするのでしょうか?」

「各国の中枢の破壊や掌握、アメリカを潰すに至らなかった場合か。考えはある。その場合は予備プラン、というよりも各戦線以外のBETA、戦術機級をアメリカに向ける。我々の総力を以てアメリカを叩き潰すんだ」

 

 そうなればいくつかの戦線は劣勢や崩壊に陥り人類に領土を奪還されるかもしれないが別に問題はない。取り戻したからと言ってすべてが元通りになれるわけではない。不毛の土地を手に入れるだけで人口や国力が回復するわけではないんだ。多少の戦線後退は許容範囲内だ。

 

「……なるほど、理解しました」

「それはよかった。お互いに勘違いや理解できていないところがあった、なんてことは避けたい。勘違いしたまま行動するのはとても危険だからな」

「では私からも質問をさせてもらおう。我々はどこに向かうのかだ」

 

 あー、確かに戦術機級の話はしたがアイリスディーナ達には触れていなかったな。

 

「簡単な話さ。全員で佐渡島ハイヴに行ってもらう。人類は何やら面白い新型兵器を投入するらしい。それはレーザー級の攻撃すら効かず、ハイヴを吹き飛ばせるポテンシャルがあるそうだ。是非ともここで叩き潰しておきたい。アメリカを潰してもこれが健在なら意味がないからな」

「了解した。という事は唯依たちも?」

「そうだな。唯依、最悪の形で里帰りする事になるが問題ないな?」

「ええ、もちろんです。出撃の準備は整っています」

 

 別にそういう意味で言ったわけじゃないんだけどなぁ。これもカティアと同じように祖国の思いが強かったせいで真っ先に染まったからなぁ。他は今も現状に思うところがある娘もいるというのに……。ま、だからこそ安心して送り出せるんだけどな!

 

「それじゃ他に質問は? ないなら準備を進めてくれ。時間はないんだ。今日中にカシュガルハイヴ(ここ)から鉄原ハイヴまで行ってもらう。甲21号作戦開始に合わせてこちらも終焉の日を開始する! いいな!?」

「「「「「了解!」」」」」

 

 ふふ、いよいよ迎えるのか。タリサに人類次第とは言ったがまさかこんなに早く訪れるなんてな。ああ、楽しみだ。今はこの終焉の日を楽しむことに集中しよう。素晴らしい日になる事間違いなしなんだから。

 




次話は2022/12/20 23:31投稿予定です。

夕呼先生の処遇

  • 人類と運命を共に
  • 繁殖場に
  • 脳くちゅ
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