【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第五十八話「甲21号作戦3・大崩壊」

 それは突然に発生した。オービットダイバーズと呼ばれる部隊が佐渡島ハイヴ内の攻略を順調に行っていたが、突如として世界中から大量の報告が上がってくる。

 

「副指令! 世界中でテロや暴動が発生! 一部の国家では国家機能の消失まで起きているようです!」

「っ! ついに始まったわね……。他に動きは?」

「今のところはありません。ですがアフリカ諸国は半分の国との通信が途絶。中東は聖戦連合軍内で混乱が広がっています。南米ではサンパウロ、リオデジャネイロ、ブエノスアイレス、リマがクーデター側に落とされています。他の国々は鎮圧に成功したようですがかなり混乱しているようです」

 

 世界規模でのクーデターや暴動。明らかにBETAが起こしたものだと分かるものであり、BETAがついに動き出したと夕呼は頭を回転させる。しかし、BETAの動きはそんなことをさせないと言わんばかりに迅速過ぎた。

 

「っ! 大変です! 中華帝国が国境を越えてアメリカに攻撃を開始しました! さらにソ連を含むワルシャワ条約機構加盟国もそれに追随しています!」

「なんですって!? 状況は!?」

「アメリカは軍隊の大半をカナダに投入していたようで防衛に失敗。国土の侵略を許している状況です」

「……BETAは、国家を既に奪い取っていたってわけね」

 

 夕呼は理解した。既に打てる手は残されていないと。このままいけば数日後には国家機能を維持できる国は半分以下になり、BETAの攻撃に耐えきれなくなる。そして大量の国力を保有するアメリカはソ連と中華帝国の奇襲を受けてしまっている。東海岸に国力が集中しているからといって跳ね返せるかと言われれば不可能だろう。確実にBETAが両国と共闘するように動き出すと。

 

「これは……! まさか今回の作戦が引き金になったと!?」

「確実にそうでしょう。まさか我々の動きに合わせて動くなんて……!」

 

 夕呼としては人類は詰んでいるとはいえ絶滅させるにはまだまだ時間がかかると思っていた。しかし、実際にはすでにBETAはいつでも人類を滅ぼせる状態にあったのだ。今回、大胆に動いたのはそれを見せつけるためであろう。

 

「……とにかく今はハイヴの攻略に集中するのよ! 今更撤退すればそれこそ無駄な消耗で終わってしまうわ!」

「副指令! ハイヴ内に大量のBETA反応! 数は……最低でも軍団規模です!」

「3万以上の数ですって!? 一体どこにそれだけの数が……!」

 

 BETAは世界だけではなく佐渡島でも動きを見せた。最初に殲滅した数を超えるBETA群が地下から湧き出してきたのだ。ハイヴ内に突入したオービットダイバーズは一瞬で全滅し、ウィスキー部隊とエコー部隊に群がっていく。

 

「凄乃皇は今どこに!?」

「佐渡海峡を渡っています。攻撃開始地点到着にはまだ時間がかかります」

「……」

 

 ここでハイヴ攻略を優先しても問題はないが万が一の場合を考えて撤退させるべきだろうか。夕呼はそう考えつつも今ならまだ攻略できる可能性があるとして作戦の継続を決定した。

 

「急がせなさい。伊隅達はこのまま攻撃地点の防御をさせて」

「了解!」

 

 未だ佐渡島は大量のBETAが現れたこと以外作戦の予測通りの状況となっている。損害も許容範囲内であり、この調子であれば攻略も可能であった。

 それゆえに、この動き自体が作戦を継続させる罠と気付く事が出来なかった。何しろBETAはいまだに切り札を投入していないためにそれに気づくことが出来なかった。だからこそこの数こそがBETAの最高戦力であると誤認する結果となった。

 そしてその誤認してしまった代償は現場の兵たちが負う事となる。

 

 

 

 

 

 

「全機発進!」

 

 アイリスディーナ・ベルンハルトの言葉に従いBETA最高の戦力第666戦術機中隊が鉄原ハイヴより出撃した。専用の戦術機射出口により一瞬で朝鮮半島を飛び出していく中隊は海面スレスレを飛行し、佐渡島に向かっていく。

 

「知っての通り大崩壊が開始された。戦術機級も前線に向かっている。これによって年が明けるまでに人類の戦力の6割と半分の国家の瓦解が可能と予測されている。そして、今佐渡島にいる軍勢を叩く事で極東における人類の戦力の大半を潰すことが出来る。加えて、事前に通達された通り“白銀武”という人間を最優先で攻撃しろと命令されている。優先度は最優先。敵の新型機よりも優先度は高い」

『ベルンハルト隊長。どのように行動しますか?』

「ふむ、そうだな……。唯依達ヤーパン小隊5機は真野湾周辺に展開するウィスキー部隊の殲滅。ヴァルター率いる小隊4機はエコー部隊を。我々シュヴァルツェ小隊3機はA-01部隊を叩く」

『了解しましたがそれでは隊長に負担が行きませんか?』

「問題ない。そのための訓練だ。それにたとえ撃墜されても鉄原ハイヴには()()()()()()()()がある。一時間ほどで戦線の復帰は可能だ」

『それもそうでしたね。では我々は何の心配もせずに任務に励むとしましょうか』

 

 まりもや国連の人間級から甲21号作戦の詳細は筒抜けとなっている。それゆえに人類の動きに合わせて第666戦術機中隊は動き出していた。

 

「っ! まもなく佐渡島だ。攻撃に備えろ!」

『『『『『『『『『『『了解!』』』』』』』』』』』

 

 謎の戦術機の襲来は人類側でも確認できた。しかし、それらが一体どこの所属か分からずに呼びかけを行うがそれを無視して第666戦術機中隊は佐渡島に突入した。

 

『っ! 高高度を飛行中の戦術機が接近中!』

『馬鹿な……!? あんな高度を飛んだら光線級の的だぞ!?』

 

 しかし、光線級は依然として彼女たちを狙わない。それによって最悪の予測が軍の間で広まるがそれを確定させるように5機の戦術機が降り立つと、日本刀の如き長刀を抜刀してウィスキー部隊に切りかかった。

 

『こ、こいつら敵だ!』

『は、背後に気を付け……!』

『た、助け……!』

 

 奇襲を受ける形となったウィスキー部隊は次々と破壊されていき損耗率を増やしていく。この時点でウィスキー部隊も乱入した戦術機が敵であると認識して攻撃を仕掛けようとするが前方のBETAにも気を付けないといけず、満足な対応が出来ずに破壊されていく。

 

『安芸! 後ろに敵よ!』

『え!? あ! 本当だ。ありがとう……!』

『気を付けて。私たちは敵より数が劣っているのよ。性能差があるとはいえ気を付けて!』

『う、うん!』

 

 五摂家を守る最強の衛士として育てられた彼女たちが人類を敵と認識して牙を向けている。BETAを駆逐するために鍛えられた力が人類に向けられているのは皮肉と言えるだろう。

 

『っ! 回避行動!』

『きゃぁっ!!??』

『志摩子!?』

 

 しかし、そんな彼女たちの無双は長くは続かない。高速で接近してきたそれに気づいた唯依が命令を出して自らも後退するが回避が間に合わなかった志摩子が乗る機体の左腕が切り落とされる。断面からは戦術機ではありえない真っ赤な血が噴き出し、それがただの機体ではないと人類に教えていた。

 

『ほう? まさか避けられるとは思わなかったぞ』

『っ! 武御雷……』

 

 切り落としたのは赤色塗装された武御雷、人類最強の一人である月詠中尉が搭乗する機体だった。京都防衛戦を生き残っていればいずれ上司となっていたであろう人物の登場に唯依は少し悲しげな表情をした後にすぐに思考を切り替える。

 

『何者かは知らないが人類の敵と判明した以上、ここで倒させてもらおう』

『っ! 斯衛軍!』

『これはちょっと厳しくない?』

 

 そして武器を構える月詠を支援するように斯衛軍が姿を現した。衛士としての腕は確実に斯衛軍の方が上であり、唯依たちは機体の性能差を活かして戦うしかない。

 

『行くぞ!』

『っ! 一機でもいいから斯衛軍を削るわよ!』

『『『『了解!』』』』

 

 唯依たちは高速で接近する武御雷に長刀を振り下ろした。人類最強と言える月詠中尉との戦闘を開始するのだった。

 




次話は2022/12/22 23:17投稿予定です。

夕呼先生の処遇

  • 人類と運命を共に
  • 繁殖場に
  • 脳くちゅ
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