「くそ! 一体何が起こっているんだ!」
白銀武は凄乃皇の攻撃地点にて各地から流れてくる戦況報告を聞いて悪態をついた。オービットダイバーズがハイヴ攻略をしていたにも関わず気付けば全滅し、地下から大量のBETAが湧き出していた。攻撃地点にやってきたBETAを駆除し終えると佐渡島に正体不明の戦術機が乱入したと武たちに届いた。
『ヴァルキリー・マムより各機。現在正体不明の戦術機が佐渡島に上陸。戦術機は中隊規模で小隊ごとに分かれてそれぞれウィスキー部隊、エコー部隊を攻撃中。うち3機がそちらに向かっています』
『たったの3機だと? 舐められたものだな』
ヴァルキリー・マムのコールサインの元
A-01部隊は確かに実戦経験を持った者こそ少ないが新型OSを搭載した精鋭部隊であり、オルタネイティブ4直属の部隊である。そんな自分達を相手するのが僅か3機というのはどうしても屈辱に感じられたのだ。
『まぁいいさ。たった3機で向かってきたことを後悔させてやる。B小隊を前衛にしてAC両小隊はその援護を行う。速瀬、やれるか?』
『もちろん! B小隊!
『『「了解!」』』
『ヴァルキリー・マムより各機。まもなく3機の戦術機と接敵します。警戒を厳にしてください』
その報告が入ると同時だった。丘を飛び越えて3機の戦術機が姿を見せた。漆黒に塗りつぶされたそれらは既存の戦術機とは思えない程生物的な姿をしていた。その一方で部隊を示すようなものはないがそれに近いようなものが左肩にペイントされていた。666の文字と角の生えた髑髏が描かれたそれは数字の不吉さと合わせて不気味な様相を呈している。
『所属不明機に告げる。現在我らはハイヴ攻略中である。今すぐに攻撃をやめよ!』
先ずはと言わんばかりに伊隅が警告を促すがそれに対する漆黒の戦術機の返答は武力による返答だった。双剣を両腕に装備した1機が一番前にいた武に切りかかる。残りの二機は突撃砲を両腕に装備して援護に入る。
「くっ!? こいつ……!」
武はそんな戦術機の攻撃を辛うじて避けるが前の世界と合わせて数年近く戦術機に乗り、XM3という新型OSを搭載した武の機体でも避けるのが精いっぱいなほどに敵の戦術機は高性能過ぎた。
加えて敵は歴戦の、それも戦術機同士の戦闘に慣れていると言わんばかりに武の動きを先読みして必殺の一撃を喰らわしてくる。
『武!』
『あたしたちをガン無視なんてなめてるじゃない!』
『援護する!』
しかし、武だけを攻撃させないと言わんばかりに他のB小隊の面々が援護に駆け付けるがそれすら漆黒の戦術機は即座に対応して見せる。まず、冥夜が繰り出した長刀を分断すると蹴りを繰り出して吹き飛ばすと次に向かってきた彩峰の銃撃を躱し突撃砲を持った右腕を切り落とした。
『くっ!』
『彩峰! 下がれ!』
これ以上損害を出すわけにはいかないと小隊長である速瀬が代わりに前に出るがそれは後方の二機に邪魔をされてしまい失敗に終わる。
『速瀬! 無事か!?』
『損害はありません! ですがこいつら3機で来るだけの事はあります。……舐めてかかったらこちらが押し負けます』
この短い戦闘でA-01部隊の誰もが理解できた。目の前の敵は自分たちを殺しうる存在だと。本気でかからなければ命を散らす結果になると。
「くそ! なんで俺たちを攻撃するんだ! 敵はBETAのはずだろうが!」
だからこそ武は許せなかった。人類同士で戦っている今の現状に。目の前の3機の戦術機は少なくとも精鋭になれるだけの実力がある。それをBETA戦に使う事が出来ればこんな絶望的な状況を少しでも覆す事が出来ると。
そんな武の嘆きとも怒りとも取れる言動はある意味では的を得ているだろう。問題は目の前の戦術機が本当に
『……その通りだろう。私もそう思う』
「っ!」
そして、武の言葉に返答するように目の前の戦術機の衛士が声を発した。凛とした女性の声は芯が通った強い女性を武に幻視させる声をしていた。
『ではそんな君に一つ教訓を与えよう。既存の常識に囚われるな。相手が常識に沿って戦ってくれるわけではないのだから』
「それは、どういう……!」
『こういうことだよ、
その瞬間だった。3機の戦術機の頭部装甲が開くとレーザー級の照射粘膜が姿を現し、3つのレーザーが武に伸びていく。
「不味い!」
『っ! 避けろ白銀!』
慌てて回避行動に移るが一歩遅かった武は跳躍ユニットと左腕にレーザー照射を受け地面にたたきつけられた。慌てて伊隅達が救援に向かうが漆黒の戦術機が立ちはだかった。そして、先ほどとは比べ物にならない速度で以て近接戦闘を展開する。
「や、やめろ!」
武は操縦桿を動かすがレーザー照射で駆動系がやられたのか身じろぎ一つする事は出来なかった。にもかかわらずモニターも通信も良好であり、A-01部隊の様子が簡単に見る事が出来てしまった。
『っ! こっちに……!』
『そ、狙撃を……きゃぁっ!!??』
『たま!? 噓でしょ……!』
『近接戦は危険だ! 距離を取って……!』
『大尉ぃっ!!!!』
次々とA-01部隊は撃墜されていく。縦横無尽に部隊内を駆け回る漆黒の戦術機に翻弄され、距離を取ろうとすれば残りの二機がレーザー照射で破壊していく。最初に壬姫が、次に中隊長である伊隅が落とされ指揮系統を崩していく。ただでさえ劣勢な状況でのそれはあまりにも致命的過ぎた。
「くそっ! くそっ! くそおぉぉぉぉぉっ!!!!!」
『ま、まずい! こっちに……!』
『がっ!!』
『ひ!?』
『そんな……! 皆が……。あ……!』
『武……。すまない……』
武は戦友が、仲間たちが次々と死んでいく様子を見せられ、聞かされ続けた。そんな事はさせないと機体を動かそうとしても一向に動かず、気付けば付近に戦術機は4機しか残されていなかった。
『無様だな。白銀武』
「……なんで俺の名前を……」
『お前を最優先で始末しろと命令されていたからな。我々の中で貴様を知らないやつはいない』
「……お前ら、BETAか」
『答え合わせをするには状況証拠が多すぎるな。確かにそうだ。意外だったか? BETAが戦術機を運用している事に』
「……そうだな」
知っていれば、予測できていればもっと対応できていたはずだ。であれば仲間が死んでいく事はなかったはずなのだ。
漆黒の戦術機は武の機体の前に立つと双剣を振り上げる。最優先で始末しろと言われているために彼女たちが武を生かす理由はない。武は悔しさで歯を食いしばってると、モニターに凄乃皇の姿が映った。
『武ちゃん!』
『……どうやら人類の新型兵器が登場したようだな。いささか遅すぎたようだがな』
『武ちゃんから離れろ!!!』
凄乃皇に搭乗する00ユニット、武の幼馴染にして相思相愛と言えた鑑純夏は怒りの声を上げる。そんな純夏を見て漆黒の戦術機の衛士はにやりと笑みを浮かべた。
『……なるほど。どうやらあれの中身はお前にとって大切な存在のようだな。なら……』
そういうと戦術機は双剣を武に振り下ろした。まるで純夏に見せつけるような一撃に武は抵抗する事も出来ずに双剣に潰され、純夏は怒りで顔を真っ赤にした。
『おまえぇぇ!!!!』
『最優先事項は完了した。どうせだ。新型兵器の実力を見てみようではないか』
そういうと漆黒の戦術機は仲間の機体と共に凄乃皇に向かっていく。武は潰されたコックピットからその光景をぼんやりと眺めながら少しずつ意識をなくしていった。
「純夏……」
最後に守りたかった少女の名前を呟き、武の意識は完全に暗転するのだった。
大雪のせいでBS映らなくて23話見逃した……(地域の問題か1話遅れてる)
次話は2022/12/23 23:22投稿予定です。
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