【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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少し短いです


第六十三話「横浜基地防衛線2・悪夢」

『き、来たぞ!』

 

 そう声を発したのは見張り台についていた兵士だった。彼の視線の先には海より顔を出してこちらに向かってくる突撃級の姿があった。それを皮切りに一つ二つ、10、20と数を増していった。

 

『っ! BETA先頭集団上陸!』

 

 顔を出してからは一瞬だった。荒廃する横浜に上陸した突撃級は海中の時よりも素早い動きで突進を開始する。しかし、そうはさせないと横浜周辺から砲撃やミサイルが突撃級に突き刺さっていく。

 

「BETA先頭集団に着弾を確認! しかし、完全撃破には至っていません!」

「仕方ないわ。むしろ今ので半数を撃破出来たことに満足するべきよ」

「っ! 要塞級出現! 数は10! さらにその周囲から要撃級多数出現!」

「それらは後回しよ。今は先頭の突撃級に火力を集中して」

 

 突撃級の厄介な点は正面からでは決定打を与えられないという事だ。地球上のどの物質よりも硬い突撃級の正面装甲では戦車砲や突撃砲をすべて無力化してしまう。それゆえに柔らかい他の場所を攻撃するのが望ましいとされているために砲撃など背後を攻撃できる火器は全て突撃級の掃討に充てられることとなった。

 

「突撃級殲滅完了。続いて要撃級、要塞級来ます!」

「ここからが正念場よ。絶対に守り抜くのよ!」

 

 横浜基地に残されたすべての火器が火を噴く。出し惜しみなんてしていられないと激しい砲火がBETAに突き刺さっていくがそもそも彼らの真骨頂はその圧倒的物量である。一体撃破するごとに3体は出現するような膨大な数が波となって押し寄せてくる。

 

『くそ! く、来るなぁぁぁぁっ!!!』

「第一防衛線突破されました! 第二防衛線までに敷設された地雷が起爆! 多少ですが損害を与えています」

「そうでないと困るわ。ただでさえ絶望的な防衛だっていうのに……。それよりも戦術機は?」

「斯衛軍は既に出撃準備を完了しています。A-01部隊はまもなく出撃準備が整います。207B小隊はまだ時間がかかります」

「急がせて。最低でも戦術機を動かせる状態までもっていかないとBETAに殺されるわよ」

 

 動けない戦術機などでかい棺桶でしかない。であれば格納庫を最終的に壊す事になったとしても動ける状態にする必要がある。既にBETAは上陸し、あと一歩のところまで来ているのだから。

 

「斯衛軍出撃。要塞級の排除に動き出しました」

「いいわ。彼女たちはあたしたちとは別の指揮系統を持っている軍よ。彼女たちの好きにさせましょう」

「了解。……っ! BETA先頭集団第二防衛線に到達!」

「くっ! やはり火力が足りていないわね」

 

 横浜基地の主戦力が引き抜かれた影響が諸に出始めている。この調子なら基地の外壁を利用した最終防衛線の到達まで極僅かだろう。

 

「副司令! A-01部隊発進準備完了しました!」

「なら第二防衛線の敵排除に回らせて!」

「了解!」

 

 しかし、辛うじてA-01部隊の出撃準備が整う事に成功した。この状況においては焼け石に水に近いとはいえ新たな戦力を投入できる意味は大きい。横浜基地の司令部で喜びの感情が沸き上がった。

 そんな彼女たちの期待を背負ったA-01部隊の出撃を口角を上げて喜ぶ存在にも気づかずに。

 

 

 

 

 

 

「へぇー。あれが斯衛軍か。めちゃくちゃ強いな」

 

 横浜基地からそれなりに離れた東海地方の某所にて神宮司まりもはどこか感心したような口調でモニターに映る光景を見ていた。

 現在()()()()がいるのは静岡県内に作られた穴を利用した仮拠点にいる。ベッドにモニター、食料品などが置かれたそこでまりもは、いやあ号標的は横浜基地防衛線をまるでスポーツ観戦するかのような気安さで見守っていた。

 

()()()()()()()() 流石は日本最強の斯衛軍って思うか?」

「んー! んー!」

「って、口を縛ってんだもん。喋れるわけないわな」

 

 あ号標的は隣の椅子に拘束された武に問いかけるが返答など返ってこないと自己完結する。武は指の先まで動かせないほど念入りに拘束され、椅子と一体化していると言われてもおかしくない状況にある。更には口内に布を押し込んだ状態で口をテープで拘束しているために喋る事も出来ない。

 それでも武は殺意を乗せた視線であ号標的を睨みつけていた。そんな武を見てにやりと笑みを浮かべた。

 

「そんなにこの女の体が大切か?」

「んんー!」

「しっかしまさかお前の関係者だったとはな。正直運が良すぎてびっくりしてるよ。リィズの時もそうだったし物語の補正ってやつなのかね?」

 

 そう言いながらあ号標的はまりもの体をもてあそぶ。胸を揉んだり煽情的なポーズを取ったりしてまりもの肉体を用いていく。

 

「ん’’ーーーー!!」

 

 当然恩師であるまりもを弄ばれて武はさらに怒り狂う。しかし、彼は椅子から動けないほど厳重に拘束されている。口内にも布が積められているせいで舌を噛むことも出来ない。ならば倒れて頭を打つという事も出来ない。椅子の周りにはカーペットが敷かれてかなりの高さから落下でもしないと負傷できないほど柔らかくなっている。

 

「おいおい。そんなに見つめられれば濡れてきちゃうぞ♪」

「んーーーーーー!!!!!!」

 

 怒りを増長させるような言い方。武は血走った眼を見開き、あ号標的への殺意を募らせていく。もし、殺意が物理的に干渉する力を持っていれば20回は殺す事が出来ていただろう。

 

「さて、こんな風に遊んでいる間に横浜基地はクライマックスを迎えているぜ?」

「っ!?」

「ああ、そういえばあそこにはお前が元の世界で一緒に過ごした者たちがいるんだよな? 安心しろよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 モニターには第二防衛線に殺到するBETAを突撃砲で駆逐していくA-01部隊が映っているが膨大な数を前に劣勢であった。そして、そんな彼女たちに止めを刺すようにあ号標的はトランシーバーのようなものを取り出すと告げる。

 

「アイリスディーナ・ベルンハルト率いる第666戦術機中隊、そしてすべての戦術機級よ。横浜基地を無力化せよ! 事前に伝えた通り一部の人間は極力捕縛。それ以外は全て潰せ! ストックホルムでの実戦を中止にしたんだ。我らの切り札たるお前らを隠しておく必要もなくなった。さぁ! 思う存分暴れろ!」

 

 絶望的な戦況にあらがう事さえさせない悪夢が今到来する。

 

夕呼先生の処遇

  • 人類と運命を共に
  • 繁殖場に
  • 脳くちゅ
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