【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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ギリギリ書けた……


第六十四話「横浜基地防衛線3・破綻」

「ふ、副司令! 西及び南から飛行する未確認物体の反応があります!」

 

 その報告がピアティフ中尉より発せられたのはA-01部隊が出撃して暫くたった頃だった。第二防衛線は辛うじて維持できており、斯衛軍が大暴れしていることもあって予想外にも順調に防衛が出来ていた時の事であった。

 

「反応から戦術機と思われます!」

「……ついに来たわけね」

 

 武から聞かされていたBETA側の戦術機。それがついに登場したという事だろう。戦局が安定した途端のこれである。夕呼を絶望させるには充分すぎた。

 

「ただでさえ敵の方が性能が上なのにA-01部隊と同じ中隊規模なんて……」

「そ、それが副司令……。確認できた数は200を超えています……」

 

 そして、絶望はいつでも夕呼達人類の予想を簡単に超えてくる。武の報告から中隊規模である事は分かっていた。別にそれ以上の数がいないとは限らないが武が2回目、3回目の世界で経験した事から大隊以上の数はいない可能性があった。

 しかし、実際には違っていた。確かに戦術機はそれほど多くはない。実際のところ中隊規模しか保有していない。東ドイツやソ連の者たちを合わせれば大隊すら超える規模となるが今の手持ちはそれだけだ。

 だが、BETAには戦術機級というBETA型の戦術機がある。さすがの武もそれらの存在は知らなかった。2回目はそもそも戦場にいて世界の様子など知らなかった。3回目は最後まで生き延びた武に警戒して戦術機級を温存し続けていたために知る機会がなかったのだ。

 

「200!? 間違いじゃないの!?」

「レーダーは全て正常です。確かに200機が……っ! さらに100機の反応! 計300機です!」

「……BETAは、すでにここまで……!」

 

 たった一機の戦術機でさえ一国を落とせるポテンシャルを持つそれが300機。夕呼は地面がなくなり、底なしの穴に落ちていく感覚に襲われる。

 

「……伊隅たちに連絡して。300機以上のBETA側の戦術機が向かってきている。迎撃しなさい、と」

「……了解」

 

 ピアティフ中尉もその指示が何を意味しているのかを理解しつつ命令を通達する。たとえそれ以外の行動をしても300機という物量の前には意味をなさない。それだけの差が存在していた。

 

「……仕方ないわね」

 

 夕呼は指示を終えると基地司令であるパウル・ラダビノット准将に向き直った。

 

「司令。国連に連絡をして下さい。もし、大勢が決したと判断した場合には容赦なくG弾を投下してくれて構わないと」

「……いいのかね?」

「ええ、残念ですがそれがBETAに対して最も効果的な一撃を与えられる方法です」

 

 夕呼としても苦渋の決断であり、本来であれば行いたくはない一手だった。しかし、すでにそれ以外に有効打を与えられないのも事実。こうしている間にもBETAは次々と上陸し、横浜基地に殺到してきている。第二防衛線が破られ、最終防衛線まで到達するのは時間の問題だった。

 

「……了解した。すぐに連絡を行おう」

「ありがとうございます」

「構わない。私としてもこのままいいようにやられてしまうわけにはいかないからな」

 

 ラダビノット基地司令もまた、オルタネイティブ4の終焉を感じつつもBETAに一矢報いるために行動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「っ! 来たぞ!」

 

 伊隅みちるはレーダーの反応と視界に対象が映った事でそう声を発した。副司令たる香月夕呼より司令を受けた伊隅は覚悟を持って命令に従っていた。元々この戦況において人類側で優勢な場面などない。しかし、全ての場面を絶望で塗りたくるような悪夢が迫ってきていた。それらは伊隅達では到底抗う事が出来ない戦力に物量があった。

 

「全員覚悟は出来ているな? いくぞ! 一機でも落として我らオルタネイティブ計画直属部隊の意地と名誉を見せつけてやるんだ!」

『『『『『了解!』』』』』

 

 伊隅の言葉を受けてA-01部隊、通称伊隅ヴァルキリーズが300機の戦術機に吶喊する。伊隅達が上がってきたのを確認したのかそれら、漆黒の戦術機は一斉に頭部や腹部の装甲を開き、照射粘膜を露出した。

 

「っ! レーザー照射だ! 回避行動及び迎撃!」

 

 いち早く攻撃に気付いた伊隅がそう指示を出すと同時に突撃砲を撃ちまくる。辛うじて射程圏内に迫ってきていた漆黒の戦術機に次々と当たっていくが照射粘膜への被弾以外では装甲に弾かれてダメージすら与えられない。照射粘膜でさえ戦闘不能には陥っておらず、突撃砲を構えて突撃を開始してくる程だ。

 

「(装甲は硬い。おそらく突撃級並み。それに加えてレーザー級の照射粘膜に戦術機の機動力。厄介だな)」

 

 伊隅は敵が本当にどうしようもない相手であると再認識する。本来であれば中隊規模の自分たちが一機を相手にして互角と言える戦力であり、中隊で300機の相手をするべきではないと。その証拠にレーザー照射が始まり、中隊はあっという間にレーザーの雨にさらされることとなった。

 

『くっ! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

「涼宮!」

 

 レーザー照射が当たったらしい涼宮茜が機体から煙を吹いて墜落していく。助けようにも伊隅達にはレーザー照射が降り注いでいる。漆黒の戦術機は当てる気がないのか態と躱せる位置に放っているために気を抜くこともよそ見をする暇もなかった。

 

「圧倒的強者の余裕というやつか? だったら!」

 

 そんな傲慢ともとれる漆黒の戦術機に一泡吹かせようと突撃砲を放つ。今度は弾かれる装甲ではなく照射粘膜に攻撃を絞る事でレーザー照射出来る数を確実に減らしていった。しかし、所詮は遊ばれていた状態での優勢である。伊隅が照射粘膜への攻撃を始めると報復と言わんばかりにA-01部隊の機体に命中させていく。それすらも狙われるのは跳躍ユニットや脚部などの移動手段ばかりである。

 

「(殺さずに生け捕りにするつもりか?)」

 

 敵とさえ認識されているのか分からなくなってきたがそれでも伊隅はあきらめずに戦い続ける。既に陣形はないに等しい。というよりも漆黒の戦術機が跳躍ユニットなどを攻撃し始めてから僅か一分足らずで伊隅以外は全て撃墜されている。その伊隅も技量や運で生き延びているというよりも生かされているといった具合が強かった。

 

「一体何が……」

『貴様か。戦術機部隊の隊長は』

「っ!?」

 

 伊隅の前に出てきた一機の機体。そこに乗っているだろう衛士が発した言葉に伊隅は警戒を強める。態々このタイミングで出てきた以上何かしらの目的があるのは明白だった。

 

『そう警戒する必要はない。私はただ貴様と戦ってみたくなっただけだ』

「なんだと……?」

『あいにく私の相手はこいつらばかりでな。経験を積もうにも積めない状況にあったんだ』

「……つまり経験を積むために私を生かしたと」

『その通りだ。では、悪いが貴様に拒否権はない。さっさと始めさせてもらう』

 

 そういうが否や目の前の機体は瞬時に伊隅の前に躍り出ると手にした双剣を振るってくる。それを辛うじて回避する伊隅だが機体の性能差から完全には躱しきれずに一部損傷を負ってしまう。

 

「くっ!」

『おっと……』

 

 近づくなと言わんばかりに突撃砲を放てば漆黒の戦術機は照準すらできないほどの速度で以て離脱する。

 

『なるほど。機体性能に差があるが技量は互角と言ったところか』

「生憎私としてはうれしくないね! 長年戦ってきた私と互角なんて!」

 

 伊隅としても長年衛士として戦ってきたという自負がある。それをBETAごときに抜かされるわけにはいかない。そういう思いを込めて突撃砲を放つ。回避行動すら予測したうえでばらまくように放ったそれらは人類の戦術機であれば完全に避けきる事は出来ない弾幕となって漆黒の戦術機に襲い掛かった。

 

『そうか。だが私は20年以上戦術機に乗っているんだ。むしろそんな私と互角のお前に驚嘆しているよ』

「なっ!?」

 

 漆黒の戦術機は跳躍ユニットを吹かし、弾幕の中を突っ込み瞬きの間に伊隅に接近した。一発の銃弾にも当たらずに。そして、両腕の双剣を振り上げ、伊隅の機体の両腕を落とすと今度は横なぎに払い下半身と頭部を切り落とした。

 

『安心しろ。お前たちのような見目麗しい優秀な衛士を殺そうとは思っていない。……経験したからこそ分かるがせめて抵抗しないことだ。それが賢明な判断となる』

 

 漆黒の戦術機、それに乗るアイリスディーナ・ベルンハルトは落下していく伊隅に同情的な視線を向けた後横浜基地を陥落させるべく戦術機級を引き連れてそちらに向かっていくのだった。

 




次話は執筆中です。

夕呼先生の処遇

  • 人類と運命を共に
  • 繁殖場に
  • 脳くちゅ
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