【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第六十五話「横浜基地防衛線4・絶望の光」

 A-01部隊を全機撃墜したアイリスディーナは300機もの戦術機級を引き連れて横浜基地を強襲した。既にまともな防衛戦力が残されていない横浜基地の上空に到達すると一斉にレーザー照射を開始。基地の表層部の破壊を開始した。

 

「1号機から50号機は野砲陣地を、51から100号機は訓練校などの建造物。101から150号機は滑走路だ。残りは半分を突撃班、もう半分を護衛組としてそれぞれ待機。次の指示を待て」

 

 アイリスディーナの無慈悲とも言える命令によって横浜基地は表層部を次々と破壊されていく。レーザー照射の中には重レーザー級のレーザー照射も混じっており、爆発に加えて融解まで起こる地獄絵図となっていた。

 

『表層部、破壊、完了』

「よし。では突入の前に要塞級による溶解液の投入を行う。敵の反撃に注意しろ」

 

 あ号標的と違い、アイリスディーナに油断や慢心はない。常に敵が思いもしない反撃をしてくる可能性を考慮して慎重すぎるとも言える手で確実に追い詰めていく。

 要塞級による溶解液の投入が開始された。横浜基地の地下に通ずる3つのゲートすべてに同時投入されたそれらによって中から多数の人間の悲鳴が聞こえてくる。更には酸が生み出すガスに回避できた者も呼吸困難に陥り倒れていく。

 

「まだだ。後5分間投入した後に戦術機級による突入を開始する。……! 全機回避軌道!」

 

 最初の要塞級が溶解液を出し終え、次の要塞級に交代しようとした時だった。要塞級に突撃砲の粘着榴弾が突き刺さり、破裂した。それが起こる少し前にレーダーの反応を見つけたアイリスディーナは回避行動の指示を出した。

 

『これ以上好きにはさせない!』

「まだ残っていたか……!」

 

 ゲートより飛び出してきたのは武も所属していた207B小隊の面々だった。冥夜を先頭に300機もの戦術機級の群れに突っ込むあたり冷静さを欠いているように見受けられた。

 

「(あまりの惨状に我を忘れて飛び出してきたか? だったら……!)先頭のやつは私が相手をする。残りはA-01部隊と違い即座に落とせ。ただし極力傷つけないようにせよ」

 

 アイリスディーナは双剣を両手に持ち冥夜に突撃する。飛び上がる形の冥夜と違い落下するアイリスディーナはその相乗効果を利用して最大の一撃を冥夜に叩きつける。

 

『くっ!?』

「剣に自信があるようだがまだまだだな」

 

 冥夜は長刀でガードを行おうとするが長刀は触れた箇所から切断されてしまう。しかし、威力を軽減する事は出来たらしく双剣は冥夜の機体の両肩に叩きつけられたが切断するには至らずに機体を地面にたたきつける形となった。

 

「ほら、見ろ。貴様が一人飛び出たために残りの仲間が落とされていくぞ」

『っ!』

 

 アイリスディーナがいうように他の者たちはレーザー照射を受けて跳躍ユニットを破壊、さらには起き上がれないように両手両足を破壊され完全に達磨の状態で地面に転がっていた。一矢報いる事さえできないまさに瞬殺であった。

 

「確かにあのまま要塞級の溶解液を投入されていれば戦う事も出来なかっただろう。だが結果として貴様たちは戦術機という特大の戦力を失う結果となった。愚かだな」

『っ! お前たちBETAに言われる筋合いなどない!』

「……話しても無駄なようだな」

 

 もとより人類が素の状態でBETAと分かりあうことなど不可能だ。それだけBETAは人類に対してヘイトを稼ぎすぎたし態々BETAも人類と分かり合う必要はない。

 

「さて、思わぬ邪魔が入ったがさっさと横浜基地の制圧に移ろう。要塞級は予定通り溶解液を投入せよ。……ん?」

 

 ふと、レーダーに高速で接近してくる反応があった。それらが来た方角から最前線でBETAを食い止めていた斯衛軍が戻ってきたものと思われた。

 

「やはり来るか。225から300号機、予定通り護衛としての役目を果たせ。破壊する必要はない。横浜基地に近づけさせなかければいい」

 

 アイリスディーナの指示を受けて75機の戦術機級が飛び立つ。本来、大隊規模の30機ですら大規模と称される中で75機もの戦術機は異常とも言える数である。それらが人類屈指の精鋭たる斯衛軍に殺到するのだ。ただでさえ消耗しているなかでのそれは確実に斯衛軍をすりつぶす事になるだろう。

 

「(想定したが少し時間を取られてしまっている。……これ以上人類に反撃する時間を与える必要はないな)溶解液投入後は戦車級を先頭に物量で以て制圧をする。大通りは要撃級、突撃級が制圧し細かいところは戦車級と闘士級が対応せよ」

 

 横浜基地の構造はスパイである神宮司まりもによって詳細に報告されている。ゆえに溶解液によってゲート付近の防衛能力を失った横浜基地を直実に制圧していく。人類側も銃火器を片手に抵抗していくが闘士級ならともかく要撃級や突撃級、それどころか戦車級ですら人類が携帯出来る武器では殺すには至らず、次々と食い殺されていく。

 

「メインシャフトは確保。反応炉までの道は抵抗なし。……残った敵は司令部に固まっているというわけか」

 

 実際、その周辺だけ異様に戦力が集中していた。戦車級がギリギリ通れる程度の通路でしかないために闘士級の特徴たる速度を生かした接近は難しく、戦車級は倒されればそのまま道をふさぎかねなかった。

 

「仕方ない。闘士級を大量に投入するか直上から溶解液で道を作るしかないな。……しかし、何故ここまで抵抗する? 戦況は既に詰んでいる。なのにいまだに抵抗をし続ける。自害している者もいない。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……っ!」

 

 そこまで考えてアイリスディーナは最悪の想定にたどり着いた。人類はまだBETAを駆逐できる超兵器を有しているのだ。そして、すでに助かる術のない自分たちを囮にしてBETAに一泡吹かせようとしてもおかしくはない。

 

「緊急事態だ! 人類がこの横浜基地にG弾を投下する恐れがある! 戦術機級はすぐに退避! BETAも要塞級やレーザー級を中心に後退せよ!」

 

-……その必要はない。

 

「っ!?」

 

 アイリスディーナが被害を抑えるべく行動しようとした時、脳内に直接あ号標的の言葉が聞こえてきた。

 

-G弾を投下してくる可能性は既に想定済みだ。横浜基地がG弾の投下を要請したことも送信先の人間級から情報を得ていて対処済みだ。現在存在するすべてのG弾発射基地に襲撃を仕掛けている。

 

「……制圧したと?」

 

-残念ながら3か所だけ失敗した。とは言えG弾を1発ずつ発射されただけでその後に制圧した。これで人類はG弾という切り札さえ失ったのだ。

 

「ですが3発は発射されたのは事実ですよね?」

 

-だからこそこちらも迎撃に出た。目には目を歯には歯を、ってね。だから万が一に備えつつそのまま横浜基地の制圧を続けろ。

 

「了解」

 

 すでに手を打っているというのならアイリスディーナがする事はただ一つだ。これまで通りに制圧作業を続ける事だ。

 やがて、はるか上空に輝く3つの光が現れるが、それらに別の3つの光が接近、接触した。瞬間、横浜基地周辺の大地を光が照らしだした。その光は本来横浜を吹き飛ばすものであったが見る者からすればそれらは最悪の結果で終わったことを意味していた。

 

 一時間後、司令部の完全制圧を以て横浜基地は陥落した。逃げられた者は事前に避難した者以外におらず、香月夕呼を始めとする一部の者とA-01部隊、そして207B小隊の面々のみがBETAに捕縛される結果で終わった。

 横浜基地陥落より半日後、BETAは北進を開始。帝都を含む関東圏のほぼ大半を手中に抑め、日本帝国は事実上壊滅した。

 




次話は2022/12/29 23:22投稿予定です。

あ号君の名前に関して

  • 名前なんていらねぇ!
  • 呼びづらいからさっさとつけろや!
  • てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
  • あ号君が本名でしょ?何言ってるの?
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