【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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次で本編は最終話となります。そこから外伝に入る予定です


第六十六話「香月夕呼」

 12月10日。日本帝国という国は事実上消滅した。12月6日に帝都東京、12月7日に仙台。そして今朝札幌が陥落したことでそこに避難していた日本帝国の官僚がほぼ全滅したのだ。政府機能は消滅し、日本帝国の象徴たる将軍も東京を陥落させたときに確保した。

 世界全体で見れば大崩壊が始まり、アメリカはソ連と東ドイツ、中華帝国によってズタズタ。南米では人間級による暴動やクーデターで機能不全に陥っている。欧州ではイギリスに四方八方から上陸して沿岸防衛を行えないようにしている。フランスはほぼ完全制圧し、今はピレネー山脈を盾に抵抗を続けるスペインに止めを刺すべく大量のBETAを繰り出しているところだ。それとストックホルムは今も頑強に抵抗を続けているがこの調子なら後一週間もしないうちに全滅させられるだろう。

 これらが終わればいよいよ総仕上げとしてアフリカを落とす。その前に中東の対処が必要になるだろうがアラビア半島以外はほぼ喪失した彼らだ。アフリカと同じように総仕上げの対象にして問題はない。

 

「さて、こうして会うのは初めてだな。白銀武。そして香月夕呼先生」

「……BETAに先生なんて言われてもうれしくはないわね」

「そうか? そのうち気にならなくなるさ」

 

 俺は長年愛用し続けている中国人の体で香月夕呼や白銀武と相対している。俺たちが今いるのはカシュガルハイヴ。生き残りを輸送するのに5日もかかってしまったよ。ちなみに香月夕呼達以外にもA-01部隊の皆さんに白銀武の愉快な仲間たちもいる。全員が拘束され、口以外動かせない状態にされている。周りには武装したシュタージにアイリスディーナなど白兵戦が出来る者たちが待機している。それらがやられても俺ごとBETAが全員を踏みつぶす手筈になっているから暴れられても問題はない。精々が新しい体を用意しないと行けなくてめんどくさいといったところだな。

 

「君たちはオルタネイティブ4? とか言う計画で俺とコミュニケーションを取ろうとしていたみたいだけどよかったじゃないか。計画を立てなくてもこうして話す事が出来ているぞ? 感想はどうだ?」

「まぁ、予想はしていたわよ。ぶっちゃけ、あなたはあたしたち(人類)にくわしすぎたわ。で? いつから人類の情報を得たのかしら?」

「んー? 最初からだけど?」

 

 香月夕呼、主人公にちなんで夕呼先生と呼ぶか。夕呼先生には普通に話す。下手に誤魔化してもバレそうなくらい頭が良いしどうせ改造するんだから言っても問題はない。というか人類は2002年内には滅びるだろう。

 

「……あたしは何時からと聞いたわけだけど?」

「だから最初からさ。俺がこうして誕生した時には人類の情報を持っていたし何なら()()()()()()()()

「っ! まさかあなたも!?」

 

 そこで黙っていた伊隅……、なんたらが話しかけてきた。まぁ、間違っているが正常な思考ならそうなるであろうという答えではあるな。むしろ何かを察したらしい夕呼先生が異常なだけだ。

 

「……そう。なら聞かせてくれない? どうやったのかは知らないけど()()()()()()()()()()()()()()()

「……ふ」

 

 ああ、やっぱり怖いなぁ。この人がもし軍事方面に知識を持っていれば俺も危なかったかもしれない。そっち方面がてんでだめだったからこそここまで完勝できたんだな。そしてこいつを手に入れる事が出来れば俺たちは更に飛躍できる。それが確信できた。

 

「? 副司令一体どういう……」

「こいつはもとは人間だったという事よ。とは言えBETAという存在を作ったのかもとから存在したBETAになったのかは分からないけどね」

「さすがは夕呼先生。お察しの通り俺はもとは人間だったさ。感想を言うのなら意外とうまくいくもんだなって感じだ。俺としてはもっと苦戦するか駆逐されるもんだと思っていたけどな」

 

 実際、初期のころに人類が一丸となっていれば俺は負けていたかもしれない。ただでさえ初期のころにソ連にハイヴ内への侵入を許してしまっているんだ。あっけなくやられていた可能性が高いだろう。

 

「ッ! そんな! 元は人間だったのにこんな惨状を引き起こしたというのか!?」

「確かにそうだがここまで状況を悪化させたのはお前たちさ。おっと、人間なのにこんな酷いことを! なんていうなよ? 全員が全員俺のような行動をしないわけじゃないんだ。むしろ俺は優しい方だぞ。態々こうして一部の人間は生かしているんだから」

 

 そう、人類はもっと俺に感謝してもいいくらいだ。本来、BETAは炭素より生まれた生物を生命体として認識しない。だから容赦なく殺すが俺は違う。元が人間だからこうして生かすこともあるんだ。

 

「そんな生かされた人間となったお前たちはもっと俺に感謝して自分の幸運を喜ぶべきだ」

「そんな事……!」

「別にどう思おうと勝手だけどな。どうせそうやって反抗できるのも今のうちなんだから」

「あら? あたしたちを洗脳でも出来る装置を持っているという事かしら? それを使って周りの人間を洗脳したと?」

 

 お、やはり夕呼先生は頭がいい。いや、この場合は察しが良いというべきか。

 

「その通り、と言いたいところだがそこの武装したシュタージの面々は違う。俺が人間の遺伝子から作り上げたBETAだよ。人間級、と俺たちは呼んでいる」

「! あなたはそこまで……! それにシュタージって事は完成させたのは東ドイツ陥落した18年前からかしら?」

「……そこまで言い当てられると俺も怖くなってくるよ。そうさ。18年前には俺は技術を完成させて人類に潜ませていたよ。東ドイツはたまたまシュタージの権力者と接触できたからスムーズに潜り込ませられたけどな」

「という事は今の東ドイツはBETAの手先ってわけね。……もしかして海王星作戦の英雄もあなたの?」

「あれは俺が作った人間級の中でも最高傑作でね。18年分の経験はとても役にたっているよ」

 

 海王星作戦の英雄という事もあってアルフレートは何かと一目置かれる存在になっていた。だからソ連の作戦は筒抜けに出来たし情報面で融通してもらえることも多かった。英雄を作り出せた事はあっちで動いていた時の最大の功績と言っていいな。

 

「さて、そろそろ話も終わりにしようか。話は改造を終えた後になんぼでも付き合ってやるからな」

「……それじゃ最後にいいかしら?」

「ん? なんだ?」

「あなたは人類を滅ぼしてどうしたいの? 人類は既に詰んでいるわ。おそらく半年後にはほぼすべての大地がBETAで埋め尽くされているはずよ。そんな世界にしてあなたは何を望むの?」

「……」

 

 何を望むか、か……。それは俺にも分からない。ぶっちゃけ神様に転生させられてからBETAの使命らしきものに従ってここまで来たからな。だけど俺がこれまでやってきたことを言い換えていうのならこう答えるべきだろうな。

 

「簡単さ。俺は開拓をしているだけだ。それが終わればスローライフでも送るさ。幸いにも夕呼先生、あなたという人類での最高の頭脳が手に入ったんだ。これからはいろいろと助けてもらうさ。連れていけ」

 

 俺の言葉を聞きシュタージに連れていかれる夕呼先生たち。白銀武はまりもちゃんの体で心を極限までぶっ壊したしA-01部隊を手に入れた事で純粋な戦力アップとなる。まだこの世界をループさせるにはやりたいことというより終わらせたくはないという気持ちが強い。精々白銀武が死ぬ時までに満足できるようにいっぱい遊ばないとね!

 




次話は2022/12/30 23:38投稿予定です。

あ号君の名前に関して

  • 名前なんていらねぇ!
  • 呼びづらいからさっさとつけろや!
  • てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
  • あ号君が本名でしょ?何言ってるの?
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