「全く、主上さんもめんどくさい仕事を回してくるもんだよ……」
冥府の神ハーディに仕える亜神であるジゼルは新生龍の背に乗ってファルマート大陸東部に向かいながら愚痴を零した。当初こそ日本に通じた門を閉じるために炎龍を用いようと行動しており、後は実行するタイミングを伺っているという最中にハーディより新たに開いた門を至急破壊するようにと命令を受けていた。
その結果として炎龍と新生龍二匹を必死に北東に向かわせる羽目になり、長い旅を余儀なくされていた。何しろ炎龍が住みかとしたシュワルツの森から大陸東部まではかなりの距離があるのだ。一日二日とんだくらいでは全然足りなかった。
「ま、それもそろそろ終わりだけどな」
とはいえ北東に飛んでいけば自然と到着するものだ。ジゼルは草木が一本たりとも見えない、地面が露出した死の大地と化した大陸東部に足を踏み入れる事に成功した。
ジゼルが見える範囲ではこの元凶である化け物の姿は見えず、ただ荒れ果てた大地が続くのみだった。
「んー、もう少し飛んでみないと分かんねぇなぁ」
せめて一匹でもいないものかと炎龍を飛ばしているとついにそれらしい化け物を発見した。それはサソリの如き姿をした化け物で、しっぽの部分が人の顔のようなものになっているのが特徴的な姿をしていた。
「お、まずはあれから行くぜ!」
ジゼルはその化け物、要撃級10匹に狙いを定めると炎龍に指示を出す。完全に飼いならす事は出来なかったものの子である新生龍を通してある程度の要望を出す事には成功しており、その成果と言わんばかりにジゼルの指示通りに要撃級に攻撃を開始した。
炎龍は急降下をしながらブレスを放ち、列の中央を焼いていく。そのまますれ違うように上を飛ぶ炎龍は勢いを殺しながら地面に着地。向かってくる要撃級に近接戦闘を挑んだ。
まず、一番近くにいた個体に右腕を振り下ろし、自身の体重も合わさって要撃級は人間に潰された蟻のように潰される。続く二体目を3体目、四体目もろとも尾で薙ぎ払い一撃で絶命させる。炎が直撃して動かなくなった二体と合わせて炎龍はたった数分で6体もの要撃級を瞬殺して見せた。
この結果をジゼルは満足げに見ながら何度もうなずいた。
「うんうん。やっぱり炎龍に勝てるわけなんてないよなぁ。よし! さっさと門を破壊して残った連中を駆逐してやるぜ!」
ジゼルがさっさと終わらせようと考えている間に要撃級は残り二体まで減っていた。ここまでで炎龍が受けた傷はなく、まさに圧倒的と言える戦闘力だった。
と、勝ち目がないと判断したのか要撃級は一斉に逃げ出した。
「お? 尻尾撒いて逃げ出しやがった! 炎龍! 追え! 絶対に逃がすなよ!」
ジゼルも新生龍に乗り飛び立つ炎龍の後を追う。炎龍も要撃級の背を追うが意外にも素早く動く要撃級を仕留めるのは難しかった。それでも炎龍はまるで狩りをするかのように要撃級をいたぶりながら追い詰めていく。そして要撃級は数少ない平たんではない場所、崖下のような場所に追い詰められた。
「よし! これで終わりだな!」
半円形のような形のそこは入り口を炎龍と新生龍二匹で閉じる事で要撃級を完全に追い詰めた形となった。ジゼルは好戦的な笑みを浮かべると要撃級に止めを刺すべく指示を出そうとしてやめた。
「……せっかくだ。こいつらにやらせてみるか。お前ら! このサソリ擬きを殺せ!」
ジゼルは新生龍に経験を積ませようと思い炎龍ではなく二匹に指示を出す。新生龍は咆哮を上げるとゆっくりと向かっていく。その姿はまさに恐怖を掻き立てるような演出であり、実際に新生龍二匹は加虐的な笑みを浮かべていた。
そして、二匹の新生龍が要撃級に止めを刺すべくとびかかったその瞬間、二匹の頭部をレーザーが通り抜け、それなりの大きさの穴をあけた。当然ながら頭部を大きく損傷した二匹は一瞬で絶命し、崩れ落ちるように落下した。
「なっ!? 一体何が……!?」
ジゼルが驚き、あたりを見回した。そして、それを見つけた緑色の体をしたどこか羽のない鳥にも見える化け物が崖の上から覗いていた。それも一匹ではない。何匹も、確実に10匹以上の数がジゼルたちを見ていた。
「まさか罠か!?」
そしてそんな化け物がこれだけいる理由。そんなのはこの状況が仕組まれていたからに他ならない。ジゼルは狩りをしているつもりが誘導されていた事にようやく気付くがすぐに冷静さを取り戻すと炎龍を置いて逃走を開始する。
炎龍は新生龍によって間接的に操作していたにすぎない。そんな中継機のような役割をしてくれていた新生龍が死んだのである。炎龍が負けるとは思えないが大暴れする可能性は高い。それゆえにジゼルは自分の安全のためにこの場を離れる事を決めた。
「まさか新生龍がやられるなんて……。仕方ねぇがここは出直すしかないよな。まぁ、化け物共は炎龍が倒してくれるだろう、し……」
ジゼルはそう言いながら後ろをみたせいで、最後まで言う事が出来なかった。今まさに絶対の信頼を寄せていた炎龍の体を無数のレーザーが貫く姿を見てしまったからだ。炎龍は小さな悲鳴を上げるとそのままあおむけに後ろに倒れた。この世界において何よりも硬い鱗を柔らかい肉を貫くようになんの障害も感じさせずに貫かれ、自慢のブレスは吐くことも出来ずに絶命した。
あまりにもあっけなく、そして圧倒的すぎる化け物にジゼルは改めて現状のまずさを理解した。何しろ炎龍すら瞬殺出来る化け物が存在する場所にたった一人でいるのだから。いくら不死であり、死なないとはいえ痛みは感じるし何より炎龍よりも確実に弱いのだ。化け物に対抗出来るわけがなかった。
「急いで逃げないと……!!!!!」
そして、そんなジゼルを逃すまいと来た方向に無数の化け物が待ち構えていた。その中には炎龍を倒したレーザー級も複数混じっており、ジゼルを絶対に逃がさないという意思が感じ取れた。
「は、はは……」
ジゼルは改めて、自分たちが狩る側ではなく、狩られる側だったことを認識するのだった。
「ヨウジィ、貴方は大陸東部で起きていることを知っているかしら?」
「大陸東部? いや、知らないけど……」
ひょんなことから“二重橋の英雄”と呼ばれ、現在では最も特地の住民と交流しているといっても過言ではない伊丹耀司は帝都での活動前にロゥリィ・マーキュリーの質問に答えた。実際、彼を始めとして自衛隊は大陸東部の現在、BETAによって
「それがどうかしたのか?」
「主神が大層怒り狂っていてぇ。私に何とか出来ないかって聞いてきているのよ」
「……何かあるのか?」
耀司とてさすがに帝国東部、この場合はファルマート大陸東部に別の門が出現しているのは知っており、そこから現れた者たちが何かしているのかと真剣な表情となった。
「大分不味い状態ではあるわぁ。何しろ今の大陸東部は
「なんだそりゃ……。その門から来た奴らは土に至るまで根こそぎ奪っているって事か?」
「そういう事になるわね。今は門を開く技術を与えたハーディが責められていてジゼル……、ハーディの亜神を向かわせたそうよ」
「そうなのか……」
この世界の神々が慌てる程の脅威が東に存在する。それは日本にとっても無視できない情報だ。耀司はロゥリィに礼を言うとすぐに報告書の作成を始める。普段なまけ癖がすごい耀司と言えどそんな存在が近くにいる以上はすぐにでも上に報告すべきだと判断していた。
「(生命体を皆殺しにして大地を均す……。なんかどっかで聞いた事があるような……)」
そしてそんな耀司は東部で起きている状況を何処かで聞いた事があるなと思いつつ報告書の作成に意識を集中させるのだった。
短編でいくはずなのに全然進まない……。仕方ないので巻きでいきます(いつもの)
次話は2023/01/06 23:13投稿予定です。
あ号君の名前に関して
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名前なんていらねぇ!
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呼びづらいからさっさとつけろや!
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てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
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あ号君が本名でしょ?何言ってるの?