【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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推しの初イベ参加やその後の飲みでちょっと遅くなりました。


第九話「会談」

「よし、アルヌスには問題なく来れたな」

 

 ファルマート大陸制圧のためにアルフレートが準備を始めている横で俺は俺の役目を全うしている。ちなみにアルフレート達はハイヴ建設やBETAをこの世界に移動させてきている。一応は東部侵攻時の10倍を目安にしている。一気に侵攻する以上数は必要だからな。

 そして俺は日本に通ずるアルヌスの門付近にきている。ここはもともと何もない丘だったらしいが自衛隊が駐屯してからはあっという間に町が誕生したらしい。まぁ、門周辺はこの世界にはない貴重な品が大量に送られてくる場所だからな。

 

「へぇ、結構賑やかじゃないか」

「そうですね。街並みも綺麗ですし治安も悪くはないようです」

 

 俺の呟きに答えたのはアイリスディーナだ。今回は俺とアイリスディーナの他にカティアの三人で来ている。今回の目的は戦闘ではないために武装は特にしていないが念のためにと頭から全身を覆えるフードを羽織っている。まぁ、たとえ捕まったり殺されたとしても予備の肉体に意識が移るために問題はない。強いて言うのであれば長年愛用してきたこの肉体を失う事になるがそれはそれで買い替え時だったと考えればいい。

 

「さて、これが自衛隊の基地か。中々堅牢な要塞じゃないか」

 

 軽く見た限りでも自衛隊基地は星型になっていてかなり堅牢な様子だった。ま、俺らには関係ないけど帝国相手じゃ防衛は楽だろうな。これを破るには空から制圧するか防衛線力を遥かに超える物量で以て一点突破を図るしかないがアウトレンジから一方的に攻撃できる自衛隊が相手ではそれらも難しいだろう。

 ま、そんな自衛隊基地の評価は置いておいて。早速中に入るとしますか。『撤退なんてさせないぞ☆』計画のスタートだ。

 

「ん? 止まりなさい。ここから先は関係者以外立ち入り禁止です」

 

 基地に通ずる道を通れば途中で自衛隊員に止められる。当然だ。こいつの言う通りここは関係者以外立ち入り禁止の自衛隊基地。普通なら俺みたいな部外者は入る事さえ出来ない。むしろ自衛隊は甘い方だろう。ここまで近づかれているのに引き返すように警告するだけなのだから。他の国の軍隊だったら警告も込めて発砲しているかもしれないな。こいつは銃すら向けてきていないからな。

 

「ここのトップに話したい事がある」

「……アポイントは取られていますか? 申し訳ありませんが事前に連絡がない者を通す事は……」

「ファルマート大陸東部を占領する化け物のトップ、と言えば通してくれるかな?」

「……そういう冷やかしは別の者に……」

 

 めんどくさいな。仕方ないと言えばそうなのかもしれないがやはりきちんと話が出来る手土産が必要だったか? 俺は今手ぶらだし証明できる物はない。駄目だな。事前連絡や相手に証明させるなんてBETAに転生してからやってこなかったから忘れてしまっているな。次回があるかは分からないが失敗しないように頭の隅で覚えておこう。

 

「冷やかしじゃないんだがなぁ。アイリスディーナ」

「はっ!」

「何を……ぐぁっ!?」

 

 アイリスディーナに指示を出し自衛隊員をうつ伏せに押し倒す。アイリスディーナのような古参は脳だけじゃなく肉体面でも改造を施しているから屈強な兵士だろうと遅れをとる事はない。

 

「別に無理やり押し入ってもいいんだけど俺は話し合いに来たんだ。ここのトップに、取り次いでもらえるな?」

「ぐっ! ああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 俺が脅すように言えばアイリスディーナが自衛隊員を締め上げていく。拒否は許さない。そういう圧力を込めれば自衛隊員は首を縦に振って肯定の意思を示す。声を出す力もないんだろうなぁ。悲鳴ですら殆ど出せなくなっているからな。

 

「よろしい。ではさっさと話し合いに来ていると言ってこい。あまり遅いと俺がどういう態度に出るかは分からないぜ?」

 

 そう言って俺は自衛隊員を解放させる。そいつは呼吸を整えると基地の中に走り去っていった。ふむ、彼がきちんと伝えてくれるかは分からないがとりあえず今は自衛隊の出方次第だな。

 

「アイリスディーナ。どうだ? 肉体に損傷はあるか?」

「いえ、損傷らしい損傷はありません。強いて言えば肉体の動きに視力が少しついてこれていないですね。最大速度の際に視界がかなりぶれていました」

「ありゃりゃ。そっちの方は要改造ってわけか」

 

 今回のためにアップデートした肉体の改善点などを話し合っていると先ほどとは別人物の、険しい表情をした自衛隊員がやってきた。それも数名。先頭に立つ男以外は完全武装状態に見える。

 流石に動きが早いな。だが、こちらを拘束する気はないようで先頭の男が話し始める。

 

「お待たせしました。狭間陸将が話になるそうです。ご案内しましょう」

「へぇ、随分と早いな。実は知っていたとか?」

「まさか。あの化け物共に人間のトップがいたなんて知りませんでしたよ。尤も、貴方が人間とは限らないわけですが」

 

 眼鏡の自衛官は皮肉を込めて言ってくるがまぁ初見じゃそう思うし納得する。なので特に怒りを覚える事はないし眼鏡の案内に素直に従う。プレハブ住宅らしき場所の一室に入ると壮年の男性が座っている。おそらくこれが狭間陸将という人物、つまりこの自衛隊基地

のトップという事だろう。

 

「初めまして。私は日本国自衛隊狭間陸将と申します」

「初めまして。俺の事は……、名前はないんであ号標的と呼んでくれ。人間たちが付けた、俺の識別名さ」

 

 さぁ、歴史に残る会談を始めようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこんな事になるとはな……」

「ええ、私としても予想外でした」

 

 日本国自衛隊は嘉納大臣の密命により門の破壊及び特地からの完全撤退を視野に入れた準備を進めていた。

 その一方で対BETA対策本部を設立。伊丹耀司を中心に様々な分野の専門家が集められていた。更にはアドバイザーとしてマブラヴの開発スタッフをひそかに呼び寄せてBETAの情報をより精密に解析していた。

 しかし、その矢先になんとBETAのトップを名乗る人物が乗り込んできたのだ。その報告に当然ながら狭間陸将を始めとする幹部陣は驚愕したが何よりもトップが人間らしいことが問題だった。

 

「これでBETAは我々の知る存在とは違う可能性が浮上したな」

「その傾向はありましたがさすがにここまで違うとは……」

 

 作品を知っているだけに思い込みがあったのも事実だがそれでも今回は予想外過ぎた。とは言え相手は既にこっちまで来ているのだ。失礼な態度を取って完全に敵対関係になるよりは良い。幸いにも相手は対話という手段を取っている事から穏便に済ませられる可能性があるのだから。

 そして、柳田の案内の下あ号標的と狭間陸将は対面した。この部屋には自衛隊側は狭間陸将の他に柳田と護衛の自衛隊員、あ号標的側はいまだフードを深くかぶったアイリスディーナとカティアが同席した。

 

「さて、態々ご足労いただいたようですが要件はなんでしょうか?」

「へぇ。いきなり本題にはいるのね。手っ取り早くて嫌いじゃないよ」

 

 狭間陸将としてはお世辞が通じるとは思えない相手であったためにさっさと要件を聞き出そうとしただけなのだがあ号標的は好感をもったようで表面上では笑みを浮かべた。

 

「いやなに、俺たちの事を知ったら門を破壊して逃げ出そうとするんじゃないかと思ってね。撤退しないでほしいというお願いをしに来たのさ」

「お願い、ですか。ですが我々としても貴殿らが大陸東部を占領している事実からいつまでも門を繋げておく方が危険だと判断しているだけです」

「では君たち及び友好勢力には手を出さない。そう約束してもいいぞ」

「残念ですが貴殿らはそれらがあったとしても信用できない程の脅威なのですよ」

「……」

 

 あ号標的は狭間陸将の言葉に目をすっとほそめる。その眼には狭間陸将の真意を探ろうとする感情が浮かんでいた。

 

「……随分と我々に詳しいようですね。()()()()()()()()()()()()()?」

「何のことでしょうか?」

「いいよ。とぼけなくて。なるほど。()()()()()()()。どうりで動きが早いわけだ……」

 

 あ号標的は天を仰ぐとため息をつく。そして再び狭間陸将に向き直ると信じられない提案をしてきた。

 

「では日本の首相に会わせてくれ」

「……何故ですかな?」

「君たちでは俺は説得できそうにないと思ったからだよ」

「であれば会わせる事は出来ませんな」

「……なるほど。撤退は自衛隊のみの決断ってわけですか」

 

 日本政府が強固な意志で門から撤退を考えているのであれば会わせたとしても問題ない。いくら説得しようとも意思が変わる可能性は低いからだ。だが、会わせようとしないという事は日本政府は一枚岩ではない、もしくはそもそも撤退を考えていないという事になる。あ号標的はにやりと笑みを浮かべると話を続ける。

 

「日本としては特地から撤退したくはない程魅力的な場所という事ですね。もしくは外の大きなお友達が許してくれないのかな?」

「どうやらそちらも我々に詳しいようで」

「まぁね。それじゃカードを一枚切ろうかな。実は現在門の技術を解析していてね。優秀な先生のおかげで門の再現は出来ているんだ。つまり、その気になれば君たちの世界に直接門を繋げる事が出来るわけだ」

「……それをしないから会わせろというわけですか?」

「そうだね。門を再現したとはいえ繋げるにはいろいろと手間がかかるんだ。君たちの説得の為だけにつなげるのは勿体ないんだよ」

「……」

 

 狭間陸将としてもBETAがこれ以上侵攻せず、すみわけが出来るのであれば交渉する事は可能だと考えている。そして、さらに言うのなら本当に門の再現が出来ている場合、彼らが日本に門を繋いでしまっては相手側有利の交渉となる可能性が高い。そうなればどのような要求を突き付けられるのか分かったものではない。ならば今ここで相手の要求を吞むことでこちら側が少しでも有利になれる状態に持っていくべきだろう。

 

「……分かりました。ですが我々にとって不利益と判断した場合は」

「仕方ないね。その時は好きにすればいいよ」

 

 こうして、急遽あ号標的は森田首相と会う事になった。急遽決まったこの決定は自衛隊や嘉納大臣が中心となる事で森田首相本人の意思に関係なくすぐに実現する事になるのだった。

 




次話は執筆中です。月曜日中に投稿できない可能性があります。

あ号君の名前に関して

  • 名前なんていらねぇ!
  • 呼びづらいからさっさとつけろや!
  • てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
  • あ号君が本名でしょ?何言ってるの?
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