「へぇ、お前も中国から逃げてきたのか」
「ええ、両親は既に亡くなっていますし親戚もBETAの侵攻で死んでしまい天涯孤独となったので逃げるなら今だと思いまして」
「それは災難だったな。なぁに! 心配すんな! お前ほどの能力があればすぐにここでも受け入れられるさ!」
そう言って親切に対応してくれる相手に俺は内心で笑みを浮かべる。人間級と名付けた新種のBETAが現在いるのはあ号標的になる前の俺の故郷である日本だ。理由としてはこの世界の舞台となるだろう日本で情報収集を行う為という事と日本人ということもあって日本語が中国語以上に達者だからコミュニケーションを取りやすいってのがある。
この人形の設定としては
「本来は難民は肉体労働とか簡単な仕事に就いてもらうんだけど日本語が得意なら通訳として働いてもらおうかな」
「任せてください! 俺いろんな言語を学ぶのが好きなんで!」
「それは頼もしいな! なら他の言語を覚えた時には言ってくれよ! 俺が推薦してやるからさ」
人形と会話をしているのは難民対応に当たっている公務員の杉原という男性だ。年は人形の設定よりも高い32歳。お人好しという言葉がぴったりな懐に入りやすいカモだ。俺は日本語が話せるということで杉原に通訳の仕事をもらい、生活する事になった。そして、他言語を覚えていけば本格的に通訳士として雇われることになるだろう。そうなれば情報収集がしやすくなる。
……それにしてもやはりここは地球だが俺の住んでいた地球とは違うんだな。西暦1975年だが大日本帝国が存続しているし月面を事実上領土としていた程宇宙進出が行われている。それに伴ってかいろんな面で技術が同時代の前世の地球より進んでいるように感じる。
だけど大日本帝国の影響が残っているからなのかゲーム機のような娯楽は存在しないようだ。更に今はBETAが地球に進出してきているということもあって娯楽自体が自粛され気味となっている。文化は明らかに前世の方が進んでいるといっていいな。
さて、これ以上の情報を得るためにも最初はまじめに働くとしますか。通訳という仕事上中国人とも接する機会が増える。ぼろを出さないように気を付けないとな。
そして、俺はこの時はっきり言って油断していた。日本とアメリカをつぶすことを優先していたという事、人間の生成に夢中になっていた事、いろいろと言い訳があったが正直に言えば
1975年10月。俺が人形が受けた通訳の仕事をこなしている間にソビエト連邦単独のハイヴ攻略が行われた。血旗作戦と名付けられたこれはいつも通りであれば防衛線力だけで十分だったのだ。計算外だったのはソビエト連邦初の
戦術機
後に知る事だがそれは人類がBETAに対抗するために作り上げた対BETA戦闘用の兵器で、正式名称は『戦術歩兵戦闘機』。月面での戦争の際に投入されたアメリカ製のハーディマンという機体の後継機として作成された戦術機はレーザー級の誕生により航空戦力が無力化されたことに対する穴埋めとして作られたが結果的に高度な戦闘を可能としたこれらはアメリカで実戦配備されるに至っていた。
そして、ソビエト連邦も今年に入ってこの戦術機のライセンス及びレンドリースを受けていたらしく自国用に改造を施したMIG-21バラライカを完成させていた。
結果、俺が作った防衛線はいともたやすく突破されただけではなくレーザー級を全滅させられ、航空戦力も投入されて俺の本体があるカシュガルハイヴは爆撃を受ける事となった。
そして、悔しいが俺はこの爆撃まで防衛線が突破されている事を把握できていなかった。俺にとっては突然攻撃を受けたに等しく、混乱のあまり具体的な対処すらできなかった。ようやく落ち着けて状況把握をする頃にはバラライカを先頭としてソ連軍がハイヴ内に侵入を開始していた。
-まずいまずいまずい! 急いで防衛しないと……!
俺は急遽人間の生成ラインすら放棄してBETAの生成に全力を注ぐ。幸いな事にハイヴはメインシャフトにさえ到達されなければ複雑な迷路と化しているドリフトとホールで形成されている。それらをうまく利用すれば防衛も可能だ。というかそれをしないと俺は死ぬ。こんなところで死にたくはない以上なんとしても防衛を成功させないと……!
「同志諸君! ここまで順調に進んだがこれより先は未知の領域だ! 心してかかるぞ!」
『『『『『Уpaaaaaaaa!』』』』』
MIG-21バラライカ10機の指揮官となったイワンは初のハイヴ侵入を果たしたがその緊張や高揚感で心を満たすことなく最大限の警戒を以て突入する。地上にいたBETAは友軍の航空戦力に任せてハイヴの電撃的攻略を果たすべく進んでいく。
「これは……。どうやらBETAというのはアリのような巣を作るようだな」
『っ! イワン隊長! それなりの広さを持った広場に出ます! BETAの姿はありません!』
「よろしい。油断せずに進むぞ」
戦術機は戦車すら凌駕する機動性能を持つためにイワンをはじめとする10機の戦術機は仲間を置いて先に進むこととなっていた。それがイワンの警戒心を高める要因にもなっており、部下もそれを理解して決して油断や慢心することなく自分の使命を果たしていく。
ソビエト連邦による単独でのハイヴ攻略。それだけを聞けば中華人民共和国のように国連の介入を嫌ったととらえられるが実際には違う。そもそも国連軍をはじめとする各国の軍勢や主力は中国の防衛線に参加している。もし、ハイヴ攻略に参加するならばそこから軍勢を引き抜く必要が出てくるがそうなればBETAに動きを察知される可能性もあった。
そのため、攻略で得た情報の共有。ハイヴ攻略成功時の共同での情報収集に調査をすることを条件に国連軍らが囮もかねてBETAを引き付けている間にソ連がハイヴ攻略を行う事になったのだ。そして、この作戦はハイヴ侵入までうまくいくこととなっていた。
「(党は紅旗作戦での失敗を覆す戦果を求めている。とはいえ今回のこれでハイヴ攻略が出来るとは思えない。BETAがこのハイヴ内にいないとは限らないし何よりここの情報がない。どのようになっているのか、どうすればハイヴを攻略したという事になるのかを知るための調査として行動しなければ……)」
『隊長! 前方からBETA! 突撃級です!』
「くっ! やはりいるか! 総員先ほどの広場まで撤退する!」
『『『『『了解!』』』』』
イワンは迎撃をあきらめるとある程度の広さがあった広場への後退を決断する。そこでなら穴から飛び出してきた突撃級をしとめる事が出来る。そう判断しての行動だった。
実際、そのように行動すれば10体ほどの突撃級を狩る事に成功した。迎撃に成功したことで部隊内で安堵する空気が起こるがまだ攻略が始まったばかりであり、イワンを中心にさらに奥へと進んでいく。
現状を把握したあ号標的が確実に全滅させるために奥で待ち構えているとも知らずに。
年表を確認するとバラライカが配備されたのは1975年らしいのでちょっと無理やりですがソビエト連邦にはハイヴ攻略をしてもらうことにしました。そして逆侵攻を受けてシュヴァルツェスマーケンにつなげるんだ
まりもちゃんは
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マミる(原作準拠)
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マミらない(トラウマ回避)
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武の精神をぶっ壊せ(更なるグロ描写)