【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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書いていると体調不良の事を忘れられますな。書き終えた後にドッと来るけど
そんなわけで書けたので投稿します


第十一話「終幕」

「ふざけるな! こんなことがあってたまるか!」

 

 第一皇子ゾルザルは自分の宮殿内で荒れていた。本来であれば彼の傍でおびえている使用人たちがいるはずだが今日は誰一人としておらず、彼の怒鳴り声がいつも以上に響き渡っていた。

 BETAが侵攻を開始して一週間。この一週間の間に帝国はファルマート大陸の東部から中央部にかけてほぼすべての地域を失っていた。犠牲者は今も右肩上がりで上昇しており、兵を出しても報告に戻る事さえ難しい程の速度で以て進んできているために情報が中々入って来づらい状況にあった。

 そのために、帝都でも西へ逃れようとする人でごった返しており、貴族だろうと平民だろうと関係なく持てるだけの財産をもって西へ西へと逃げ出していた。

 

「我が帝国は無敗の大国! すべての世界を統べる選ばれた国家なのだぞ!? それが化け物どもに蹂躙されるだと!? そんなわけがあるはずがないだろうがっ!!!」

 

そう怒鳴り、ゾルザルは手に持ったグラスを地面にたたきつける。甲高い音を立てて割れたグラスだが使用人がいないこの宮殿に片付けようとする者は皆無だった。一人を除いて。

 

「殿下。あまり怒りすぎては体に害ですよ」

「テューレ……」

 

 唯一自分の傍に残った元奴隷のテューレの姿を見てゾルザルは一度冷静さを取り戻した。テューレは慈愛すら感じさせる表情と姿でゾルザルに話しかける。

 

「殿下。今こそ殿下の力が必要な時でございましょう。皇帝は化け物と戦う事をせずに民を逃がし、己の権威を少しでも維持しようと躍起になっており、元老院は我先に逃げ出しているために機能しておりません。今こそ殿下のお力で民をまとめ上げ、化け物に一致団結して立ち向かうべきございます」

「それは理解している! ……それで? 今言うという事は準備は整ったという事だな?」

「はい。今も帝都に残っている兵の8割が殿下に恭順し、貴族も賛同する者を集めました。後は殿下が号令を降すだけです」

「……いいだろう。これ以上帝国を汚さぬためにも我らで生まれ変わらせるのだ! 行くぞテューレ!」

 

 ゾルザルは機嫌よさげに宮殿を出ていく。そんなゾルザルを後ろから冷ややかな目で見下すテューレの近くの影が揺らめく。

 

「テューレ様。これで帝国は終わりですな」

「ええ。ゾルザルは帝国を破滅から救う道だと信じているみたいだけど違うわ。貴方がこれから進むのは破滅への道。それも一度進めば後戻りはできない片道航路よ」

 

 テューレはそう言って嗤う。この世界で最強と言われていた炎龍を降した事は密偵のボウロを通じて判明している。炎龍さえ倒す異世界の化け物相手に帝国が抗うことなど不可能だ。しかも相手は群れ。炎龍一匹よりも被害は大きいだろう。

 

「ではテューレ様。我々はこれで失礼します。クーデターが失敗しないように手は打っておりますのでどうぞ心配なさらずに復讐をお果たし下さいませ」

「そう。分かったわ」

 

 ボウロは役目を終えて西へと逃れるためにこれが最後の仕事となった。ボウロが率いるハリョと呼ばれる混血種の過激派たちはいずれ世界を統べる存在になると信じているが帝国がある限りそれは難しい。だが、その帝国は今まさに風前の灯火と化している。化け物とて門を通じて存在するだけの者たちでありいつまでも門が繋がっていれるわけではないためにいずれは門は閉じ、化け物も増える事はなくなる。そうなれば自分たちが化け物を駆逐していき世界の頂点に君臨するという野望を掲げていた。それがたとえ不可能な話であってもハリョ達はそう信じてここまでやってきていた。

 

「……ふぅ」

 

 ボウロが消え、一人になったテューレは歩き出す。今帝都は東側にはほとんど人は残っておらず、西側に人口が集中している。それも数日後にはなくなり、帝都はほぼ空の状態となるだろう。しかし、ゾルザルのクーデターが成功すれば今いる帝国の臣民たちは徴兵されて化け物との無謀な戦いに投入されるだろう。そして、それはゾルザルが殺されるまでか、送り出せる臣民がいなくなるまで続くだろう。

 まさに帝国は全ての力を出し切って消え去るのだ。テューレから全てを奪っていたゾルザルたち帝国にはお似合いの末路と言えるだろう。

 

「こうしてみれば日本と講和しようがしまいがどうでもよかったわね。さぁ、早く来なさい。貴方たちが食べやすいように一か所にまとめておいてあげたんだから一人も逃さないでよね」

 

 そう言ってテューレは嗤う。帝国の、ゾルザルの末路を想像して嗤った。

 

 

 

 

 

 

「では、これで我々はビジネスパートナーとなったというわけですね」

「ええ。お互いに妥協点を決める事が出来てよかったです」

 

 そう言って俺は差し出された手、アメリカ合衆国大統領ディレルの手を握った。所謂握手というやつだ。

 俺が今いるのはホワイトハウス。アメリカ合衆国の政治的中心地だ。具体的に言えばホワイトハウスで最も有名な大統領の執務室にいる。本来は応接間らしいが大統領がよくここにいるせいで執務室と思われているらしい場所だ。

 俺の周りにはたくさんの人間がいるが俺側のやつはアイリスディーナとカティア以外で残りは全て合衆国の人間たちだ。つまり、最悪の場合は周りのすべてが敵という事になる。結果的にそんなことは起こらなかったために周囲の人間は表面上は笑みを浮かべて合意に至ったことを喜んでいる。

 日本政府との会談自体はスムーズに進んだ。やはりというべきか門の閉鎖に消極的だった為に日本と友好関係にある場所を攻撃しないという条件を出すことで閉鎖を出来ないようにして、前々から言われていたアメリカの招待に応じた形になった。

 アメリカとしては特地もそうだが俺たちが持つ技術も欲しいようで戦術機やその武装、衛士が装着しているパイロットスーツの現物もしくはその技術を求めてきた。流石はアメリカというべきなのか。よく情報を仕入れている。

 俺としてはどれを渡したとしても問題はない。何しろこれらがいくらあったところでBETAにとっては脅威になりえないという事は立証済みだからだ。俺が気にするのは門の技術を得るまでに門が閉じてしまう事。せっかく繋がったのに何もせずに切るのは勿体ない。だからファルマート大陸を制圧後、それも門を自由に使えるようになったら一斉に侵攻する。アメリカ、ロシア、中国、日本。他にも大国と呼べる国々を強襲して団結した反撃を難しくさせる。可能ならその前に人間級を送り込んで不和を与えたい。そうすれば俺がやってきたことの焼き回しとなり二つ目の地球を征服できる。

 

「パイロットスーツは先に資料を渡しましょう。現物についてはまた今度に……」

「我々は門を閉じさせず、日本国に好き勝手させないようにすればいいわけですな」

 

 改めて確認するが端から見れば俺のメリットがないように感じるだろう。だが、BETAを知っていれば話は別だ。ディレル大統領は俺という個体が指揮をしているから安心と考えたのかそれとも吸い取れるだけ吸い取って門を閉じる気なのかは知らないがどちらにしろこうして会談に応じた時点でお前らの命運は決まってしまった。

 

「これからも長い付き合いが出来るといいですな」

「そうですな。お互いの繁栄を願いましょう」

 

 後は中国とロシア、EUあたりとも取引が出来れば完璧だな。技術を餌に関係を継続させる。その間に俺は目的をさっさと達成させる。

 きっとそろそろあちらから交渉したいと言ってくるはずだ。でないと本当にヤバいと理解しているだろうからな。ほら、早くしないとファルマート大陸はフルフラット大陸に改名したくなるほど平坦な大陸になってしまうぞ?

 




次話は2023/01/12 23:43投稿予定です

あ号君の名前に関して

  • 名前なんていらねぇ!
  • 呼びづらいからさっさとつけろや!
  • てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
  • あ号君が本名でしょ?何言ってるの?
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