それらを一言で表すのはまさに“災害”だったと呼ぶに相応しいだろう。特地を通じて繋がったそれら、BETAは大陸東部を完全に死の大地として中央部から西部にかけて人類を駆逐した後突如として門の向こう側に撤退し、門を閉じて姿を消した。
BETAの一匹でさえ確認できなくなったファルマート大陸に残されたのは皇帝と第一皇子を失い、国家として滅亡したも同然の帝国と大量の難民だった。難民は大陸西部に逃れた帝国貴族が作り上げている勢力圏に合流したり日本保護下のアルヌスや友好関係にある事でBETAの侵攻を免れたイタリカに向かう事となった。
一方で日本との講和交渉に精力的に動いていた帝国皇女ピニャ・コ・ラーダは日本の帝都からの撤退時に彼女の騎士団と共にアルヌスに避難したことで難を逃れ、合流した貴族の推薦により帝国の女帝に君臨。帝国の復興に尽力を注ぐこととなった。
「でもBETAはなんで急に門を閉じたのやら……」
耀司は日常を取り戻しつつあるアルヌスにてそうつぶやいた。日本国内では弱腰の森田内閣を倒そうと嘉納大臣を始めとする一部の議員が動き出しており、近々実行に移される予定となっていた。
アメリカでは手に入れた技術を用いて戦術機やパイロットスーツの開発に着手しており来年までには試作型が開発出来る予定となっていた。一方でロシアや中国などこれから得る予定だった国々ではアメリカに情報開示の圧力をかけておりそれなりの緊張が漂いつつあった。そのために日本の動きに構っている暇はなく、そっちに視線が行ったことで特地の方は余計な干渉もなくなりつつあった。
「でもまさか美女二人の処遇でここまでもめるなんて……」
事実上置いていかれたと言っても過言ではないアイリスディーナとカティアの処遇を巡り世界中で議論が巻き起こっていた。とは言え彼女たちを処分するべきだという意見はほとんどなくもっぱらどこの国が保護するかという話になっている。何しろ小説の世界の人間である彼女たちは美しい容姿を持っている。能力も高く今最も注目されている女性だ。そんな彼女たちを保護した国は注目が集まるだろうし優遇してみれば国際的な信用も得られやすい。
そう考えた国々が我先にと保護しようとしているのだ。中には金持ちが愛人枠でほしいと動き出している者もいる程だ。今のところは一応故国と言えるドイツが一歩リードしており、次点でアメリカとロシア、何とか追随しているのが中国といった具合となっている。
まさに傾国の美女と呼べる状況であり、耀司としてはそこまでやるかよと呆れの感情を持っていた。とは言え実際美人であり、軍人としての能力も高い。何よりマブラヴの世界の人間だったこともあってそういったこの世界にはない技術を知っている可能性が高かった。
「特地も特地で荒れてきているし……」
ファルマート大陸は東部を中心にBETAの侵攻で荒らされた。これらの復興はすぐにはなされないだろうし帝国という強大な国家の崩壊で戦国時代に突入しかけており、特に西部では様々な貴族が独自の国家を作り上げて小競り合いを繰り広げていた。それらは一つ一つが弱小であり、一番力をつけている第二皇子ディアボの勢力でさえピニャの下で復興しつつある帝国の足元にも及んでいない状況だった。とは言えそれらを吸収していけるだけの器も今の帝国にはないために放置している状況だった。
そして帝国の束縛がなくなったことで従属していた国々では独立を宣言したり、好き勝手に動き出す国も現れており日本が恐れていた特地世界の秩序の崩壊が起ころうとしていた。
しかし、一番の問題は神々に関する事だろう。冥界の神だったハーディはBETAとの会談後に行方不明となり、亜神のジゼルともどもBETAに連れ去られた可能性が高かった。実体を持たない神をどうやって連れ去ったのかは全くの謎であるが実際問題として行方不明になっているのだからかなりの混乱が起こっていた。更にはBETAによる蹂躙を止められなかったことで神々への信仰が薄れつつあり、ただでさえ人口が激減している状況の今は致命的と言えた。幸いなのは戦いには直接的に関係ない神々の信仰は失われなかったことであるがハーディやエムロイなどの信仰は激減していた。
神関連で続けるのならBETAに捕まっていた亜神たちは全員が精神を壊されており、僅か数週間にも満たない期間だったにも関わらず自我をほぼ消失していたのだ。回復は絶望的であり手足を失った形に等しい神々は頭を抱える事態になっていた。
「はぁ、BETAへの対策が必要なくなったのは良いけど荒すだけ荒らしていったからなぁ……」
耀司は趣味のオタ活に勤しむ時間もないやとため息をつきながら事務仕事をこなしていると巨大な爆発とともに振動が襲い掛かってきた。
「な、なんだ!?」
いきなりの事に倒れこんだ耀司はすぐに立ち上がると状況の確認のために外に出る。そして、それを目にしてしまった。
「門が……!」
自衛隊基地の中心地、日本と特地を繋ぐ門があった場所から大きな黒煙が噴き出しているのだ。最悪の事を予想しつつ門の付近まで向かえば異世界を繋いでいた門は跡形もなく消え去り焼けた大地だけが広がっていた。
「嘘だろ……!?」
耀司はあまりの出来事にそれ以上の言葉を言う事は出来ず、ただ茫然と門の跡地を眺める事しか出来なかった。
この日、自衛隊の特地派遣部隊は門の消失により日本に撤退する事が出来なくなった。彼らは大きな傷を抱え、今にも爆発しそうな特地に根付くことを強いられるのだった。
しかし、それは何も知らない者たちからすれば悪夢と言えるだろう。実際、特地に残された者たちはそうかんがえた。だが、その一方で地球で発生した出来事を知ればそう思う事はなくなるだろう。
「さぁ! 蹂躙せよ!」
銀座の門の爆発と同時に日本、アメリカ、中国、ロシアなどの大国と呼ばれる国の首都に門が出現。そこから現れた大量のBETAが侵攻を開始したのだ。銀座事件の時と同じように突然として始まったそれらに対して迅速に対応できた国はなかった。
「東京、ワシントン、北京、モスクワ……。やはり敵の首都と言っても奇襲には弱いな。この調子でこの地球も制圧するんだ! さぁ! BETA共! 門の実験も兼ねたこの侵攻を見事成功させるのだ!」
各国の首都に作られた門はBETAを吐き出すだけ吐き出すと消失した。しかし、それで終わりではなく次は大阪、重慶、ヴォルゴグラード、ロサンゼルスなどに再び門を開き奇襲を仕掛けた。ここに至って各国はBETAが門の技術を得たことを理解するがその時にはすでに手遅れだった。BETAは数十万の規模にまで膨れ上がり日本はほぼ蹂躙されアメリカは東西からの侵攻を受ける事となった。
ここに至り世界各国は過去のしがらみを捨てて一致団結しようと動き出し、BETAに有効な兵器である戦術機やパイロットスーツの開発や研究が進められることとなったが自分達より技術力が上の地球を滅ぼしているBETAに有効な武器はなく、戦術機が実戦配備される頃には大国と言われていた国は軒並み滅亡かその寸前の状態であった。
結局、戦術機が戦闘に参加することなく地球はBETAの手に落ちた。速度を優先したためにいまだ抵抗や逃亡をする人間が一定数存在しているがBETAにあらがう力は残されておらず、駆逐されるのも時間の問題となった。
「門の技術は素晴らしい……! そして異世界よりも地球を優先した甲斐があったというものだ……!」
あ号標的は60憶以上の人間のG元素と様々な銃火器。更には惑星一つを手に入れる結果となった。そして、門の技術を手に入れたあ号標的は次なる世界への侵攻の為に新たな門を開くのだった。
あ号君の名前に関して
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名前なんていらねぇ!
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呼びづらいからさっさとつけろや!
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てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
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あ号君が本名でしょ?何言ってるの?