【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第三話「フィルアデス大陸」

中央歴1639年4月上旬 パーパルディア皇国

 2か月前に大規模な遠征軍を失ったパーパルディア皇国だが流石に二度目の遠征軍を送り込むことはせずに情報収集に徹する事を選択した。ベルトラン陸将やシウス提督など主要な遠征軍の司令官が上陸すら出来ずに死んだ事でロデニウス大陸の化け物の恐ろしさが発覚した事で無策に送り込むのは危険と判断したのだ。

 

「とはいえ情報収集も容易ではない」

 

 パーパルディア皇国国家戦略局・文明圏外国担当部南方担当課長のイノスは難しすぎる難題を前にどうすればいいのか分からずに頭を抱えた。ロデニウス大陸は遠目から監視する程度で上陸どころか接近はされていないがそれでも旧クワ・トイネ公国のマイハークが日に日にその姿をなくしている事から化け物が更地にしていることが判明しているが現状ではそれ以外に判明したことがあまりにも少なかった。

 精々が化け物にも種類がある事、戦列艦を一撃で破壊できる魔法らしきものが使える個体が存在する事、全速で飛ぶワイバーンロードですら一発で命中出来るという事くらいである。これらはほぼすべてが遠征軍が壊滅した際に知ったことであり事実上イノスが調査を始めてから知れた事はほぼなかった。

 

「ロデニウス大陸の事は神聖ミリシアル帝国を始めとする第一文明圏も知るところとなった。あまりもたもたしていられないが……」

 

 ロデニウス大陸は化け物さえいなければ宝島と言える程魅力的な大地だ。クワ・トイネ公国があった土地は豊穣が約束された土地でありクイラ王国の土地も科学技術を持つ第二文明圏のムーにとっては大切な資源の宝庫だ。そして何より国家が存在しない以上好きなように開拓・入植出来る大陸なのだ。

 神聖ミリシアル帝国は拡大政策を既に行っていないがそれでもただで入植出来る土地があるのなら欲しいと思って当然であった。とは言えイノスは急がないといけないと思いつつあれらの化け物は神聖ミリシアル帝国でもどうしようもないのではないかと感じていた。調査を開始するにあたって実際に自分の目で確認したイノスはリンドヴルムですら奴らの前では脅威になりえないと思っていた。

 

「こうなってしまうとロデニウス大陸の距離がもどかしい。もっと近くにあるかそれとも離れていてくれれば……!」

 

 近ければ遠征軍を大量に送り込むことも出来、遠ければここまで神経質になる事もなかった。遠いなら対岸の火事で放置する事も出来たのだから。絶妙に近いせいで化け物の動向を把握しておかないといけないのだから。

 

「さて、そろそろ監視を担当する戦列艦からの提示報告だが……ん? なんだ?」

 

 イノスは何時まで経っても魔信が反応しないことに眉を潜める。何度繋げても戦列艦からの返答はなかった。

 

「魔信の故障か? それとも通信障害か? ……まさか」

 

 イノスはふと、戦列艦が化け物にやられたのではないかと考えるが戦列艦は沖合からかなり離れた場所にいる。いくら化け物でもその距離を充てる事は無理だろうと頭の中で否定して魔信の故障か通信障害と考えて一度飲み物を飲もうと部屋を後にした。

 そして、イノスがここに戻ってくるまでにパーパルディア皇国の滅亡へのカウントダウンは動き出していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「攻撃開始!」

 

 私の言葉に従いフィルアデス大陸のパーパルディア皇国に一斉にBETAが上陸していく。突如襲われた形となるパーパルディア皇国が混乱していくのが遠目からでもよく確認できる。

 

「次に行こうか。()()()()()()!」

 

 その指示を出して数秒後、私がいる()()()()()を震わす砲撃が行われた。砲撃はパーパルディア皇国の沿岸部に次々と着弾していって破壊の嵐となっている。中々にすさまじい光景だ。戦艦の艦砲射撃なんて転生する前も見たことはなかった。それも艦橋からなんてなんだか不思議な気分だ。

 

「いい感じに当たってるようだな。急ごしらえだったけど軍艦はきちんと運用で来ているな」

「ですがさすがに完璧にとはいきませんね。もっと訓練を積ませるべきでしょう」

 

 私の横にいるアイリスディーナが軍艦の運用で生じたミスを指摘している。確かに動かすだけでも手間取ったのは事実であり、今も砲撃がきちんとできているとは思えない。数発に一発が海に落ちているし。

 ちなみに、私たちが乗るこの軍艦だがほぼすべてがソビエト連邦と東ドイツの艦隊だ。地球が干上がった後は地下に移動させていたが半ば放置していたが門を手に入れた関係で必要になるかもしれないと改修を行い、今回のフィルアデス大陸の侵攻に間に合わせることが出来ていた。まぁ、ソ連と東ドイツの戦艦だ。数は大してないけどね。そこは戦艦級とでも呼ぶべきBETAとして一から建造するのもありかもしれない。

 後はそうだな、航空戦力が必要かもしれない。特地の炎龍にこちらではワイバーンと呼ばれるドラゴンが出てきた。今はレーザー級で十分だけどいずれレーザー級では対応できない凶悪なドラゴンが出るかもしれない。そのうち制空可能なBETAでも作ってみようかな。

 

「門の接続を確認。フィルアデス大陸南部に5か所開きました」

「よしよし。それじゃ沿岸部の船を沈めて行こうか」

 

 ロデニウス大陸に侵攻したときはかなりの数の人間を船で逃がしてしまった。今回はそうならないように侵攻と同時に船を沈めて行くか。

 

「フィルアデス大陸はこれで問題ないな。多少手間取ってもこの調子なら一月ほどで制圧できるかな?」

「ロデニウス大陸の勢力よりもこの大陸の国家は強いでしょうからそこまで早くは無理でしょう。精々半年前後を想定しておくべきだと思います」

「ふぅん。ま、確かに元の世界と比べれば十分に早いもんな」

 

 オーストラリアだって数年を要したんだ。ロデニウス大陸が二週間で落とせたのは十分すぎる程早かったんだ。

 

「それにしてもこうしてみるとこの戦艦は恐ろしいですね」

「そりゃ人間が生み出した巨大な海上要塞にBETAを合わせたキメラ戦艦だからね。それでも今考えているものよりは全然弱いさ」

 

 今は乗せているだけだがいずれはBETAを埋め込んだ最強の戦艦を作りたい。その時はコンピューター代わりに頭脳級を搭載して海上を移動可能なハイヴにしてしまうのも面白いかもしれない。ただ、戦艦だからいいけどBETAを生み出す際は海中に放り出す形にしないと重くて沈んじゃうだろうなぁ。その辺は今後の調整次第と言ったところかな。

 

「あ、そうそう。このままフィルアデス大陸を制圧出来たらグラメウス大陸にいこうか。フィルアデス大陸と陸続きみたいだしこの世界での魔物のG元素変換効率を確認しておきたいからな」

「それでしたらその大陸をふさぐ世界の扉という物を破壊する必要がありますね。なんでも大昔に作られつつも現代の技術では再現できないものらしいですよ」

「世界の扉、ねぇ……。そもそもここの技術が微妙過ぎるし再現できないから強固って考えるのは時期早々だろう。それにそんな大昔の骨とう品を欲しいとも思えないし突撃級をぶつけて破壊。失敗したらレーザー級で溶かしてしまえばいい」

「了解しました」

 

 大昔には魔王が住みかとしていたらしいグラメウス大陸。どうせなら魔物を従えていた魔王の力や変換効率を確認しておきたかったがそれは追々確認していけばいいだろう。なんでも封印されているだけで今も存在しているみたいだしグラメウス大陸を侵攻していけばエンカウント出来るだろうからな。今は沿岸部からかなり離れた場所まで侵攻しているBETAの動きを観戦するとしましょうか。

 

あ号君の名前に関して

  • 名前なんていらねぇ!
  • 呼びづらいからさっさとつけろや!
  • てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
  • あ号君が本名でしょ?何言ってるの?
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