「……妙だ」
ハイヴ内のドリフトを進むイワンはそう言って眉を潜める。先ほどから散発的にBETAが襲い掛かってくるがそれはごく少数の要撃級のみであった。最初のような突撃級は姿を一切見せず、まるで誘っているかのように奥へと誘導してきているかのようだった。そんな不気味さにイワンはこれ以上の前進を戸惑ってしまう。
「(弾薬は想定よりも戦闘が少ないために余裕がある。しばらくは戦闘できるがこのまま進むより、情報を持ち帰る方が賢明なのでは……)」
『隊長! 奥に巨大な空洞があります!』
罠の可能性を考えて撤退するべきだ。そう考えるイワンの思考を阻害するように隊員の一人がメインシャフトと呼ばれるハイヴの中心部を発見した。これまでとは明らかに違う構造にイワンの脳内から撤退という二文字を消し去っていく。
「……よし、警戒しつつ調査を行う。もしかしたらここがハイヴの中心部かもしれないからな」
『『『『『了解!』』』』』
イワンは悩んだ末に前進を選んだ。ハイヴ内の情報は逐一報告を入れている。ここで罠にはまり全滅しても戦術機10機とそのパイロットを失うだけで済む。ハイヴ攻略は失敗になるだろうがそれは撤退した場合も同じである。
「党と祖国、そして人類の未来のために情報を少しでも得るぞ!」
『『『『『Уpaaaaaaaaaaaa!!!』』』』』
10機の戦術機はついに地球のBETAを統括するあ号標的の本体が存在する最下層に通じる巨大な縦穴、メインシャフトへと到達した。太陽の光が一切入ってこず、ドリフトやホール以上に暗いそこは今まで以上の不気味さを見せつけてくる。
「ライト点灯! この暗さだ。奇襲には気を付けるように」
これまでは辛うじて見えていたがために明かりをつけて敵に察知されるのを恐れてライトをつけていなかったがここまでくればそれよりも暗い状況が危険となる。そう判断したイワンによって10のライトが点灯。メインシャフトを淡く照らしていく。
『BETAのやつら、こんな穴を掘っていたのか……』
『トゥーランハイヴもこれと同じ状態になっているのか?』
『だとすると早くなんとかしないと地球が改造されつくしてしまうな……』
隊員たちは口々にハイヴ内の状況に危機感を持つ。そもそも、BETAの侵攻を受けた場所は草木一つ残らないむき出しの大地が残るのみとなっている。今はまだ目立ってはいないがカシュガルハイヴ周辺の大地は平らにならされ始めており、ハイヴがこの地上全てを支配するときには山などは一切残らない平たんな大地が続く星となる事が理解できる。だが、それだけではなくこの状況を見る限り地球内部も空洞だらけの死んだ星となってしまう可能性がある。そんな未来が見えてしまった彼らはより一層闘志を高めてハイヴ攻略に当たる。
ゆっくりと降下する彼らはいまだ見えない地底部だけではなく周囲の壁や上空にも気を配る。奇襲を仕掛けてくるのであれば今がちょうどいいタイミングだ。そして、そんな彼らの予測は命中した。
「っ! 総員回避運動!」
『うわぁぁ……!』
『4番機ロスト!』
「くそっ!」
地底部に見えた小さな光。それが何を意味しているのか一瞬で判断したイワンは即座に回避運動をとるように指示を出したが突然言われた部下たちにそんな行動は出来ない。結果、地底部に待機していたレーザー級の光線を受けて4番機が撃墜される。それを皮切りに10を超えるレーザーが飛んできてイワン達を襲ってくる。
『っ! 7番機墜落! 残り8機!』
『隊長! 地底が見えます! レーザー級を複数確認!』
「レーザー級を撃破する! 進むも逃げるもあいつらは邪魔だ! 殲滅しろ!」
レーザー級の射程は長い。それこそメインシャフトの底から天井まで一切の威力減少を起こさずに飛ばす程度には。付近にドリフトがない以上上に戻るか下に降りきるしか道はない。である以上レーザー級の撃破に動くのは自然な流れである。
普通の歩兵が持つことさえできない大口径の銃火器が一斉に火を噴き、イワン達を狙うレーザー級に弾丸の雨を降らせていく。一撃一撃は必殺の威力を持つレーザー級だがその発射にはどうしてもインターバルが必要だ。奇襲とその後の攻撃で2機しか削れなかった彼らは次弾発射を待たせてもらえずに次々と撃破されている。数の上で圧倒していた彼らは戦術機からの一斉射撃により2発目を撃つこともできずに全滅した。
しかし、レーザー級という明らかな脅威の排除が出来たという事実はイワンを含めた全員の心に安堵という明らかな隙を作った。ゆえに、BETA側の
『……な!? 隊長! 突撃級が上空から落下してきます! 数は不明! 穴をふさぐほどです!』
「なんだと!?」
下に気を取られていた隙をつき、ドリフトから大量の突撃級が落下してくる。一番硬い正面装甲を下に頭から飛び降りる彼らはまさに肉塊の雨と呼ぶにふさわしいだろう。そして、いまだに地底部に降りきっていないイワン達には危険な相手だ。
「総員一気に地底部まで降りろ! 落下時の衝撃は気にするな! 突撃級に押しつぶされるよりはマシだ!」
『だ、だめだ! 近すぎ……!』
『セルゲイ!!!!』
まず、一番上にいたセルゲイという男が乗っていた3番機が突撃級と衝突して爆発四散する。あまりにも早い落下速度に続いて9番機が激突。壁に叩きつけられて爆発した。そこまできてようやく戦術機は一斉に落下を始めたが逃げ切る前に突撃級の餌食となっていく。
『くそ! くそおぉぉぉぉおぁああああああああ!!!!!』
『2番機墜落……。残存2機』
「……ここまでか」
結局、メインシャフトを降りきり、突撃級から逃げられたのはイワンと5番機のみだった。そして、そんな彼らを待ち構えていたのは巨大な重頭脳級「あ号標的」とそれを守るようにイワン達を取り囲む大量のBETAだった。レーザー級も多数存在し、逃げ切る事は不可能に近い。イワンはここでようやく撤退を選べばと後悔しかけるが少しでも抵抗して数を減らそうと武器を構えた。
……その瞬間だった。
「いやはや。人間というものは本当に何をするのか分からないな」
「『なっ!?』」
ここで聞こえるはずのない
人間であれば絶対に落ち着いて立っていられない場所。そこにいるだけで男が人間ではないと理解させられる。そして、同時に襲うのは言い知れぬ恐怖。彼が人間ではないのであれば
「わかるよな? 俺はBETAだ。死んでいくソビエト連邦の英雄的存在に敬意を払って出てきてやったぞ」
「……本当に、BETAだというのか?」
「こうしてBETAに囲まれているのに平気な状態を見ればわかるだろう? ああ、人間の姿をしていた表情も人間らしい。そして
そういうと男は腕を変化させる。正確には腕の皮が破けて中から戦車級のような赤黒い腕が複数出てきた。明らかな人外の行動に驚くと同時に安心感も出てくる。
「(腕の皮を破って出てきた。それはつまり
人間に擬態できるという情報は人間に漏れてはいけない。それだけ重要な戦略的情報であり、人間を内側から崩す材料となりうる。そんな危険を冒してまで自分の前に出てきた理由は何なのか? その疑問がイワンには解消する事が出来なかった。
「なに、俺も最初はそうだったさ。だが、お前たちの奮戦を見て気が変わったのさ」
そういうと男は握手を求めるように手をイワンへと差し出すと、言った。
「
そう言って笑う男の瞳は怪しく光っていた。
まりもちゃんは
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マミる(原作準拠)
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マミらない(トラウマ回避)
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武の精神をぶっ壊せ(更なるグロ描写)