【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第三話「激怒」

 正直に言って、我々がここまで敗北するとは思っていなかった。地球においては横浜ハイヴなどの一件があったが終始我々の思惑通りに進んでいた。計画の見直しをする必要もなく考えた通りにな。

 そしてそれは門が開き、その先の世界を蹂躙してからも変わりはなかった。門の技術を手に入れ、資源の大幅補給を達成することも出来、我々が飽きないような玩具を手に入れることも出来たわけだ。

 そこからは色々な世界を蹂躙し、弄んできた。いくら強い奴、武器があったとしてもBETAの本領は絶え間ない圧倒的物量にある。それをもって我々は所謂ごり押しでここまで進んできたわけだ。

 その結果、我々はごり押しが通用しない敵にはもろすぎた。敵も我々と同じように物量を持ち、武装をして同じように航空戦力を無効化できる術を有していた。完全にBETAの上位互換と言える存在だ。ある意味ではうらやましいやつらだ。BETAに武装するという案もあったにはあったが基本BETAは使い捨てが前提のやつらだ。そんな奴らを生成するたびに武装を取り付けるのは効率が悪いし使い捨て前提だから武装がもったいない。やるなら長距離砲撃用だろう。

 

「……つまり、今回の一件は我々の慢心が招いた結果だ」

「はい」

「敵はこちらの戦術機を無力化できる性能を有している。バードストライクを引き起こすことが出来る以上戦術機は使えない。かと言ってBETAだけでは敵に対して制圧力がなさすぎる」

「はい」

「本来であれば完全に撤退し、門を閉じるのが最良の判断だろう。我々も最初はそう考えていたからな」

「……はい」

 

 目の前に立つアイリスディーナに対して我々はそう言葉を発する。しかし、こうして話している間にも心の底からあふれてくるあるものに支配されそうになっていた。

 

「だがな! ここまでの被害は初めてだ! そしてそれを見て撤退? ふざけるな! 徹底抗戦だ! やつらを一匹残らず駆逐し、敵の総大将を様々な苦しみでもって拷問してから殺さないと気が済まない! ああ、いい! あの世界の全てが気に入らない! すべてを壊し! 殺す!」

 

 それは怒り。重頭脳級になり始めて感じた感情かも知れない。抑えきれない。溢れてくる。身を任せてしまいそうになる。

 

「アイリスディーナァ! 今()()()()を中心に戦術機の改装を行っている。敵のバードストライクは強烈だが跳躍ユニットさえなければ何とかなるからな」

 

 つまり戦術機はスピードを失うことになるわけでそれに代わる()が必要なわけだ。普通に歩くのでは遅い。ならばどうすればいいか? 簡単だ。車輪を付ければいい。跳躍ユニットがダメな以上空中での戦闘は不可能だ。そうなれば地上戦がメインとなる。幸いな事に敵も地上兵器が主だ。

 敵のように多脚にする案もあるがそれでは動作が複雑になり時間がかかる。その点車輪を付けるほうは設計が楽だからな。多少の高低差も問題ないように普通の足も必要だし足では無理な高さはアンカーで行けるようにすればいい。

 

「改装には1月あれば試作機が完成するらしい。それまではBETAを大量に吐き出して敵の侵攻を防ぐ。敵の火力的にただの時間稼ぎにしかならないだろうが1月時間が稼げれば良いからな。アイリスディーナは他のパイロットとともに新たな戦術機に慣れるようにシュミレーターによる訓練を行うように」

「了解しました」

「敵はこれまでの中で最も強大だ。だがな。我々が最終的に勝利する」

 

 名前も知らない機械の敵よ。序盤における勝敗はお前らに譲ってやる。敗北も受け入れ、認めよう。だからこそ、我々はもう慢心しない。全ての力をもってお前らを叩き潰す。たった一つの世界のお前らに、複数の世界を手にし、膨大な物資と資源、技術力を持つ我々が本気でつぶしてやる。その時が来るのを首を長くして待っているがいい。

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見ている。

 BETAが侵攻してくる前の、兄やベアトリスが生きていた頃の楽しかった記憶だ。

 

 BETAの脅威もなく、ベアトリスが私にしてくる過剰なスキンシップに兄が顔を赤くしているのを見て恥ずかしいと思っていた頃の懐かしい記憶。

 

-“ノゥ・フェイス”より“()()()()()()()()()()()()”。貴官らはこれより連邦に向かい試験運転を開始せよ

-……“()()()()()()()0()1()”より“ノゥ・フェイス”。了解した。これより試運転を開始する

 

 ふと聞こえてきた声。それが我らの新しき主人の声だ。

 なんとも皮肉な話である。祖国を守らんと行動していたはずなのに気づけばBETAに改造され人類を裏切る行動をするようになったかと思えばこうして脳に残った記録をコピーされてこのレギオンにさせられており、この世界の人類を駆逐するために使われる結果となっている。

 

-“シュヴァルツェ01”より総員に通達する。我らの目的は敵の前線を突破し、砲撃陣地の破壊である。乗り慣れた戦術機ではなくレギオンの肉体での光線級吶喊(レーザーヤークト)だ。BETAの時とは違い我らに替えの体はない。まずは体に慣れることを優先し、目的が達成できないと判断した場合は速やかに離脱せよ。その許可は得ている

-“シュヴァルツェ02”了解

-“シュヴァルツェ03”了解

-“シュヴァルツェ04”了解

-“シュヴァルツェ05”了解

-“シュヴァルツェ06”了解

-“シュヴァルツェ07”了解

-“シュヴァルツェ09”了解

-“シュヴァルツェ”了解

-“A-01”了解

 

……

 

 その後も続々と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から了承の報告が入る。ノゥ・フェイスは特異な私たちを一つにまとめて遊撃部隊として活用したいのだろう。全員がBETAに改造されていた者たちなことで察する事が出来る。

 

-それでは我らの初陣と行こうか。見事試運転を終え敵に黒の宣告(シュヴァルツェスマーケン)を喰らわしてやれ!

 

 そう言って私は新たな肉体となった特殊仕様の戦車型(レーヴェ)を動かす。かつての愛機ほどの速度は出ないのが難点だが慣れていくしかないな。

 さて、レギオンと敵対しているらしい連邦と呼ばれる国のお手並みを拝見させてもらおうか。そして、願わくば……。

 

 

 この永遠にも等しい悪夢に終止符を。

 

 

 私を、解放してくれ……。

 




やったねレギオン君。異世界で数十年戦ってきた兵士たちの脳を手に入れたよ!
こうしてみるとレギオンがマジでBETAの上位互換で草なんだよなぁ

次話は2023/09/18 23:03投稿予定です。

あ号君の名前に関して

  • 名前なんていらねぇ!
  • 呼びづらいからさっさとつけろや!
  • てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
  • あ号君が本名でしょ?何言ってるの?
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