お 守 り く れ る 怪 し い 老 人   作:老人というだけで怪しい(偏見

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10.ロールプレイ含有率60%

 魔界は常に暗い。

 月が二つ回天し続ける空は、太陽の光なるものを魔界に落とさない。魔界を照らすのはぼんやりとした赤い月光のみで、その光も何かの照り返しなのか、それとも月自体が発光しているのか定かになっていない。

 ゆえに魔界は明るく賑やかだ。各地に点々と存在する街の中心には巨大な常夜燈が配置されていて、そこから同心円状に街が、酒場が、市場が形成されている。常夜燈の灯が絶えることはない。遥か昔、当時のお偉方がヒトの付与術師(エンチャンター)に頭を下げ、永続の魔力供給基盤を作ってもらったという。

 明るい。

 街はとても明るいのだ。

 

 が、魔王城は暗かった。

 

「……うぅ」

 

 節約のためだとか威厳を保つためだとか色々言われているけれど、その実「整備が面倒くさい」という理由だけで取り付けられていないランプ。あるいは「別に敵がいるわけでもないんだから気を張る必要はなかろう?」という理由でもあったりするのだけど、とにかく城は暗かった。

 勿論個室……魔王の執務室や客人に応接間は明るい。食堂だってオレンジ色の光に満ちているし、厨房も同じ。個々人の部屋は思い思いに改造していいから、暗くするものもいれば明るくするものもいる。

 ただ決まって暗いのは、その廊下。

 等間隔で赤い月あかりが差し込んでいるといってもただそれだけで、廊下の視界は果てしなく悪い。真っ黒な誰かが潜んでいたら視認は不可能だろう。

 

 アニータはこの城で、唯一この廊下だけが嫌いだった。

 他は好きだ。生まれ育ったこの城のあらゆるところに好きなポイントがある。

 

 廊下以外は。

 

 一歩、また一歩と体を掻き抱いて進む。己の両手で両腕を掴み、一歩、一歩、一歩と。

 

「ほほ──ちょいと、お嬢さん」

「ぴぎゃああああ!?」

 

 だから当然こうなる。

 暗闇からぬぅっと、枯れ木のような老人が姿を現せば。声をかけてくれば。

 真白の髭を膝下にまで蓄えた老人。地味ではあっても目立って当たり前なはずの恰好をしたその老人は、アニータに一切の気配を悟らせることなく出てきた。

 

「ゆ、ゆゆゆっ!?」

「幽霊ではございませんのぅ。ほほっ、儂はただ、これを貴女にあげに来ただけですからのぅ」

 

 そう言って渡されるのは──木彫りの人形。

 心なしかアニータに似ている。

 

「な、なに、これ……」

「お守りですじゃ。これを、肌身離さず持っているようお願いしたく。でないと」

「……で、でないと?」

「ほほほ……」

「でないと何!?」

 

 ほほ、ほほほ。

 老人は笑う。どこかフクロウを思わせるシルエットで、笑って嗤って。

 

「え──」

 

 アニータが瞬きをした次の瞬間には、消えていなくなっていた。

 どれだけ気配を辿っても──いない。

 今この城にいるのはアニータと幾人かの魔族、そして母親の友人だけ。

 

 あのような老人など。

 

「ゆ……夢? あ、そっか夢か! バカだなぁあたし、立ったまま、目を開けたまま夢を見るなんて」

 

 ふと、力の籠っていた手に知らぬ感触があることに気付く。

 そういえば夢の中で、あの老人に見せられた人形。

 

 アニータは受け取っただろうか。

 

「……ぴぎゃああああ!?」

 

 一瞬見ただけで悲鳴を上げてしまったのは仕方のないことだ。 

 だってそれは二つ。両手に。

 いつの間にか握りしめていた両手に、どちらもにあって──。

 

 夢の中で見たそれよりも、にんまりと笑っていたのだから。

 

「わ、わ、あ、ぁっ!」

 

 放り出そうとして、けれど老人の言葉が浮かぶ。

 ──"肌身離さず持っていること"。

 ──"でないと"。

 

「~~~~!」

 

 ぎゅ、と人形を握り直し、いつもかけているポーチへそれを突っ込んで、アニータは猛ダッシュを開始する。

 怖がってゆっくり進んだからあんなものを視たのだ。

 これからはもう廊下は怖がらない。走る。駆け抜ける。

 

 

 ……彼女の母親たる魔王に、「廊下は走らないように」と注意を受けるのはまた別の話。

 

 

 ☆

 

 

「随分と余裕がある。ヴォルケインに血のルクレツィアと、それなり切迫した状況だと思ったんだけどな」

「いやぁ、あんなにロールプレイし甲斐のある子も早々いないからなぁ。嬉しくて最上級エンチャントあげちゃったぜ」

「ついでに言うと、お前そこそこ危なかったぞ。気付いているか? 『物理無効』が無かったらお前二回は死んでいるぞ」

「え?」

 

 ちょっとホラー演出にしすぎたかなー、なんて反省しながら、けれど良い反応をしてくれた少女を『標的強調』で観察していたら、なんかまおうが恐ろしいこと言ってきた。

 確認すると、確かに服と耳飾りの『物理無効』が消えている。

 

 ……え、こわ。

 

「あれは俺の娘だ」

「娘? ……似てなさすぎだろ」

「本人の前で言うなよ? 結構気にしてる。というか髪とかはそうだけど、目とか背筋のラインとか、あとあんまり言いたかないけど胸の形とかそっくりだぞ。俺の丹精込めたキャラメイクはちゃんと引き継いでいる。体のバランス、肉付きの良い部位悪い部位、鼻の高さ、耳の長さ、頬の膨らみ顔全体の厚み……」

「うわキモ」

「キャラメイクするとき真っ先に老人にするお前の方がキモいんだよ。普通美少女だろ普通」

 

 赤髪だったからプレイヤーの子孫だろうなってちょっかいかけたんだけど、まさかコイツの娘とは。

 銀髪も青メッシュも何にも引き継がなかったのか。そりゃ確かにコンプレックス持ってそう。

 その「引き継いでいる」の部分も……まぁ、あんまり教えられないわな。

 

「で、なに? 死んでるって」

「お前が出てきたときに一回。お前の反応できない速度でお前は斬られている。けど、お前は死ななかった。『物理無効』が発動したからな。だからアニータはお前を幽霊だと思った」

「幽霊って死霊系のことじゃなくて怪談とかに出てくる方のだったのか」

「次にアニータが駆けだした時。あの子の爆走はそれだけで周囲に破壊を齎す。隠蔽スキルで上手く隠れたようだが、隠れたまま死んでただろうな、『物理無効』が無ければ」

 

 ……。

 さすが魔族。そして魔王の娘。

 

「もうちょっかいかけるのやめとこ」

「そうしろ。というか人の娘怖がらせるのやめろ。あの子ビビりなんだよ」

「魔王の娘なのに? 容姿的特徴だけじゃなく、ステータスも一切引き継いでないのか?」

「違う、無益な殺生を嫌うんだ。あの子はビビりすぎて、死角から声をかけられたり背後から抱き着かれたり、とにかく自分の認識範囲外からの刺激に自動反射で斬りかかる癖を持ってる」

「やばすぎだろ」

「昔は流血沙汰が絶えなかった。幸いにして俺を含め回復魔法使える奴がいくらかいたからな、まだ殺しはしていないが……だからこそあの子は血に溺れなかったし、自身の強すぎる力を恐れるようになった」

 

 俺のステータス、オールバフ状態で引き継いでいるようなもんだからな、と。

 まおうは遠い目をする。

 

「……で、何のエンチャントあげたんだ? ことによっちゃ取り上げるぞ」

「『身代わり』と『全修理』。一回発動のエンチャだよ」

「身代わりと全修理……。特に危ないモンでもねえな。まぁいいか、それなら」

 

 しかし、なんだ。

 本当に似てないな。コンプレックスに思っているなら口に出すことはもうやめるけどさ。多分まおう側も少なからず思っているんだろうし。

 

 魔王が「ふぅ……」なんて溜め息を吐きながら、ソファに深く座る。

 足を組んでいつの間にか取り出したワインを片手に……この絵面だけ見るとマジで魔王だな。

 

「何にも似てない、ってことはないよ。……お前っつかお前らさ、俺のこと天才だのなんだのっていうだろ」

「ああうん。こと戦闘面に関してはお前の右に出る奴は……攻略組くらいなんじゃないか?」

「俺はそれをあの子に対して思ってる」

 

 それは。

 それは、ヤバだな。

 

「一を教えたら百を返す系?」

「いや、努力はする。一を教えたらそれをものにするために修行する。ダンジョンだとかフィールドボスだとかで修行して修行して、帰ってきたら十できるようになっている。十教えたらそれをものにするために走り回って、帰ってきたら百ができるようになっている」

「才能ある上で胡坐かかない子か。良い子じゃん」

「そのせいでちょいとコミュニケーションに陰がある。修行修行修行アンド修行な半生だからな、人付き合いの経験があまりにもない。一番最悪なところ引き継いでるんだよ。俺の友達がいないトコ」

「あー」

「そこは"そんなことないだろ"って言えよ」

「だってお前フレンドリスト五人くらいだろ」

「……うっせぇ」

 

 ワインがなみなみ入ったグラス。

 それを投げて渡してくるまおう。キャッチして、それが零れていないことを確認する。

 アイテムだ。

 

「血の杯。攻略組の観測者(ウォッチャー)があのイベントフィールドで見つけたアイテムだ」

「雨のルクレツィアの?」

「ああ。そういえば奴が死ぬ前に預かってたこと思い出してな」

 

 冒険者系ジョブ最終ジョブ観測者。

 攻略組で遊撃を担っていたあの少年は、そうか、人間だったか。

 ……葬儀が開かれてない奴のトコには行けてないからなぁ。そっか、死んでたか。

 

「イベントアイテムなのに削除されてなかったのか?」

「らしいな。ついでに今『雨のルクレツィア』での交換装備をリストアップしてる。大体倉庫にあるから持ってくるのは面倒だけど、外観情報くらいなら伝えられるぞ。どうせお前持ってないだろ」

「サブは勿論メインでも勝ててないし、そもそもあのイベントそこまで入れ込んでやんなかったからなぁ」

 

 というか、だよ。

 

「ベンカストは? 来てるんじゃないのか?」

「のはず、なんだがな。俺が戻るまで待っててくれとは言ったが、今回の寄り道で大分時間を食った。アイツにも予定があるはずだし、先に帰ったという可能性もある」

「ベンカストが何も言わずに? メールくらい出すだろ」

「それが、何にも来てないんだよ。お前のトコは?」

「なんで俺に出すんだよ。……来てないな」

 

 メールは各地の行政機関近くのポストへ行かなければ内容を読むことはできないが、メールが来た、という通知自体はどこにいてもわかる。

 それがない。二人ともない。

 ベンカストはそういうところきっちりする奴だ。性悪だが、というかだからこそ、自分が突かれないために自分の弱みになり得る可能性は全部消す。

 

 そんな奴が書置き一つ残さない。

 

「……何かあったか?」

「不測の事態、と見るべきだろうな」

「だが、ベンカストが何もできずに連れ去られるなんて……」

 

 あり得ない、と言いたい。

 アイツはかなり注意深いし警戒心が強い。自室にいても敵の襲撃を警戒しているし、俺や仲間たちといても常に周囲を疑っている。

 ベンカストに何も疑われずに近づくことのできる存在がいるとすれば。

 

「択だな、ガシラ。三択だ。第一に、血のルクレツィアの始末。なぜか奴は追ってこなかったが、ありゃ確実にプレイヤーの命を狙う者だ。摘み取るべきだと俺は考えてる」

「……まぁ、概ね同意だよ。イベントモンスターだ、バックストーリーを知っちゃうと後味が悪いのはあるけど、そんだけ。ヴォルケイン共々殺してもいいとは思う。だけど」

「黒幕がいた場合、何が起きるかわからない、ってことだろ? あいつらの死を起点にやべぇ魔法が発動するとか」

「ああ。特に死霊系の魔法はそういうの多いから油断できない。加えて俺は魔法を見抜けないからな、不安要素がデカすぎる」

 

 姉弟を使った陰湿なやり口。最終目的がどこにあるかはわからないけど、そこにプレイヤーを殺すことが含まれているのは間違いないと思う。でなけりゃ血のルクレツィアなんてイベントモンスターを使わないだろうから。

 ただ、あそこに……あの二人の家に訪れたのは俺だ。あいつらが街で物乞いでもしてたってんなら話は別なんだけど、俺が無理矢理押し売りしていって、その結果がこうだとすると……。

 なんだ、悪辣なやり口に反して積極性が見えない、というか。

 

「第二、ベンカストを探す。アイツの知識、そして発想力は魅力的だ。俺達じゃ出せない答えに辿り着いてくれるかもしれない。あるいは別のピースを持っているかもしれない」

「ヴォルケインは炎魔窟から出てこない。血のルクレツィアは自分の家から出てこない。とすれば、それもアリなんだよな。というかベンカストの身に危険が迫っている可能性があるんだから、これを優先すべきではあると思う。……が」

「が?」

「引っかかる。どういう状況ならベンカストが手掛かりを残さずに連れ去られる? ベンカストの意思でいなくなる以外、俺には思いつかないんだが」

「そりゃ……眠らされた、とか?」

「あいつアークビショップだぞ? 状態異常耐性どんだけ積んでると思ってんだ」

「確かに」

 

 血の杯をぐるりと回す。

 なみなみとワインが注がれているにもかかわらず、それが零れ落ちることはない。

 これは何だろうか。あの真っ暗なイベントフィールドにあったアイテム。観測者クラスじゃないと見つけられない隠し方をしていたあたり、キーアイテムながら必須アイテムではないことはわかるんだが。

 

「第三の選択肢は?」

「それはお前が持っている。ガシラ──心当たり、あるんだろう? 下手人に」

 

 薄い目。鋭い目でもある。

 無限に広がる宇宙のような目が、俺を捉えた。

 

「……お前さ、その直感やめろよ。怖いんだよ」

「うるせぇよ秘密主義者。ベンカストが危機的状況にあるかもしれないんだぞ。もう残ってるプレイヤーなんて数えるほどしかいないんだ、みんな家族みたいなもんだろ。その一人が危ないってのに、いつまでもいつまでも隠し事しやがって。知っていることを話すだけだ。そんな簡単なことがなんでできねえ」

 

 そんなの。

 ──ヤな予感がするから、ってだけだ。

 

 が。

 

「緑髪の男。尖り耳だがエルフよりも鋭い。魔法を詠唱無しで使う」

「プレイヤーだな」

「……だろうな」

「だからか、言い渋ってたのは。お前さ、プレイヤー好きなのはいいけど、良い奴と悪い奴の見分けくらいつけろよ。確実にその緑髪のやつは悪! ベンカストは……性格は悪いけど良い奴! 違うか?」

「返す言葉もない」

 

 そして。

 そしてまおうは、にやりと笑う。

 

「んで、犯人がわかってんなら話が早いのさ、魔界っていうのはな」

 

 まおうは立ち上がって壁に手を当てる。

 暖炉の上。なんでもない壁の一部。

 

 そこが、ズズズ、と押し込まれる。

 

「忍者屋敷かよ」

「馬鹿言え、男たるもの一国一城の主になったらまずやることは棲み処の改造だろ」

「INT上昇系クエがなくて暇だったんだな」

「正解!」

 

 押し込まれた壁は内側でガシャガシャガシャコンガシャコンと機械的な音を立てる。

 立てて、何かが動く音が連続して響いて。

 

 ゴゴゴゴ……と。

 暖炉の上に、黒電話がせり上がってきた。

 

 ……。

 

「……? え、それだけ?」

「お前なぁ、電力がマトモにないこの世界でこの機構を作るのがどんなに難しいか。あそうだ、コトが全部片付いたらいくつかエンチャント依頼出すぞ。この城無理矢理な方法で動いてる部分多いんだよ」

 

 言いながら、まおうは──魔王になる。

 雰囲気が変わった。ロールプレイに入ったのだ。

 

 黒電話を取って。

 

 

 ☆

 

 

「──告げる。我は十六代魔王マルクス・オールァ・ウィンダル。我が名において告げる──全魔族よ」

 

 響き渡る。

 魔王城のある街だけでなく、魔界全土に響き渡る。

 

「緑髪の、エルフよりも長き耳をした男。我はその者に罪をかけた。良いか? 罪だ。──後はわかるな?」

 

 瞬間、怒号が、轟声が各地で立ち昇る。

 魔王が罪をかけること。それが意味するのはただの一つしかない。

 

 指名手配(WANTED)

 弱きは強きに従う。強きは弱きを従える。

 そんな世界で強きが弱きを頼るのなら──その成果に強きより報酬が約束されていることが確定している。

 

「ただし、生け捕りだ。問い質さねばならないことがある。良いか、殺さば殺す。覚えておけ」

 

 強い奴が偉い。偉い奴は強い。

 たとえそれが暴政だろうと強ければ偉いし、不満があるなら倒せばいい。魔界。魔界。魔族。魔族。

 ここなるは力の世界。力がルールを持つ世界。

 

「──活躍を期待している」

 

 魔王の声は、魔界の全土を湧き上がらせた──。

 

 

 ☆

 

 

「マルクス・オールァ・ウィンダル~~~~マルクス・オールァ・ウィンダル~~~!! マルクス! オールァ! ウィンダル!」

「ぶっ飛ばすぞお前」

「いやだって……マルクス・オールァ・ウィンダル! マ・オ・ウ! マ・オ・ウ!」

「良いんだよ、俺の妻っつか夫っつか、番の姓がオールァだったんだ。丁度良かったんだよ」

「マルクスとウィンダルは?」

「……適当だけど」

「意味あれよそこはよ~~」

 

 まおう。確かに名乗るには向いていない名前だ。つかキャラメイクそんだけやっといてプレイヤーネームまおうってどうなんだよ、ってツッコミはゲーム時代何百回もしてる。

 

「俺もこれからマルクスって呼ぶわ」

「紛らわしいからやめろ。というか普通に魔王呼びでいいだろ」

「まぁ臨機応変に行くよ。それで? 今のにどんな意味がある?」

「切り替え早っ」

 

 切迫した状況には変わりないからな。

 スムーズにいかないと。

 

「今のは魔界全土への指名手配だ。緑髪で、エルフよりも尖った耳の男。そいつをオンリーアライブで俺のトコ連れて来い、っていうな」

「似た奴とかただのエルフだったらどうするんだよ」

「違うのに捕まった奴が悪い。弱かったから捕まったんだ、ソイツは。魔界はそういうとこだよ」

「ひぇ」

 

 冤罪だろうが冤罪かけられた方が悪い……じゃないか。

 冤罪かけられて、逃げたり返り討ちにできなかった方が悪い、と。

 

「多分別人は多く見つかる。加えて、報酬欲しさに奴隷を緑髪で尖り耳に変えて持ってくるやつもいるだろう」

「治安悪いな」

「ソイツがプレイヤーであるかそうでないかくらい見抜けるだろう」

「魔女狩りは起きないってことか」

「ついでに似たような特徴持ってる奴は、犯人が見つかるまで魔王城に入れておくからな。捕まえるわけじゃねえから待遇もそれなりにさせる」

「流石」

 

 それで、だ。

 と。

 

「この択を取った以上、聞き込みは無理だ。ベンカストの足取りは辿れない」

「情報を他人に渡したくないからか」

「そう。だが、同時にベンカストを連れ去っただろうソイツは非常に行動しづらくなる。プレイヤーだから魔族の木っ端は雑魚に思うだろうけど、それでも群がられるのは相当ウザいはずだ。何かやりたいことがあってベンカストを連れ去ったというのなら、ベンカスト自身も暴れられる隙ができるだろう」

「お前ホントにアホなのか頭いいのかわからなくなるよな」

「戦略はな、得意な方なんだ」

 

 成程、これも戦闘の内か。

 

「だから、重要なのはお前だ、ガシラ」

「ん」

「俺が今から持ってくる雨のルクレツィアのイベント装備を全部お前に貸す。その血の杯もな。で、護衛を一人つけるから、お前の思うところを調査して真相をつかみ取れ」

「おいおい俺のウェイト重すぎないか」

「考えたいって言って退いたのはお前だろ」

「そりゃそうだけど……」

「戦闘面は安心しろ。魔王城の現時点でのNo.2を付ける」

「現時点での?」

「もうそろアニータが抜きそうだからな」

「なる」

 

 ……さて、大役だ。

 だがまぁ、いつものことだ。路地裏からぬぅっと出てくるお守りくれる怪しい老人ロールプレイをやってる頻度はそこまで高くないんだよな、俺。

 街にいる枯れ木みたいな怪しい老人ロールプレイやってる頻度の方が多い。

 

「んじゃまずは、オブシディアンドラゴンの巣ってトコから調べるか」

「護衛のやつに負ぶってもらえよ? お前の足で走ったら二週間はかかるからな」

「遠すぎだろ」

「魔界の広さなめんな」

 

 それじゃあ、まぁ。

 反撃開始……になるのかね?

 

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