お 守 り く れ る 怪 し い 老 人 作:老人というだけで怪しい(偏見
騒々しくなった魔界を行く。
様々なジョブを思わせる格好の魔族たちがそこかしこをうろうろしていて物々しいけれど、こんな枯れ木のような老人には目もくれない。あるいは普段であれば弱者が視界に入ってくることに苛立つ魔族もいたのだろうが、今は文字通りそんな場合ではない。
魔王。魔王だ。魔王から賜る報酬がどれだけのものか、魔界の民はよく知っている。
浮足立って、上の空で、打って一丸となった魔族に、俺の姿は映らない。
たとえその老人がものっそい高速で移動していても。
「……ほほほ、儂もあまり背の高い方ではないが、それよりもはるかに小さな者に背負われるというのは中々……」
「屈辱的?」
「いや? 奇妙ではあるが、興味深い感覚じゃよ」
「そう」
俺を背負って走るのは子供……ではなく、レプラカーンの吟遊騎士。バード系ジョブと剣士派生の騎士ジョブを一定まで進めると出てくる隠しジョブ……ではあるけど、パーティ貢献度の高さからゲーム時代は全くと言っていいほど隠しじゃなかった人気ジョブ。
歌唱スキルは直接的な効果こそないものの、パーティ全体にバフをかけたりスキルのクールタイムを縮めたり、まぁとにかくパーティゲーに必須な効果を持つものが多い。直接的というのは火力! だとか地形に作用! とかじゃないって話な。
それを使いながら自身は前衛を張れるんだ。ソロでやるにも良いし、パーティでやるなら後衛枠一個開けた上で似たような効果望めるしでいいとこどり。
欠点があるとすればやはりあくまで歌唱であって魔法ではないところか。魔法を防ぐ、魔法攻撃をする、ということはできないから、騎士ジョブのスキルをちゃんと上げておかないと使い物にならなくなる。
その点このレプラカーンはしっかりしてるらしい。多分まおうがスキルビルドを監修しているんだろう。
「ファザクフルメルミリナ……じゃったかの」
「長いからミリナでいい」
「あいわかった。ミリナ、オブシディアンドラゴンの巣までどれくらいかかるかの?」
「あと二十分くらい」
ファザクフルメルミリナ。
レプラカーンゆえに身長は俺の膝までくらいしかない。ハーフリングよりもさらに小さい種族だ。性別はなし。魔族だからな、性別が明確な種ばっかりじゃない。あ、性別無しといってもまおうの番じゃないぞ。それは別にいる。
で、コイツが俺につけられた護衛だった。
プレイヤーではないにせよ、まおうがNo.2と胸を張って言うくらいだ。それはもう強いのだろう。多分。まだ実力を見ていないし、見せられたところで俺の動体視力で見えるかどうかわからんから正直アンノウンなんだけど、そこはまおうを信頼している。
さて、運ばれている間にやることは一つ。
雨のルクレツィアイベントの交換装備。その検分だ。
といっても"雨のロングソード"とか"雨のショートダガー"とか、名前に"雨の"がついただけの武器ばかりで、そこまで特異なものは見当たらない。性能も……まぁ高いっちゃ高いけど、最高等級かと問われたら微妙。
ルクリーシャが使っていた剣と同じ規格のものも、特に変わらない武器で。
ここに真相とかないんじゃないかなぁ、とか思っていた時だった。
「……誰かに尾行されている」
「ほ?」
「数は三十と二。三十は雑魚。二は……二人合わせて、僕と同格」
「儂を守りながら戦っての勝率はどれくらいのものかの」
「絶対はない。ただ、魔王様からの命令。この身に代えても守る」
「それは困る。儂が走ったらオブシディアンドラゴンの巣まで二週間かかるそうじゃからの」
尾行ねぇ。
考えられるケースはいくつかある。たとえば、俺を緑髪の男だと勘違いした……緑髪の男が変装していて、それを護衛に運んでもらっている、みたいな。
ただそういう短絡的な考えは弱者の持つものだ。二人合わせてでも魔王城No.2と同格足り得る奴らがそんな阿呆であって……ほしくないだけだなぁ。魔族だからなぁ。あるかもしれない。ないとは言い切れん。
が、そもそもの追ってきている人数がおかしい。
三十人と二人。二人をリーダー格と考えて、雑兵三十人。一個小隊はあるってことだ。
組織立ちすぎだろ、そりゃ。
「お主、スキルはどれほど使えるかの」
「走行系に割いているのを除けば、一通りの騎士スキルと歌唱スキルを並列で扱える。二個まで」
「優秀じゃの。なら、『追い風』を使うがよい」
「あれは重量が関係する。あなたを背負っている状態だと、あまり意味がない」
「知っとる知っとる。良いから、儂が合図したらやるんじゃ」
「……承知」
尾行してきてる奴らとマトモにやりあうつもりなんてない。話し合いは100%無駄で、必ず戦闘になる。怪我をするのも時間を食われるのもよろしくない。なら逃げるのが一番。
「
「!?」
「今じゃ」
「なに、を……これは、ぐ」
「『追い風』を使え、ミリナ」
「──『追い風』のバラッド」
瞬間、強い強い風が吹く。
俺はといえば、左手の小指に着けていた指輪をこっそりと付け替えて。
途端。
「な……こんな暴風が起こるはずが」
「これこれ、ふんじばるでないわ。大人しく飛ばされい」
「うっ……」
飛ぶ。飛ばされる。
風耐性がゼロどころかマイナスになったミリナは、追い風程度の風にさえも耐えられない。体重が軽くなったとかかかる重力が減ったとかじゃなく、風に対する耐性が無くなっている──という、物理法則とかエネルギー保存則とかガン無視の結果は、やはりゲームシステムが生きている証。
ちなみに俺の風耐性もマイナスになっている。インベントリにね、永遠エンチャントは一杯入れてあるんだ。各種耐性がプラスになる奴とマイナスになるやつどっちも。
耐性の増減はダメージの増減と比例しない、って知っててよかったよ。
「……何をした」
「ほ?」
「僕は自分のスキル領域を把握している。そこに異質な……あり得ない何かが植え付けられた。魔王様の友人とだけ聞いていたが、貴様何者だ」
おお、敵意。
まおうを害する可能性があるなら今ここで切り捨てる、くらいの勢いを感じる。
「儂もまおうと同じ、ということじゃよ。ほほ、戦いはできんがの」
「……千年前の英雄か」
「ほほほっ、はて、さて」
空を行く。空を飛ぶ。
その先に見えた。進行方向の先に聳え立つ──巨大な黒き山。
ううん。
やっぱり違うな。
「時にミリナ、お主は何歳じゃ?」
「……今年で七十」
「主が生まれたときから、あの山は"ああ"かの?」
「ああ、とは?」
「あの高さか、と聞いておる」
「高さ? 山の高さはそう簡単には変わらない。……人間界では違うのか?」
「いんや」
低い。
ゲーム時代、オブシディアンドラゴンの住まう山というのは魔界で一番高い山だった。天を衝くほどの山。登るに苦労し、襲い来る魔物に苦労し、落石トラップや足場の崩れるトラップに苦労し……と、まずオブシディアンドラゴンに辿り着くまでが大変な山。
でも、あれは違う。
確かに色は同じだけど、明らかに低い。そんなのまおうだって知ってるはずなんだが。
何かがあってぽっきり折れた? いやんなワケ。
それとも場所が違う? 流石に魔界の全域マップなんか持ってないからなぁ、記憶違いはありそうだけど。
あるいは……見えなくなっている、とか。
「……最悪は」
可能性は、常に。
☆
オブシディアンドラゴンの巣とされている黒曜山に辿り着いた。
やっぱり麓から見ても低い。ありえないほど低い。
「登る?」
「ああ、頂上まで頼むわい」
「承知」
「それと、これを適当な指に嵌めるとよいぞ」
「……エンチャントアクセサリか」
「ほほ、よくわかったの」
いつも通り『
登りながら魔物に襲われるのだっるいからな。
指輪をはめたミリナ。
そして俺を背負い直して──山肌を駆けのぼり始める。
おお、垂直垂直。
「『追い風』のバラッド。わかってると思うけど、変に暴れないで。落としたら拾いに行くの面倒」
「ほほほ……落とさないようにしてほしいのぅ」
「だったら変な動きしないこと」
真下から吹き上がるそよ風によって、俺とミリナの体は上へ上へと押し上げられる。ただし、俺の風耐性はマイナス一個、ミリナは三個なので、やっぱりミリナは俺の体を支える必要がある。今度は落ちないように、だ。
周囲の魔物、ハーピィだとかグリフォンだとかが蔓延るそこを爆速で駆け登っていくレプラカーン。『気配消し』は痕跡を消せるわけではないので、彼らの目には突如山肌に砂煙の縦筋が入っていっているように見えるのだろうか。
「っ、右方、防御して!」
「儂にそんなスキルあると思うかの?」
「少しくらいは英雄なんじゃないの!?」
お、素が出たな。
フフーフ、俺が戦えると思ったら大間違いだぞ。確かに戦闘ジョブのスキルだってエンチャントできるけど、そういうのって大体STR依存かDEF依存なんだよ。
俺のステータスその辺絶望的だからな。無理無理。
「使えないっ……!」
「ほ、主は儂の護衛じゃろう、ミリナ。護衛が主を使うのか?」
「なんで魔王様はこんな弱い奴と友人なんかやって、──まずい、避けられない!」
何が来るのか教えてくれたらいくらかやりようもあったんだけどな。
右を見たってなーんにもない。まぁハーピィとかはいるけど、ただそれだけの赤い空だった。
そこへ、文字通り瞬く間にして巨大な熊が現れる。
右の惨爪を振り下ろしながら。
「なんかないのか、英雄!」
「なんかなかったらこんなのんびりしとらんよ。
ふわり。
現れたウォールベアが浮遊感を得る。振り下ろした爪も俺たちに掠ることなく、その身が丸ごと空へ空へと飛んでいく。
……ま、こういう攻撃方法はある。超至近距離じゃないと使えないんであんまし使わないけど、やり方は探せばいくらでもあるのさ。
「ちなみに今のとさっきの風耐性のエンチャントで魔力すっからかんじゃ。次は自分で気を付けい、護衛」
「……助かった、とは言っておく」
「ほほ、素直じゃな」
なお、全面的に助けられまくっているのは俺の方であることを忘れてはいけない。
今のは「何を偉そうに」と返してもいい場面である。
登る──。
そして、ついた。
頂上に。
「ミリナ、主は警戒を頼む。何が現れてもおかしくはないゆえな」
「承知」
一見して何もない。ゲーム時代には無かった広場があるばかりだ。
オブシディアンドラゴンことウィルは人間界で休んでいるからいなくて当然だし、余所者の気配にか他の魔物も寄ってこない。フィルギャも来ない。結膜が黒いかどうか確認したかったんだけどな。
「
はずれか……?
雨のルクレツィアイベント装備もはずれ、オブシディアンドラゴンの棲み処もはずれ……なんてことあるかな。いやありはするだろうけど、探し切れていない感がすごい。
本来の黒曜山であれば、ここは中腹も良いところだ。本当はもっと高い。
が、試しに『浮遊』を付与した石ころを浮かべてみたところ、石ころはそのままふわふわーっと空へ空へ浮き上がっていってしまった。
隠蔽スキルは見た目を隠蔽するだけで、無いものとすることはできない。
本当にこの山がぽっきり折れてしまった、とかでない限り、こうはならない。
……ワンチャン、あるか?
流石に試したことはないけど……。
「ミリナ」
「何?」
「儂は今から──この山を直す」
「?」
「成功した場合、おそらく大変なことになる。──儂、多分逃げられんから、連れ出してくれ」
「……よくわからないけれど、承知した」
「ほほ、ありがたいの」
魔力増強系のアクセサリをインベントリから引っ張り出して、十分量のそれを溜めていく。
エンチャント自体は他のエンチャントと何ら変わらない。だからそんなに魔力は使わないはず……だけど、何事も初めての場合は二倍くらいの保険が欲しい。
広場。
その中央で、地面に手を当てる。
「
ズン、と地が揺れた。山が揺れた。
鳴動は──おそらく成功の証。
「な……何が、これは」
「ほほほ、では頼むぞミリナ、儂を連れて行っておくれ」
岩が立ち昇る。大小様々、落ちていたものが持ち上がる。浮かんでいたものが降りてくる。
パズルのように美しく重なっていく山肌は、一瞬の内に俺の周囲を覆いつくしていく。
「──手を伸ばせ!」
「伸ばしたところでお主の手は短かろうて」
「冗談言ってる暇あったらこっちまで走ってこい!」
積み上がっていく。山が、山肌が、内部が。
黒き山。これほど低くはない、これほど壊れてなどいない──魔界最高峰に相応しき頂よ。
「無理じゃな」
「はぁ!?」
「ほほほっ、──どうやら、敵の罠だったらしいのぅ。足が張り付いて動かんわい。ホホホホ」
しかし、なんだ。
最初は無口っこなのかな、と。表情動かない系かなーとか思ってたら、コレだ。
随分と感情豊かじゃないか。あるいはアレか? まおうの前でだけ素を見せるタイプか?
「こりゃあ助からん。ほほほ、ミリナ、上を見上げい。──落ちてくるぞ、本来の黒曜山の、その頂上が」
赤い月をバックに尖塔が映える。
落ちる。落ちる。落ちてくる。
壊されていた黒曜山が、修復されていく。
「く──何か、自分の身を固めるスキルを使え! 僕は魔王様を呼んでくる! 魔王様なら黒曜山でも吹き飛ばせるはずだ!」
「そんなスキル持ってたら戦闘に参加しとるわい」
真っ暗だ。
月光をも遮る黒は、今、ここに。
落ちた。
「ということにしておいた方が良いと思ってのぅ」
「……っ」
「おっと、声を出すでない。儂には『無音』がついておるが、お主にはついておらん」
いやぁ全く驚いた驚いた。
穴を突かれた、というべきなんだろう。
"敵の足と地面を接着する魔法"なんてものは無かったから、サーチマジックは反応してくれなかったようだ。これは本格的に魔法の勉強なりなんなりするべきかね。
まぁ魔法無効で殺せるんだけどさ。
ただ、魔法無効はほとんど使わないから持ち合わせが二個しかなかった。あと一個は慎重に使わなければ。物理無効は死ぬほど持ってるんだけど、魔法無効なんかめったに使わないからね。これから暇な日は魔法無効も作るようにしよう。
「ほ? お前、なんで。そういう顔をしておるの」
「……!」
「まぁそう難しいことではないわい。死霊系の魔物はその半数以上が『透過』というパッシブスキルを持っておってな。そういうことじゃ。ほほほ、どういうことだよ! と言いたげな顔じゃが、これ以上は企業秘密。そして、あんまり暴れるでない。そろそろ来る頃じゃ」
ちなみに『透過』はそんな便利なスキルじゃない。
魔法は避けられないし、剣とか、あるいは筋肉、血液でもなんでも、とにかくそこに魔力が含まれていたら普通に攻撃を受ける。今回は黒曜山の魔力を使って『全修理』を発動したからな、すっからかんで通り抜けやすかったってだけだ。
本来の自然の山々は魔力が豊潤なのでこの手段は使えない。
懐から木片を一つ取り出して、ミリナに持たせる。『無音』のタリスマンだ。
先ほど渡した『気配消し』や『迷彩』なんかのスキルが付与された指輪と合わせて、簡単隠蔽セットとなる。
──お、来た。
「……素晴らしい。素晴らしいな、やはり。流石だ現存する最古にして最高の
俺たちのすぐ隣。そこに浮いている。『浮遊』か?
こちらは見えていないのだろう、あらぬ方向を向いて大きく手を広げ、朗々と声を上げる。
「ああ、これは、オレとしたことが。名乗るのを忘れていた。ハハハ──生きているのだろう、
緑の髪。鋭く尖った長耳。
フードのせいで顔はよく見えないが、口の端からピアスのようなものが垂れ下がっているのは見えた。
「オレの名はラクサス。アブラクサスだ──以後お見知りおきを、最高の
周囲にベンカストはいない。
コイツのアジトにいる、とかか? ち、連れまわしていてくれたら奪えたものを。
けど、直近での命の危険はないとみることもできるか。
「攻撃を行うつもりはない。此度の事件はすべてオレの不始末を原因としている。ゆえ、それの後片付けをしてくれているお前たちに敵意はない。それをわかってほしい」
「ならばベンカストを返してほしいものじゃのぅ」
「──なんと、そんなにも近くにいたのか」
ミリナを下がらせて、『無音』だけを外して言葉を発する。
ラクサス。そんな名前のプレイヤーは知らない。少なくとも俺のフレンドにはいない。
デスゲームの時、すべてのプレイヤーとフレンドになったから、あの時いたプレイヤーじゃないことは確実だ。
けれど──。
「再度言おう、敵意はない。だから姿を見せてはくれないか。お前の姿を目に焼き付けたいのだ」
隠蔽スキルのついたアクセサリをインベントリにしまう。
途端見えるようになる俺の姿。
「ほう……それがお前の姿か、
「儂はセギという。ラクサスと言ったか──お主、英雄ではないのかの?」
「英雄? プレイヤーのことか?」
あぁおぉん?
やっぱりコイツプレイヤー……なのか?
「そう呼ばれておる時代もあったのぅ」
「その問いについては……そうであり、そうではないと答えよう」
じゃあGMか。
と問おうとして、気づく。
さっきの調査時点から付けっ放しにしていた『
こんなに近くにいるのに、だ。
けれど事実ラクサスは浮いていて。
「主、ジョブは?」
「ジョブ?」
「お主だけが儂のジョブを知っている、というのは公平性に欠けるじゃろ? お主のジョブを知るくらいの温情はくれんかの」
「そんなものは無い。先ほども言ったように俺はプレイヤーでありプレイヤーではない。オレの使う御業はすべて魔神の力によるものだ」
「ほう、魔神」
「知っているか。流石だ
……今。
ミリナが周囲を駆け回ってベンカストを探している。
その時間稼ぎの雑談も兼ねているわけだけど……なーんかこいつ、プレイヤーでも、GMでもなさそうなんだよな。
「そういう風に言うということは、お主のやり残しではないのか? 血のルクレツィアとヴォルケインについては」
「誰だそれは。ああいやヴォルケインはわかるが」
「……魔神には、会うことができるのかの?」
「こちらからは無理だ。オレの行いに対し、時折言葉をくれることはあるが」
いや。
何だコイツ。
結構ペラッペラと……色々喋ってくれるな。
「先も言ったが、ベンカストについてはどうじゃ? お主が攫ったのではないのか?」
「オレであり、オレではないというか」
「はっきりせんな。別に責めたりせんからきっちり言ったらどうじゃ」
「む……」
尊大な態度は……コイツもしかしてロールプレイか?
本性はあんまり気の強くない奴って感じがする。
「……だ」
「聞こえんわい」
「だから、テイムモンスターだ! ……あいつら勝手に人攫いとか襲撃とか……とにかく、オレの意思じゃない! が、オレのせいではある!」
「別に主の罪を問う気はないわい。どこにいて、どのような状態にあるかだけ言うんじゃ」
「……知らない」
「ほ?」
「だから、知らないんだ……のだよ! お前は知らないだろうが、テイムモンスターというのは近くにいないと呼び出し解除も命令実行もできないのだ! だから奴がどこで何をしているかは知らん! ただ……誰かをさらったことだけは知っている」
さて。
どうするかな、コイツ。
プレイヤーでありプレイヤーではない。うーん、プレイヤーじゃない、ってはっきり言ってくれたらよかったんだけど。
そうすれば容赦しないで済むのに。
「ペットの不始末は飼い主がつけるものじゃぞ」
「……わかっている」
「それで、血のルクレツィアとヴォルケインの件を知らぬのなら、儂らが後片付けをしている、というのはどういう意味じゃ?」
「だから、この山だ。オブシディアンドラゴンをテイムする際、思ったより抵抗が激しくてついつい最上級魔法を使って……ぶっ壊してしまった山を、戻してくれただろう」
魔法使いは確定。
ただし魔法検知に引っかからない、か。厄介だな。
そんでその最上級魔法とやらは黒曜山を吹き飛ばせるほどの威力がある、と。
「他にも……人間界に連れて行ったら突然制御できなくなったオブシディアンドラゴンを倒してくれたのは、お前だろう。遠くから見てたけど……見てたが、あれらプレイヤーに適切なエンチャントのついた装備を与えたことはわかっている」
「まぁ、そうじゃの」
「はは、やっぱりな! ……あれだけ苦労して手に入れたオブシディアンドラゴンを失ったのはちょっと勿体なかったが、お前の存在を認知できたのが何よりの報酬だ」
うーむ。
俺には拘束系のスキルがない。無いというか、作ればあるんだけど、そういうの大体INT依存だからすぐに破られてしまう。
睡眠もレジストされたら終わりだし、状態異常系の耐性取ってない魔法使いなんてそうそういないので無し。それが敵対行動ととられてお陀仏、もありうるしな。
この場で最も適切な対処法は。
「そうか、そうか。わかった。──とりあえず、一緒に行動せんか?」
「は? ……あ、じゃなくて、ほう?」
「儂はベンカストを見つけ、取り戻したい。お主はテイムモンスターの制御を取り戻したい。利害の一致という奴じゃ」
「……ふむ」
逃がさず監視し、ベンカストも見つける。
これをやるには、これが一番だろう。ベンカスト見つけた後に適当にパチこいて魔族連中に見つかれば、あるいはまおうのトコにまで声が行って増援、とかいけるかもしれないし。
ルクリーシャ嬢は……まぁ家から出てこないなら後回し。ヴォルケインも炎魔窟から出てこないと見て。
「──いいだろう! 最高の
「ほほ、ありがたいの。あ、それじゃあ儂、連れに一言書置きを残しておいていいかの?」
「む、そうだな。報連相は大事だ」
やっぱコイツプレイヤーだよな?