お 守 り く れ る 怪 し い 老 人   作:老人というだけで怪しい(偏見

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話の進みが遅い!


12.ロールプレイ含有率120%

 拝啓 マルクス・オールァ・ウィンダル殿へ。

 真犯人っぽい奴を見つけたので内情探るついでに同行してみることにしたのぢゃ。

 その過程でファザクフルメルミリナを置いていってしまう結果になったのは申し訳ない。もし落ち込んでいたら、ミリナに責任はないと伝えてやってくれ。

 

 P.S. 黒曜山について、少しばかりの不思議があった。儂の記憶が正しいのなら、黒曜山は千年前天を衝くほどの高さだったはず。しかしミリナ曰く七十年前にはもう半分ほどの高さになっていたという。また、真犯人っぽい奴の証言ではオブシディアンドラゴンをテイムした際に壊してしまったとかなんとか。時系列の齟齬が妙に大きい。

 何か知ってたらメール返してちょ。

敬具 

 

 

 ☆

 

 

 テイムモンスターを捜すといっても、一概にどうしたらいいか、と問われると難しい。

 ゲーム時代のスキルにもそういう広域捜索、みたいなスキルはない。まぁミニマップがそうであるといえばそうではあるけれど。

 冒険者系ジョブのスキルは一度見つけたものを追い続けるスキル、あるいは隠されたものに近づいた時それを見つけることのできるスキルに偏っているため、どこにあるかもしらないものを見つける、なんて所業はできない。

 

 ので、地道に探すしかない。

 

「のぅラクサス。主が手を付けたテイムモンスターはどれほどいるんじゃ?」

「む。確かにそれを言わなきゃ……言わなければ見つけようもないか。そうだな、まずゴブリン軍団だ。三十そこらのゴブリン軍団をまとめてテイムしている。……最初の方は言うことを聞いていたんだが、ある村について……なんだ、女性を見た瞬間に暴走を始めてしまってな」

「助けたんじゃろうな? 流石に」

「いや、女性が『浮遊』のスキル持ちだったらしくてな、そのまま逃げたよ。……ゴブリン軍団を引き連れて」

「追いかけなかったのか」

「自慢じゃないが、オレはそんなに素早く移動できないのだ」

 

 となると、あくまでコイツが使っているのは『浮遊』、あるいはそれに類する何か。サーチスキルが反応しないから何とも言えないけど、とにかく『飛行』みたいな推進力のあるものではないのだろう。浮遊して、身体を傾けることで移動するタイプのもの。

 ただ素早く動けないからと言って逃げやすいかって言ったらそうでもない。多分広域魔法使えるだろうし、まおうみたいに雷撃による狙撃も可能であるかもしれない。

 

 ……ミリナといる時に追ってきたのソレか?

 なら、結構近くにいるかもしれんな。なんで追ってきたのかは知らんが。

 

「他は?」

「マーメイドとセイレーンだ。こっちは一匹ずつ。何ができるかは知らんが、いたから捕まえてみた。海上にいる時は良かったんだが陸地へは行けないという話でいったん待機させてた……んだが、帰ってきてみたらいなくなってた」

「まぁそ奴らはいいじゃろ。どうせ陸地には上がって来れん。次」

「そ、そうか。次は、オブシディアンドラゴンだ……が」

「それはもう倒したのぅ。次」

「ちょ、ちょっと待て能力付与術師(スキルエンチャンター)! そう矢継ぎ早に言われても困る!」

「何が困るんじゃ。今もお主の知らんところでお主のテイムモンスターが被害をまき散らしておるんじゃぞ。というかベンカストを攫ったテイムモンスターだけでいいから早く言えい」

 

 魔物をテイムするには、対象モンスターを限界まで弱らせて『使役契約』という汎用スキルを成功させる必要がある。ホ〇ケモン形式だな。当然だけど俺は積んでいない。

 そしてたとえ積んでいたとしても、現実となった今において魔物をテイムしたいとは思えない。

 ゲーム時代なら何も考えずにガリゴリ痛めつけて毒とか罠とか使ってテイミングしてたんだけど、今となればその使役した魔物がその時の記憶を引き継ぐってわかってるから絶対にできない。「主人を襲ってはいけない」というような命令もない──ゲーム時代は襲ってこないのがデフォルトだった──ので、多分フツーに寝首を掻かれて終わりだと思う。

 だから現代にはテイマーってほぼいないんだよな。たまーに幼少期から一緒に育ってきたから、っていう理由のテイマーはいるけど。

 

 だから多分コイツのテイムモンスターは全員コイツに敵意を抱いている。

 隙あらば逃げ出してやろうとしてるだろうし、あるいは一矢報いようとしているかもしれない。

 

 ……のはずなんだけど、ウィルは知己であるはずのユティを襲ったんだよな。

 そう、そこが少しおかしい。

 ラクサス曰くオブシディアンドラゴンは人間界に来た時点で制御を離れたと言っていた。その後なんだ、ウィルがユティたちを襲ったのは。そしてプレイヤーたちと戦ったのは。

 逃げることが「一矢報いる」行為だったとして、だったらすぐに魔界に帰るなりするだろう。わざわざ知己たる少女を襲うわけがない。

 あと制御を離れるのもちょっとよくわからない。「主人を襲ってはならない」という命令文がないのはそうだけど、「そこで待機しろ」とか「攻撃しろ」「防御しろ」みたいな命令は普通に出せる。ラクサスがゆっくりしか移動できないことを見越して高速で離脱したのか? それにしたって限りがあると思うんだが。

 

「ベンカストというのが誰かはわからないが、人を攫ったのはホロウナイトだろう。奴は肉体に酷く固執していたからな」

「そういえば、人を攫ったのはわかる、と言っていたな。何故じゃ?」

「オレのところから姿を消したのち、ホロウナイトだけが戻ってきたん……のだ。満足気な雰囲気と共にな。そしてまたどっかへ行った」

「お主、テイムモンスターを制御する気あるのかの?」

「し、仕方がないだろう! ようやく戻ってきたのだと期待したら、オレの前でふんすと胸を張って、そのまま手を大きく振りながらどこぞへ駆けていく、なんて……モンスターがそんなことをするなんて思うか!?」

 

 まぁ魔物魔物って言っても知性ある奴はかなりヒトっぽいのいるからなぁ。知性がしっかりあるから、って理由で魔物から魔族になったのとかも多いみたいだし。それこそフィルギャとかな。

 ぶっちゃけマーメイドとセイレーンもそうなんじゃないかと思ってる。

 

 しかし、ホロウナイトか。

 ベンカストが……ホロウナイトに? いやいや、死霊系がどうやってアークビショップに勝つんだよ。数で攻めたとかでない限り負けないだろ。数で攻めても負けるかどうか。

 あるいは自分からついて行った? 何かの目的のために……テイムモンスターだと見抜いて、オブシディアンドラゴンの件との関連性を見出してついていくことにした、とか。

 でもそれならメール出すなりしろよ。

 いやそうだよ。書置き以前にメール出せるだろ。出せないってことは……意識がない?

 

「それで、どうする能力付与術師(スキルエンチャンター)。胸を張っていうが、オレは一切の心当たりがないぞ」

「……テイムモンスターを見つけたとして、お主再度制御できるのか?」

「できる。……と言えればよかったんだがな。まだ試していないのでわからん。まぁできなかったら殺せばいいだろう」

「もし……たとえばゴブリン軍団たちが人間や魔族を攫っていて、それを人質にしてきたら。お主、どうする?」

「広域殲滅魔法だ。その後人質だけ蘇生させる」

「ふむ」

 

 まぁ、妥当。

 蘇生は何もエルダーリッチだけの特権じゃないからな。アークビショップやアークメイジにも蘇生スキルがある。エルダーリッチの奴ほど強力じゃないが。

 そして殺したまんまにしないあたり、ある程度の良識はある……のか? よくわからんな。俺もNPCの子孫に対しては良識無い方だし。

 

「よかろう。ならばまずはゴブリン軍団じゃ。少しばかり心当たりがあるでな」

「ほう! 流石だ能力付与術師(スキルエンチャンター)

 

 心当たりなんて無いが、まぁ俺達を追ってきたのがゴブリン軍団なら街の方向に向かえば鉢合わせるだろう。

 本当はホロウナイトの方を追いたいが……どこにいるかも全くわからないなら、まずは協力する素振りを見せておいた方が良いはず。

 あるいはテイムモンスター達で集まって徒党組んでたりしたら楽でいいんだけどな。

 

 人生そう上手くはいかないだろう。

 

 

 

「上手くいかな過ぎじゃ!」

「ふむ、効きはしないが……ウザったるいな」

 

 無数の風切り音。降り注ぐ槍や石。

 中には魔法やらスキルやらも混ざっていて、ひじょーに殺意が高い。生け捕りオンリーって聞いてなかったのか此奴らは。

 隣にラクサスがいなかったら今頃死んでたぞオイ。

 

 ゴブリン軍団探しに街に近づきすぎたのが悪かった。ふよふよ浮いてる俺達を見た誰かが「あ! 緑髪の男!」と言ったが最後、飛んでくる魔法とスキルと武器武器武器。ラクサスお前、フード被ってるくせに髪長くて髪色わかっちゃうとか本末転倒だろ!

 

「しかし……お主、詠唱無しに魔法を使う、というのは本当だったんじゃな」

「む、何か噂になっていたか?」

「少しばかり、の」

「ハハハ、オレも有名になったものだ。それで、詠唱だったか。まぁ、昔は必要だったらしいがな、今のオレには必要ない」

 

 物理系の防御球、魔法系の防御球。それらを並列で起動しつつ、浮遊も維持。会話できる余裕もあるし、時折軽く反撃もしている。

 こりゃ……言動とは裏腹に、フツーにヤバいな。俺のメインジョブでも倒せる気がしない。戦士系ジョブもキツいだろう。

 

「これではゴブリン軍団探しどころではないな。少し黙らせるか」

「殺す気か?」

能力付与術師(スキルエンチャンター)……オレを何だと思っている。いや確かにオレはお前たちの味方ではないが、別に大量殺戮を望む者、とかではないぞ? オブシディアンドラゴンの件は本当にすまなかったと思っているんだ。アレがもしあのままだったら、どのような被害になっていたことか」

「ではどうする。黙らせるとは」

「まぁ見ているがいい」

 

 ここへ来て初めてラクサスが「動作」をする。

 今までのノーモーションのものとは違う。何が違うか。

 

 ゆったりと前に差し出した手を天へ向け──そこに、紫色をしたプラズマボールみたいなものが出現する。……まさかと思うけどプラズマじゃないよな? んなもん投げ込んだら普通に殺すぞ威力的に。

 

「止まれ」

 

 放られる。

 放物線を描いて紫ボールは魔族たちの中心あたりに着弾し──瞬間、一瞬にして"青"が伝搬する。立ち昇るは赤い光。

 起こされた結果は、停止。

 

「……これは」

「時を止めた。ああ、安心しろ。オレ達がいなくなれば解除される。殺したわけではないし、傷つけることもない。たとえこの場をモンスターが襲ったとしても時の止まった奴らに傷をつけることはできない。無論、解除した瞬間に、とかは知らんが。ハハハ、そればかりは運が悪かったと諦めてもらおう。オレ達を攻撃した罰だ」

 

 時を止めた、だと。

 それは。

 それは……プレイヤーがやっていいことじゃないぞ。

 超高位の魔物が使ってくるスキルにそういうものはある。あるけど、こんな広範囲じゃないし、そんな効果時間も長くない。

 スキルは基本理不尽だ。原理とか関係なくそういうものとして作用する。だからこその時間停止だ。

 けど、それを魔法で?

 

 ヤバいなんてもんじゃない。

 危険すぎる。

 

「この辺りにはいないようだな。どうする、能力付与術師(スキルエンチャンター)

「……」

能力付与術師(スキルエンチャンター)?」

「ほ……ほほ。ああ、いや。というかそろそろ名前で呼んでくれんかの。あまりジョブ名で呼ばれることがないんじゃ」

「む、そうか。では……セギ。これからどうする?」

「うむ。ちなみに問うが、この時止めどれほど保つ?」

「さっき言ったとおりだ。オレ達がいなくなるまで、だ」

 

 なんだその曖昧な効果時間。

 もしかして範囲なのか?

 

「ここから黒曜山へ向かう直線上で、儂らはゴブリン軍団に一度襲われている。じゃから、もう一度、今度は低空を進んでいけば足跡が見つかるはずじゃ」

「なるほど。そこから探し直すんだな」

「完璧な足跡が見つかりさえすれば後はこっちのものじゃよ。追跡者(チェイサー)のスキルがあるでの」

「ほう! ハハハ、流石だ能力付与術師(スキルエンチャンター)。いや、オレも魔神の御業によって素晴らしい力を揮えている自覚はあるがな、正直お前が羨ましいよ、オレは。それは……もう失われた技術だから」

 

 羨ましがられましても。

 別に今でもなれるぞ能力付与術師(スキルエンチャンター)。膨大な能力付与(スキルエンチャント)練度が必要だけど。まず付与術師(エンチャンター)になって、そっから一生エンチャントエンチャントエンチャントエンチャントだ。木片とかだけじゃダメだぞ。難しい素材に挑戦したり、スキルクエストっていうNPCから受注するんじゃなくて自然と出てくるクエストをこなして行ったりして、最終ジョブまで行ったらなれる。

 今の時代それが面倒くさすぎてやる奴がいないだけだ。

 

「では行くぞ。低空だな」

「ほほほ、見落とさぬようにな」

 

 ……追加情報のメールは出しておくか。

 

 

 

「──見つけた!」

「ああ間違いない、ゴブリン軍団じゃの。なんかオーガと……うげ、アルゴスもおるんか」

「アルゴス?」

「知らんのか?」

「いや、知ってはいるが、そこまで嫌がるほどの敵か?」

「……儂はお主と違って状態異常耐性が低いんじゃよ。麻痺石化毒火傷呪毒その他諸々、状態異常を使いまくる奴は嫌いなんじゃ」

「状態異常? アルゴスが?」

「主、名前だけは知っとるものの戦ったことのないクチじゃな?」

「いやあるが……そんなの使ってこないと思ったんだけどな……」

 

 また、ノーモーションだ。

 さっきからキョロキョロしてて、人質とか攫った何かがいないかとか確認してたっぽいんだけど、それがいないとわかった瞬間、頭上に幾本もの氷柱を生成した。

 氷柱。鋭利なそれらは次第に高速で回転を始め。

 

「おい、テイム制御を試すんじゃ、」

「思い直したのだがな、特にゴブリン軍団など要らないし、こいつらは制御下においても女性を見て暴走を始めた。制御し直しても意味がない。なら殺した方が良い」

「……まぁ止めんが」

 

 別に、ゴブリンがいくらいなくなったって困らんし。

 アルゴスとかダルいのがいるのを考えたら、遠方から殲滅したほうが早いのもわかる。

 

「行け」

 

 短い言葉と共に氷柱が放たれる。

 無数の槍。氷の槍。

 回転しているそれは威力を増して、凄まじい殺傷能力を以てゴブリン軍団に突き刺さる。

 

 悲鳴と怒号。

 

「ち、生き残ったか。面倒な」

「よく見えるもんじゃのー」

「いやミニマ……周囲の生命反応を感知する術がオレにはあるんだ」

 

 またミニマップか。

 取っとけばよかったなぁぁ!

 

「面倒だな。スキル……じゃない、セギ。あの辺にクレーターを作るのは悪いことか?」

「魔界の法律は儂も知らんのじゃよな」

「そうか。──まぁ悪かったら後で謝ろう」

 

 ラクサスが人差し指をピンと伸ばす。

 そこは空。そこは宙。

 魔界の赤く暗い空。二つの月のその中心に──ポツりと光が生まれる。

 

 あれは。

 

「安心しろ、最小威力だ──十分だろう?」

 

 降ってくる。

 否、堕ちてくる。光。光だ。

 自ら輝きを放つ、光の球。

 

「エナトス・イリオス」

 

 着弾した瞬間は見えなかった。

 直視ができなかった。眩しすぎて、思わず目を瞑ってしまうほどの光。けれどそれは確実にゴブリン軍団の中心に落ちた。

 

 だから。

 

「……消え、た」

「エナトス・イリオス。()()()最上級魔法だが、オレ程ともなるとこうやって威力の調節もできる。奴らは完全消滅した。アルゴス……が状態異常を使ってくるかはともかく、こうしてしまえば関係あるまい」

「光属性……じゃと?」

「む? あ、いや、違う。火属性! 火属性だ!」

 

 無い。

 ゲーム時代にもデスゲーム時代にも、そして現代にも。

 属性は地水火風の四つだけだ。氷は水属性、雷は風属性。まおうがやっているのはそれらを工夫してどうこうしているに過ぎない。

 そして、この焦り様。

 

 コイツ、プレイヤーであってプレイヤーじゃない、とか言ってたけど。 

 もしかして、俺達と違うゲームから来た、とかか?

 

 

 

 

「……しかしこれ、クレーターどころじゃなくて、ガッツリ穴じゃけど」

「えー、あー、じゃあさっきの、あの山を直したやつをだな」

「魔界の荒れ地は含有魔力量が少なくての。無理じゃ」

「……土魔法で埋め立てておくか」

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