お 守 り く れ る 怪 し い 老 人 作:老人というだけで怪しい(偏見
ミニマップは持っていなくとも、世界マップは開ける。
これはスキル云々じゃなくシステムの話だ。この世界における国がどこにあり、他、ダンジョンやら何やらがどこにあるか、くらいはわかる。ただし何が表示されるということもないし、拡大縮小も大してできはしないが。
そんな世界マップを開きながら、少しばかりの思案をする。
世界マップにおける見た目上、アイネの村近辺のフィールドに異変は無い。というよりここは村として登録されていない。当然だ、ゲームの中にアイネの村なんか無かったのだから。
ここは名前の無い単なる森林地帯。隣接する荒野地帯という高レベル帯に囲まれてはいるものの、国家間の重要ポジションになるわけでも、盗賊の類が隠れられる場所というわけでもない。なんか隠されたアイテムがあるとかクエストがあるとかもない。
本当に何でもない場所にアイネは村を拓いた、というわけだ。
逆に言えば、この森は運営にとって手付かずのフィールド。ぶっちゃけ森林オブジェクトを置いただけの場所、ということになる。
なぜ、という疑問。
なぜ、手先だと考えられる魔神は、この村そのものを置換しなかったのか。
アイネがいるから? プレイヤーの周囲には干渉できない?
それとも、この置換された草原のあった荒野がとても重要な意味を持っていた?
さらに逆を読むならば、どこかにある置換された土地の方が重要で、そこに高レベルの魔物を呼び込むことが目的……というのは飛躍だな。それは放任が過ぎる。
……いや、放任……というか、本当に干渉できないのか?
だからラクサスを送り込んだ。自分たちでは本気でどうにもできないから。あの偽神がルクレツィアを乗っ取ろうとしていたことを含めて……。だから……。
仮称魔神、運営は「パッチ修正」しかできない。
それがあんまりにも強力だからそれが強大に見えるけれど、あくまで「パッチを当てること」しかできないのであれば、プレイヤーの記憶に変化が無いのも頷ける。
とすると……アイネ村が塗り替えられなかったのは、やはりアイネが原因か。大方、バグるんじゃないか? プレイヤーのいるフィールドにパッチを当てると。
魔王城は……まおうの奴がよく外に出ているからできたこと。
オーバーエデンもそうだ。ゼットウ曰く、ゼッケンはよく任務で外に出ていた、みたいな話をしていたじゃないか。
加えてメルカポリスとXXラオXXが死しているのなら、プレイヤーはいなくなる。
……タンダードやイグリーリュグスがそういうことに見舞われていないのは、プレイヤーが一人もいなくなる、ということが無いから。
「ガシラちゃん、どう? フィールドエンチャント、上手く行きそう?」
「そっちはなんとかなりそうだが、すまん。俺がまだこの村の奴らを信用しきれてない」
「……いつもなら怒るけど、そうだね。今回は……ガシラちゃんの心配性は良いと思う」
良かった、アイネが冷静でいてくれて。
完全に村側に付かれてたら困っていた。
「コロネ、という少女は、今どこへ?」
「眠らせたよ。最有力容疑者、だもんね?」
「お前……いつから戦闘馬鹿じゃなくなったんだ」
「ガシラちゃん、お姉ちゃんに対してホンットに失礼だよね。……ま、あたしも気付いてたよ。仮に幻術で操られていたとしても、コロネちゃんがガシラちゃんに攻撃をした……しようとした事実は変わらないし、それが映らなかったのは変」
「ああ。前にも話した通り、NPCの乗っ取りや意識改変・操作の可能性がある以上、警戒するに越したことはない。ただそう簡単に乗っ取れるとも思ってない。かなりの順序を踏む必要があると見ている」
「その矛先が、コロネちゃんに向いている、と」
「確証はないけどな。とりあえず一番怪しいのがあの少女ってだけだ」
共通点は……何か悩んでいること、かな?
NPCが何を悩んでいたところで知ったこっちゃないんだけど、ルクレツィアレベルのボスNPCが奇襲しかけてきたら普通に死ねるので、調査は必要だろう。
「……考えるのはやめだ。アイネ同伴でいい。コロネと俺で対話をする。何か引き出せたら御の字、だ」
「一応言っておくけど、ガシラちゃんの印象今最悪だからね?」
「習慣だからしょうがないんだって」
「そうじゃなくて。私が連れてきたとはいえ、ガシラちゃんが来てから村が襲われたんだもん。村人からのヘイトは当然ガシラちゃんに向いちゃうよ」
「あー」
それは確かに、そう。
ただ俺を殺そうとしていたっぽいから完全に被害者なんだけどナー、という主張も通らないか。
「攻略組からの正直な感想を言ってもいい?」
「ん、なんでも言ってくれ」
「冷たいことを言うなら、コロネちゃんはどう考えても囮……というかそれにも満たない疑似餌にしか思えないんだよね。あたしたちがコロネちゃんにかかりきりになっている間に別の作戦を進める、みたいな」
「それは俺も最初に考えた。アイネを無力化するなら、村人に不和を起こしたり、村人の抱える問題に付き合わせるのが一番だ。そうしてアイネという戦力を失った俺であるならば、この村の住民の誰を操っても簡単に殺せる」
「……もしかして、あれからずっと単独行動だったのって、釣るため?」
「まぁな。無駄に終わったが」
魔神の全員が全員あそこまで短慮なら、仕掛けて来るんじゃないかと思って。
来なかったのを見るに、少しは考える頭があるらしい。
「……仮に、だ。アイネ」
「ん」
「コロネを囮として配置する場合、敵の本丸はどこに置く?」
「んー。別に攻略組って戦略シミュレーターが得意なわけじゃないから、全部経験則になるけど」
平和且つ長閑で、アイネに守護された村。
その中に囮を置くなら。
「やっぱり、村の中になっちゃうよね」
「……同意見、だ」
村の中に囮がいたのだから、本丸は外。
という単純ロジックを仕掛けるための、実は灯台下暗しパターン。
「村の中に、地下とか、アイネしか入れない場所とかは無いのか?」
「強いて言うならウチ?」
「家はもう見てきたんだろ」
「うん。魔法もスキルもトラップもサーチアイテムに引っかからなかった」
「となると地下か。二番煎じが過ぎるけど、パッチを当てるのに地下はあまりにも適し過ぎてる。アイネが村を離れたタイミングで当てたのであれば……」
言ってて、違和感を覚えた。
そんなわかりやすいことするか? だって今、俺が『透視』付与したモノクルで地下を見れば、簡単に分かる話だ。
木を隠すなら森。
であれば、魔神を隠すなら。
「──ハ」
避け切れずに、『物理無効』が割れ砕ける。
「……凄いねー、ガシラちゃんは。お姉ちゃんと二人きりの時までそんなもの付けてるんだ?」
ああそうだ。
それも忘れてたな。
俺にはミニマップがない。
だから──コイツが本物のアイネかどうかの判別がつかない。
共にオーバーエデンへと赴いたアイネは本物だろう。というか、コロネを蘇生したところまでは本物。
ここに来たのが、偽物。
本物のアイネは……それこそコロネとお話し中か?
つーか、考えて見りゃそりゃそうだ。まだ村は混乱と復興の最中。そんで最有力候補な容疑者であるコロネを眠らせて来た、とか。
疑う要素しかない。アイネなら、眠らせたまま持ってくるだろう。その方が効率的だ。
急速に冷えていく思考。ただ……腕を振った程度で俺を殺し切る攻撃力を持っている以上、偽物だとしてもアイネレベルのステータスがあるか、そのものと見るべきか。
「怖い目だねー、ガシラちゃん」
「ほほ、異なことを言うものじゃの。儂の目は洞のように見えぬと言われるというのに」
「……? 今更RP? あたし相手に?」
「──誰も彼もが苦戦すると思ったら間違いだキーック!!」
ゴキ、と。
確実に首の骨が逝った音がした。発生源は偽アイネの首で、その首には蹴りが突き刺さっている。
「っ……!? 嘘だ、あり得ない! 村人全員で引き留めさせたのに……!」
「ありゃ? あたしの『飛び蹴り』でHP吹き飛んでないとか、ダンジョンのボスクラス?」
「敵をプレイヤーの常識に当てはめるでないわ。どうせHP系に細工を仕込んでおる。あるいは『物理耐性』、『物理無効』を仕込んでおるか、じゃな」
「ここは──お前が築いた村だろう! その村人を、まさか蹴散らしてきたのか!?」
「え、うん。後で蘇らせればいいし」
「──!」
確かにアイネは村を作った。拓いた。
長年を共に過ごしたのなら、親愛もひとしおだろう。
ただ、攻略組というのはどいつもこいつも効率厨だ。
蘇生ができるのなら、一度全滅させる、という手段を取るのは特におかしくない。既に一回潰してるしな。
「セギちゃん、コレが魔神?」
「『変装』スキルあたりか、ドッペルゲンガーのスキルでも使っておるのかは知らんがの。想定以上に直接的な干渉手段を有しているのは驚きじゃが──」
「『瞬貫払刺』」
落ちる。というか、降る。
剣だ。それが──偽アイネの頭頂から腰骨までを、一気に貫いた。
「ごめんねセギちゃん。情報取るとか理解はできるんだけどさ。あたし、全然冷静じゃないから」
──以降、起こるのは虐殺だった。
怒りの限りにスキルを、ステータスを用いて偽アイネを殺し続けるアイネ。冷淡ではない。冷酷ではない。
心の底から──自分の村が狙われたことを怒っている。
……ちゃんと人間、か。
守らなきゃな、ホント。
ふぃー、なんて溜息を吐いて、アイネはかいてもいないだろう額の汗を拭った。
──血だまり。肉片一つ残っていないソレ。
「セギちゃん、これでもまだ復活するかな」
「HPバーが弾けん限りは死なん、というのが常識じゃがの。この敵にそれが通用するかどうかはわからん」
「じゃあ、方法は一個しかないよね」
「ほ?」
こちらをにっこりと見るアイネ。
「できるんでしょ、封印。──セギちゃんの所業、あたしがなーんにも知らないってホントに思ってる?」
……。
「情報源は」
「ベンカストちゃん。イグリーリュグスのアンデッドの件を詰めに行った時に、色々教えてもらったから」
「……言い逃れはできなそうじゃの」
「なんでセギちゃんがそこまで隠したがってるのかとかもホントは聞きたいけど、ここで勘弁してあげる」
それが最大の譲歩、か。
……仕方ない。
「
「あ、やっぱりワルイコトだ。もう一回聞いたら、やってることもわかっちゃった」
「できれば他言無用で頼みたいんじゃがのぅ」
「それはセギちゃんの誠意次第かなー」
インベントリから出した水晶の方石。
それを血だまりへと投げつけ──直後、方石が血だまりを『保存』する。
「ほれ」
「……あたしに渡すんだ?」
「魔神も一応プレイヤー。じゃが……個人間の恨みつらみはまた別の話じゃろ」
「そっか。……実はあたしこそが偽物で、死んだのが本物、とかは考えないの?」
「
「よく見てるねー。ミニマップ無い癖に」
「まぁ、無いからこそ、じゃろうなぁ」
アイネが剣を抜き、振るう。
俺に、じゃない。
飛んできた氷柱に、だ。
「それで──真実を知ったコロネちゃんは、どうしてあたしたちに攻撃しよう、って思ったのかな」
「──
どくん、と……何かが脈動する音。
直後、アイネ村が呪毒フィールドと化する。
そして……村人たちが。プレイヤーの子孫たちが、次々と起き上がって……魔法を使い始める。
「んー、やっぱり駄目じゃったか」
「セギちゃん、簡潔に」
「魔神を封印するには、魔神のプレイヤーIDが必要なんじゃ。魔神にはシステムIDが四桁で振り分けられていてな。それをぴったり当てないと封印はまず不可能。じゃから今回儂はあの血だまりのあった地形そのものの封印を試んだ」
前の魔神と同じだ。
コトはそう簡単な話じゃない。倒すだけで倒せるなら、まずまおうがやっている。
アイネに渡した方石の中に、魔神の血肉はある。
脳が無ければ思考もできない。だから大丈夫……かと思ったんだけど、そういう話じゃないらしい。
「HPバーが生きとるんじゃろうなぁ。だから、意識だけの存在となって儂とアイネのいなくなったあの村にパッチを当てたとかそんなとこじゃろ」
「セギちゃん、簡潔に、って言ったよね」
「村人に悪意はない。儂ならアレをどうにかできる。ただし今から下準備をする必要があって、時間稼ぎが必要じゃ。具体的には一時間半」
「セギちゃんを守ればいいの?」
「余裕があれば村人も隔離させていくとよいじゃろ。そして蘇生をかければいい。ただ、儂がアレをどうにかするには、村の中心部までいく必要がある。じゃから──」
「だから! 簡潔に!!」
腹に手が回されて、持ち上げられる。
そのままピョーンと高く飛んで──村の中心部にまで辿り着いた。
「……もしや、切羽詰まっておるのか?」
「ここはあたしの村!! こうも好き勝手されて……イライラしないわけないでしょ」
「プレイヤーの子孫ではあるが、NPCじゃぞ」
「だから何?」
怒気。
冷たい冷たい声。
「悪かった。……一時間半だ。その間、俺の集中を切らせるな」
「護衛クエストで耐久クエスト。懐かしいね、ほんと。でもどのNPCもセギちゃんより強かったかな!」
「うるせ」
さて──では。
世界マップから座標を洗って、土地のID総当たりと行きますかね。
何分初の試みだけど……それが何か、問題でも?
☆
そうして。
「
──どんよりとした空気が、一瞬にして晴れる。
呪毒が消え去り、色鮮やかな蝶の舞うような空間へと一変する。
「アタリ、じゃ。ここのIDはSection#33432。これを基準にすれば、どこがどのIDなのかも大まかにわかるのぅ」
「セギちゃん、伏せて」
「ホ? ──のわぁ!?」
「『水平衝砲』」
アイネから放たれるは水平方向への衝撃波。STR完全依存のこれは、遠くなれば遠くなるほど威力が落ちる、という欠点があるものの、遠距離攻撃を持たないジョブ、あるいは群がる敵に対してとても有効なスキル。
それをアイネのSTRでやれば、起きるのは破壊だ。
既に廃村になりかけていた村に追い打ちが入り──そして、冷たい声での『蘇生』が始まった。
手伝う気持ちは無いでもないけど、流石に魔力がすっからかんだ。対象オブジェクトが大きければ大きいほど持っていかれる魔力デカいからな。増強系ポーションやらタリスマンが無かったら普通にキツかった。
……アイネに蘇生された村人は、何も言わない。
ただ……膝を抱え、蹲っている。
「セギちゃん。村を元通りにする、みたいなのは」
「流石に無理じゃ。すまぬ」
「……ううん。こっちこそ無理言ってごめんね。……それよりこれ、やっぱりセギちゃんが持ってて。あたしが持ってたら……また思ってもみないところで、こういうことをされかねない」
「わかった」
方石を預かり直す。
それを少しばかり特別なインベントリに入れて。
「ごめんなさい」
ぽつ、ぽつ、と。
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
「アイネ様」
「ごめんなさい……」
謝罪の声が、漏れ始める。
涙を流しながら。
「……記憶、あるみたいじゃな」
「うん。多分、操られてた時は何の疑念も持てなかったんだと思う」
「アイネ。この村はお主の村じゃ。儂はやることをやった。これ以上は干渉せぬ」
「……ん。ありがとうね、セギちゃん」
「ああ」
廃墟というか、瓦礫の山と化した村。
その中心で佇むアイネを背に……村を去る。
ここで俺にできること、もう無いからな。
自ら首に突きつけたナイフ。
それが止まったのは、止められたからだ。
「ホホホホ……。別に、お主らの自殺など止める義理じゃないんじゃがの」
「……っ」
「お主じゃろ、あの偽アイネを村に引き込んだのは」
「……はい」
いやはや全く以て俺らしくない。
プレイヤーの子孫とはいえ──死にたいと思っているのなら、放置しておけばいいものを。
しかも
「お主がここで死んだら、どうなるか考えたことはあるかの?」
「アイネ……様に、悪感情を持つ私が……いなくなれば、平和に」
「ならんならん。次に始まるのは犯人捜し。アイネがやめろと言っても村人たちはお互いを疑い続け……いつかは崩壊する。人間というものはストレスを抱え続けられん生き物じゃて、それが村となれば尚更じゃ」
果てにあるのは、殺し合いかね。
アイネの目の付かない場所で嫌がらせか。
何にせよ──悲惨な未来になるだろう。
「そこで、じゃ。お主にこれをやろう」
取り出すは、いつもの木片……ではなくアンク十字。
少しばかり特殊なエンチャントを施してあるコレは、ある種アイネへの裏切りになるだろう。
「……これは」
「お守りじゃ。この後発生する不和を中和するための、な」
効果としては、大盾使い御用達の『敵視注目+』と、メイジ系統の四次ジョブ後衛が持つ『敵視軽減+』。
ヘイトを集めて、そのヘイトを散らす、という効果を有するアンク十字だ。
「真実を話せ。そして、強くなれ」
「強く……なれません。私には……足りないものが多すぎて」
「……思春期少女か。面倒じゃのう」
NPCのお悩みとか本気でどうでもいいんだけど。
これ以上の悲劇は……アイネに刺さるからな。
「ほれ、ちょいと相談してみよ。儂はこれでも千年前の英雄じゃ」
「……でも、弱い」
「だからこそじゃ。お主は自分の弱さに嘆いているのじゃろ。丁度いい相談相手じゃ。なんせこの村、強いのばっかじゃからの」
「……」
少女は──口を開く。
「アイネ様の……家名。知ってます、よね」
「シズェンズバーン、じゃな」
「はい。……私もシズェンズバーンなんです」
「ほ? つまり……お主はアイネの娘なのかの?」
「いえ。私の母が、アイネ様の夫の妹で」
「ホホー」
「……関係ないのはわかってます。でも……比べちゃうし、比べられてると、感じちゃうし」
いや。
アイネに並ぼうとしてるってこと?
無理だろ。プレイヤーの中でも最強クラスなんだぞ。
が。
「ちなみにの、儂
「生産ジョブですか。……じゃあ、戦闘ジョブの悩みは」
「でも儂、アイネを完封できるぞい」
「……嘘です。アイネ様は……あなたになんか、負けません」
「本当なんじゃがのぅ」
なお、稼ぎ頭3でもメインでも完封できる。
吟遊聖人なんてコツさえつかめば対処は楽だ。コツを掴むのにものっそい時間をかけたのは秘密。
けど、俺のメインとアイネのPvP戦績は7:3で俺が勝ってたはず。6:4だっけな。
「そも──なぜお主、まだ
「なぜ、とは? ……三次ジョブで終わりですよ、
「なんじゃアイネの奴、そういう所隠しておるのか。自主性に任せる的な……まぁ知らんが、
吟遊聖人は最終ジョブ。
それに三次ジョブで立ち向かうのが土台無理。加えてこの村で育ったっていうんなら、ステータス上げる系のクエストとかアイテムとか一切関わってこなかっただろうし、それを突き詰めに詰めているアイネと並び立とうってのが無理。
アイツもアイツで努力してあそこにいるんだわさ。
「
「……聞いたことのないジョブ、です」
「狩人の二次ジョブと
普通はスキルポイント割り振りもあるからそんな特殊ジョブ行こうとしないからな。
行くなら、道中のスキルガン無視で行かないといけない。
「ここまでをやってようやく開かれるジョブの名は──
なお、専用装備が超カッコいいので人気職……だったんだけど、その「なることの面倒臭さ」から、悪魔殺しと同じくアバターだけそれにしたり、サブキャラでそこまで持って行って身ぐるみ剥いでハウジングで飾る、なんて使い方をされていた可哀想なジョブでもある。
とはいえ一度なってしまえばかなり強い。それまでにスキルポイントを使い果たしていなければ、四次ジョブのクセに最終ジョブと肩を並べられるくらい強くなる。
特にLv差が30以上開いた敵へ攻撃すると即死、って効果が鬼強くて、どうにか頑張って経験値稼げる系の魔物よりレベルを上げた後、そいつらを狩り続けるだけでカンストまで行く、っていうとんでも小技が存在する。この時代だったらオーバーパワーも良い所な領域まで至れるジョブだ。
「ま、とりあえずアレじゃな。お主、自己完結し過ぎじゃ。アイネを頼れ。他の大人でも良い。それを無下にするほどアイネも忙しくなかろうよ」
特に、「強くなる方法」については──アイツ専門分野なわけだし。
多分アイツを畏怖して一切そういうの聞く奴いなかったんだろうけど、こんだけ強さを渇望してる相手だったら喜び勇んで教えるでしょ。
……俺だったらNPCって時点でお断りなので絶対教えないけど。
カァン、と。
高い音が鳴って……未だコロネの持っていたナイフが蹴り割られる。
こーわ。
「コロネちゃん」
「……あ、ぅ……」
「誰も怒ってないから。死のうとなんて、しないで」
「……」
潮時だな。
あとはアイネがなんとかするだろ。
んじゃ──退散だ。じゃあな、アイネ。メンケアがんば~。