お 守 り く れ る 怪 し い 老 人   作:老人というだけで怪しい(偏見

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10.滲み出す悪意(1%)

 陥没した国、オーバーエデン。

 何もかもがなくなったそこに……その二人がいた。

 

「ゼッケンにラクサス。なぜまだここにいるんじゃ。他のはどうした?」

「セギ! お前こそ今まで何を……」

「今までの話は後でも良い。それよりラクサス、集中しろ」

「あ、ああ。すまないな、セギ。話は後だ」

 

 後らしい。

 ……何やってんだ?

 

「……左前方、二十メートル弱。下方、四メートル」

 

 ラクサスの呟き。そこに合わせて、ゼッケンがクナイを投げる。

 

「後方、六メートル。下方……深いな。十二メートル」

「二十メートルくらいならいけるから」

「そうか。……次、また左前方だ。だが近い。三メートル強。ほぼ地表」

 

 わ……からん。何やってんだこれ。

 感知系のスキルも無いからなぁ。魔法陣を描いているとかでも無さそうだし、でもなんか緊迫してるし。

 リアルタイムで何かを感じ取っている?

 

 

 30分ほどだろうか。俺が来る前を考えるともっとやっているのだろうが、まぁ大体そのくらい経って……ふぅ、と二人が溜息を吐く。

 

「よくわからんが、お疲れ様じゃな」

「よくわからない? ……ああそうか、セギ、君は見えていないのか」

「ム。まーた汎用スキルの話かの?」

「ああ。『採取ポイント強調』。生産ジョブなんだからその程度はとっておけ、と言いたいところだが」

「付与術師には要らんからのぅ、それ」

 

 採取ポイント強調。

 文字通りの汎用スキルで、生産ジョブの中でも素材を必要とするジョブには必須クラスのスキルだ。

 俺達のやっていたゲームは通常状態では素材がそうであるかがわからない。つまり、「素材」なのか「背景オブジェクト」なのかが視認だけでは判断できない。

 まぁ近づけば取得するかどうかを問うUIが出るのでこのスキルがなくとも支障は無いのだけど、とはいえ面倒が過ぎる。その面倒を楽にしてくれるのが『採取ポイント強調』。採取できる素材を強調表示する……ただそれだけのスキル。

 室内でエンチャントし続けるだけのサブキャラに必要あるわけがなく。

 

「……しかし、今していたのを見るに、もしや採取ポイントが動きまくっていた……とかか?」

「そうらしい。私の『採取ポイント強調』より精度の高いものをラクサスが所持していてな。それが敵対表示で動き回るものだから、何かまたよからぬことが起きるのかと対処をしていた次第だ」

「『採取ポイント強調』より精度の高いもの……?」

「ん゛っ、ん゛! ま、まぁオレが魔神より授かった……というか、オレからすると持っていて当たり前……いやなんでもない、まぁオレの力なんだ」

「行動理由はわかったが、結果は何か得られたのかの?」

「少しばかりのアタリはつけられた」

「ほう」

 

 是非聞かせてくれ。

 ……と言おうとしたのだけど、目線が凄い。

 

「セギ。まずは君の開示が先だ。勿論この異常事態解決に協力するのは全プレイヤーの義務と言ってもいい。だけど、君だけが隠し事をしたままで、私達は情報を明け渡さなければならない、というのは……些か不公平だろう」

「そ……そんなことを言っている場合ではないと思うんじゃがのぅ」

「そんな風に秘密主義を貫いている暇ではあるのか?」

 

 あー……。

 天秤だ。

 

「一応聞く。儂の何を知りたいんじゃ」

「君が何故生きていられるのか。君の存在はどういう絡繰りになっているのか。君が知っていることは何か」

「つまり、洗いざらい、と」

「話せない事情があるのか?」

「ある」

 

 きっぱり言う。

 

「話せない事情があるから、話さないでいる。事情がなければ隠し事なんぞ極力せんわい」

「……それは、私達からの不信感を買ってまでも……開示できない事情なんだな」

「そうじゃな。心底仲間じゃと思っているお主らからの不興を買ってまでも、開示するわけには行かん事情じゃ」

 

 まだ、その時じゃない。

 ただそれだけといえばそれだけだ。

 でも……。

 

「……」

「……」

「……そ、そのだな。えーと。喧嘩は良くない……というか、何も生まないというか、その……あー……」

 

 全く以てその通りなんだけどな、ラクサス。

 ……ゼッケンに譲る気が無いなら、これは平行線だ。

 インベから出した木片を使う。『浮遊』のエンチャをつけてある奴。

 

「ホホホホ……残念じゃな」

「逃げるのか、セギ」

「ああ。儂にはやることが山積みでの。加えてタンダードでは指名手配と来た。こうなれば雲隠れも已むを得まいよ」

「問題解決を放棄して? ──それとも、君一人で全てを抱えて、か?」

「そんな善人に見えるのかのぅ、儂」

 

 残念ながら、決別だ。

 

「わかったことが増えたら、追ってメールを出す。さらばじゃ」

「させねぇよ、馬鹿。スフィアケイジ」

「幽閉塔!」

「プリズムプリズン」

 

 アークメイジ、幽界暗殺(ファントムマーダー)、アークビショップの拘束技。

 その全てが俺の身体をすり抜ける。

 

「チッ、やっぱり効かねえか! Buffろう!」

「わかってる! 標的強調(マーキングエンファサイズ)!」

能力付与(スキルエンチャント):Enc(ID:Doppelgänger_Duplication).Ob(ID:Snowball).Op(Effect(Pass))」

 

 浮遊し、逃げる。

 自分の身体に標的強調がついていることはわかっているので、高く高くへ。

 雲の中へ。

 

 そして、今しがたエンチャしたアイテム『雪玉』に標的強調を移し替えて、アンダースローで投げ捨てる。自身は雪玉とは別方向に移動。

 

 知ってたさ。ゼッケンが実力行使じゃなく対話を選んだ時点で、時間稼ぎをしてる、ってことくらい。

 ゼッケンは基本的にまずぶちのめしてから吐かせる……脳筋タイプだからな。

 

 まー、まおうとベンカスト、Buffろうまで引っ張って来たのは予想外だったが……。

 

「──頼んだぞ、()()()!!」

「ほ?」

 

 直後、来る。

 俺が入った雲を──丸ごと飲み込む、黒い口。

 

 それは。

 まーっずい。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 当然の話なんだけど、『浮遊』も『透過』も、モンスターの身体は通り抜けられない。それができちゃうとボス素通りで報酬ゲットができちゃうから。

 また、『物理無効』もその瞬間における物理攻撃を無効化できるだけで、継続的なものを防げるわけじゃない。

 

 というわけで、俺は見事捕まり──自死を選択した。

 

「……ってなわけで、今の俺は完全なお尋ね者なんだわ。匿ってくれキキッシュ」

「馬鹿じゃないですか。それ私に何のメリットがあるんですか」

 

 そうやってまた目覚め直し、アイネが近くにいないことを確認。

 情報交換はしたいし、気付いたことの警告もしたい……んだけど、あっちが完全に俺包囲網を作っている以上それも難しい。ので、タンダードやイグリーリュグスのある地域とは別地域の国へとやってきた。

 プレイヤーは別に偏った場所にいるわけじゃないからね。

 

「メリットはある。永遠エンチャ以外なら俺のエンチャ10個くらい無償でやってやる」

「……そーれーは……メリットですね。デメリットも大きいですが」

 

 キキッシュ。

 半魔族であり、トカゲのような目と頭部に生える赤い角が特徴的な……逆に言えばそれ以外はちょっとモブっぽいとさえいえるキャラメイクのプレイヤー。

 攻略組でもなければ国の主要人物でもない、マジでただの一国民。

 

「んー。……んー」

「ほほほ、飲食も要らぬし、世話も必要ない老人じゃ。ただお主のクランハウスに匿ってくれるだけで良い」

「まー……ガシラさんのエンチャ10個は……魅力的かぁ」

「じゃろ?」

「っていうかなんでいきなりロールプレイ始めたんですか? 周囲、誰もいませんよ」

「誰か来るかもしれないじゃろ、往来なんじゃし」

「そりゃまぁそうですけど……ああそうか、ミニマップ無いんでしたっけ」

「ほほほ、このやり取りも懐かしいが、そういうことじゃ」

 

 マイアラート公国。

 ゲーム時代から名前の変わっていないこの国は、そこそこの活気にあふれている。だから、そこそこの人通りがある。

 

「そして……お主のやっているワルイコト、儂知っとるからのぅ」

「ぐ。脅しですか」

「いやいや、共犯者、という奴じゃよ」

「……20個。無償20個で手を打ちます」

「決まりじゃな」

 

 よーし。

 アウリヌス・レクスの時も述べたけど、クランハウスは基本的に最強だ。許可した者しか入れない性質は、逃げ先に丁度いい。加えてキキッシュの持つクランハウスは役所に近く、ポストを利用しやすい、というのもポイント高い。

 

 ただし、これまた前述の通りクランハウスは維持費がかかる。

 それを重要ポジでもなんでもないキキッシュがどうして千年間払い続けていられたか、と言えば──。

 

「──とりあえず形式だけ。ようこそ、クラン『人間牧場』へ」

「ホホホホ……いやホント悪趣味だよね」

「追い出されたいならそうだって言ってくださいよ」

「すまんすまん」

 

 クラン『人間牧場』。

 ゲーム時代は『標本ホログラム』というアイテムを用い、多種多様なNPCの姿をコレクトし、それを並べていただけのクランだった……のだが、現実化して以降、キキッシュらクランメンバーは「思い切った行動」に出た。

 

 それは、今クランハウス内に通され……眼下に広がる光景が物語る。

 

「何種類くらいいるんじゃ、今」

「330ちょい、ですかね。千年間でそれしか増えないのは思う所もありますが、まぁまぁ、毎日発見の連続で面白いですよ、N()P()C()()()

 

 R18なこと……は、一つも無い。クランメンバーにはそれを期待していた者もいたらしいけど、効率化を図った結果、こうなった。

 美しく区分けされた個室に、NPCが一種類ずつ居住していて、毎日決められた命令を基に動き、適切な年齢が来たら決められた相手NPCと番わされる。

 

 ──真実、ディストピア。

 

 俺は何とも思わないけど、当然良識あるプレイヤーからは反感を買った。

 NPCだって生きているんだぞ、なんて言ってキキッシュらを批判するプレイヤーも現実化当初は数多くいたものだ。

 ただ、先も言った通りクランハウスは無敵なので、そこに籠ってしまえば他プレイヤーも手出しはできない。そういう立てこもりを一年も二年も続けていれば、批判していたプレイヤーも消える。臭い物に蓋をするが如く、マイアラート公国から居なくなった。

 そうして──キキッシュら『人間牧場』は、「畜産業」……まぁ簡単に言うと「奴隷売買」という形での収入源を得たわけだ。

 ダブったNPCは要らないから、と。

 

 なお、キキッシュはクランリーダーではあれど、「奴隷売買」における経営責任者とかではない。それは別のプレイヤーがやっている。だからこいつは本当に一般人なのだ。ただNPC繁殖が好きなだけの変態。

 

「悪趣味って言いますけどね。公国は奴隷制度を認めてますし、ウチが育てた奴隷は質が良いって巷じゃ有名で、だから公国側にもメリットがあるんですよ。別に購入後NPCをどうするかはバイヤーの裁量なんで、兵士に育てるでも慰み者にするでもなんでもござれ。私達はNPCの種類を増やすのが主目的なんで、お金はクランハウスの維持費プラスαくらいでいい。ね、win-winでしょ」

「ちなみに今までNPCから復讐されたことは?」

「数えるのも億劫な程に。でもまぁ対して育ってないNPCに何をされたところで、ねぇ?」

 

 この通り、俺以上にNPCをNPCとしてしか見ていないキキッシュ。

 確かに攻略組だのまおうだのレベルの強さは無いが、こいつもちゃんとプレイヤーだ。だからそんじょそこらのNPCに負けることはない。

 

「んじゃガシラさん、早速ですけど開発部に通しますんで、そこで要望ヒアリングしてエンチャやってください」

「俺がヒアリングするのかよ」

「あー。……わかりました。後で私がまとめておきます。……ならどうしますか、その間、マイアラート公国の観光でもします?」

「前に来たの四百年前とかだけど、そっから変わったことある?」

「劇場が出来ましたよ。音楽堂。全部NPCがやってるんで、ある意味私達にとってはクラシックですね」

「ほー。面白そう」

「入場料が馬鹿じゃないかってくらい高いんで、適当に侵入すると良いと思います。ガシラさんそういうの得意でしょ」

 

 大得意です。

 

「他にも芸術関係が育ってる感ありますね。私、欠片も興味ないのでアレですが……ああそうだ、トランクラッファと面識ありましたっけ」

「一応、全プレイヤーと面識はあるよ」

「うわ流石過ぎです。んで、トランクラッファがマイアラート公国の観光産業大臣やってるんで、そこ訪ねるのもアリじゃないですか?」

「へー。ちなみに公国の王様はNPC?」

「ええ。世襲制なんで手出しはできてないですが、ウチの戦略部が妃候補を繁殖して逆に王家の血筋を奪おうって算段立ててます。ガシラさんもなんか珍しいNPC見つけたら報告ください。結構良い値段払いますよ」

 

 ……別にNPCに思う所はないけど、ミンファとかフィミルとかのことは言わんとこ。

 流石に罪悪感が勝るわ。

 

「夜頃には帰るから、それまでにヒアリングよろ。……と思ったけど、別にいつでもいいや。日帰りするってわけでもないんだし」

「こっちが必要としているエンチャントが多いんで、早めにヒアリングしておきますよ。それではいってらっしゃい」

「あいよ」

 

 さてさて。

 では、恒例のアレから行きましょうかね。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 文明の利器を懐かしむ……なんてこともしなくなった、羽根ぺンでの執筆中のことである。

 NPCにメール受信機能持たせた方が早いんじゃないか、という苛立ちを抑えながら、NPCに伝わる文字で報告書や指示書を作成していくこと数分。

 ふと、部屋に置かれた長時計に目が行く。

 

 ここ数百年ほどで「芸術」に目覚め始めたNPCが作った時計。現実世界で長時計なんてものを見る機会に恵まれなかったものだから、それが精巧であるのかどうかさえ判断のつかない代物であるが──まぁ、自身の執務机に置くくらいには気に入っているソレ。

 

 ソレの輪郭が、妙にぼやけている。

 

「……眼精疲労とか、マジ? 種族年齢だとまだまだ若いはずなんだけどな……いや眼精疲労に種族関係ないか……」

 

 昔々、むかーしむかしの会社員時代を思い出し、翼の生えた腕を持ち上げ、額を揉む。

 キャラメイク時に何気なく付けたこの羽根は、なんだかんだいってありがたい。暖かいので目の疲れを癒すに丁度いい。

 

 そうして目を瞑った──直後。

 

「ほほほ……お疲れのようじゃな」

「……それNPCにやれよ。それとも見分けつかなくなったのか耄碌爺」

「だってこの国初心者NPCほとんどいないじゃん」

「いたら『人間牧場』が攫ってるからな。そりゃいねーよ」

 

 眼前に、フクロウのような老人がいた。

 だから、溜息を吐いて……挨拶をする。

 

「久しぶりだな、妖怪爺」

「久しぶりだなーほんと。妖怪ハーピィ」

「ぶち飛ばすぞテメー」

 

 懐かしの顔に。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 不発である。

 いやね、俺も迷ったのよ。俺を知らないNPCにやらないと意味が無いからさ、「お守りくれる怪しい老人ロールプレイ」は。

 でもこの国のNPCの水準超高いの。多分だけど元奴隷のNPCなんだろうね、四回くらいこっそり近づこうとしたけど察知されて断念した。

 

 ので、キキッシュに言われた通りトランクラッファの元に来て、疲れてたっぽいからワンチャンにかけて玉砕した感じ。

 

「しっかし……マジで久しぶりだな。この仕事片付けたら飲みに行かねえ? オロン_ccがやってる居酒屋があってよ、酒がうめーんだ」

「ほー。ちゃんと酔える奴?」

「そこはまぁ、雰囲気だ雰囲気」

「あーね」

 

 キキッシュとは然程だったけど、実はトランクラッファとは結構仲が良い。

 なんせ別ゲーでもフレンドだったから。そっちでもトランクラッファって名前だったけど、由来聞いたら「ん? 語感」らしい。いるよねそういう奴。

 

「で、なんだよ今回のトラブルは。お前、自覚無いトラブルメーカーだからな、毎回毎回楽しみにしてたんだぜ、ゲーム時代は」

「マジで? 俺解決する側だと思ってたんだけど」

「自分で持ってきて周り巻き込んで解決するからなーお前」

「あー……それは否定しない。んじゃまー、事の顛末くらいは話すけどさ」

「おう!」

 

 かくかくしかじかまるまるうまうまなっとうねばねばびよーんびよーん。

 

 なワケです。

 

「……全然楽しめないタイプのトラブルっつか厄介ごとだなオイ」

「だから情報が欲しい」

「でも、お前の情報をあの性悪女に売れば、しこたま金が手に入るんだよな」

「メールの操作した瞬間に俺この国から消えるからな」

「ダッハハハハ! 冗談だって! つーか俺あの性悪女と相性悪ぃし、何よりお前を売ったりしねぇよ。……あとこの国に法国が来てみろよ。やべーだろ、色々」

「まぁ、法国のNPCが怒髪冠を衝くだろうなぁ」

 

 マイアラート公国……というか『人間牧場』のやっていることは、プレイヤーは勿論NPCからも反感を食らう。加えてイグリーリュグスのNPCはかなり強いので、キキッシュレベルだと勝てない可能性が高い。

 そうなったらまた立てこもりだ。あるいはそれを受けて、マイアラート公国が法国に政治的措置を行うかもしれない。前に来た時より奴隷産業はかなり確立したものとなっているようだから。

 マイアラート公国は、キキッシュ達を守る。

 そうなれば……お互い引けずに大戦争まであるってことだ。

 

 NPCがどんだけ死のうが構わないけど、当然プレイヤーも駆り出されるだろうからなぁ。

 NPCの国同士の戦いでプレイヤーが死ぬとかあまりにもつらすぎる。

 

「ってなわけで、安心しろ。この国にいる限りは守ってやっからよ」

「サンキュー。……で、ここ最近で変わった事とか聞いてんだけど、どう?」

「例のパッチが当てられたみたいな、って奴だよな。……んー、一応俺、今観光産業大臣っつー国全体を見る仕事してんだけど……特に異常は無いと思うぞ」

「やっぱりか。プレイヤーがいる国には手を出せない、って推測はあってるっぽいなぁ。だとすると、やっぱりオーバーエデンが……」

 

 あそこにはゼッケンがいたのに、なぜ、と。

 そして楔とはなんだったのか、と。

 謎ばかりを残して出てきてしまった。

 

「ああでも、新しいダンジョンならいくつかできてる。どこも40Lv.を超えない雑魚ダンジョンだが、言われてみりゃ加速度的に増えていってる気がするな」

「ダンジョンの急増……それは、俺達が行ってたようなダンジョンか? それとも」

「魔界のアレ、炎魔窟みたいな、入り口が地表にぼこっと出てて、中が広いタイプのダンジョンだ」

「んー。それはまぁ……わりかし普通のダンジョンか、一旦」

「ああ。だから言われるまで不思議には思わなかったよ」

 

 魔界と違って、人間界のダンジョンはまぁ、増える。

 イミディアリーダンジョンと呼ばれるもので、森とか洞窟に湧く。フィールドモブみたいな感じで湧く。

 そして、一定数クリアされると消える。基本は十回で、デカイのだと百回とか五百回とか。

 プレイヤーの数に対して消える回数が少なすぎるって点は運営へのクレームとして何度も入ってたんだけど、イミディアリーダンジョン自体のポップ数を増やす、という形で解消された。ひっくり返せば、頑なにクリア回数の制限を取っ払わなかったってことだ。

 

 魔神が運営陣である以上、そこの意味も追っておくべき……か?

 

「ガシラよォ、お前、いつのまにそんな一人で抱え込むようになったんだ?」

「割と元からじゃね?」

「いーや。高難度ダンジョンとかボスの素材ほしい時は、ガンガンフレ呼んでただろ」

「ああまぁ、そりゃゲームだったからだよ。今は……危ねぇから」

「だからこそだろ? ──いるじゃねぇか、うってつけの、消費しても何にもダメージの無い奴らが」

 

 ……あー。

 まぁ。

 うーん。

 

「プレイヤーの子孫の可能性は?」

「無い奴を選べばいい。公国のプレイヤーほどNPCの見極めに長けた奴らはいねーよ。寿命でおっちんじまった奴らの子孫は、ちゃんと保護してるしな。俺達はお前と似た感性持ってんだ、そこんとこは抜かりねーよ」

「でもNPCだろ? 使い物になんの?」

「ぶっちゃけならねえ。けど数はいるんだ、人海戦術には持って来いだろ」

「成程。……俺は立場無いけど、もしかして」

「おうよ! つっても観光産業大臣の立場は使わねえけどな。俺は色々持ってんだ、立場と肩書ってのを」

「へぇ。それで、今回使うのは?」

 

 トランクラッファはすんごい悪い顔で笑って、言う。

 

「『処刑執行担当官』だ」

 

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