お 守 り く れ る 怪 し い 老 人 作:老人というだけで怪しい(偏見
魔王。
と一概に言っても、遍く人々の想像するような極悪非道で冷酷無比な超悪者……を指す言葉ではない。単純に魔界の王だから魔王だ。魔界に住んでいる種族だから魔族だし、魔界に出生の所縁があるから魔物だし。
故、魔王だからって魔物や魔族を統御できるわけでもなければ、その生殺与奪に強権を持っているわけでもない。人間の王が動物や人を意のままに操れないのと同じ。
ただし、だからといって何の力もない奴が魔王になれるわけでもない。魔界の絶対の法則は魔王にも適用される。即ち強い奴が偉い。偉い奴は強い。
金だの権力だので偉くあるやつは一人としておらず、というか権力を持っている奴は強力な力も兼ね備えている。
魔王は、魔界における最強。
現魔王は歴代最強である。
ので。
「全く……我はそこそこ疲れているのだがな」
「ほほほ、では偉く強い魔王殿が、儂らのような生産ジョブ二人を矢面に立たせると? それは酷い話じゃのぉ~、弱者は強者の庇護下にあればこそ、強者を崇めるものだというのに」
「だから今我がすべてを蹴散らして進んでやっているのだろう……」
全然、全く、フツーに関係なく。
魔王だろうがなんだろうが魔物は襲ってくる。炎魔窟の魔物はそれはもうわんさかうんさか、イステア少年の言葉を聞くに最近ずぅっと訪れる者がいなかったっぽいので、エサが来たエサが来たと大喜びで魔王に群がっていく。
それを千切っては投げ千切っては投げ千切って鼻毛。
最終ジョブのアークメイジであるというのにデスゲーム後から格闘術や剣術を学び、そっちも行けるようになったとかいう何言ってんだコイツな魔王が炎魔窟をガンガン攻略していく。
どちらかというと魔族の王ではなく魔法使いの王なコイツだけど、STRとか俺並みに低いはずなのにバフバフ&バフでとりあえず動けるぐらいにして、それはもう流麗で研鑽の積まれた剣術と格闘術と勿論魔法でそれはもう一騎当千の、破竹の勢いでガンガン行こうぜ! だ。
「……」
「ほほ……何か思うところがあるのやもしれんが、今は堪えてほしいのう」
「……わかってるよ」
ゲーム時代、魔法にはそこそこ長い詠唱が必要だった。だから剣士だのなんだのに守ってもらう必要があって、けれどその分広範囲殲滅系の魔法を多く覚えられたからどのパーティにも必須な火力ジョブで。
それを、魔王は……というかまおうは、「魔界へ一緒に来てくれる友人全然いないんだけど」という理由から一人でできるようにした、という話。
剣だの拳だので自身の詠唱時間を稼ぎ、矢継ぎ早な止めどない攻撃をし続ける。それが魔王の戦闘スタイル。
素の言動はアホっぽいが──というかアホだからこそ「どっちもやればいいじゃん」に至ったがゆえの最強。
だから、そんなまおうが他者に呪いをかけ続ける、とか想像もつかないんだよね。
「ほ……おぉい、魔王。後ろの敵がリポップしたようじゃぞ。ほれほれ、防護防護」
「セギ、お前は自分でできるだろう」
「生憎と今は防護系切らしててのぅ」
まぁ確かに、俺は自衛手段ならば死ぬほど取り揃えている。死にたくないから。
死にたくないならこんなとこ来るなよっていやごもっともなんだけど、フツーに生きてたって危険なトコ行ってたって死にたくないのは同じだろう。備えあれば患いなし。そんでもって今が備えの必要な時ってだけの話。
なんで、まぁ、仕方がない。
火傷耐性、炎熱耐性つけまくってあるローブに着替えるか──なんて思ってたら。
「このっ──」
イステア少年がポーションらしきものを投げる。
それは放物線を描いて背後、迫り来ていた燃える獅子の魔物の眼前に落ち。
「我願う大海招かん異形の導!」
ポーションを中心として通路を遮るような大渦を生み出した。
「ほぅ、魔法か」
「ふん、僕だってこれくらいできるんだよ!」
魔法なー。
コレも多分グリッチ使えると思うんだけど、如何せん俺が魔法使えないから検証のしようがなくてな。恐らくエンチャントと似たような構文ではあるはずなんだよ。同じゲームだから。たとえばEncの部分がMagで、Opの……Rangeとかは一緒で、あと座標系の指定関数もあるはずで。
今イステア少年が言った詠唱。それも魔法構文の言い換え的なものだと俺は睨んでいる。スキル未使用の
ただまぁ多分だけどその部分いらない。時が経つにつれてスキルやスキルとしての魔法の扱えない人々が考案したそれっぽい文章だったんだろう。そこにそれっぽい文字列を足してみた、みたいな。
でもやっぱり俺魔法使えないから、こればっかりは俺から指摘する云々でもないと思ってる。それこそまおうとか、他の魔法使いがちゃんと研究すればいい内容だ。
「ライトニングホーン」
バヂ、という空気を引き裂く音と共に、俺とイステア少年の間を通り抜ける雷の角。
それがイステア少年の作り出していた大渦に直撃し、大瀑布を起こす。
「フ、炎には水。それは然りだが、水魔法には決定打となる攻撃力がない。本気で敵を仕留めたいのならより殺傷力のある魔法を選べ、少年」
「……ふん!」
「──……?」
目線。
イステア少年の態度からだろう、「え、俺なんかした?」という問いが多分に含まれている。あ、忘れてたけどコイツ中身男ね。女性アバターだけど。
ちなみに結婚済み。性別を持たない魔族と番ったはず。
「まぁ良い、そろそろ最奥だ。セギ、『魔法無効』は備えているか?」
「無論じゃて。ここへ来るに持ってこない阿呆はおらん。……事前に知らされていたわけではないがの」
「ならばいい。我は自前で防ぎ得る。その少年は我が守ってやろう」
「別に、」
「別に『大爆発』が来る前にお主が倒せばよかろう? わざわざ待ってやる必要もなしじゃ」
「……それはそうだな」
最奥。
炎魔窟のボスは、炎の魔人ヴォルケインだ。四つ腕で全身燃えてる大男で、格闘と火魔法を主体に戦う純粋な火力ボス。んでHPが一割を切ると『大爆発』という、最奥のボスルーム全土を焼き焦がす大技を使ってくるので、それを対策しておかないと全滅する。
が、対策なくても突破できる方法もあって、それが。
「ならばセギ! せめて寄越せ!」
「ほほっ、ほれ、受け取るがよいぞ」
放るのは指輪。
カーネリアンのはめ込まれたそれは、インベントリにしまってあったエンチャントの一つ。
刻まれしは一回発動きりの『魔法攻撃力二倍』。
ドアが開く。
紫電が舞う。その手に宿るは大気を渡り割く雷撃の花弁。
「トールスマッシャー!!」
風属性最上位魔法。INT依存の魔法はまおうのステータスをして現存生物の最大威力を成し、その上でそれを二倍した神の怒槌が今射出される。
壁に。
「は?」
「ほ?」
ダンジョンの壁はこの世界における最高の強度を持つ。というか不壊だ。
だから超威力の、適正レベル76程度蒸発させんとする勢いで放たれた雷撃は、しかし壁に阻まれ消える。
消えた。
パキン、と。『魔法攻撃力二倍』の付与してあった指輪が割れる。
「……だから言おうとしたのに。別にそんな準備しなくたって、誰もいないよ、って」
ちょっとイイカンジの展開に盛り上がっていた
ダンジョンの機能停止。
これが意味するところを、俺はまだよくわかっていない。
「ふむ。昨今よくある話ではあるのだ。ダンジョンの要……つまりダンジョンのボスが不在となることで、ダンジョンの機能が停止し、その中の魔物が溢れ出てくる……という事案がな」
「何故それは起こる?」
「現在調査中だ。我もそれなりに多忙でな。本来こんなところで寄り道をしている時間はないのだが……丁度いい機会でもあるか」
ダンジョンの最奥にはそれぞれいびつな形の石像が存在し、それらはフレーバーテキストとして「魔神信仰の名残」とされていた。実際のゲームでは魔神なんて出てこないし、神と名乗るのはただの一柱だけ。その一柱はデスゲーム攻略組が命を賭して倒し切った。
他、魔族が魔神を信仰しているなんて話は聞いたことがないし、人界に戻ればさらにその話は薄まる。神自体の名前も出てこないくらいだ。
ちなみに法国は別に神を尊ぶ国じゃない。どっちかっていうと聖霊だな。
「イステアといったか、少年」
「……なんだよ」
「お前がセギをここに連れてこようとした理由はなんだ? ここに何がある」
「……」
そもそもこの世界におけるダンジョンとは何か。
その答えも実は出ていない。長年この世界にいるけれど、俺はずぅっと"路地裏からぬぅっと出てきて何故かお守りくれる怪しい老人ロールプレイ"やってたからな。世界の秘密を解き明かさんとしているプレイヤーもいるのだろうけれど、俺はそっちの流れにはほとんど関わってこなかった。
まおうのように魔界を統治したり、ベンカストやJJJ*1のように一国の最上位に上り詰めたり、かと思えばBuffろうのように気を許せる仲間を募ってクランを開いたり。
みんな思い思いの生き方をしていて、俺もロールプレイに固執していて。
……ずっと待ちの姿勢で……NPCが新スキル新ジョブを得るのを待つ、なんてことをしている暇があったら、この世界を踏破してみせるくらいの気概を見せるべきなのかもなぁ。
「ほほほ、まずそっちの問題を片付けるとするかの。そうでなければ話が進まん」
「何の話だ、セギ」
そっちの問題。
呪い云々の話だ。
「単刀直入に聞くぞ、まおう。お主、今誰かに呪いをかけておるかの?」
「イントネーションに気を付けろ、セギ。そして我は誰かに呪いをかけたりはせん。カースウィザードの魔法は一々回りくどいゆえな、我は単純火力の方が好きだ」
だよなぁ。
武術や戦闘に関しては天才という他ない才能のあるコイツだけど、陰湿なことについての才能はからっきしだ。権謀術数から最も縁遠きがまおう。最も縁深きがベンカスト。それくらい苦手。
使えはするだろうけど、使わない。まぁ攻略に必要とかだったら使うだろうけど。
「じゃそうじゃが、イステア少年。お主の姉に呪いをかけているのは此奴ではないのか?」
「……」
「だんまりじゃわからんのぅ。まぁいい、別に隠すことでもない。曰く、この少年の姉に呪いをかけたのがお主で、その姉御は今寝たきりにならざるを得ない程衰弱しておる。まおう、心当たりは?」
「だからイントネーション……もういい。で、先も言ったが呪いなんぞ我はかけん。というか呪いだったら解呪すればいいだろう」
「それがのー、状態異常回復ポーションで解呪を試みたんじゃが、一度は解けたもののすぐにかかり直しての。つまり誰かがこの少年の姉御を呪い続けていることになるんじゃが」
「我ではないのは確実だな。魔法には制限距離がある。我はこの魔界を飛び回っている身、常日頃その者の傍にいるでもない限り、呪いのかけ直しを続ける、なんてことは──」
ほぼ同時に見る。俺とまおうは、バッとイステア少年を見て。
「……そうだよ」
彼は──泣きそうに笑って。
「ッ、マズい! マジックシールド!」
直後、『大爆発』した。
まぁ。
そういうことなのだろう。
「おいセギ、この『大爆発』おかしいぞ、一向に収まる気配がない」
「爆熱フィールドになった、と見るべきかね。いやぁ絶対プレイヤーの子孫だと思ったんだけどなぁ、ピンク髪は」
「呑気か。俺はいいけど、お前がヤバイだろ! こだわりなければ一旦退くぞ!」
「おっけー。魔力アップ系いる?」
「++でいいから一個あると助かる」
「りょ」
炎魔窟が爆炎に包まれている。
その爆炎、止まることなく。いや留まってはいるけど。
ので撤退である。
「俺の腰に掴まってろ。一気に行く」
「はいよ」
一応女性アバターの腰……とはいえ鎧でガッチガチのそこに掴まる。
直後、まおうの足元に大量の水と、その背に莫大な風の塊が発生したのがわかった。
「ついでに、追ってはこないだろうが──アイスウォール!」
氷壁。水魔法は火力がない代わりにこういう詠唱の時間稼ぎ系の魔法がたくさんある。それを建てて、背中のジェットを推進力に、足から噴き出した水でさらに摩擦低減と勢いアップで。
行きはそこそこの時間がかかったにも拘わらず、帰りはよいよい。
俺たちは一分とかからずに炎魔窟から抜け出したのだった。
「安全圏に来たなら勢い弱めてくれ腕が痺れる」
「お前な、まず礼を言えよ礼を」
「あんがと、助かったわ」
「おう」
うーん、ちょっと懐かしい。
まおうとはゲーム時代そこそこ一緒にいたからなぁ。魔法で火力を出すことに余念がない奴で、魔法攻撃力を上げるエンチャントを死ぬほど依頼してくる上客だった。
そのつながりでメインジョブの方で一緒にダンジョン行ったりしたなぁ。懐かしい。ホント、どんだけ前の話ってな。
とりあえず落ち着いたっぽいので速度を緩めてもらう。
わざわざ歩いて帰る意味もない、そのまま腰に掴まって街へ向かう。
「……で、だよ」
「十中八九イステア少年がヴォルケイン」
「だよなぁ。で、その……なんだ、呪い云々? もアイツってことだろ?」
「っぽい。けど、ヴォルケインって呪いなんか使ってきたっけ?」
「なワケ。肉弾戦と火魔法しか使わないよアレは」
ロールプレイを取ってしまえばこんなものだ。気兼ねなく話せる……といっても気兼ねない関係はまぁコイツに限った話じゃないが。
「俺を炎魔窟に連れ出したのは、俺を殺すためかね」
「お前なんか炎魔窟なんぞに連れて行かなくてもサクっと殺せるだろ」
「正論。……じゃあ、逆か」
「殺してもらうため。まぁしっくりくるのはそっちだわな。お前のこと戦える奴だと思ってたっぽいし」
でも、それなら今度は違う疑問がわいてくる。
なんで俺に、だ。
魔界の街には強い魔族なんぞわんさかいる。俺が来たのだって押し売りも良いところな機会だったし、死にたいならその辺の魔族に突撃すりゃいい話で。
それだと周囲に迷惑をかけるから、とか? 魔族がそんなこと気にするか?
「あと、普通にジョブ持ってたのもおかしい。ダンジョンの魔物はジョブなんぞ持てないはずだ」
「あー、確かに。今普通に魔族で考えてたけど、ヴォルケインなら魔物か」
「その姉ってのに会ってみないことにはわからんが……ヴォルケインなら、まぁ、納得する部分はあるんだよな」
「ってーと?」
それが正しいかわからないぞ? と前置きをして。
「デスゲームが終わった後さ、俺は魔界にあるダンジョンというダンジョン全部再攻略したんだよ。そん中に当然炎魔窟も含まれてる。だから、俺は現実になったこの世界で一回ヴォルケインを倒してる。……呪い云々はわからんが、あの少年がヴォルケインならあの態度も納得だな、って」
「魔界のダンジョン全部って……お前、友達いなくて喚いてたじゃんか。魔界に誰も来てくれないーって」
「……それ、今なんか関係あるか?」
「え、いやだから、魔界のダンジョン全部って……まさかソロで全部回ったのか?」
「ふん、そうだよ。お前の言う通り友達いねーからな」
ヤバすぎる。
ダンジョンは基本パーティ推奨だ。何故っていろんなギミックがあるから。属性だって一辺倒じゃないし、無効化してきたり吸収してきたりするのまでいる。
だから前衛や遊撃が必要で……それをお前、一人で、って。
マジでフツーに魔王じゃねえかお前。
「話を戻すけど、だから俺がヴォルケインに恨まれてるのは理解できるんだ。問題は呪いだよ」
「ヴォルケインは持ってない呪い。そもそもあの姿になれるのも意味わからんしな。姉の方がキーパーソンなのは間違いないだろうけど、多分──」
ヴォルケインに呪いを使わせ続けている奴がいる。
そう言葉を発そうとして、気づいた。
……それ、多分グリッチだ。
だから、そう、魔法の。
「まおう。この件、ワンチャン黒幕は」
「プレイヤー、だろ。俺も今そこ辿り着いたわ。……はぁ、ヤだねぇ。もう残ってるプレイヤーなんか少ないんだからさ、仲良くしようぜ、ホント。絶滅危惧種だろ俺ら」
「ああ、ホントにな」
あるいは、NPC相手だから何をしてもいい、と考えているのか。
その場合は──。
「あ、つか、そうだセギ」
「ん?」
「『変装』くれよ『変装』。街に俺が入ってったらそこそこ騒ぎになるからさ」
「ああ、おっけー」
アサシンジョブのスキル。本来は魔物に姿を変えてやり過ごしたりなんだりするスキルだけど、人にも変装可能だ。ただし能力が引き継がれるとかはないので、魔物になったからって敵対されないだけで流れ弾でプチッとかはよくある話。
ちなみに以前ユティをイベント聖霊の姿にしたドッペルゲンガーのスキルとはちょっと違う。アレは不測の事態にも耐えられる……つまり攻撃食らっても姿が戻ることがない、強度の高いスキルだ。こっちは割と簡単にパチンと解ける。
街に近づき、魔法の使用を停止するまおう。
そして『変装』の木片を使用し。
「……あー、誰だっけそれ」
「橋渡しコボルド。アスケルの川辺で魔導結晶渡すとINT+30の果実があるとこ連れてってくれる奴」
「+30はデカくね?」
「デカいよ。でも知らないメイジいっぱいいる。今もあんのかな、あそこ」
元の威風堂々とした魔王の姿からはかけ離れた、小さくて暗い顔のコボルド。
と、怪しい老人。
うん、絵面わっるいな。ナイス!
「んじゃ行くか、その姉って奴のところに」
「おーう。ロープレは?」
「基本無口で行くわ。メール溜まってるからそれ返しながらやる」
「りょ」
では。
真実をご開帳、ってな。
剣。
「──イステアをどうした」
「ほほ……そう勇むでない。別に儂らはどうもしとらんよ」
余裕ぶってるが心臓はバクバクである。
横合いからまおうが剣を差し込んでくれていなかったら、俺の頭は弾け飛んでいたかもしれない。『物理無効』の新しいのは付けてあるとはいえ。
動けないレベルの危篤状態。
……だったはずの女性は、俺達が彼女らの家に入ってきた瞬間襲い掛かってきた。
凛とした目。浅くない呼吸。否、全身にあった何とも言い難い色のエフェクトが完全に消えている。つまり。
「呪いは解けたようじゃの」
「……もう一度問う。イステアをどうした」
「じゃから、どうもしとらんよ。──時に炎魔窟について」
言葉は最後まで紡がれない。
女性の持つ剣がふわりとブレて、直後目にも止まらぬ速さの連撃を行ってきたからだ。
こっちの『物理無効』の性質を理解して、一撃じゃ殺せないと踏んできたらしい。
「ッ、プリセットC!」
その連撃に対応するはまおう。
一瞬で全身に全ステータスアップのバフをかけ、その剣で突きをいなし始める。
「おい、セギ! なんだこいつ、剣豪だぞ!?」
「ほ……四次ジョブとな」
「イステアを──どこへやった!」
爆発的な熱風が女性を中心に放たれる。
赤黒いオーラは怒気。剣士や戦士のスキルツリーにあるウォークライだろうけど、練度がヤバい。今のだけでSTRが200くらいあがってる気がする。
事実、まおうコボルドが押され始めた。
「物理上昇系ありったけ寄越せ!」
「後で返すんじゃぞ」
「呑気か!」
インベントリから物理攻撃上昇系、耐性系、その他諸々のアクセサリーを取り出して、まおうが開いているトレーディングウィンドウに放り込む。
よく戦いながらその処理できるよな。ホント、こと戦闘においては天賦の才過ぎる。
「イステア……イステア、あの子を……あの子を返せ!」
「だぁああ! これでも食らって一旦落ち着け! 即席ライトニングソード!」
「──が、ぐ」
まおうの剣がパチっと紫電を纏う。
それが女性の剣に触れた瞬間、彼女を激しい雷撃が襲った。
「アークメイジのスキルツリーにソレあったかのぅ」
「無えよ。だから即席だ。俺は魔法も剣もできるからな。
簡単に言ってるけど、簡単な話じゃない。
いや流石だよ魔王。本物だよお前は。
「ぐ、うぅ……!」
「ちょ、おいおいまだ立ち上がる気か? お前自分のHP見えて……はないだろうけど、自分が結構食らってるのは理解してるだろ!」
「イステア……イステアを、どこへ……やった!」
「
「ほ? 儂に攻撃だの拘束だのができると? 儂のステータス見るか? INTはちゃんと最低値じゃぞ?」
「……ああじゃあいいよ。はぁ、あんまり女性には使いたくないんだけど──ヴァインバインド」
まおうの手から、植物の蔦が出てくる。
それは瞬く間に彼女へと巻き付き──。
「ほほ……そういう趣味があったか。軽蔑するぞ、まおう」
「俺の趣味じゃねーって。あとその名前で読んだら意味ねーだろ」
「あ、そうじゃった」
その。
なんか、あられもないカンジの拘束に、若干引いた。
詳細は伏す。