存在してはいけないタイプの回復担当   作:存在してはいけない回復用務員

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中ボスに拾われる

その日本屋敷には奇跡がある。そんな噂が昔からあった。

 

「はい、これで大丈夫ですよ」

 

「お、……ぉぉぉぉお!!!!見える、見えるぞ!二度と光を写さぬと思っていた儂の目が、見える!」

 

 

「はい、これでどうでしょう?」

 

「腕が!?生まれた時から奇形と忌み嫌われ……隻腕のアキラとまで呼ばれた俺に、腕がある!両方だ!」

 

 

「よく頑張りましたね」

 

「ありゃ?俺はあの時、……首を飛ばされて死んだ筈じゃ」

 

 

「よかった。間に合った」

 

「あ……?何故俺は元に戻れたんだ?……怪物になったら最後、死ぬまで暴れ続けるんじゃ……ガセネタだったか?」

 

 

曰く不治の病が治った。切られた腕が生えてきた。死んだ筈だが生きていた。等々………もうダメだと思った人間が門をくぐり、そして必ず病や怪我を治して帰ってくるという不思議な噂。

 

そこは腕の良い医者がいる所か、薬すらろくに置いてないらしい。

そこにいるのは住み込みで働く召し使いが数人と、幼くして両親を失くし、莫大な遺産を抱えた少女が一人だけ。

 

「―――ふぅ。今日はもう終わりかな?」

 

これは後に天使とも悪魔とも呼ばれる少女の激動の二年を描いた物語である。

 

 

 

 

□□□□□|

 

突然だが、諸君。私は存在してはいけないタイプの回復要員だ。

何が存在してはいけないタイプだってのは上の反応をみて貰えばだいたい分かると思う。

 

私は何でも治せる。何でも、文字通り、一瞬で。

 

四肢欠損や生まれつきの障害でも、噛まれたら最後ゾンビになってしまうとかそういうやつでも治せてしまう。

と言うか死後数日以内であれば完全に死んでいても何とか出来てしまう。

 

いわゆるチート能力のような物を生まれながらに持っていた。

 

 

一応デメリットみたいな物はあるが、日に何十回も使い過ぎると軽い貧血のような状態になるという本当に一応あるぐらいの物だ。

……どう考えても異常だろう。

 

これでまだ世界観が、某ドラ○ンボールで生きけぇる世界だったり、教会に行けば当たり前のように復活呪文が使えるような冒険ファンタジーなら目立たなかったのだが、生憎と私が生まれたのは現代日本で、骨折が最新医学を駆使したとして最低一ヶ月近くは完治までに掛かる普通の世界だった。

 

そんな世界に私は生まれ、そしてある時まで、とある新興宗教に神として担ぎ上げられ、散々力を使わされたものだから私の顔は知れていた。

 

バカでも分かる。私は詰んでいた。

将来は何処かの研究施設で死ぬまで研究され尽くされるのだろう。

 

だがある時、警察の大規模なガサ入れに紛れて、そこから飛び出した私は廃墟を転々としながら見えない影に脅える。……そんな惨めな生活を送る間もなく、ある男に出会った。

 

「やぁ、こんにちは。私の名は鵜図島(うずじま)竜巻(たつき)、気軽にタツとでも呼んでくれ」

 

どうやらこの世界、私以外にも特殊な力を持った人がいるらしい。

 

ある日、私の元を訪れたのは渦を生み出す能力者の男。彼はまさに絵に書いたような悪者で、その力を使って今まで散々悪さをしてきたらしい。

 

それで私の力に目を付けて、て訳だ。

最初はついにこの日が来たかと私も覚悟を決めたが、男は私と友達に成りたいのだと言い、当時10歳で孤児だった私の為にと色々と工面してくれた。

 

どこぞの亡き富豪の娘ということにされて屋敷と巨万の富をプレゼントされた時には、こいつは本気で何がしたいんだと思ったが、まぁ貰える物は有難かった。

 

それから私は定期的に彼――タツのお願いを聞いて、運びこまれてくる患者を治療することになったのだ。

 

定期的にと言っても、週に二回もあれば多い方だし、どうしても外せない用事があると日数をズラしてくれるので、本当に友達感覚でお願いを受けているという実感が強い。

 

運ばれてくる誰もが、後ろ暗そうな稼業をやっていそうなことについては、タツの知り合いだからと納得する一方で普通に怖いと思っているが、今のところ襲われたようなことは一度もなかった。

 

 

だからそう。これからもそんな日々が続くのだと思った矢先にである。

 

「頼むっ!頼むっ!タツさんを助けてくれ!」

「くそっ!アイツら……よくもタツさんを!」

 

タツが、患者として運ばれてきた。

それはまぁ……酷い状態で、心臓を貫かれて死んでいたのだ。

 

「もう治しましたけど」

 

「……あれ?私は確か」

 

「「タツのアニキ!」」

 

死後、数日以内であれば治せる。

タツにはお世話になっているし、何より治さなかったらこの二人に何をされたか分かったもんじゃない。だから治した。

 

それがいけなかったらしい。

 

そう言えば、明らかに死んでいる相手を治したのはこれが初めてだったが、どうやら私と彼らとの間で私の力について解釈の齟齬があったらしい。

 

彼らは死んでさえいなければ治せると思っていた。

 

しかし実際は死んでいても治せる。

 

 

「……キミは本当に最高の友だ」

 

強力な回復系の能力者かと思えば、頭に回復と付ければなんでもありの化け物だった。

そんな私を彼らが放っておける訳もなく、その日から、また私の生活は一変することとなる。

 

 

具体的に言うと、漫画のボスキャラっぽいタツが作り上げた組織の幹部になったのだ。

 

そして幹部になって分かったのだがタツは色々な組織と敵対していた。それこそ主人公みたいな力を持った人や正義の秘密機関って感じの人とドンパチやり合うようなことも頻繁にあり、これまで多数の死傷者が出ていたのだと言う。

このままでは組織の壊滅もあり得たんだとか。

しかし私が幹部になってからは、全員生き返らせているから死傷者は0となった。

そのお陰でタツの組織はぐんぐん成長中らしい。

 

 

「……ふぅ。これでキミに助けられたのは106回目だね。

毎回私もただではやられるつもりはないんだが……しかし最近は本当によく殺されるようになった。知ってるかい?今じゃ私は不死身のタツだなんて二つ名で呼ばれているのさ」

「不死身のタツですか……」

「あぁ、笑っちまうだろ?私は毎回ちゃんと死んでキミに蘇らせてもらってるというのにさ」

 

 

 

……三度(みたび)言おう、私は存在してはいけないタイプの回復要員だ。

 

特に敵側には害悪過ぎる、と。

 

 

 


 

鵜図島(うずじま)竜巻(たつき)

 

序盤に出てくるボスキャラ。いわゆるヤクザ系。退場回を乗り越えたはいいものの、インフレの波についていけてない男。だから毎回のように殺される。

カリスマ性はあるので部下からは慕われていた。

 

 

主人公

 

回復と頭につけば何でも出来るチート能力者。

神様転生者とかではない。幼少の頃から劣悪な環境下におかれていたので、どこか他者に対して冷めている。

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