幻想地憶譚 《とある少年の幻想入り》   作:フォーウルム

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2月14日

知っている人は多い今日はバレンタイン。
女性が男性に日頃の感謝を込めてチョコを送る日………らしい。詳しいことは知らない。
それは私達の世界だけでなく、彼らの世界でも共通らしい。





特別編 少女達の奮闘

 

 

「………なんでこうなってるんだ?」

魔界のフォルトゥナ城の謁見の間に凱達は居た。他にはギルバやジン、盤城はもちろんのこと、護や猟介達も居た。

「なぜお前らがここにいるんだ?」

部屋の主であるギルバが凱達に聞く。

「追い出された。なんでも夕方まで帰ってこないでくれってよ。」

「俺もっす。」

「早苗に追い出された。………なんでなんだ?」

「お前ら馬鹿だろ。」

『あ?』

ギルバの突っ込みに全員が聞き返す。

「今日、2月14日はバレンタインだろうが。」

 

『…………あ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー皆で一緒にーー

 

 

 

 

 

 

「それと取ってー!」「上手く溶けないわね?」「ちょっと!つまみ食い禁止!」

紅魔館のキッチンは非常に賑わっていた。普段は咲夜ぐらいしか使わないキッチンにかなりの人数の少女達が集まっていた。

各々の考えるチョコを作るために、互いに助け合ったりしている。

料理に慣れている咲夜や自炊をする早苗やアリスなどは既に自分のを作り終えており、他の娘達の手伝いにまわっている。

 

 

 

「……………」

そんな中、姫乃は黙々とチョコを作っていた。

「やっほー、姫乃ちゃん。」

「あら、リーナちゃんじゃない。」

そんな姫乃に近付いて来たのはリーナだった。彼女を含め、《Devil castle》所属のファスやモナも他のところでチョコを作っていた。

「それは凱にあげるチョコ?」

「ええ、彼は甘いのよりも苦いのが好きみたいだからカカオ多めに使ってるの。」

姫乃は溶かしたチョコを型に流し込む。

「出来た!あとは固まるのを待つだけね。リーナちゃんは?」

「私のは飛鳥にあげるんだ。いっつも頑張ってるから甘いのをね!」

そう言う彼女の手には可愛らしくラッピングされたチョコがあった。

「すごい可愛いじゃない。」

「でしょー?頑張ったんだぁ。」

エヘヘ、と笑う彼女はとても幸せそうだ。

そこへ

「すまん、少しいいかな?」

「あ、音川先輩。どうされたんですか?」

姫乃や凱の1つ上の先輩である音川ナルが話しかけてきたのは。その手には…………

「………なんです?それ。」

「炭………みたい?」

真っ黒になった塊だった。

「失敗してしまったんだ。どうも上手くいかないようでね。」

「湯煎しました?」

「湯煎?炙っちゃ駄目なのか?」

「駄目に決まってるでしょう?!」

音川は音楽に関してはスペシャリストで、姫乃の憧れであった。

が、料理の知識は無かったようだ。

「私が手伝いますから、頑張りましょう?」

「私も!2人より3人の方が効率いいでしょ?」

「2人とも………ありがとう!」

 

 

 

 

数時間後…………

 

 

 

 

 

「呼ばれてきてみりゃ、なんだこれ?」

凱達は紅魔館のホールに来ていた。そこには大量の料理が並べられている。

「来たわね!」

声の方を見れば、そこには霊夢が居た。他にもいつもの面々がお酒やワインの入ったグラスを持っている。

「おい、まさかとは思うが…………」

「今日は宴よ!」

「……だろうと思った。」

凱は溜め息を吐くが、その場に居た凱を除く全員が、彼の表情が喜びで綻んでいるのを見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「はい!私の分だよ御兄様!」「わ、私からの分です!」「あやや、人気者ですねぇ。はい、これは日頃の感謝の分ですよ。」「これをどうぞ!今度永遠亭にもいらしてください!」

「ありがとう、後で大事に食べるよ。」

フラン、妖夢、文に鈴仙からチョコを受けとる。その前には咲夜や霊夢達からもチョコを貰っていた。正直甘いチョコよりも苦い方が好みなのだが、せっかく人から貰ったものを無下にするわけにはいかない。後でゆっくり味わおう。

「凱君。」

「ん?姫乃か。」

周りに誰も居なくなったと思ったら声をかけられる。そこに居たのは姫乃だった。手には赤と黒のリボンで飾られたチョコレートがある。

「はい、感謝の気持ち。受け取ってくれる?」

「もちろん。ありがとうな。」

俺はそう言って受けとる。

「隙あり!」

「うおっ?!」

急に姫乃に抱きつかれ、一瞬バランスを崩しかける。

「危ないぞ?」

「大丈夫。信じてたから」

「…そうかよ。」

ふと視線をずらすと護や猟介、ギルバ達の姿が見える。

飛鳥とリーナの姿が見えないが、どうせ部屋にでも戻っているんだろう。

ちなみに護は早苗達に囲まれ、猟介は音川先輩と一緒に窓辺で幸せそうにしている。ギルバとジンは………お相手の2人に振り回されている。

「………ねえ、凱君。」

「ん?なんだ?」

柱の影になり、誰も見えない場所で姫乃が聞いてきた。

「もし、もしもだよ?私が傷だらけになって、もう生きてることも辛くなっちゃうようなことになったら、凱君はどうする?」

「……………。」

急な質問だった。姫乃が傷だらけになるという状況がいまいち考えられない。

 

 

逆はまだしも。

 

 

「そうだな。もし、そうなったら俺はお前に寄り添うことしか出来ないかもな。」

姫乃の事は大切だ。だが、彼女が傷ついてしまったときに、どうすればいいかなんてわからない。

「姫乃が苦しいとき、辛いときは俺が傍に居る。1人にはさせない。」

姫乃が抱き締める力を強くする。

「……凱君らしいね。」

「そうか?」

「うん。」

「……そうか。」

「約束だよ?」

「ん?」

「傍に、居てね?」

「……………ああ。」

姫乃を抱く力を強める。

腕から彼女の暖かい体温が伝わってくる。この日の温もりを、俺は忘れたりはしないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜中

姫乃からもらったチョコをあける。途端に深く品のある香りが鼻をくすぐる。

中に入っていたのは4個のチョコレート。どれも暗い茶色をしており、俺好みの苦味のあるチョコであるのが見て取れる。

そのうちの1つを手に取り、口に放り込む。入れた瞬間に苦味が広がる。このチョコ特有の苦味が俺は非常に好きだ。

「やっぱこれだよなぁ………?」

チョコの箱の内側に何かが入っていた。取り出してみると、それは花が描かれた本の栞のようだった。

「………なるほど。」

俺はそれを手にとって眺めた。花の知識はさほど無いが、花言葉は知っていたし()()が何を意味するかもわかった。

「俺も、姫乃の気持ちに応えなきゃな。」

 

姫乃が忍ばせていた栞。

 

 

そこに描かれていたのは紫色のチューリップだった。

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます
どうも、フォーウルムです。
相変わらず足が痛くて悶絶しています

それはさておきバレンタイン回です。
書きたくて書いた。後悔はしていません。

凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……

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