「さて、行こうかな。」
「ん?どっか行くのか?」
何かの準備をする姫乃に護が声をかける。
「うん、桜ちゃん達のところに行ってくる。」
「桜?……ああ、あいつらか。」
「そうそう、彼女達にも協力して欲しいんだって。」
「なるほどな、気をつけろよ」
「わかってるわよ。行ってきます!」
第69話
ーー雪の剣士と花の銃士ーー
とある日
ここはもう一つの幻想郷。凱達とは違う世界だ。
この世界を生きる彼らは、自分たちの店で一息ついていた。
「お疲れ様、桜」
「雪華様も、お疲れ様でした」
疲れを労う2人の店に1人の来客がやってくる。
「こんにちはー!」
「姫乃ちゃん!」
「いらっしゃい」
2人は笑って出迎える。
「お邪魔しまーす、って言ってもすぐに移動しなきゃだけどね」
「あっちで何かあったの?」
「…あれ、凱が居ないな」
「…凱くんはいつもの。それより2人に付いてきてほしいの」
「僕達で良いのなら」
「姫乃ちゃんの頼みなら!」
これまた笑って答える。
2人の仲もさらに深まっているようだ。
「ふふふ。じゃあ行きましょ。」
そう言って彼女は外に出ようとしてピタリと動きを止める。
「どうしたの?」
桜は疑問に思う。
「……つい癖で普通に外に出ようとしちゃったわ」
彼女は懐からメモリを取り出した。
「お願いね《ウォーズ》」
「おうよ」
メモリは光輝き、人の形になった。
「ウォーズさん!」
「へえ、君が」
「よお、ん?こいつは?」
「彼は雪華君よ」
姫乃は紹介する
「とりあえず、お願いしていいかしら?」
「任せな」
ウォーズを中心に魔方陣が展開され、四人は光に包まれた
移動中
「着いたぞ」
「ありがと。お疲れ様」
「今度は戦いで使ってくれよ?」そう言ってウォーズはメモリに戻った
「ありがとう」
「戦いで大活躍しそうですもんね」
桜は笑って言う。
「……実戦はまだなんだけどね」
姫乃は苦笑いをする。
彼女らが居るのは凱の店なのだが、彼の姿は見えない。
「あれ、凱さんは?」
「こっちよ。」
姫乃が手招きする。そこにあるのはエレベーターだ。
「え、エレベーター?」
「すごいな、こんなものが」
2人は驚きつつも姫乃と一緒に乗る
「これの地下五階よ。」
しかしボタンは地下四階までしか設置されていないように見える。
「…ボタンが無いな?」
「どうやって行くんでしょうか……」
「こうするのよ。」
姫乃はボタンの横に端末を近付ける。するとエレベーターがゴウンという音と共に動き出した。
「なっ!?」
「凄い仕掛けです…!」
突然の出来事に驚くも、エレベーターの震動になんとか耐える。
「ここから先は幻想郷であっても普通とは大きく異なるわ。」
姫乃がそう言うと同時にエレベーターは停止し、扉が開く。
彼らの目の前に広がるのは、薄暗く僅かな明かりが灯る宮殿だった。
「ようこそ、アンダー・パレスへ。」
ーー悪魔と悪夢ーー
「アンダー・パレス…」
「名前通り地下の宮殿ってことか……。異なる次元に存在する一種の異空間か?」
「そうね、正確には、湧き潰し。人里に出るはずだったマジェスト達をこっちに飛ばしていたら、増えすぎて今はダンジョンみたいになってるの。」
姫乃はそう言いながら壁の近くのロッカーを漁っている。
「凱君が言うには、この前100層をクリアしたらしいわ。」
姫乃はそう言って肩から物騒な銃を一丁吊るし、拳銃の動作を慣れた手付きで確認する。
「…十分多いだろ」
「ひゃ、100層も…」
ここに来てから驚きっぱなしの2人だ。
「……よし。はい、桜ちゃん。」
姫乃は先ほどから弄っていた銃を桜に手渡す。
「あ、ありがとう」
「これは?」
「《ADA 92DE》よ。」
「性能はどうなの?」
軍人の性と言うべきか、即座に聞く。
「使用弾頭は特殊弾頭。装弾数は9発。拳銃のなかでは一番使いやすい高火力なものよ。」
姫乃は追加のマガジンを3本、ポーチに入れて渡す。
「なるほど…」
「拳銃にしては装弾数が少ないな。僕達の昔使っていたものは16発だったが」
「火力は装甲車くらいなら反対側まで弾が届くくらいのものよ。それにこれは非正規品だし。」
姫乃は事も無げにそう言うと手元の端末を操作し始めた。
「徹甲弾かよ…」
「それで9発なら多いほうですね」
「さて……。あ、いたいた。場所は…なるほどね。」
姫乃は端末の情報を確認し、部屋の反対側の装置に入力を始めた。
「どうしたの?」
不思議に思って聞いてみる。
「凱君の今の居場所を確認したの。そこに行こうと思って。」
「ああ、そういうことね」
「案内してくれるか?」
「案内も何も、すぐよ。」
姫乃が装置のボタンを押すとゲートが開かれる。
「そうなの?」
「そこの奥か?」
「ええ、そうよ。」
そう言って姫乃はゲートをくぐる。姫乃に続いて雪華達もくぐる。
その先にあったのは巨大な扉だった。
「デカイな…」
「どうやってこんなの作ったんでしょうか」
「作ったっていうか生成されたっていうか。とりあえず入るわよ。………もう終わってるだろうけど。」
「凱〜?」
「いらっしゃいますか?」
扉を開けた瞬間だった。
ゴズンッ
3人の目の前に巨大な腕が落ちてきたのは。
「きゃああああっ!?」
「何だ!?」
条件反射で桜を庇うように位置取る。
「……はぁ。」
姫乃は呆れた様子で奥に進む。
「相変わらずね。」
「ん?ああ、姫乃か。どうしたんだ?」
そこにいたのは地面に倒れている巨大な蜥蜴の魔物を倒したと思われる凱の姿だった。背中からは半透明の羽が生えている。
「驚かせるな、凱…」
「び、びっくりしました…!」
涙目の桜を雪華が庇っている。
「………あ、今日だっけ?」
「…その様子じゃ忘れてたみたいね。」
凱がポリポリと頭を掻く。
すると
『ゴグアァア!!』
地面に倒れていた怪物が急に起き上がり、凱に向かって切られた腕とは反対側の腕を振り下ろしてきた。
「………喰っていいぞ。」
その一言で出現した黒い何かが怪物を頭から喰い千切った。
「うわあ、グロテスク」
「グルルルルル……」
「どうだ?旨いか?」
巨大な怪物は先程食べた物を飲み込む。
「なんだよ、それ…」
「ん?こいつか?」
「その怪物?だよ。」
「こ、怖いです……」
「雪華は一度あったことあるだろ。」
凱の一言と共に怪物は姿を変え、銀色の騎士の姿になる。
「お前か!」
忘れもしない。僕を抱えて音速で紅魔館へと運んでくださった、あのクソ騎士人形だ。
「こいつは『ナイトメア』だ。人間じゃないのは見ればわかるだろ?」
「そりゃなんとなく分かるが…」
「こ、怖いです…!」
「俺のペットだ!」
凱は自慢げに胸を張る。
「そういえば、なんでこんなところに来てるの?」
「おお、そうだった!」
姫乃の問いで凱は何かを思い出したらしく、付近を見回す。
「ぺ、ペット…」
「…意外と趣味悪いな」
桜と雪華は衝撃を隠せず、ナイトメアを眺めている。
「趣味が悪いとは失礼な。っと、見つけた。」
凱は壁に埋まっている水晶の前に移動する。その色は綺麗な桃色だ。
「…それは?」
「わあ…、綺麗……」
桜は見惚れたように見詰める。
「だろ?さて、やりますか。」
凱がそう言うと彼の体を黒ずんだオーラが包み込む。
「少し離れてろ。」
「分かった、桜、離れよう」
「あ、は、はい!」
桜は残念そうに水晶から離れる。
深く深呼吸をした凱の背中に2本の悪魔の腕が生える。
「…すごいもの生やすな、お前」
「禍々しいです…」
「オラアアァァ!!」
凱の気合いの入った叫びと共に背中の拳が高速で壁に向かって繰り出される。
「!」
「嘘…!?」
「ゼアアァァァァ!」
目にも止まらぬ速さで拳は壁に埋まっている水晶を殴り続ける。
「水晶が割れるぞ!?」
「な、何でいきなり…!」
「セアァッ!」
息を詰めた呼吸を吐くと同時に最後の一撃が繰り出される。
すると……
ピキッピキピキピキピキ
ガシャン
水晶の周りの岩が砕け、水晶が転がり出てきた。直径は車のタイヤ程もある。
「お、大きい…!」
「こんなに大きな水晶があるなんて…」
「よし!当たりだ!」
凱はそれを片手で持ち上げる。
「それをどうするの?」
「それは戻ってからのお楽しみだ。」
凱は腰にぶら下がっている端末を操作する。
「一旦戻るぞ。」
「はーい。2人も戻ろっか。」
「わ、分かった」
ーー取引ーー
FDL 地下4階 エントランス
「ついたな。」
「こっちよ。」
姫乃は雪華達に手招きをしながら部屋にはいる。電気がついていないので真っ暗だ。
「……っ」
しかし桜は、頑なにエレベーターから出ようとしない。
「ん?どうした?」
「…ああ、そういえばそうだったね」
雪華が彼女の手を取ると、ようやく歩きだした。
「……なるほど。なら、これならまだましか?」
凱がそう言って壁のスイッチを押す。
瞬間、部屋は明るくなり内装が見える。
そこは、カフェの地下とは思えないものがならべてあった。
壁には様々な銃が立て掛けてあったり、吊るされ、ガラスケースに入っているものも何丁か見受けられる。
「これまた凄いな」
「わぁ……」
「ADA武器だ。少し待っててくれ。」
凱はそう言うと部屋の奥に入っていく。
「どう?何か気になるのある?」
「…これですかね」
そういって指したのは、一丁のスナイパーライフル。
「なるほど、桜らしい」
「《ADA 20SR》ね。装弾数は10発で射程は1.8キロ。火力の高い弾薬や発火弾が撃てるのよ。」
姫乃は銃のスペックをスラスラと口にする。
「スナイパーだから、セミオートか?それともボルトアクション?」
「ボルトアクションよ。私からすると少し弱く感じるんだけどね。」
「…姫乃さん達が異常なんだ」
「十分すぎるほどに強いよ…」
「そうかしら?」
そう言って姫乃は首から掛けていた銃を持ち上げる。
「これみたいに改造してれば案外使えるんだけどね。」
「全く、その技術力が羨ましいよ」
「待たせたな。」
凱が顔を出す。
「こっちに来てくれるか?」
「ああ、分かった」
「何でしょう?」
「こいつさ。」
凱が招いた部屋のなかには先程の水晶が置かれている。
「さっきのじゃないか」
「何度見ても大きいですね…、それにとても綺麗です……」
「桜にそっくりだな」
「そ、そんな……」
桜は赤くなって恥ずかしがる。それを雪華は優しく見詰める。
「さっそくだが砕くぞ。」
「はあ!?」
「これを、ですか…!?」
「当たり前だろ?なに言ってやがる。」
「凱君、普通じゃ砕かないわ。」
「そう言うもんか。」
「少なくとも当たり前では無いな」
「で、ですよね?」
「まあ、いっか。」
凱はヘファイストスメモリをドライバーの補助スロットに挿す。すると彼の手に小型のハンマーが出現する。
「そうだ、後でその破片、直径1〜2ミリ程度のものを、出来るだけ沢山貰えないか?」
「……申し訳ないが、破片も残らんぞ?」
「何?まじかぁ……」
「何でですか?」
「…秘密だ」
「何で破片が残らないかは見てればわかる。」
凱はハンマーで水晶を思いっきり叩く。それだけで水晶は粉々になった。
「凄いな、一撃で」
「よっと。」
凱が手を振ると砕けた破片が一つになっていく。
「あとはこれをくっつけて…」
手に持っていたハンマーを置き、あらかじめ置いてあった剣の柄を近付ける。するとその柄に破片が集まり両刃の大剣になった。
「見事だな…」
「綺麗な剣です…」
「綺麗ね。」
「ああ。ほら。」
凱はその剣を雪華に差し出す。
「いいのか、こんな綺麗なものを」
「ああ、前金として受け取っておけ。」
「でも前金ってことは、何か面倒事でもあったんですか?」
桜が不思議そうに尋ねる。
「あったんじゃない、これからあるんだよ。」
そう言った凱の顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。
続く
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
どうも、お久しぶりのフォーウルムです
今後も少しづつ投稿していくつもりです
遅くても失踪はしないので、ご心配なく
凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……
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簡単にまとめてほしい
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詳しく別々でほしい
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いらない