カラミティと戦った次の日。
雪華と桜は凱達がいる地底の闘技場に来ていた。
「おはよう、二人共。調子はどうだ?」
「僕はまだ少し。」
「私はなんとか大丈夫ですけど……」
「そうか、じゃあ今日は桜の特訓だな。」
「お願いします!」
「さて、今回は実弾を使え」
「でも、それだと怪我が……」
「問題ないだろ。なんてったって、相手は……」
そう言って凱は視線を闘技場に向ける。
そこでストレッチをしているのは姫乃だった。
「姫乃ちゃん…!?」
「こいつは面白いものを見られそうだ。」
「雪華様!?」
「親友対決だからな。」
「まあ、本気で殺ってこい。」
「…わかりました。行くよ、姫乃ちゃん!」
ーー親友対決ーー
「あ、おはよ!桜ちゃん!」
桜を見つけた姫乃は笑顔で手を振る。
「よっと!」
桜は闘技場に飛び込み、姫乃のもとへ向かう。
「もう大丈夫なの?」
「私はね。でも雪華様はまだ本調子じゃないみたい。」
「大体、エクストラメモリのマキシマム受けきれることが凄いのよ?」
「それはまあ、雪華様だし…」
それに、本来、雪華様の力はあんなものではない。自らに枷をかけているのだ。
「ま、いいわ。今日は全力でやるからよろしくね?」
「うん、私も!」
2人は笑い合う。この後戦うと言っても、誰も信じないだろう。
「じゃあ………殺るよ。」
急に雰囲気が変わり、姫乃は音もなく桜の背後に周る。
「遅い。」
垂直に飛び、AMR、対物ライフルを姫乃に向け放つ。初速もかなり速いうえ、戦車の装甲すらもぶち抜く威力。必殺の一撃だと思ったのだが。
姫乃はそれを持っていたナイフで弾く。
「まさか対物ライフルをナイフで弾くなんて。」
とても長大で重い愛銃を、桜はバトンのようにクルクルと回す。
「………」
姫乃は音もなく接近しナイフを桜に向けて投擲する。
「よいしょっ。」
いつの間にか桜は闘技場の反対側におり、対物ライフルを発砲した後、それが着弾するより前にダガーで斬りかかる。
「え?きゃあっ!?」
姫乃はナイフを弾くことに成功するが、弾丸をいなせず、直撃する。
「ふふっ、どう?」
これが彼女の能力、『距離を操る程度の能力』。これにより、長距離からの狙撃が着弾する前に接近戦を仕掛け、確実に相手を屠る、文字通りの初見殺し。
「イタタ、油断しちゃった。」
しかし姫乃は服の埃を払いつつ立ち上がる。
「わ、生きてるの?凄いよ、姫乃ちゃん。」
少し驚いたように口に手を当てているが、何よりも楽しそうだった。
「まあね!これくらいじゃなんとも無いわ!」
「じゃあ…、本気でやっちゃう?」
そう言って取り出したのはメモリ。
「いいよ、出し惜しみはしないわ。」
姫乃はパンドラを取り出す。
「変身。」
《リコリス》
リコリスガイアナイトが顕現、闘技場は彼岸花に包まれた。
「綺麗ね、荒らすのが勿体ないくらい。」
姫乃はそう言ってパンドラをキャノン砲に変形させる。
「でしょ?」
桜は笑顔で言うがその言葉とは裏腹に、花弁の刃をガンガン飛ばしている。
「こっちも行くよ!」
こうして2人は激突する。
ーー超人と怪物の観戦ーー
2人が全力を出して戦っているのを、凱と雪華は観客席で眺めていた。
「…2人が楽しそうなのは良いんだが、年頃の女性として、戦いが楽しいってどうなんだろうな。」
「いいんじゃね?」
凱はコーラを飲みながら観戦している。
「…あまり彼女には戦ってほしくないんだがな。」
雪華が寂しそうに呟く。
「そう言うもんか?」
「本来、彼女の力はあんなものじゃない。今やってるのも、比べれば赤子が悪戯してるようなもんだ。」
「マジか、めっちゃ戦いてえ。」
「やめろ。桜もお前もただじゃすまない。それに決着付く前に幻想郷が崩壊する。」
雪華は苦い顔をした。
「それはねえな。」
凱がコーラを飲みながら答える。
「そうなる前に、恐らくこれがでしゃばるだろうな。」
取り出したのは《E》、エクリプスのメモリだ。
「本気で殺す気じゃないか…。」
「殺す……か。なあ、お前は人を殺したことがあるか?」
凱は思い付いたように聞く。
「…当然。これでも元軍人だからな。」
「どう感じた?」
「…途中から、何も感じなかったよ。今は、怖いけどな。」
「そうか。」
凱は持っていたコーラを置く。
「俺は、最初から何も感じなかった。」
「……。」
「最初に人を殺したときは、20人くらい同時に殺した。」
「…そうなのか。」
「ああ。その後も何人か殺した。何も思わなかったけどな。」
「さすがにどうかと思うぞ?」
「俺もそう思うよ。」
凱は自嘲気味に笑った。
「…さっき怖いとは言ったが、覚悟はできている。桜が笑って幸せに暮らせるのならば、僕はいくらでも手を汚す。」
「そうか。……俺は違うな。」
「聞かせてもらってもいいか?」
雪華は凱に尋ねる。
「俺は恐らく、覚悟はしない。何故なら、敵を人間としては見ていないから。」
凱は顔をうつむかせる。
「相手は人の道を踏み外した。だからこそ、容赦はしない。」
「…本当、羨ましいよ。」
ふっと笑って呟く。
「大体、相手がドーパントだからな。」
「僕は、あれでも人間なんだと考えてしまう。」
「お前は良い奴だな。」
彼はそう言ってポップコーンを差し出す。
「どうだか。」
ポップコーンを1つつまみ、口の中へ放り込む。
「うん、美味いな。さて、そろそろ戻さないと、後で怒られちゃうな。」
そう言って、雪華は闘技場へと視線を戻す。
「だな。」
その頃闘技場では、激しい銃撃戦が行われていた。
ーー決着ーー
「やるね、桜ちゃん。」
姫乃は肩にガトリングを担ぎ上げる。
「姫乃ちゃんこそ!」
花弁の刃と対物ライフルを構える。
「楽しくなってきた!」
姫乃はミサイルランチャーにパンドラを変形させ、ミサイルをばらまく。
「そうだね、私もだよ!」
刃でミサイルを撃ち落とし、ライフルを発射。
「でも、そろそろ終わらせるよ!」
パンドラが変形し、超電磁砲のような形になる。
「こっちの台詞だよ!」
桜はリコリスメモリをマキシマムスロットに挿し込む。
《リコリス マキシマムドライブ!》
桜の手の中に光が集まる。
「あたれええぇぇ!!」
姫乃の方からは、超電磁砲から圧縮された弾丸が射出される。
「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」
桜の両手から放たれた全力の光線は姫乃目掛けて突き進む。
両者の放った一撃は互いの横を通り、軌道を変えて後方へ飛んでいく。桜の一撃は問題ない。しかし、姫乃が放った一撃は……
観客席の凱達の方へ飛んでいった。
「マジかっ!?」
「来るなら来い!」
凱は右腕を突き出す。
「フリージングイージス!」
雪華は巨大な氷盾を呼び出す。
弾はそのまま………凱の腕を吹き飛ばした。
「大丈夫か、凱!?」
「俺の右手が真っ赤に燃え………るどころかねえじゃねえか!」
凱の右腕は肘から先がなくなっている。漫画ならばモザイクがかかり、ニュースならば放送事故レベルの怪我だ。傷口は弾丸に焼かれたおかげで止血されている。
「吹き飛んでんぞ……さすが電磁砲…」
「ぐぅぅ………でもあれだな。」
「あれ、とは?」
「タンスの角に小指ぶつけたときの方が痛えな」
「確かに痛いけどな!?」
「凱君、ごめん!大丈……腕は?!」
観客席に来た姫乃が驚きの声をあげる。
「さっきのレールガンで吹き飛んだ…。しかもタンスの角に小指ぶつけた時のほうが痛いとか抜かしやがる……」
「えぇ……」
「雪華様、大丈夫ですか…ってえええ!?」
そこに桜もやってくる。
「おお、お疲れ様。2人ともいい戦いだったぞ。」
凱は肘から先がなくなった右腕をそのままにして2人を褒める。
「凱さん、う、腕…?」
「んー?」
「腕、大丈夫ですか…?」
「大丈夫だ。焼けたお陰で止血は出来てる。」
「そ、それでいいんでしょうか…?」
「良くないだろ……」
「まあ、なんとかなるっしょ。」
「なるのか?」
「知らん」
「おいおい…」
「何とかするさ」
「なるのかよそれ……」
雪華は頭を抱える。
どんなものであれ、腕は腕だ。切れたのをくっつけるならまだしも吹き飛んだものをどうするつもりなんだろうか、と雪華は考える。
「姫乃、あれやるわ。」
「…わかったわ。」
凱はドラグニスを手に持つ。
「な!?」
「何するつもりですか!?」
「離れて、2人とも。」
「よっと。」
凱は軽そうな感じでドラグニスを自分に突き刺し、魔人化する。
「えええええ!?」
「いきなりかよ!?」
「あとは……ほいっと。」
凱はそのまま突き刺した剣を抜く。変身が解けた凱の腕は元に戻っていた。
「なんで!?」
「どういう原理だよ……」
「元々、右腕にはデビルブリンガーが宿ってたからな。魔人化すれば右腕とか足ならまだなんとかなりそう。」
「人間やめてるわね。」
「お前半分は人間だろうが」
「頭が追い付きません……!」
姫乃は呆れ、雪華と桜は頭を悩ませている。
「ドントシンク!フィール!」
「発音なんとかなんないの?」
「
「そういうことじゃないの!」
悩む2人をよそに凱と姫乃は何かを言い合っている。その2人のやり取りはどこか楽しそうだ。
「さて、そろっと帰ろうぜ。」
凱はそう言って歩き出す。姫乃は後ろから走り寄って、凱の左腕に抱きつく。
「本当なんでこんなに楽しそうなんだよ…」
「私達も、こんな風で居たいですね」
苦笑する雪華と、2人にちょっぴり憧れる桜だ。
そんな会話をしつつ、四人は闘技場を後にするのであった。
続く
凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……
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簡単にまとめてほしい
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詳しく別々でほしい
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いらない