幻想地憶譚 《とある少年の幻想入り》   作:フォーウルム

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「また変更ですか?」
とある空間で、男が二人話している。
「ああ、戦艦はコストが高いからと却下された。」
溜め息を吐くのは里崎、もう1人は部下の武田だ。
「それで変更後はT3ドーパントとクローンですか。」
「問題はないだろう?」
面倒には変わり無い。そこへ……
「あ!いたいた。」
「おや?どうしたんですか?」
やってきたのは執行部隊のリーダーの北条だ。
「聞きたいことがあってさ、今回の作戦にうちの西條(サイジョウ)って参加してる?」
西條というのはインサニティメモリの使用者だ。
「いいえ?入ってませんが。」
武田は資料を確認しつつ答える。
「え?!でも彼女、『参加する』って行っちゃったけど……。」
「……はぁ!!?」



後に武田はこう語った。





まともなのは私だけか!?





第74話

 

 

 

ー-(ハンド)VS(サウンド)--

 

「フハハハハ!手も足も出ないか!」

南エリアではハンド・ドーパントと音川達の戦いが繰り広げられていた。

「あのドーパント、厄介すぎる!」

「逃がさん!」

ハンド・ドーパントは体の周りに浮遊する手を出現させ、勢いよく飛ばす。それらは不規則な軌道を描き攻撃を仕掛けていく。

「鈴仙さん!撃ち落とせないんですか!?」

「出来たらやってるわよ!」

あまりにも複雑に飛ぶそれを撃ち落とすのはさすがの鈴仙でも難しいようだ。

「ノってるかい?」

そこへ、ネヴァンの雷撃を使って攻撃してきたのは音川だ。

範囲攻撃である雷撃によって浮遊する手が撃ち落とされる。

「ほう?俺の『浮遊する拳(フライング・フィスト)』を撃ち落とすとは、なかなかにやるな!」

「変な名前じゃないか!」

音川はネヴァンを鎌に変形させ、切りかかる。

「甘い!」

ドーパントはそれを白刃取りの要領で受け止める。

「見た目のわりに防御もできるのかい?」

「何も殴るだけが戦いではない!」

ドーパントは刃をつかみ、音川ごと投げ上げる。

「厄介だね、本当にさ!」

音川は空中でネヴァンをギターに変形させ、掻き鳴らす。

あたりに雷撃が飛び、ドーパントにも直撃する。

「ぐぬぅ?!」

「隙あり!」

音川はあろうことか空中を生身であるにもかかわらず、まるで足場があるかのように駆けた。

「なにぃ?!」

「私の能力は『宙を駆ける程度の能力』!これなら決められる!」

《デーヴァ マキシマムドライブ!》

メモリをマキシマムスロットに挿し込む。変身していないため全力ではないが、それでも威力は絶大だ。

音川がネヴァンを掻き鳴らすと、その音色はドーパントを包み、痺れさせ、引き裂いた。

「ぐああぁぁぁ!!」

男の絶叫とともに、ドーパントは消滅した。

(倒した…いや、直前で気配が消えたから逃がしたみたいだね。)

砂煙が晴れ、見回すがドーパントはいなくなっていた。

「音川さん、大丈夫ですか!」「怪我とかは…?!」

妖夢と鈴仙が駆け寄ってきた。その時二人が見たのは、普段前髪で隠れて見えなかった、彼女の額の右側にあった小さな角だった。

「音川さん……それは?」

「ん?ああ、これかい?」

音川は右手で優しく角をなでる。

「私は鬼の子孫らしいんだ。その昔、幻想郷に住んでいた先祖が現実世界に移り住み、ひっそりと生き延びていた。あまり私のように角が生えることはないんだが、偶にあるらしいんだ。」

「そう、だったんですね。私の話はここまで。二人とも、怪我は無いかい?」

「は、はい!私たちは大丈夫です。」

音川はそれを聞きながら視線を動かす。その先にいたのはまるで糸が切れたかのように止まったほかのドーパント達だった。

「動かない…ですね。」

「恐らくさっきのが司令塔だったんだろう。放ってはおけないから片付けようか。」

三人は動かなくなったドーパント達を処理し始めた。

 

 

 

 

ー-喰ライツク番犬--

 

 

「それぐらいにしたらどうですか?」

「諦めるもんか!」

北エリアで激戦を繰り広げているのはミラー・ドーパントと三首猟介だ。

「はぁ!」

ドーパントめがけてキングケルベロスを振るう。しかし、そこにいたのは鏡に映った虚像で、透明な鏡は粉々に砕け散り、三首に襲い掛かる。

「ぐうぅ?!」

「無駄だと言っているではありませんか。」

彼の背後の建物の屋根に、ドーパントが現れる。

「いくらあなたが強かろうと、当てられなければ意味はありません。」

三首は肩で呼吸をする。

(どうする…普通にやっても勝てない。なら()()をやるか?)

三首は一瞬迷った。奥の手があるにはあるが、まだ完全には使いこなせない。使えば疲労でダウンしてしまうだろう。

「(それでも…)……賭けるしか、ないっすよね!」

「まだ足搔くのですか?」

「諦めるのは、つまらないっすからね!魔理沙さん、一回だけ援護お願いします!」

「わかったんだぜ!」

変身を解除しつつ、三首は魔理沙に指示を出す。魔理沙は上空からミラー・ドーパントに向かって光線を放つ。

その一撃はミラーを直撃するが…

「無駄だと言っているのがわかりませんか。」

ミラーはいつものように別の場所から現れる。

「これだから、物わかりの悪い人というのは…」

Gotcha(捕った)!」

「な?!」

ミラーの正面には直前まで地面の上に立っていた三首がキングケルベロスに紅い火を灯し、振りかぶっていた。

「そらよっと!」

「うぐっ!」

三首の一撃は、ミラーの胸元のクリスタルを砕いた。

「しまった!」

「やっぱ、それがキーだったんすね。」

三首はキングケルベロスを回しながら言う。

「毎回テレポートの時にそれが光ってたんでもしやと思ったんすけど、そこが弱点だったんすね。」

「気づいていたのですか…?」

明らかに動揺した女の声がドーパントから漏れる。

「さすがに何度も見せられりゃあね。」

ドーパントは歯ぎしりする。彼の言う通り、胸のクリスタルがテレポートや遠距離攻撃のための、いわば装置のようなものであった。しかし、今の彼女には『この状況の打開策』よりも気になることがあった。

「先程の挙動といい、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をどうやって壊したのですか…?」

彼女は三首を睨みつける。彼の体は最初の時よりもプレッシャーを放っている。

「……教えるとでも?」

三首はケルベロスを構える。その先端からは灼熱の炎が噴き出す。

「…ここは退きましょう。しかし、次に会ったときは必ず倒します。」

ドーパントはワープゲートを開き、消えていった。

それと同時に魔理沙や文が相手をしていたドーパント達も動きを止める。

「…おわったぁ。」

三首はその場にへたり込む。

彼の能力は『肉体の限界を開放する程度の能力』である。

本来、人間は肉体の限界よりもセーブした力しか出すことができない。危機に陥れば普段以上の力を発揮する。いわゆる『火事場の馬鹿力』と呼ばれるものであり、それが人間が出せる力の限界ともいわれる。

三首の能力はこの『馬鹿力』での限界を無理やりに超えるというものである。

身体能力が格段に向上するが、その分負担も大きい。時間制限は無いものの長く使えばその分疲労も大きくなるのだ。

「おーい、大丈夫かー?」

そんな三首を気にかけながら魔理沙が降りてきた。文はそのあとに続く。

「大丈夫っす。状況は?」

「他のドーパントどもはみんな止まってるぜ。私たちの勝利だ!」

魔理沙はVサインを出す。

「よかったぁ~」

「あやや、ずいぶん消耗してますね。」

「能力使うとこうなるんすよ。」

「凱とかに鍛えてもらったらどうなんだぜ?」

「あっはっは、無理無理。先輩はけた違いの化け物っすから。」

三首は笑ってそういって、こう付け加えた。

「……マラソンを短距離みたいに走る、あの先輩は、参考にならないっす。」

 

 

ーー轟き、穿ち、噛み千切るーー

 

 

「「ッ!」」

東エリアでは、他の二つよりも激しい激突が繰り広げられていた。

「シャァッ!」

銀色のドーパントがその手に持つ黒い剣を振るう。

「危ねぇ!」

護はそれを間一髪で避ける。黒い剣はまるで蛇のようにうねる。

「さっきから避けてばっかじゃねえか?」

再び黒い剣が護を襲う。

「避ける以外出来ねえんだよ!」

護はそれを素早く避ける。

「にしても、自分の手の内を明かすとは嘗めてくれるじゃねぇか。」

「明かしたところで勝てやしないだろう!」

ドーパントの攻撃を避けつつ護は思考を巡らせる。

 

おそらく、奴のメモリは《マグネット》、磁力を操る能力だろう。あれは砂鉄で出来た剣。だから攻撃を閻魔刀じゃ防げない。辛うじて攻撃は避けれてる。だが、それが決定打にはなっていない。懐まで一気に駆けることも、次元斬・絶を放つ余裕もない。

 

「どうするかな。」

護は必死に考える。何をすれば奴に勝てるのか……?

そして、1つの結論に辿り着く。

「…試すか。」

護はドーパントから距離をとる。

「逃がすかぁ!!」

マグネット・ドーパントはすかさず砂鉄の剣で攻撃する。

「行くぜ!」

護はベルトに2本のメモリを挿す。

《ファング》《ベオウルフ》

メインにファング、補助スロットにベオウルフだ。

「それがどうした!」

ドーパントは勢いを緩めず、剣を振るう。

「喰らえ!」

護は肩から1本の牙、ショルダーファングを出し、投げつける。

「おっと。」

ドーパントはそれを軽く避ける。

「その程度かよ、これで終りだ!」

そう言って砂鉄剣を振るって護を切ろうと……

「あ?」

その時、剣が()()()

まるで何かに引き付けられるかのように。

「なに?!」

剣がぶれた先には、先ほどショルダーファングが刺さっている。

「案外上手く行くんだな。」

護はそう言って頷く。

「そいつにベオウルフの電流を流したままにして避雷針みたいにしたんだが……効果的だな。」

「それだけで、それだけでぇ!!」

男の悔しそうな声が響く。

それを見て、護は構える。

「おまえも、そのメモリも()()()()ってことさ!」

《ファング マキシマムドライブ!》

右腕のベオウルフの周りを帯電したファングの牙が取り囲み、舞い踊る。

「喰い千切れ、ベオウルフ!」

突き出された拳から金色の光と牙が放たれる。

「くそがぁ!」

ドーパントは叫びと共に爆発に飲まれる。

砂煙が晴れると、そこには誰もいなかった。

「……逃がしたか。」

護は変身を解く。気配を感じ振り向くと、早苗たちが走ってくるところだった。

「…こっちは終わったぜ、あとは任せるぞ。凱。」

 

 

ーー因縁のリベンジーー

 

「あっはっははは!!」

「この野郎!」

ルシフェル・ガイアナイトとインサニティ・ドーパントが激突する。

二人が居るのは荒野だ。ヴォイドが創った次元の1つだ。

本部に出現したドーパントを無理やり引きずり込み、霊夢と飯綱丸にあとを任せたのだ。幸いなことに取り巻きが居らず、タイマンとなっている。

「倒す、倒す倒す倒す倒す!倒スゥッ!」

インサニティの猛攻が地面を抉り、凱に迫る。

「当たるかよ!」

凱は大剣を振るい、それをすべて弾く。しかし、防ぎきれるわけでは無いので、凱自身も所々負傷している。怪我は軽い打撲もあれば、骨折しているところもあった。

(以前よりも重い。……それに…。)

「あっははは!いくよ!」

「チィッ!」

少しでも気を抜けばインサニティの攻撃が来る。一撃一撃が直撃=即死の威力であることが、肌に伝わる。

「今度こそ、殺す!今度こそぉおおお!!」

狂ったかのように荒れるインサニティを見た凱は覚悟を決める。

 

 

 

(ここで………仕留める!)

 

ルシフェルメモリをマキシマムに挿し、距離をとる。

《ルシフェル ソードアクション!》

紫色の光を纏った大剣を構え、突撃する。

「くっははは!行くよぉ!!」

対するインサニティも巨大な鈎爪のついた腕を霞むような勢いで振るう。

 

 

両者が交差する。数秒後、インサニティは音もなく倒れ、崩れ去った。決着と同時に変身者である西條の肉体が限界を超えたのだ。インサニティは塵となり、崩壊する。あとに残ったのはメモリだけだ。

「……ふぅ。」

それを見た凱が溜め息を吐き変身を解く。

「一発もらったのが…思ったよりキツかったな。」

彼は自身の脇腹を押さえる。すれ違いざまに一撃喰らっていたのだ。

脇腹であるはずなのに出血が酷い。

気がつくと、凱は本部に戻されていた。

「凱…!?その傷は!?」

近づいて来たのは霊夢だ。変身を解いているところを見ると、すでに終わっているようだ。

「一発もらった……。」

「そんな…!なら早く!」

「もう出来てるわよ。」

凱にそう声をかけつつ小さな瓶を渡してきたのは八意永琳だった。彼女は今回救護班として参加していた。

「それは貴方ように調整した薬よ。直ぐに怪我を治せるわ。」

「不死の薬じゃねぇだろうな?」

「違うわよ、安心なさい。」

「そうかよ…。」

凱はそれを飲む。すると体がじんわりと熱くなり、体の痛みが退いていくのがわかる。

「流石だな。」

「当然よ。でも安静になさい。」

永琳の言葉を聞き流しつつ、凱は立ち上がる。

「ちょっと!もう少しゆっくりと…」

「指示を出さねぇと、まだ終わっちゃいねぇからな。」

そう言って霊夢の制止を振り切り、凱は本部へ歩いていった。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
お久しぶりのフォーウルムです。
リアル事情が忙しく、投稿が遅れてしまい申し訳ないです。
今後は二週間に一回くらいの頻度になるかと思いますが、気長に待っていただけると幸いです。
コメントやメッセージもらえると、作者の励みになります。もしよかったら是非お願いします ⤵️

凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……

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