「………退屈だ。」
男は椅子に寄りかかって溜め息をついた。
男の体は鍛え抜かれており、離れていてもその圧を放っている。
「……なんか面白いことねえかな。」
最近、
「…暇だしアイツのところに行くか。」
男は立ち上がり、部屋から出ていく。
数秒後、別の扉から1人の女性が入ってくる。
「鳴神さーん、この書類なんですけど……あれ?」
入ってきた女性、尾釜は辺りを見回す。
「…どこ行ったんだろ?」
雪華は雪銀で、桜は対物ライフルでどんどん倒してゆく。
「雪華君、気付いてる?」
姫乃はパンドラをガトリング状態のまま片腕で扱いながら聞く。
「弱すぎる。ドーパントなのに。」
「恐らく複製品ね。」
「なるほど。なら、一気にやっても問題ないな?」
雪華は姫乃に確認をとる。
「ええ、構わないわ!」
「離れていてくれ。死んでも責任は取らんぞ。」
雪華は雪銀を腰に構えた。
「あれをやるつもりですか?」
「桜も離れてて。」
「分かりました。姫乃ちゃん、後退の指示を。」
「わかったわ。前衛後退!指示を出すまで待機!」
姫乃の号令で全体が大きく後退する。
「行くぞ、神剣『桜華』。……『インフィニットストラッシュ』!」
次の瞬間、ドーパントの軍勢が、文字通り『弾け飛んだ』。
「やるじゃない!………?」
姫乃は首を傾げる。その視線の先にいるのは一人の少女だ。
「お前は、何だ?只者じゃないな?」
「貴方が霜月雪華ですか。私はアザリア・シロッコです。」
少女はそう言う。しかしその眼には底知れない殺意が籠っている。
ほとんど条件反射で桜華を構え、斬りかかる。狙うは首の急所、だったのだが。
その剣は見えない何かに弾かれる。
「結界…!?」
僕の剣を防ぐ結界など、半端ではない。認めよう。こいつは強い。
…力を封じたままで勝てるだろうか。
「結界……そんな物ではありません。」
彼女の後ろから現れたのはマスクを着け、2本のレイピアを持った幽霊のような何かだった。
「貴方も私と同じと聞いていたのですが、はっきり言って残念です。」
「僕と同じ?…まさか、異界から?」
「そう考える時点で、貴方の敗けです!」
アザリアは指を鳴らす。すると背後に居た何かがアザリアと1つになる。彼女の姿が変わり、ドーパントになる。腰にはレイピアが2本。そして顔には赤い仮面が装着されている。
「ドーパント……!なら、遠慮は無用か。」
ドライバーとメモリを取り出す。
《スノー》
「変身!」
周囲を凍てつかせ、スノーガイアナイトが降臨する。手には桜華と、身の丈程あろうかという氷の大剣。
「私の、この想いが………その程度で防げると思うな!!」
アザリアはレイピアを抜刀する。
「この力で、《ラプソディ》で、貴方を討つ!」
「『狂詩曲』……。その狂おしい想い、優しき桜の下に眠るがいい。」
右手の桜華の切っ先を彼女へ向ける。
「「…………。」」
両者はにらみ合い、互いの武器を構え、激突する。
ーー氷桜の騎士と狂愛の剣士ーー
しばらくの拮抗の後、ラプソディが距離をとり、抜刀したレイピアを音速を越える速さで突き出す。
「ちっ。」
軽く躱し、出来た隙に桜華を叩き込むも虚しく空を斬った。
「遅いですよ。」
ラプソディは既に雪華の後ろにまわっている。
「…負担が半端ないけど、あれやるか。」
彼女の視界から、雪華が消える。
「?」
「喰らえっ!」
ラプソディの背に衝撃が走る。
振り向くが、そこには何もない。
「……何が?」
体を襲った衝撃に警戒する。
「ぶっつけ本番だが、案外イけるな。」
後ろから聞こえてきたのは、雪華の声。
──居た。
「そこですね。」
ラプソディは再び抜刀する。
「遅い。」
再び消え、今度は腹に痛み。
「ぐぅ?!」
「『熾天使』を舐めるな。」
そう。彼が行なっていたのは、『熾天使』の力の解放。彼の世界に存在する皇帝直属軍である『熾天会』。
彼は、300年の史上唯一その頂点に到達した者なのだ。それに加え、ガイアナイトの身体強化。音速の10倍ほどであれば造作もない。
「………ふふふ。」
ラプソディは不敵に嗤う。まるで雪華を嘲笑うかのように。
「…何がおかしい。」
まさかと思って否定した予想が頭をよぎる。有り得ない。熾天使は僕1人のはず。
──もしや新しい『熾天使』?
だが、それにはすでに『熾天使』となっている者を倒さなければならない。
いや、いるではないか。
霜月 雪華…、いや、『朝霧 修羅』という
「貴方は愚かですね。」
ラプソディの体が崩れ始める。
「その程度だから、周りが倒されても気付けない。」
崩れるラプソディは右腕で彼の背後を指し示す。
「……?…なっ!?」
雪華が振り向くと、背後では咲夜と姫乃が血塗れで倒れていた。
「…ちっ。桜!手当てを!」
「わ、わかりました…!」
今は怒りを押しとどめ、奴を倒すことに集中する。
「させるとでも?」
いつの間にか桜の背後に移動していたラプソディが斬撃を飛ばし、桜の妨害をする。
「きゃあっ!」
紙一重で回避したが、髪が数本持っていかれた。しかし、一瞬で雪華が移動し、反撃をする。
「素晴らしいですね。」
ラプソディが2本目のレイピアを抜き放つ。
「でも、これで終わりです。」
《ラプソディ マキシマムドライブ!》
「そっくり返す。」
《スノー マキシマムドライブ》
桜華を雪銀に納刀し、それに氷を厚く堅く纏わせていく。
「無駄です。」
ラプソディのレイピアから斬撃が放たれる。それは雪華達を直撃するが、痛みはない。だが、体から力が抜け変身が解除されてしまった。
「ちっ……。」
何とか膝はついていないものの、先程までのような動きは不可能。といっても音速の3倍くらいまでなら出せるが、後を考えればやめておきたい。
「諦めてください。」
レイピアが雪華の首に向けられる。視線をずらせば、背後にも、そして桜のところにもラプソディがいる。
「…残念だがお断りさせてもらおうか。」
「そうですか、なら………死んでください。」
レイピアが首を貫く、その瞬間だった。
「面白いことをやっているな。俺も混ぜろ。」
「は?」
凱や護の声ではない、聞きなれない男の声にラプソディが振り向いた瞬間、霞むほどの速度でラプソディは右に殴り飛ばされた。それと同時に桜達を囲んでいた分身も消える。
「誰だ!」
「あれは…?」
突然のことに驚く。
その男の姿は、人間ではなくガイアナイトだ。
金色の鎧や白い装飾の目立つ姿は、今までのガイアナイトとは格が違う事の証明であった。
「随分とボロボロじゃねえか、小僧。」
「割と体張ってたんでね。さてと、治療をしよう。」
彼は熾天使にのみ許された魔法を使う。
瀕死だとしても連れ戻す、理外の力。
「『リバティウィング』。」
しかし、上手く発動しない。
「あれ。」
「発動しない…?」
「なるほどな。『ドーパントでありながらマキシマムを発動でき、異能を封じる能力』は報告書通りか。」
男は感心したように頷く。
「小僧、まだ歩けるな?」
「ああ。当然。…異能封じ……。さながら『E』だな。」
「ふん、あんな化物よりはましだろう。」
そんな時、ラプソディが男の背後に迫る。
が、男はそれを見ずに裏拳で殴り飛ばす。
「メモリは…、使えないか。」
起動してみようとしたが駄目だ。
「あれはどうやら特殊なもののようだな。」
男は腕組みをする。
「…原作でいうハイドープみたいなものだろうか?」
「どうだろうな。とにかく、メモリの使えんお前は足手まといだ。」
男はそう言って後方にいる姫乃達を指差す。
「あいつらを連れて拠点に退け。」
「了解。凱に見てもらわなくちゃな。死ぬなよ、おっさん。」
不敵に笑って巫山戯たように言った。
「ふん。」
男は鼻で笑い背を向ける。
ーー撤退ーー
彼を見送り、雪華は無線を起動した。
「すまん凱。将らしき奴を取り逃した。被害を報告する。」
沈鬱な表情と声で、彼は被害状況を報告した。
しかし、雑音が鳴るだけで何も返答はない。
「…ノイズか?さっきのあいつだろうか。仕方ない、能力も使えないし、1人ずつ運ぼう。姫乃さんは最優先だ、死なせるわけにはいかない。」
「…はい!」
涙を拭いながら桜は頷いた。
そこで雪華は目の前に落ちていた見慣れないものを見つけた。それは凱からもらったもので質素な包装がされた小箱であった。
「これは…、姫乃さんのものか?中身は……。」
不躾であるとは分かっているが、中身を見ると、そこには片耳のワイヤレスイヤホンのようなものがあった。
雪華は思い切って付けてみる。
すると、頭にノイズの様なものが少し走るが違和感はない。
「…これは、何だ?ただのイヤホンというわけでもあるまいし。」
少し触ってみるが、反応はない。
「………ぉぃ…おい…聞こえてんなら返事しろ!」
頭の中から凱の声が聞こえる。
「す、すまん……。」
「何の用だ?そっちが連絡寄越したってことは、終わったみたいだがこっちは処理が終わってない。ちょっかいかけるなら後にしてくれ。」
何時ものように冗談を言うが凱は普段より若干苦しそうだ。
「…将らしき奴を取り逃した。そしてそいつのせいで姫乃さんが重傷だ。……僕の責任だ、すまない。」
心底苦しげな声で告げる。
「………死者は?」
凱からの問いに雪華は、苦しくも淡々と被害状況を伝えた。
「………そうか。聞きたいことは山ほどあるが死者だけは出なかったみたいだな。」
「…それと、奴の力によって僕のメモリと能力が無効化された。熾天使の力もだ。凱さえ良ければ、後で点検を頼みたい。」
「ほう?なるほど、それが原因で姫乃もやられたんだな。」
「…いや、それは僕の過失だ。目の前の相手に捕らわれて、奴の策略に気付けなかった。……………本当に、すまない。」
「失敗は誰にでもある。さっさと戻ってこい。」
凱は雪華を責めることはせずに指示を出す。
「…了解。軍も一度退かせるか?」
「そうだな。あの男が居るなら尚更だ。指示はこっちで出す。」
「承知した。」
そう言って雪華は通信を切った。
続く
凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……
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簡単にまとめてほしい
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詳しく別々でほしい
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いらない