ーー戦う理由ーー
レミリアに叱られた凱と雪華は紅魔館の厨房に来ていた。
「いやー楽しかったな。」
凱は体を伸ばしながら笑う。
「…どこが。」
対する雪華は苦い顔だ。
「たまにはいいじゃないか。さて、俺はこれから飯作るけどお前はどうする?」
「じゃあデザートでも作るかな。得意分野だし。」
「あー確かにシャーベットとか得意そうだもんな。」
厨房に着いた凱は調理を始める。
「まあ確かにそうだが、大体のスイーツは作れるぞ?」
「流石、喫茶店のオーナー様。」
肉に下味をつけながら言う。
「桜にも聞いたが、中々に良さげじゃないか。」
「いつでも来てくれ。割引しておくぞ?」
笑いながら見事な手付きで苺を刻む。
「ありがとな。そういやぁ、夜も忙しいのか?」
「…どういう意味だよ。」
ジト目で凱を見る
「だってそうだろ?二人だけで店を回すとしたらそれ相応の準備が必要なはずだ。前日の内に下味とか付けるもんじゃないのか?」
「…まあ、そうだな。スポンジとかは前日に焼いたりするかな。」
「こういう時、食品を扱う店は大変だよな。」
「まあな。ま、楽しいから良いんだけどな。」
雪華は微笑んだ。
「何事も楽しいのが一番だからな。よし、こんなもんかな。」
凱は調理の手を止める。彼の周りには様々な料理が並び始めている。
「おおー、さすがバーのマスター。」
そう言いつつも、彼の周りにも、それぞれが好むスイーツが並んでいた。
「今度、うちにも来るか?良い品が揃ってるぜ?」
「ああ、邪魔させてもらうよ。」
雪華は微笑んだ。
「……1つ聞いていいか?」
笑みを消した凱が尋ねる。
「なんだよ?」
雪華は可愛らしいトッピングをしながら応える。
「俺は、俺が正しいと信じていることの為に戦っている。もしも………その信じているものがお前等での《悪》だった場合、お前ならどうする?」
「…斬り捨てるさ。全力を以てな。例え友であろうと、容赦はしない。だが……。」
「だが?」
「僕は逆も望む。僕が間違ったことをしていたら、殺してくれ。桜は泣くだろうが、事情を話せば納得してくれる。彼女は聡いから。」
「……安心しろ、そうなったら全力で叩き潰してやるよ。」
「それでこそお前だ。さぁて、みんなが待ち侘びてるぜ?」
「だな。俺も腹減ったよ。」
凱達の料理をメイド達に運んでもらい、夕食を取った。皆が舌鼓を打ちながら食べる中、咲夜のみが険しい顔をしていた。
ーー新たなる力ーー
料理を食べ終えたあと、凱と雪華は後片付けをしていた。そこには咲夜もいたが、相変わらず表情は険しい。
「いやー、美味かったな。」
「ああ、さすがだな、凱。」
「お前のデザートも中々だったぞ?」
「なら良かった。……咲夜?どうしたんだ、そんな顔して。」
「…………何でもありません。」
咲夜は相変わらず険しい顔をして食器を片付けている。もちろん、凱と雪華も一緒だ。
「そうか?僕が信用できないのは分かるが、せめてレミィには言ってやれよ?あの子、君が凄く大切だからさ。」
それだけ言い置いて、自身の作業に戻る。
「もういいです。凱、私は他の片付けを。」
「ああ、わかった。」
咲夜は食器洗いを終え、別の作業をしに行った。
「…怒らせてしまったかな。」
気まずい雰囲気になり、余計な一言を後悔する。
「全く、前も思ったが察しが悪いんだな。」
「そうだろうか…?そういうのは分からないんだ。話したことのある女性なんて、桜と部下数人だけだったから……。」
「はぁ…普段は咲夜が紅魔館の食事を作っているが、今日は俺等が作った。恐らくレミリアやフランはいつも以上に喜んで食べてたんだろうな。だから…これは嫉妬ってやつかな。」
「ああ、そういうことか…。」
申し訳ないことをしたと思いつつ、ワインを使ったオリジナルスイーツのレシピでも置いて行こうと考えた雪華だった。……当然それで許してもらえるとは思っちゃいない。
「だったら俺がもらおう。お前のデザートを再現するのに良さそうだ。」
雪華が口にしてはいない部分を凱は先読みする。
「…詫びを横取りすんな非常識野郎。」
盛大に溜息をついた。
「あんまりな言い方だな、否定はしないが。」
「回りくどいよりはましだろう。」
全く……、と言いながら紙を取り出す。
きっちり2人分書いているのがせ雪華らしい。
「真面目だな。…………今日の夜、地下室に一人で来い。」
「…?分かった。」
書きながら頷いた。
「じゃあな。くれぐれも桜には言うなよ?」
そう言って凱は立ち去った。
「OK。」
雪華の方も書き終わったらしく、1枚を厨房へ、1枚を凱の部屋の前に置いていった。
その日の夜 FDL 地下フロア
「凱〜?」
そっと地下室のドアを開ける。
「来たか。」
凱は雪華に手招きする。
「ああ、そっちか。」
凱の方へ行くと、見えたのはメモリ。
「こいつはお前に。」
凱は1本のメモリを手渡す。青と金色の装飾が施されたそのメモリには『A』のイニシャルが描かれている。
「これは……、アクセルではなさそうだが?」
雪華はそれをまじまじと見つめる。
「アクセルじゃない。これは《アーサー》だ。」
「アーサー…。伝説の騎士王、か。」
少し驚嘆したように目を見開く。
「お前は刀使うから合わないかも知れないがな。」
凱は欠伸をしつつ言う。
「いや、これ以上ないほど。全てを守る騎士王。僕の理想のメモリだ。」
そしてふと気付く。先程から、メモリが淡い光を放っているのだ。邪悪なものではない、むしろ清冽で、温かな光。
「………好かれてるな。」
「好かれてるって、どういうことだ?」
「そのメモリは特殊でな。簡単にいえばエクストラみたいに自我がある。喋ったりは出来ないけどな。」
「…護りたいものがあるのは、彼も僕も同じだからな。」
愛する
「愛国者で愛妻家か。俺からしたら考えられないな。」
凱は苦笑いをする。
「…まあアーサー王はグィネヴィア妃との仲は悪かったらしいが。」
まあ、愛するものがあるのは同じ。そして、それを護りたいのも。だから気に入られた、ということだろうか。
「下らん、知らん、興味はない。改竄の出来る《歴史》よりも、変わらない《記憶》の方が信用できる。」
凱は棚をいじり始める。
「以前、俺が剣を創ったとき言ってたよな、『砕けた破片が欲しい』って。」
「ああ。…指輪を、作ってやりたいんだ。だから、桜の気に入ったあれを使いたかったんだが……。」
「……レシピの代価を払おう。」
凱は棚にあった小瓶を取り出す。中にはあの鉱石と同じ色の液体が入っている。
「これは…、あの石と同じ……?」
「ああ、以前に似たようなのを持ってたのを思い出してな。」
凱はそれを手の平に出す。光を反射するそれは瓶から出た部分のみ石のように硬くなる。
「さて、少し待ってろ。」
凱はヘファイストスメモリを使い、慣れた手付きで石を加工し始める。
「へぇ……。」
雪華は感嘆の声を上げ、それを見ている。
「………よし、ほらよ。」
完成した指輪を雪華に渡す。
「箱はあっちで選べ。俺のセンスは当てにならん。」
「…これなら彼女も気に入ってくれる。感謝する!」
そして、意気揚々と箱を選び始めた。
それを見てか、アーサーのメモリが微笑むように再び光を放つ。
「………これでよかったのかもな。」
凱はボソッと呟く。
「…よし、これだ。」
笑って1つを手に取った。
「どんなのにしたんだ?」
「これだよ。」
白銀の桜が舞う、変わったデザインのものだ。しかし、2人にとってはこれ以上無いほど相応しいだろう。
「なるほどな。まあ、好きにすればいいさ。」
「ありがとう。」
そう言って、優しく微笑んだ。
「さて………今更ながら悪いことをしたな。」
凱は少々申し訳なさそうにする。
「…なぜだ?」
「お前って、いつも桜と寝てるんだろ?」
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「今は夜中だ。もし桜がお前がいないことに気がついても、探しには行けないだろうな。」
雪華はしばらく考えたあと、目を見開いた。
「…しまった、失念していた……!すぐ戻らないと!!」
慌てて彼は部屋に戻ろうとする。
「やめておけ、下手に動くと死ぬぞ。」
「…どういうことだ?」
「この地下室、すぐ近くにナイトメアの寝床がある。」
「…起こしたら機嫌を損ねて殺される、と?」
「いや、そもそもで道を間違えれば死ぬ。」
凱は椅子にもたれ掛かりながら言う。
「普段、この時間は誰もこの辺りを使わない。もし誰かいれば、不法侵入として処理されるぞ。」
「…案内してくれ。出来るだけ急いで。」
「面倒だから嫌だ。」
凱は立ち上がり、自身の懐を探る。
「あれ?詰んでないか?」
「……貴様は記憶力が乏しいようだな。」
凱が振り向く。その瞳は緑色だ。
ーー名を残す理由ーー
「あ、そうか、ヴォイド。あの道か。」
納得する。たしかにそれでもスキマのような使い方ができる。
「いや、こっちだ。」
ヴォイドは扉を開け、そとに出る。
「…普通に行くのかよ。まあいいか。」
少しズッコケつつ、素直に付いていく。
「そうではない。あの部屋ではそもそもで能力は使えん。」
ヴォイドは手を振る。瞬間、次元の裂け目が現れる。
「そういうことだったのか。…ありがとう。」
礼を言いながら、『道』を通る。
「おい、我がいないとその道からは出られんぞ。」
ヴォイドも雪華の後に入る。
「そうだったのか……。すまない。」
謝ってはいるが、歩みは止めない。
「………よほど好いておるのだな。」
「当然。…初恋の、人なんだ。」
「恋……我にはわからぬ。」
「自我があるとはいえ、メモリ……、記憶だもんな。凱や姫乃さん辺りにでも聞けば良いんじゃないか?」
ヴォイドを振り返り、笑った。
「いや、何故貴様ら人間がそのような関係を築くかがわからん。どうせ、無へと帰すのだろう?」
「言い方が悪いな……。
まあ、死んでしまえば、もう会うことも想いを伝えることも叶わない。だけど……、愛は、変わらずそこにあるものなんだよ。人間が他の動物と違う所。」
「貴様は、心得ているようだな。」
「何を?」
少し目を見開き、ヴォイドに問う。
「いや、我が見てきた人間は、不死を求めていた。自分が後世に名を残せないとしり無駄な足掻きをするのを何度も見た。それに比べ、貴様は自身の『終り』を覚悟している。」
「まあ…、人間って何か遺したがるからな。」
「…あの男は別だがな。」
あの男…おそらく凱のことだろう。
「まあ凱は…、欲が無さすぎるしな。いや、ある意味貪欲なんだろうが……、『自分』が消えることに頓着がないというか、忘れられたとしてもしょうがない、で済ませるだろうしな。」
「以前、あの男に『名前を残したいか』と聞いたことがある。」
「で、あいつは何と?…まあ分かりきってるけど。」
「名を残すつもりは無い、と言っていた。何故かわかるか?」
「…さて。僕はあいつじゃないし、あいつの全てを知っているわけでもない。僕に聞かれたならまだしも、な。」
「『名も知らぬ有象無象に名を知られたくはない』だそうだ。」
「…あははっ!実にあいつらしいじゃないか!」
雪華は思わず吹き出した。
「………貴様はどうなのだ、霜月雪華よ。」
「僕か?そうだな…、『ある意味』、遺したい。」
少し考え込んだ後、そう言った。
「別に資料に遺したい訳じゃない。…だが、僕が死んだ後、一部の人達……、具体的にはレミィやフラン、咲夜とかだな。の、記憶には、残りたい。」
「ある意味、それは叶っているかもしれんな。」
「今のとこな。ありがたいことだ。」
彼は笑った。
「…そろそろ、か?」
「ああ、この辺りだ。」
ヴォイドが再び手を振るう。すると、二人は部屋の前に立っていた。
「ありがとな。さてと、魘されてるだろうな……。」
彼はヴォイドに礼を言い、そっと部屋へ入っていった。
部屋の扉が閉まるのを確認したヴォイドは背後を振り向き、暗く先が見えない廊下にいたそこにいたらおかしい相手に言い放つ。
「……………貴様、いつから見ていた?」
ヴォイドの言葉を受けたそれは、なにも言葉を発しない。
「貴様が奴等を気に入っているのは分かる。」
ヴォイドはそのまま続ける。
「確かに、あの男は他とは違う。」
ヴォイドは歩き始め、それとすれ違う。
「何をしても構わんが、騒ぎは起こすなよ?一応、伝言は伝えておいてやろう。」
ヴォイドのその言葉のあと、しばらくしてからヴォイドと話していたそれは雪華達の部屋に入っていった。
続く
凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……
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簡単にまとめてほしい
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詳しく別々でほしい
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いらない