幻想地憶譚 《とある少年の幻想入り》   作:フォーウルム

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栄光の科学結社、特別研究室

「これで、完璧ですよ。」
ゴーグルを外した男、ジルヴィスが別ベットに寝ているもう一人の男に言う。
男といっても、彼はほぼ機械人間なのだが。
「ありがとねジルちゃん。やっぱ優秀じゃねえの。」
機械男は体の調子を確認しながら起き上がる。
「いえいえ、これも兄弟(ブラザー)のおかげですよ。」
「何言ってんだ。俺はお前さんの論文を見て決めたんだよ。」
研究室の壁には本棚が埋め込まれており、中には様々な論文が入れられている。
「『ガイアメモリの応用兵器の可能性について』、『過剰適合者(ハイ・ドープ)の適合性について』、よくもまとめ上げたもんだよ。」
「それでも、私がここまでこれたのは兄弟の推薦があってこそです。」
「だってそうだろ?こんな有能なやつを放っておくのはもったいないからな。」
機械男はジルヴィスを見る。
「それに()()()()()()も興味深いからな。」
「………T3ですか。」
そう、最近のジルヴィスの研究は『T3メモリ』についてだった。
「既存のメモリの派生進化、突然変異…それを量産するんだっけか?」
「そうですね、現時点の目標はそこですね。」
「量産しようとしても、コピーした瞬間にメモリが使用不可になる。しかも使える人間が限られると来たもんだ。」
「……まだまだ課題は山積みです。」
「そうだな、期待してるぜ?ジルちゃん。」
「はい、お任せください。」

















第80話

 

 

 

 

 

 

 

「ん……。」

朝、雪華は目を覚ます。

彼が目を机の上のものにに動かすと、そこには昨日もらったメモリが置いてあった。

「せっか、さまぁ……。」

雪華が目を開けると、いつの間にか桜が抱きついてきていた。

相変わらず可愛らしいな、などと思いつつ彼は目を擦り、天井を見上げる。

普通の人間なら、ここで悲鳴をあげただろう。何故ならば天井に何かがへばりついていたからだ。

「…なんだあれ。」

そんなことを呟きつつ、条件反射でナイフを投げる。

ナイフは天井に刺さったかと思うとシュウシュウといって消えていった。

「…エクリプス、か?」

それを見ながら冷静に分析をする。

ドローっと天井から垂れてきたのはふわりと布団に着地し、以前見たスライムの姿になる。

「やっぱお前か。いきなりナイフ投げて、済まなかったな。」

エクリプスは雪華に近づきゆったりとしている。

「雪華、俺だ。」

その時、ノックと共にドアの奥から凱の声が聞こえた。

「どうぞ。」

桜を起こさないよう、彼女の腕をゆっくり解きつつ起き上がる。

「……桜はまだ寝てるのか。」

凱は音もなく部屋に入ってくる。

「ああ。」

微笑んで彼女の頭を撫でる。

にへらと笑うのが可愛らしい。

「…ヴォイドの話によると、エクリプスは昨日の夜、部屋の前にいたらしくてな。そのままにしたが、問題なかったか?」

「驚いてナイフ投げてしまったが、エクリプスなら桜も大丈夫だろ。桜を気に入ってんのかな。」

「どうだろうな。まあいい、朝飯食うだろ?」

「ああ。凱の腕前はどこで身につけたんだか、気になるな。」

雪華は笑いながら桜を起こす。

「ふぇ……。」

起きた彼女は雪華を認めると、すぐに抱きついた。

「せっかさまぁ〜♪」

「こらこら。」

上機嫌な桜を、苦笑しながら彼は諌めた。

「相変わらず愛されてんなぁ。」

凱がニヤニヤしている。

「凱くーん、準備できたけど、桜ちゃん達は?」

そこへ姫乃が入ってきた。

「おはよう、姫乃さん。」

「おはよ、桜ちゃんはまだ寝ぼけてるのね。」

「ああ。」

そこまで話したところで。

「……あ。…凱さん……?姫乃ちゃん……?」

みるみるうちに赤くなる。

「可愛いわね。」

「………。」パシャッ

姫乃は微笑み、凱は懐から取り出したカメラで撮影する。

「け、消してぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!!今すぐ消してぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

「あははははっ!!」

桜は凱からカメラを奪取せんと動き、雪華はそれを見て大爆笑している。

「いい眠気覚ましじゃねえか。」

凱はひょいひょいと桜をかわす。

「凱、そろそろやめてやれ。」

目元に浮かんだ涙を拭いながらそう言う。

「ああ、わかっ……ヤベッ!」

凱の手からするりとカメラは落ち、エクリプスにのまれる。

あとは先ほどのナイフと同様だ。

「あちゃー」

「そういうのはやめてください本当に!」

「あー面白かった。」

「雪華様もあそこまで笑いますか!?」

平和な朝だった。

その後、凱達は朝食をとった。

しばらく後、凱は雪華呼ばれたため、彼の部屋に再び訪れていた。

 

 

 

ーー二人の雑談、その1ーー

 

 

 

 

「凱、アザリア・シロッコという者に心当たりは無いと言ってたな?」

「ああ、俺の知り合いにもいないし、依頼人にもいない。」

雪華のいる部屋で凱は考えを巡らせる。基本的に依頼人の顔は覚えている。

「では奴のメモリ、『ラプソディ』についてはどうだ?『狂奏詩』の記憶だとしたら、なぜあんなことができた?」

「………『狂った愛は灼熱より熱く、これを妨げるものは無し』。」

それは凱がよく読んでいる小説の一節だった。関係があるかどうかはわからないが、これぐらいしかヒントになるようなことはない。

「……だからこその『狂奏詩(ラプソディ)』か。狂った愛を、詩にして……」

「姫乃や鳴神からも聞いたが、あれは異常だ。普段ならば見ることはない現象である、ということは言っておこう。」

「……あいつは、『私は貴方と同じ』と言っていた。最初は熾天使や異界の住人ではないかと思ったが。今分かった。恐らく、あいつは過剰適合者だ。」

「そうか……んで、話ってこれだけか?この内容ならわざわざ桜を姫乃に連れ出させる必要はなかっただろう?」

凱は部屋を見渡す。いつも雪華と一緒の桜は今は姫乃とともに外へ出ている。

「まぁ、どちらかというと、桜に羽を伸ばして欲しいのがメインなんだよ。いつも僕の傍にいて、気も遣ってるだろうし。女性のストレス発散にはショッピングが有効だって聞いたから。それとだな……。」

雪華は、とある計画を凱に話す。

「………なるほどなぁ。」

凱はしばらく考えたあと、ニヤリと笑う。

「でまぁ、準備を手伝ってほしいなというわけだ。」

「……それを打ち明けて、手伝ってもらえるとでも?」

凱は雪華を見据える。

「お前はそういう奴だった畜生。」

雪華は肩を落とした。

凱はそんな雪華の反応を楽しむ。戦いの中では修羅のごとく戦う彼なのだが、こういった場面では、普通の人間なんだな、と感じる。

「まあ、今回はお前の尽力あってこその防衛成功だったわけだ。普段ならイジり倒してやるところだが、協力しよう。」

「本当か!感謝する!」

雪華は顔をあげた。先程言ったように戦っているところだけを切り取れば修羅のような男なのだが……今の彼はとてもそんな風には見えなかった。

「盛大にやるんだろ?話は通しておいてやるよ。」

「そこまでやってくれるとは、ありがたい。」

恥ずかしそうに笑う。

「頼んだのがお前でなく、相手が桜じゃなかったら断っているところだ。」

凱は端末を操作しつつぼやく。

「……イジった時の反応が面白いから、とか言わないよな?」

「……………いや?」

「何だよ今の間は!」

「さて、何のことやら。」

凱は何かメッセージを打ったあと、端末を電話のように耳に近づける。

「全く……。」

それきり雪華は黙った。

「………姫乃か?俺だが。」

「……。」

雪銀の手入れをしながら聞くともなしに聞く。

「そこに桜は居るか?あとできればスピーカーモードにしてくれ。」

「…?」

まあいいかと手入れに戻る。

「桜か、実はさっき雪華から話があってな?」

『はいはい?』

「…おい凱?」

「今日の夕食を作る際に、お前らの好物作ろうと思ったんだが何が好きなのか知らなくってな。今は雪華の近くじゃないからあいつにも聞けない。本当はサプライズにしようと思ったんだが……。」

『私は魚料理が好きですよ。雪華様は…。』

桜が僕の好みの味付け等を凱に伝えていく。……恐ろしく細かい。まあ10年以上一緒に過ごしてきたからな……。

「ふむ、わかった。ありがとう。」

『凱君、何か隠してない?』

「何も隠しているつもりはない。」

『本当に?』

「ああ。」

『そっか。私達は今日は外でお昼食べるから、また後でね。』

「わかった。楽しんでこい。」

それを最後に凱は通話を切った。

「ありがとな、凱。」

雪華は微笑んだ。

 

 

 

ーー二人の雑談、その2ーー

 

 

 

「ねえ、姫乃ちゃん。」

外出先で、桜は姫乃に話しかけた。

「どうしたの?」

「凱さんとの馴れ初めってどうだったの?」

笑って問う。

「凱君との?そうね………あれは、小学生くらいの頃だったわ。私が1人でいるところに彼が話しかけてきたの。当時の私は周りとは馴染めてなくて、いつも1人だった。」

「ふむふむ。」

「最初は怖かった。凱君が男の子だったってのもあるけど、その時は大体、私の眼の事を言われてたから。」

そう言って姫乃は自身の眼を指し示す。

「この眼は、周りからすれば異端、異常、それに不気味なものとして見えていたの。お父さんとお母さんはいつも『綺麗だ。』って言ってくれてたんだよ。」

「うーん、私も綺麗だと思うよ。まるでアメジストみたい。」

彼女の髪と同じ目が姫乃を覗き込んだ。

「ありがと。………それでね、凱君が近づいてあと、こう言ったんだ。『とってもきれいな色だね。』って。」

「うわあ…、とってもロマンチック。良い話ね。」

桜は笑った。

「…………でも、私は怖かった。」

「怖かった?何で?」

「彼に会ったとき、本能的にそう感じたの。『この人は、危険だ。』って。今ではその理由もはっきりしてるけどね。」

「あー、まぁ……。」

初めて凱と出会った時を思い出す。

本当に散々だった。

「怖かったけれど、今じゃすっかり虜ね。こう言うのを『一目惚れ』って言うのかな?」

姫乃は恥ずかしそうに笑う。

「本当に仲良いよね。…私達も、あんな風になりたいな。」

「今でも充分に仲いいじゃない。」

「えへへ、そうかな…?」

桜は恥ずかしそうに笑った。

「そう言う桜ちゃんはどうだったの?彼との馴れ初め。」

「わ、私?そうだなぁ……。忘れもしない、11年前。私が8歳の時。両親と一緒に夜にお散歩してたの。でもね、怪物に襲われて、両親が殺されちゃって。」

「……それで?」

「その時に、当時10歳だった雪華様が助けてくれたの。両親は手遅れだったけど、私は何とか無事だった。独りが怖くて、泣いていた時に言ってくださったの。

『安心しろ。僕が居てやるから。』って。

それでもう私、駄目になっちゃった。結局、泣き止むまで付き添ってくれたんだ。

どうにかして彼の隣に居たかった。だから、軍に入って、熾天会に入隊した。

……こんなとこかな。」

「へぇ~。」

姫乃は柔らかな笑みを浮かべている。

「本当に強くて、優しくて、カッコよかった。…何で私なんかを好きになってくれたんだろうね。」

「……さぁて、ね。それは彼しか知らないわよ?きっと。」

「それもそっか。雪華様が喜んでくれるもの、あるかな……?」

「彼なら何でも喜びそうだけどね。」

「そうかなぁ?アクセとかは似合わなさそう。真面目だし。」

「うーん、じゃあこれとかは?」

姫乃が指差したのはブレスレットだ。

淡いピンク色と透き通るような白色の物が対になるように置かれている。

「わぁ……。これなら、喜んでくれるかも!」

雪華様といつでも隣に居るみたい、と思ったことは恥ずかしいので黙っておく。

「これにしましょうか。店員さん、これください。」

「あいよ!」

姫乃はそれを店員のもとへ持っていき、購入する。

「姫乃ちゃん、ごめんね。えーっと、これでいいかな?」

桜は代金を取り出し、姫乃に差し出す。

「大丈夫よ、これぐらいなら。」

姫乃はそう言って代金を桜に返す。

「凱君にお願いして経費にでもしてもらうから。」

「でも、悪いよ……。」

「気にしなーい気にしない!折角なんだし、甘えなさい!」

「…うん、ありがと!」

そう言って笑った。

「さて……と。これからどうする?」

姫乃は買った物を袋に入れつつ尋ねる。

「うーん、折角だし、凱さんへの贈り物とか?雪華様へのは今買ってもらったし。」

「凱君にか………あんまり意味ないかも。」

「何で?」

首を傾げた。

「彼、自分で掘った鉱石で自分のアクセサリー作るから。」

「あの綺麗な石?あれ本当に綺麗だったなぁ……。」

「結局、あれは全部剣になっちゃったけど、でも彼は掘った鉱石を売ったりもしてるのよ。」

姫乃は道を歩きながら言う。

「それが財源だったりするの?」

「それもある。彼、私たちが知ってる依頼みたいなのから知らないものまで1人でやってるから。」

姫乃は苦笑いをする。

「…あの人、万能だなぁ。」

「そうね、戦いができて料理が出来て仕事も何でもこなす。本当に人間なのか怪しいわね。」

「うちの人だって似たようなものだもん。」

桜は笑って言い、その後で恥ずかしそうに俯いた。

「ふふっ。じゃあもう少し見て回りましょうか。」

2人はしばらく人里を歩いた後、紅魔館へ行った。

 

 

 

 

 

「凱君、ただいまー。」

「姫乃さん、桜、おかえり。」

笑って出迎えたのは雪華だ。

「あれ?凱君は?」

「凱ならキッチンだよ。僕はデザートの材料を買ってきたんだ。」

「なるほど。ねえ、雪華君。少しだけお話しない?」

「ん?良いけど、どうしたんだ?」

雪華は荷物を置いて姫乃の方へいく。

「桜ちゃんには内緒でね?」

「ああ、分かったけど……。」

そのまま2人は姫乃の部屋に行った。

「ねえ、何か隠してない?桜ちゃんに言えないことを。」

「あー……。桜には内緒にしてくれるかな?」

彼はそう前置きした。

「……桜ちゃんにサプライズでもするの?」

「…これをね。」

彼が取り出したのは、小さな箱だった。

白い桜が舞う、変わったデザインのものだが、彼にはとても似合っている。

「それって…ああ、なるほど。」

姫乃は微笑む。彼が何を渡そうとしたのか理解したのだ。

「まあ、その、式なんて挙げてないからな。だからせめて……、ってね。」

彼は恥ずかしそうに笑った。

「そっか…あなた達、本当にお似合いね。」

「お似合い?桜は僕に不釣り合いな程好い人だと思うんだけど……。」

「…そういうところも含めて、お似合いよ。」

姫乃がそう言うと同時に部屋のドアがノックされる。

「姫乃、居るか?」

声からして凱だ。

「そうかな。…開けるよ?」

雪華は姫乃の問いに答えながらドアを開ける。

「雪華?………何してんだ?」

ドアの前に立っていたのは凱だ。

「ああ、ちょっと話してた。変なことはしてないから安心してくれ。」

「そうか。」

「それで凱君、私に何か用?」

姫乃は凱に聞いた。

「ああ、雪華と一緒にいるって話を聞いてな。雪華、そろそろ準備できたぞ。」

「ありがとう。…緊張、するな。」

「大丈夫、上手く行くさ。」

「緊張しないで、頑張ってね。」

「…頑張ってみる。」

 

 

ーー宴会での交流ーー

 

 

 

 

凱達がホールに来ると、すでに他の面々が集まっていた。

「わぁ、今日って何かの記念日だったんですか?」

桜は驚いていた。こんなこと聞いていなかったから。

「ああ、今日は記念日だからな。まあその話は追々してやるとして、皆、グラスは持ったか?持ったな!乾杯!」

『乾杯!』

凱の勢い任せの合図と共に宴会が始まった。

開始と同時に雪華は女性陣に引きずられ、何やら話をしている。大方あちらの自分達のことでも聞いているんだろう。

今妖夢と握手をした。稽古の約束でもしたのかな。

そんなことを思いつつ、桜はやや嫉妬気味にそれを見ていた。

「ほら、これ食うか?」

手に魚料理を持ってやってきたのは凱だ。

「はい、ありがとうございます……。」

彼女の声には元気がない。

「……随分と元気無いな。飲むか?」

凱はそう言って注いだばかりの麦茶を手渡す。

「……はい。」

彼女の視線の先には、困ったような雪華が居た。

「妬いてるのか?」

「……そうかも、しれません。」

桜は寂しげに笑った。

「アイツはこっちだと珍しいからな。」

凱はワインを飲みつつ言う。

「珍しい、ですか?」

「ああ。この世界で戦うってなると大体がメモリだからな。メモリを使わなくてもドーパントと渡り合えるアイツは特別なんだよ。」

「あれくらいだったら、私でも倒せますっ。」

そう言って少し頬を膨らませた。

「だろうな…案外、他のやつらも倒せるとは思うが……にしても面白いな。」

少女達に囲まれ慌てる雪華を眺める。

「面白い…?…私からするとつまんないです。」

むー…、と唸る。

「呼んできてやろうか?」

「それは悪いです。…あんなに楽しそうなんだもの。」

桜は優しく微笑んだ。

「そうか。何かあったら言え、俺は少し用事がある。」

そう言って凱は離れていった。

 

 

ーー愛する人へのサプライズーー

 

 

 

 

一方の雪華は…

「僕の剣?雪銀のこと?」

「そうです!それって何でできてるんですか?」

刀オタクの妖夢からの質問責めにあっていた。

「実を言うと、よく分からない。」

雪華は苦笑した。

「本当に謎の金属なんだよ。僕の世界にあるどの金属とも違う、未知のものなんだ。ただ、この時点で凄まじい切れ味を誇る。」

「へぇ~。」

妖夢は興味深そうに雪銀を見る。

「あんたはそればっかりね。雪華も飽きるんじゃない?」

「そうだよ妖夢ちゃん。」

割って入ってきたのは霊夢と鈴仙だ。

「そうでもないさ。雪銀のことをこんなに聞いてくる人なんて居なかったからな。何だかんだで楽しい。実はな、妖夢。もっと強い剣があるんだよ。」

「本当ですか?!」

妖夢は目を輝かせ、霊夢と鈴仙は溜め息を吐く。

「少し離れてくれ。……雪銀。」

その手に雪銀が召喚される。

「おお……」

その登場に妖夢だけでなく、周りからも感嘆の声が漏れる。

「さあ、見せてくれ。神剣『桜華』。」

雪銀を腰に構え、柄を引き抜く。

そこから現れたのは、桜色の刀身を持ち、刃の根元に拳大の穴が空いた不思議な刀だった。

「……綺麗…。」

その刀はその場にいる全員を魅了するほどの美しさであった。

「何体ものドーパントを一気に薙払えたのはこれのお陰でね。僕の切り札だ。」

彼と桜華はとても絵になっていた。

「なるほど……。」

「随分と派手なことしてるじゃないか、雪華。」

やってきたのは凱だ。

「はは、そのようだな。」

桜華を雪銀へと収める。

「浮かれすぎなんじゃないのか?」

凱はわざとらしく視線を逸らす。その先には不満そうにする桜がいる。

「分かってるよ。桜。こっち来て。」

「……。」

大人しく雪華の近くに来た途端、急に抱きついた。

「雪華様は私のです……。」

拗ねているようだがとても可愛らしい。

「ごめんな。ちょっと楽しくなっちゃってな。」

桜の頭を撫でる。

「妬けるわね。」「そうですね、羨ましいです。」「仲良さそうですね。」

霊夢、妖夢、鈴仙がそう言いながら凱にくっつく。

 

「君達も大概じゃないか。」

「……そうですね。」

桜はちょっぴり機嫌を直してくれたようだ。

「凱君、私も!」

「うわっっと……危ないな、姫乃。」

飛び付いてきた姫乃をなれた手付きで受け止める。

「…こなれてるな。」

「雪華様は慣れないでくださいね?」

「はいはい。」

こちらはこちらで苦笑する。

そんなやり取りを見ていた凱は雪華に目配せをする。

 

「…そうだな。

桜、少し離れてくれるかな?」

「え……。」

「お願い。」

「わ、わかりました……。」

桜が離れる。すると雪華はいきなり跪き、小箱を取り出した。

「桜。改めてではあるけれど…………僕と、結婚してください。」

「ふぇ………?」

小箱の中の指輪を見て、桜が驚きに目を見開く。

周りは黙ってそのようすを見ている。

「……………はい、喜んで!!」

桜は目に涙を溜めて頷いた。

『おめでとー!』

周りは2人に向かって暖かい言葉や拍手を送っている。

「…やっぱり恥ずかしいもんだな。」

「そうですね。」

2人は幸せそうに笑う。

「よかったぞ、2人とも。」

凱が微笑みながら言う。

姫乃も彼と共にやってきて、言った。

「桜ちゃんも、渡したいものがあるんじゃない?」

「はい!雪華様、これ。」

桜が渡したのは、あのブレスレット。

「綺麗だな…。これを、僕に?」

「はい。」

「…あはは、桜を喜ばせようと思ったのに、僕の方が喜ばせてもらっちゃったな。」

雪華は左腕にブレスレットを嵌め、目に浮かんだ涙を拭った。

「さて、桜。さっき言ってたな。『今日は何かの記念日か。』」

「はい……。もしかして。」

「……今日はお前らにとっての記念日だ。」

「結婚記念日、だよ。」

雪華は優しく告げた。

「…ふふっ、そういうことだったんですね。」

桜も柔らかく微笑んだ。

「よし、やることやったし飲むわよ!」

霊夢の一言で、宴会が再開した。

「…ああ!」

柔らかく笑って、雪華はグラスを持った。

宴会はそのまま続き、夜中になった。

大半は酔い潰れるか自室に帰っており、あたりは静かになっていた。

「こんなに騒いだのは久々だね。」

「近頃はあまりありませんね。こっちの霊夢さんどうしたんだろ。」

桜は微笑んであたりを見回す。

「霊夢はいつもあんなだぞ?」

片付けを終えた凱がやってくる。

「少し前までうちの霊夢は店に突撃してきたりしてたけどな。」

「多分凱さんも同じですよ。」

「かもな。」

凱は笑う。

「さて、これからどうするんだ?俺が頼んだ事も、お前がやりたかった事も片が付いた。」

「そうだな……、手合わせがしたい。」

「誰とですか?」

「皆だよ。ただし、凱抜きのな。じゃないと比喩じゃなく死ぬ。」

「相変わらず戦闘狂だな。」

凱は苦笑いをする。

「違うよ。鍛錬さ。護りたいものを護るためには、強くなくちゃね。」

「なるほどな…………いいだろう。」

「有り難い。」

雪華は笑った。

 

このとき、雪華はまだ知らなかった。

 

凱の友人の中に、あんな怪物がいるとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……

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