幻想地憶譚 《とある少年の幻想入り》   作:フォーウルム

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第82話

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー戦いの終わりーー

 

 

あれからどれくらいたっただろうか。雪華はふと目を開ける。いつの間にか気を失っていたようだ。

「く…。……ああ、くそ。」

辛うじて変身は解除されていない。

メモリに宿る騎士王が維持していてくれたのだろうか。

「…目が覚めた?」

雪華は声がした方に振り向く。

そこにいたのは……まるで鮮血を浴びたかのような姿の悪魔だった。

「おっと……。」

盾を前へ出し、戦闘態勢をとる。

「あ、驚かせちゃった?」

そこにいたのはリーナであった。

だが、先程と違い、完全に悪魔___凱のデビルトリガーの時のような姿だった。

「その声は、リーナ嬢か。本当の姿かい?」

警戒を解きつつ雪華は剣を鞘たる盾へと収める。

「うーん、困るわねその質問は。」

「困る?」

雪華は首を傾げた。

「ええ、私は魔族でこの姿は私が全力で戦う姿、でも普段からこの姿ってわけじゃないの。」

可愛くないしね、と彼女は付け足す。

「まあ、分からないでもない。で、僕は負けたみたいだな。」

「あら?まだ戦えるでしょ?」

「いやまあそうではあるんだが……。」

気絶してしまった以上、戦地においては死んだも同義だ。

「そう?じゃあ私の勝ちね!」

リーナはそう言ってきたメモリを剣から取り出す。

それと同時に彼女の姿も普段通りに戻る。

「ああ。まったく、とんでもないよ。君は。」

雪華も苦笑して変身を解いた。

「まあ、これでも凱くんには敵わないけどね。」

「マジか…。メモリ無しの勝負なら勝てるかもしれないけどなぁ。」

「どうだろうね、彼の素の身体能力もイカれてるけどね。」

「そうなのか?…今度メモリ無しの真剣勝負仕掛けてみるか。」

「あはは…」

リーナが苦笑いをした。

「ま、そろそろ戻るかな。桜にドヤされる。」

言葉とは裏腹に、彼は優しく微笑んだ。

「そうね。私もそろっと帰ろうかな。」

「いいよ!何から話そうかなー。」

リーナがそう言った時だった。

「それは今度のお楽しみにしておいたほうがよろしいかと。」

リーナが振り向くと、そこには見慣れない服を着込んだ青年が立っていた。

「おや。貴方は?」

「初めまして、盤城飛鳥と申します。以後お見知り置きを。」

「ああ、さっきリーナ嬢が言っていた。霜月 雪華。よしなに頼む。」

「何で飛鳥がいるの?お仕事は?」

「私の分は終わりました。あとは貴女の分だけですよ、お嬢様。」

「む~。」

「はは、頑張って。」

苦笑して肩を竦めた。

「魔界のことなら俺が話してやるよ。」

そう言って歩いて来たのは凱だ。

「五十嵐君、お嬢様は暇じゃないんだ。連れて帰らせてもらうよ。」

「態々時間をとってくれたのか。ありがとう、リーナ嬢。」

「やだー!帰りたくない!」

「駄目です、書類仕事が残ってます。」

「いーやー!」

飛鳥とリーナが言い合っていると、凱達の後ろから姫乃と桜がやって来た。

「お、姫乃さんに桜じゃないか。」

駄々をこねるリーナを尻目に、彼女達へ意識を向ける、

「随分と騒がしいと思ったら、飛鳥君いたのね。」

「諦めて頑張りなよ、リーナ嬢。」

再び彼女へ向き直った。

「いやだよ!書類の山三つもやるの!」

「それぐらい半日あれば終わるだろ。」

涙目のリーナに凱が言い放つ。

「少ないじゃないか。昔なら山10はザラだったけど。」

「雪華様のが多すぎるんですよ……。」

「私は現場主義なのよ、書類は嫌!」

「好き嫌いはいけませんよ、お嬢様。」

雪華は嘆く彼女の肩を優しく叩き。

「頑張れ。」

この上なく晴れやかな笑みを浮かべた。

「うう……やだよぉ……」

先程の戦いからは想像できないほど弱々しくなっている。

「やるしかないんだろ?なら、頑張ってな。」

「……はぁ、わかりましたよ。仕事が終わったらご褒美を差し上げます。」

飛鳥が溜め息を吐きつつ言った。

「本当…?」

「はい、嘘は言いません。」

「…そっか。わかった!」

しばらく何かを考えていたがリーナは頷いた。

「……大変なんだな、飛鳥君。」

「…まあ、それがあの方の良さでもあるのですがね。」

「飛鳥ー、帰ろー?」

「わかりました。雪華様、また何時か。」

「ああ、大切にしろよ?」

優しく微笑んだ。

今の一瞬で、2人の関係を見抜いたらしい。

「……そのつもりですよ。」

飛鳥はリーナを連れて帰っていった。

「さてと。僕もまだまだだな。アーサー王の力を借りてこんな体たらくだなんて。」

「全くだ……と言いたいが、リーナ相手にあそこまで戦えたのは流石だな。」

凱が雪華に言う。

「いや、リーナ嬢が来た瞬間形勢逆転だ。僕が未熟だと言う他ないだろう。」

「でも……。」

ガイアナイト、ひいてはエクストラを終始圧倒していた。桜には、夫が未熟などとは、とても思えない。

「いや、初動の不意打ちで生きてただけましよ。」

「あれはまあ、慣れれば誰でも。受け身取っただけだし。」

「本来、あれ食らった時点で瀕死になるんだけどな。」

「あの程度で?」

「……一応言っておくが、あれで内臓グチャグチャになるぞ?」

「うわあ……。」

半人半妖かつ熾天使で本当に良かった。心の底からそう思う。

「俺もあれ食らった時は流石に死んだかと思った。」

「確か、ギリギリで助かったのよね?」

「……ちなみにそれは、変身した状態で、ですか?」

恐る恐る聞いたのは桜。

「いや、生身。」

「……それでも雪華様は凄いってことに変わりはありませんね。」

雪華は思った。

幽香(母さん)、妖怪でいてくれてありがとう。

「一応受け流したが、受け流し失敗してたらと思うとゾッとする。」

「それを真正面から……、……雪華様。」

「分かってるからそんなに睨むなって。」

「だが、あの感じだと何かしらの防御はしたんだろう?受け身にしてはあまりにも動いてるようには見えなかったがな。」

「まあ、ごく簡単な対衝撃結界は張った。それだけだ。」

「なら、お前は本当に化物だな。」

「自分でもまさかここまでとは思わなかったよ。」

あっはっは、と雪華は笑うが割と笑い事ではない。

「ちなみに桜は真似するなよ?姫乃だってあれ食らったらひと溜まりもないんだ。」

「絶ッ対にしません!」

桜は必死に否定する。

「あの剣には特殊な能力があってな。雪華なら気付けただろうが。」

「ああ、何となくだけど。」

「あの剣は『貫通』の能力を持っている。盾や防壁は勿論、結界や防御術式も関係なく貫いてくる。」

「だから防御が無駄だったんですね。」

「アヴァロンでも防ぎきれないとかやばいよな。」

「まあ、やりようによっては()()()()()()()()()。」

「ほう?」

「そうなんですか?」

2人は揃って首を傾げる。

「リスクが大きいですね……。」

「…ちなみにその方法は?」

「簡単だよ、防御しなければ良いのさ。」

周りにいた姫乃や護、近くで座っていた霊夢やフラン達が揃って溜め息を吐いた。

「なるほど!とはならんぞ。」

「……そうだろうなと思ってましたがやっぱり狂ってる。」

「雪華なら出来るだろ、銃弾斬り落としたくらいだしな。」

「あれは単純な動体視力と剣技だよ。鍛えれば誰でも。」

それを聞いた妖夢や椛が目を輝かせる。

「椛、お前は必要ないだろ。弾丸の予測が出来るんだし。」

「そんなことないですよ護さん!」

「そうですよ!」

護の一言に妖夢と椛が反応する。

「霊夢のライフルを弾いたのと同じだな。ただ、斬り落とすには刃筋を完璧に立てないと無理だぞ。」

「いやいや、ただそれっぽく出来れば良いんだよ。」

「ま、今度時間がある時にでも実演しようか。」

雪華は微笑んで肩を竦めた。

「それもそうだな。それに銃弾斬りくらいなら俺等も出来るしな。」

その言葉に護も頷く。

「流石。」

「撃ち落とすくらいなら私も出来るんですけど……。剣はあまり慣れてなくって。」

化け物揃いである。

「ほんっと、あんたらって化物よね。」

霊夢がそう言うが

「何言ってんだ、雪華がリーナ達と戦ってる間、その余波を広げないように流れ弾全部撃ち落としてただろうが。」

「そうなのか?ありがとう。周りに目が行かなかった。」

「あんなに凄まじかったので、仕方ないとは思いますよ?」

「別に、習った事をやったまでよ。」

雪華の感謝を受けた霊夢は何でもなさそうに顔を背ける。

「……そういえば、エクスカリバーとスパーダがぶつかり合った時、皆はどうなったんだ?」

「流石にあれは私じゃ対処できないわよ。」

雪華の疑問を他所に凱は空を見上げる。

「……そろそろだな。」

凱がそう言った時、誰もいなかった闘技場の観客席に黒い影が音もなく降り立った。

「……?」

「何ですか、あれ?」

「…………。」

シュウシュウと音をたてるそれは雪華と桜を見つけると二人の近くに移動してきた。

「……エクリプスか。」

「ありがとねー。」

雪華は頷き、桜はエクリプスを優しく撫でる。

『?!』

桜の行動に凱と姫乃、雪華を除いた全員が驚愕する。

「どうしたんですか?」

桜はエクリプスを撫でており、当の本人(エクリプス)は嬉しそうに体を震わせる。

「本来、エクリプスに好かれる奴は珍しいんだよ。」

「へぇ……、そうなんですね。」

「まあ、桜は途轍もなく優しいからな。分からないでもない。」

「それなら雪華様だって。」

この夫婦、無意識に惚気けるのである。

「いや、優しいだけで懐いたりはしないさ。」

「何か、素質みたいなのが必要なのか?」

「どうなんだろうな。俺には普通に懐いてるんだが。」

「担い手………ってか産みの親か?」

「うん、だから正直不思議なんだよな。」

「『蝕』のメモリ……。呑まれるんじゃないぞ。」

「それは俺に言ってるのか?」

「当然。他に誰が居るか?」

彼は薄く微笑んだ。

「それもそうか………肝に命じておこう。」

凱は頷いた。

「姫乃さんを悲しませるのは本意ではないだろうしな。…桜。エクリプスと遊ぶのもそこまでにしといて。霊夢達のSAN値が終わる。」

「あ、はーい!」

「エクリプスも満足したみたいだな。」

桜から離れたエクリプスは凱の方へ移った。

「……?」

それを見た凱は首を傾げる。

「どうしたんだ?」

雪華もまた然り。

「いや、いつもならメモリに戻るんだが……。」

「何か言いたいことがあるの?」

「……なるほどな。」

不思議そうにする桜の隣で凱はドラグニスを取り出す。

「ドラグニス?」

「何をするんですか?」

「どうやら食後の運動が必要そうだからな。」

凱が構えるとエクリプスも戦闘態勢に入ったらしく、足元の影が広がり始める。

「……逃げるか。」

「そ、そうですね……。」

「たまには相手してやるよ。」

その言葉を合図に凱とエクリプスの戦闘が始まった。

 

 

 

 

ーー後片付けと急な来訪者達ーー

 

 

 

 

「……疲れた。」

闘技場の中央には疲れはてた凱とエクリプスメモリがあった。

ちなみに霊夢たちは安全のために戦闘前に避難させている。

「……お疲れ。よく死ななかったな。」

「あ、あはは……。」

2人揃って苦い顔である。

「これでまだお遊びの範囲なんだよなぁ。」

「……決めた。エクリプスは死んでも敵に回さない。」

「………同感です。」

雪華と桜は少々青ざめている。

「まあ、体が鈍らない程度に動かせるんだがな。」

「今回はあんまり被害でなかったわね。」

辺りを見回しつつ姫乃が言う。

「………これが…………?」

壁は一部崩れ、地面はボコボコ。

雪華は戦慄する。

「前の時はクレーター出来たからね。」

「あれは不可抗力だろ。」

「何がよ、プロミネンス使ってたくせに。」

「……僕が間違っていた。」

そんなことをぼやきつつ、魔法を用いて修復に取り掛かる。

「……悪いな、手伝わせて。」

そう言って凱も修繕に取りかかる。

「問題ない。」

雪華が指を鳴らすと、瓦礫が浮かび上がり、元の場所へ。それをさらに魔法で接着。それと同時に地面も元通りとなった。

「便利だな、魔法って。」

そんなことを言いつつ凱はデビルブリンガーで瓦礫を持ち上げる。

「これは僕のオリジナルでね。対象の時間を巻き戻すものさ。咲夜の能力より魔力消費は大きいが、こんな風に完全に巻き戻せる。」

「パスト見てえな事してんな。」

「パストって、あの砂時計みたいなやつか。まあ、出来そうではあるな、」

「アイツ、擬似的な不死だからな。」

凱は以前やり(殺し)あったことを思い出しながら言った。

「それもこの前聞いたな。紡ぎ手から聞いた話だが、仮面ライダーのマキシマムドライブを受け破壊されても元通りになったらしいじゃないか。」

「当たり前だ。マキシマムなんて使っても倒せねえよ。」

「……『永遠』なら、どうなる?」

「エターナルか?……無理だろうな。」

エターナルメモリ。本家のあれはぶっ壊れだったから以前調べたが、一応存在はしてるらしい。

「無効化能力を持つエターナルでも駄目なのか?」

「アイツは本体があのでかいやつだけじゃないからな。」

「……それら全てを無効化しないと駄目ってことか?」

「無効化はできないだろうな。」

「そもそも無理なやつか。」

「無効化したとしても、エクストラメモリはブレイクできない。かといって無効化を解除すればたちまちに再生する。無理ゲーだろ。」

「…確かに。でもまあお前がバスターすりゃいいだろ。」

そう言って雪華は朗らかに笑った。が、凱は真剣な顔で言った。

「問題はこっからだ。」

「ここから?」

「雪華、お前はゲームしたことあるか?」

「うーん、まあほんの少しだけ。」

桜と彼女の友人に誘われて一瞬だけやったことがある。意外と面白かった。

「やったゲームにもよるが、一番解りやすいのはRPGだな。」

「RPG?えーっと、何だっけ、一緒にやったの。」

「確かドラ○ンクエ○トですよ。」

「そうそれ。」

「桜の方が詳しそうだな。」

「私も対して知識があるわけじゃありませんよ。ノルンちゃんがよくわってましたけど……。」

「ああ、彼女はゲーム好きで有名だったな。」

「……続けよう。例えば、未知のダンジョン、初遭遇のボス、そういった奴等と戦うとき『セーブ』ってするよな?」

ノルンという人物については考えないことにして話を進めた。

「しますね。詰んだりしたらリセットとかもしてましたし。」

桜は少々考えながらそう言った。

「ボスと戦ってパターン見きってやり直す、ダンジョンのギミックを覚えて再走、それをアイツは()()()()やってくる。」

「……は?」

桜が驚愕の声をあげる。

「もっと解りやすく言えば、『セーブとロード』だな。自分が破壊される直前まで自身の時間を巻き戻して、対策を練りつつ戦う。自我が無い分徹底的に攻めてくるから厄介なんだ。」

「……分かりやすく壊れてるじゃないですか………。」

「ああ、だからまだ討伐回数はたったの2回だ。」

「……逆に2回も倒してるって凄いですね。」

「凱以外も十分化け物だということはよく分かった。」

「あれを討伐っていうか?」

「まあ、一応……?」

護と姫乃が困ったような顔をする。

「……その時の様子はさておき、終わったぞ。」

話している間も修復を続けていた雪華が終了を宣言した。

「おー、お疲れ。」

「魔法使ってただけだよ。大したことはしてない。」

笑って肩を竦める。

そんな時

「御兄様〜!」

どこからかフランの声がした。先程霊夢たちと一緒に紅魔館に帰ったはずなのだが、などと凱が首をかしげていると現れたフランは勢いそのままに抱きつく。

 

 

──凱ではなく雪華に。

「ぐはっ!?」

背を向けていた雪華は当然物理法則に従い、前へと倒れた。

「……君、さては雪月花(あっち)のフランか………!!」

「あったり〜♪」

そう、その場にいたのは雪華の世界(別世界)のフランだったのだ。

「おのれ紡ぎ手……!!」

「見た目変わんねえな。」

護のコメントに対し、

「本気で言ってるの?」

「一回眼科医って検査受けたらどうだ?」

中々に辛辣な姫乃と凱である。

「むふふ〜♪」

「……一度どいてくれないか。」

「はーい!」

ご満悦のフランだ。

「雪華様……?」

「待て桜、待ってくれ。」

「……まあフランちゃんなら良いです。いつものことですから。」

「「………。」」

「どうしたの二人とも?」

「いや。」「んー何でも?」

姫乃が凱と護に問いかける。

「……どうかしたか?」

「……なんでもねえよ。」

不思議がった雪華も聞くが、凱は苦笑いしただけだった。

「御兄様、最近全然構ってくれないもん!」

「いやついこの間紅魔館行ったろ。」

「もう1週間だよー!」

「…大変だな。」

「凱の場合向こうから来るからな。」

「こっちから行かないと、レミィと咲夜とフランが拗ねるんだよ。」

雪華は苦笑した。

「大変なんだな。俺の方は夜にフランが遊びに来るぞ。」

「夜?こっちのアイツと私は随分とだらしないのね。」

「この子達は生活習慣を変えてるんだよ……。」

「言っておくが、日中に出歩こうもんなら焼け死ぬぞ?」

「僕が境界を弄って無効にしてある。」

「ありがとね、御兄様!」

魔法とやらはずいぶん便利らしい。プロミネンス(太陽のメモリ)も防げるのか試してみたいものだ。

「便利だな、お前の結界。」

「能力の賜物だ。紫さんの能力を使わせてもらってる。」

「あー、しれっとヤバイの持ってたんだよなぁ、あの人。」

「話がずれてるな。」

「言うなよ、護。」

「……まあとにかく、うちのくらんもち(バカ)のせいでフランがこっち来たらしい。」

雪華が申し訳なさそうにしている。

こういうことは専門家(責任者)にも手伝ってもらおうか。

「………聞いてんだろ?ウルム。」

「なんだい?別にわるいk

凱は現れたフォーウルムの顔面をデビルブリンガーで思いっきりぶん殴った。

「ウルム〜!?大丈夫か!?」

「出やがったな紡ぎ手。」

雪華が裏拳。くらんもちは3回転半のきりもみ回転を披露した。

「ナイス、殴られ役ご苦労。」

「全く、このメットじゃなかったら死んでたよ?」

フォーウルムは何事も無さそうにしている。

「紡ぎ手さん、気絶しちゃいましたけど……。」

「桜、ほっとけ。」

気絶するくらんもちを桜が心配するが、雪華は切って捨てる。

それを横目に聞きたいことをフォーウルム(こいつ)に聞くとしようか。

「何でフランがいるんだ?」

「東方だから?」

「違う。あっちのフランがいる理由だ。」

「それは、ですねぇ…………。」

「ほら復活した。」

顔を押さえながらくらんもちが立ち上がる。

「私が頼んだの!御兄様に会いたかったから!」

「……まあ、一応確認は取りましたね。『こっちのキャラ出したいんだけどいい?』って。」

「……ウルム?」

凱がウルムに問う。

「うん、許可したね。」

「共犯、か……。よしやるぞ。」

《スノー》

雪華はメモリを起動させるが、俺は少々考えて結論を出す。

「……雪華、今回は俺はウルム側につく。」

「何!?」

予想外だったのか雪華が驚く。

「よく考えろ、別に問題は起きてねえだろ?」

「……まあ、それもそうか。」

「ねえ僕ってだけで消す対象なの?」

「何言ってんだ当たり前だろ。…まあ、今回は凱に一理あるから見逃す。」

「いや、最初は躊躇したよ?色々バランスの調整もあるし。」

フォーウルムが何かを操作しながら言う。

「でもパストも安定してるし、送る場所も安全圏だし良いかなって。」

「……あのー…………。」

くらんもちがおずおずと手を挙げる。

「どうした、くらんもち。」

「今気づいたんですけど。

──他にもいっぱい来てるんですよねぇ!」

遠い目から涙を流し、やけくそのように叫んだ。

「……場所は?」

凱が聞く。

「不幸中の幸いか此処なんですよね……。」

「凱、僕は紫さん家のとこ行ってくる。」

「ああ、後で奢れよ?」

「もちろん。」

そう言ってフォーウルムは消えた。

「あっはは、もうここまで来たら返せねぇや。」

相変わらず死んだ目である。

「別に呼んでも構わんぞ。」

「あぁ、助かります……。もう出るならはよ出ろ。僕は帰る。」

「まあ、その……、頑張れ。」

「まさかお前に慰められるとは思わなかったよ、雪華……。」

彼と入れ替わりのようにして出てきたのは、早苗、椛、レミリアに咲夜、妖夢、そして名も知らぬ天狗。

「見たことない天狗だな。……まあ女の時点であれだが。」

「凱、俺は帰るぞ。」

「わかった、お疲れ。」

そう言って護は帰っていった。

「待ってくれ6人は重い!」

「あ、私は鞍馬 颯香(さやか)です。以後、お見知り置きを。」

雪華は早苗を初めとする6人に押し潰され、颯香はその脇で自己紹介をした。

「鞍馬…ねぇ?」

「由緒正しき、って感じね。」

「皆さん、雪華様が潰れてますよ。」

苦笑したのは桜。

「それぐらい持ち上げられるだろ、雪華?」

「怪我でも、させたらどうする…!」

「なるほど、配慮してやらないだけか。」

「……さすがに、退きましょうか。」

苦笑しながらそう言ったのは早苗。彼女に続いて、1人ずつ退いていき、残ったのは疲れた顔をした雪華だ。

「お疲れ。大変だなぁ?」

「悪い気はしないけどな。」

そう言って苦笑する。

「にしても、賑やかだな。」

「いつもこんなものさ。…潰されたのは初めてだが。」

「その……、嬉しくなっちゃって。」

呟いたのは椛。その証拠に、尻尾がぶるんぶるんと揺れている。

「…愛されてるじゃないか?」

「全く、こんな奴の何処を好いたんだか。」

雪華は肩を竦める。

「教えてくれないんだよなぁ。」

「それはその……、恥ずかしいです。」

蚊の鳴くような声で答えたのは妖夢。彼女自身銀髪で、雪華と並ぶとさながら兄妹のようだと凱は思った。

「……まあ、細かいことはいい。とりあえず雪華はもう少し自分の事を理解すべきだな。」

「……難しいな。僕は、自分があまり好きじゃない。」

「そうかよ。……そいつらを大切にしろよ?」

「当然。何が何でも護る。」

雪華は即答する。

あちらの世界の全員が頬を赤らめる。

「そうそう、それでいい。」

「全く、賑やかね。」

そう言いながら現れたのは八雲紫だ。

「という訳だ。そろそろ戻る時間だぞ。」

不満の声が上がるも、渋々了承したようだった。

「折角だし、面白いのを見せてあげるわ。」

「面白いもの?」

揃って首を傾げる。

「おい、まさか?!」

「そのまさかよ。」

紫が手を上に伸ばすと、紫色の魔方陣が周囲に展開される。

「なっ!?皆、こっちに来い!」

雪華が結界を張ると、少女達が彼の周りへ集まる。

魔方陣からは光が漏れ、さらにその中を何かが潜って移動していた。

「何だ、これは……。」

魔方陣はそれぞれが別の魔方陣に繋がっているようでそれを縦横無尽に駆け回る。

「……。」

雪華は瞑目し、集中を高める。

「ほら、下手に警戒させちまったじゃねえか。」

「そうね、こっちへいらっしゃい。」

紫がそう言うと、駆け回っていた何かは紫の足元にやってきた。それは……狐だった。

「……藍か?」

「いや、こいつはもっとヤバイやつ。」

「私のメモリの《ディメンション》よ。」

「『次元』…!?……なるほど、紫さんにはぴったりですね。」

緊張と結界を解いた。

「……というわけらしい。」

「もう少し、雪華と居たかったわね……。」

「そうですね……。」

レミリアと咲夜。雪華は本当に愛されているらしい。

「イチャつくのはあっちでやってくれ。」

「?何のことだ?」

きょとん。どうやら本気で気付いていなかったらしい。

「相も変わらず鈍感ですね。まあ、そこが魅力でもありますが。」

苦笑したのは颯香。

「あんたはこいつを良く理解してるようだな。」

「そうですかね…?」

照れ笑い。桜以外の面々がつまらなそうにする。

「そういえば……まだあれは見せてねえのか。」

「あれ?」

「あー……。」

「何なんですか?」

「……これですよ。」

興味を示した妖夢に見せたのは、例の指輪。

「え、これって、指輪!?」

「ということは、式をしたんですか!?」

「ち、違う!そうじゃない。……渡しただけだよ。」

「呼びなさいよ?」

「なぜそうなる!」

赤くなって言い返す雪華だが、彼女達には堪えていない。

「当然の反応だな。」

凱が見ている横で紫はディメンションに油揚げをあげている。

ちなみに凱はこうなることを予想して()()()この場で言ったのだ。

まあそうしなくても戻った後に言われそうだが…………

 

 

 

せっかくなら目の前でイジるほうが面白い。

「……そもそも、するかは分からないぞ!絶対にしなきゃいけないってことh」

「しないんですか……?」

「ぐ……。」

上目遣いの桜にそう言われ、雪華が言葉を詰まらせる。

「あーあ、墓穴掘ってら。」

「でも、恥ずかしいんだよ……。」

「私は、挙げたいなぁ………。」

「ほら雪華さん。桜さんがこう言ってるんですから!」

「挙げたらどうだ。折角なんだから。」

「うぅ………。」

雪華は逡巡する。式なんて恥ずかしい。だが桜の願いは叶えてやりたい。かなりの葛藤だった。

「お前ってこういう時に恥ずかしがるよな。」

「大勢に見られるのが嫌なんだ……。」

「そうなのか?」

「普通に恥ずかしいんだよ……。」

「そう、なんですか……?」

潤んだ目。くそ、僕の良心が。

「……分かった!やるんだろ!」

半ばヤケになりつつ叫んだ。

「姫乃。」

「大丈夫、録音してるから。」

「証拠を残すなーっ!そんなの無くても約束は破らねえよ!!」

「念のためだよ。…さて、そろっと戻った方がいいんじゃないか?」

そろそろ戻ってもらおう。ここで雪華達(イジり甲斐のある奴ら)を帰すのは非常に惜しいが、そうしないと怒られそうだ。

「そうだ、早く戻れ。」

「分かりましたよぉー。雪華さんの可愛い一面も見れたことですし!」

イキイキとしているのは早苗。

「紫、頼む。」

「は~い。」

紫はディメンションのゲートを開く。

「じゃあねー!」

フランを先頭にして帰っていく。

「さて、お前らも行ったらどうだ?」

「……そうする。じゃあな。」

「では、また。」

雪華は疲れた顔で、桜は笑って手を振った。

「ああ、またな。」

「じゃあね!二人とも!」

 

 

「……行っちゃったね。」

FDLに帰るとき、姫乃がそう言った。どこか寂しそうだ。

「そうだな。まあアイツの事だ、心配はいらないだろ。」

「そうね。……一週間くらいだったのに、すごい短く感じちゃうね。」

「……俺は不思議と四か月くらいたった気分だ。」

「何それ、変なの~。」

「本当にな。」

「………ねえ」

「ん?」

姫乃が恥ずかしそうに言った。

「桜ちゃん、嬉しそうだったね。」

「……」

恐らく、宴会の時だろう。雪華が桜に渡したサプライズ(指輪)の事だ。

「……気長に待ってろ。」

「え?」

「いつになるかわからないが、きっとプレゼントする。姫乃に合う物を。」

「……うん!待ってる!」

そう言って振り返った彼女の顔は

 

 

 

 

今までの彼女の笑顔の中で、とても綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

後から聞いた話だが元の世界に帰った雪華は珍しく酒を飲んだらしい。

やはり帰すのは勿体なかったと後々に後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




は~い、どうもどうもフォーウルムでーす。
2月から続いたコラボ回である第八章、ついに完結です!
いやー長かったですね、物理的にも期間的にも。
最後になった第82話なんて10000字超えましたもんね。
コラボしてくださったくらんもちさん、ありがとうございました。
是非コメントくださいね?


さて、次回からは9章ですね。
凱達の日常やちょっとしたトラブルを描いていくつもりです。
いや、その前にキャラ紹介かな?
次がキャラ紹介になるか本編になるかわかりませんが、お楽しみに!




凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……

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