幻想地憶譚 《とある少年の幻想入り》   作:フォーウルム

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第84話

凱と姫乃が友人の結婚式に出席してからしばらくたったある日、二人はそれぞれ考え事をしていた。

 

 

 

ーー想いを伝えるにはーー

 

 

 

アンダー・パレス 第100階層

 

 

「これで…終わりだぁっ!!」

 

巨大な鎧の怪物に、護が高速で近付き、閻魔刀を振り抜く。

怪物はしばらく体を振るわせたあと、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

 

「流石だな、護。」

「この程度、造作もねえよ。」

 

遠巻きに戦いを見ていた凱が護とハイタッチをする。

凱は凱で取り巻きの小型騎士を相手にしており、辺りには大量の鎧であったであろう残骸が散らばっている。

 

「んで?ここまで来た目的は何だ?」

「さっき言っただろ。『探し物がある』って。」

「その探し物の中身を聞いてんだよ。」

 

護は溜め息を吐く。本当ならば以前拾ったクロ(雨の中拾った子猫。早苗命名。)の散歩に行く予定だったのだが、凱に誘われ深層に潜っている。

 

「鉱石だ。出来ればアメジストのような色の石がいい。」

「アメジスト……?何につかうんだ……?」

「言えるかよ。」

 

凱の素っ気ない様子から、護は一つの答えを導き出す。

 

「プロポーズか?」

「………。」

 

凱はうんともすんとも言わない。

 

「ははーん、なるほどな。アイツ(雪華)に渡したみたいに指輪作って姫乃にプレゼントってか?熱いね~。」

「……。」

 

護の揶揄いに対し、何も返さず凱は目的の鉱石を探す。

 

「……ついに決めたのか。」

「…ああ。」

 

揶揄うのをやめた護が凱に言う。

 

「なんとなく察してはいたが、姫乃を選んだか。」

「言い方をもう少し変えられないのか。それだと俺が霊夢達を捨てたみたいになるだろうが。」

「それもそうだな。すまん。」

 

凱は壁に触れつつ言う。

 

「正直、俺が姫乃に釣り合うかはわからん。あいつは、誰にでも優しいし、何より明るい性格の持ち主だ。」

「嫁自慢か?お前にもそんな日が来るとh」

 

うんうんと頷いていた護の顔面に凱の拳が炸裂する。

 

「痛ってぇ!何しやがる!?」

「うるせぇ!」

「別にいいだろ!?以前のお前から考えたらかなりの進歩だろう!」

 

以前というのは幻想入り前の事だ。

 

「……確かにな。あの頃からは考えられないな。」

「だろ?……結婚決めた理由は?」

「…姫乃に、笑ってほしい。」

「自己満足か?」

 

再び拳が炸裂しそうになるが、今度は回避する。

 

「照れるなよ。」

「…照れてなど…」

「顔赤いぞ。」

「ぅぐ……。」

 

護の指摘に言葉を詰まらせる。

 

「まあ、いいんじゃねえの?アイツだって、そう思ってるぞ。」

「そう…だといいがな…。」

「自信もてって。」

「…ああ。……!」

 

凱はやっと目的の物を見つけ、堀り始める。

 

「それか?」

「ああ。これなら、きっと上手く行く。」

 

凱が掘り出したのは野球ボールほどの石だ。その色は深く、透き通るような紫色だ。

 

「指輪には持ったいなさそうだな。」

「だからこそ、だろ?」

「そうだな。……そういやぁドレスとかってどうするんだ?」

「それはもう準備を始めている。」

「早えな。」

 

そんなやり取りをしていると、

 

「終わったよ、凱。」

 

急に壁に空いた穴からヘルメットが顔を覗かせる。

 

「うおぉ?!なんだ?!」

「出来たのか?」

「うん。頼まれたのはね。」

 

驚く護を放置し、凱はメット男(フォーウルム)と話す。

 

「ドレスは会場に送っておいたよ。」

「準備が早くて助かる。報酬はカウンターの引き出しに入ってる。」

「ん。じゃあまたね。」

「ああ。」

 

そう言うとメット男は穴に引っ込み、そのまま消えてしまった。

 

「誰だアイツ?」

「世界の管理者にして非常識人筆頭。」

「はぁ?」

「そんなことよりも、行くぞ。」

「あ、おい!しっかり説明しろよ!」

 

そんな会話をしつつ、凱と護は地上に戻った。

 

 

 

 

 

ーー少女達の応援、駆け行く月ーー

 

 

 

 

紅魔館の一室に、寝間着姿の少女達が集まっている。

そこに居るのは霊夢、鈴仙、咲夜にフラン。妖夢に文、そして姫乃と凱に想いを寄せる少女達である。

話の中心は姫乃であり、その内容は……

 

「それでね、桜ちゃんのウェディングドレスがとっても綺麗で__」

 

異世界の親友の結婚式のことだった。

 

「凄い嬉しそうに話すわね、あんた。」

「それはそうだよ霊夢ちゃん!だって大切な親友のことだもん!!」

「私達はどうなんですか?」

「もちろん!妖夢ちゃん達も大切な親友だよー!」

 

そう言って姫乃は妖夢に抱きつく。

最初の頃はさん付けだったが、親しくなった今ではちゃん付けである。

 

「羨ましくなったんじゃないの?」

「それはそうだけど……。」

 

咲夜の言葉に姫乃は少しうつむく。

姫乃はここにいる全員が、凱に好意を寄せていることを知っている。

 

「……したいんじゃないの?」

「え…?」

「彼との結婚式、したくないの?」

「それって……どういう………?」

 

咲夜の言葉に、姫乃は困惑する。

その様子を見ていた霊夢達は互いに頷き合い、そして姫乃に言う。

 

「姫乃さん、凱さんと結婚式挙げたくないですか?」

「それは…挙げたいけど…それは皆もそうじゃないの……?」

「この前、私達で話し合ったんですよ。」

 

妖夢が続ける。

 

「『もし、姫乃さんが戻ってきたら、凱さんと式を挙げさせよう』って。」

「そ、そうなの?」

「はい。貴女に想いの強さで負けるつもりはありませんが、それでも私達よりも彼と寄り添ってきたのは貴女です。それだったら彼と一緒になるのは姫乃さんがいいんじゃないか、ということになったんですよ。……ちなみに言い出したのは霊夢さんです。」

「ちょ!?バラすんじゃないわよ!」

「あ、やめてください!こめかみをグリグリしないで?!」

 

文のネタばらしに霊夢がお仕置きといわんばかりに文のこめかみを拳で押さえる。

 

「ま、そう言うことよ。あんたのことだしきっと幸せになれると思ったのよ。」

「霊夢ちゃん…みんなぁ…。」

「ちょっと、何泣いてんのよ。」

「泣いてないもん……グズッ」

「泣いてるじゃない。」

 

霊夢達の言葉で感極まった姫乃は泣きだしてしまった。

最初の頃は大人っぽいと思っていたが、こうして話してみると幼く感じてしまう。

そんな時、姫乃の端末が震える。

 

「ん?なんだろ………?!」

「どうしたのよ?」

「こ……これ…!」

「んー?」

 

端末に写し出されていたのは短い文章であった。

 

 

 

 

 

ーー想いの行く着く先は…ーー

 

 

 

 

「……………。」

 

月が輝く夜、誰もいない草原に凱はいた。

周りよりも少し高い、小さめな丘の上でたたずみ、ただただ夜風を浴びていた。

 

「…が、凱君!」

「………来たか、姫乃。」

 

そこに息を荒げてやって来たのは、姫乃だった。

 

「済まなかったな、泊まりに行ってたのに呼び出しちまって。」

「…こんなこと書かれたら行かずにはいられないよ。」

 

そう言って姫乃は端末を見せる。

そこにあったのは

 

「『今日の夜、11時に君が想いを告げてくれた場所で待つ。』…こんなの、行くに決まってるじゃない。」

「覚えてたか、ここを。」

 

そう、凱達がいるここは、姫乃の歓迎会をやった日の夜に姫乃が凱に告白をした場所である。

 

「それで、何かあったの?」

「……あのときは越されたからな。」

「え?」

 

凱は丘を降り、姫乃に歩み寄る。

 

「姫乃。俺は嬉しいんだ。お前に出会えて、ここまで来れた。」

「凱君…。」

「幻想郷に来る前も、その後も。姫乃と一緒に居れた日々は、俺にとってかけがえのない物だ。」

「…うん。」

 

凱は姫乃を真っ直ぐに見る。

 

「姫乃と居れたから、あの時も立ち直れた。姫乃がいたから、ここまで楽しく過ごせたんだ。だから、姫乃…いや、姫乃禍月さん。」

 

 

 

「俺と、結婚していただけませんか?」

 

凱は膝を折り地につけ、懐から取り出したケースに入った指輪を姫乃に差し出す。

 

 

 

「……凱君は卑怯だよ。」

「………。」

「私が、あの時どんな思いで君の言葉を受け取ったのか。どんな想いで君に寄り添ったのか。……それを理解して、そのプロポーズなんだよね…?」

「…ああ。これは、俺自身が君に出来る最大限のプロポーズだ。」

「そっか……そっかぁ。」

 

姫乃は、顔を上げる。

その表情は

 

笑っていた。

 

 

「私で良ければ、喜んで!」

 

凱は立ち上がり、姫乃の右手をとる。

そのまま指輪を彼女の薬指に嵌めた。

 

「ありがと、凱君!」

 

姫乃は凱を抱き寄せる。

 

「ありがとう、姫乃。」

 

凱も姫乃を抱き返し、そのまま熱い口付けを交わした。

 

 

 

 

 

ーーさぁ、祭りの始まりだ!ーー

 

 

 

 

「……そうか、お前も結婚か。」

 

プロポーズをした次の日。2人は魔界のフォルトゥナ城に来て、ギルバに報告をしに来ていた。姫乃はリーナ達と話しており、凱とギルバは城の最上階テラスで話していた。

 

「お前が結婚できないとは思っていなかったが、俺より早いとはな。」

「行き遅れになるなよ?」

「うるさいぞ!」

 

そんな冗談で、2人は笑い合う。

 

「だが、さすがに式を城で挙げるのは無理があるぞ?」

「…やっぱ駄目かぁ。」

 

そう、ここに来た本当の理由は、式場の確保である。

駄目元ではあったが、姫乃の

「どうせならおっきいお城で挙げたいなぁ…。」

というのは叶えられそうにない。

 

「俺は良いと思うんだが、リーナや飛鳥達が賛同してくれるとは…。」

「それもそうか。」

 

溜め息を吐きながらふと視線を移す。

 

そこに写ったのは…

 

 

「やっぱ結婚式といえば、料理よね!うちの料理人達を総動員させるわ!」

「装飾は花屋呼ぶ方がいいよな?」

「入場はオーケストラの演奏で足りるのか……?」

 

階下で結婚式の準備を()()()進めるリーナ達だった。

 

「は?」

「どうした?」

「ギルバ、アイツら何してんだ?」

「ん?……おい待てぃ!?」

 

リーナ達を見たギルバが焦る。

 

「何してんだリーナ!」

「何って、結婚式の準備よ!うちでやるんでしょ?」

「え、あ…いや……」

「違うの?」

「……ソウデス。」

 

予想とは180°違う結果に、ギルバは溜め息を吐く。

内心駄目にならないとは思っていたが、まさかすでに話が進んでいるとは思わなかった。

 

「……リーナは相変わらずだな。行動力の塊みたいだ。」

「…そうだな。」

 

凱とギルバは再び笑い合う。

 

「まあそう言うことだ。式は任せろ。さっさと姫乃の元に戻ってやれ。」

「ああ、ありがとな。」

 

凱は階段を降りようとする。

 

「っと、忘れるところだった。」

「何を?」

 

凱は足を止め、ギルバの方を向く。

 

「結婚おめでとう、凱。」

「…サンキューな、ギルバ。」

 

祝いの言葉に礼を返したあと、凱は階段を降り、姫乃の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 




どうもどうもどうも、フォーウルムでございます!
今回は、前々からやろうと思っていた結婚についてです。
凱と姫乃をくっつけることは確定していたのですが、どこでやろうか迷ってたんですよ。
そしたら少し前にいい口実があってので、これを機にやろうかなと思ったわけです。
ということで次回は式本番でございます!お楽しみに!







俺はこれから配達にいってきます。

凱、姫乃、護、三首、音川の五人の紹介は……

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