推しをラスボスにしないひとつの冴えた方法   作:ねこぶるふ

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立ち込める暗雲も晴れる勢い

 この世界の暦や祝日は前世の記憶にある世界とそこまで変わりがない。カレンダーを覗けば西暦が陽暦と名前を変えて書かれているのだ。曜日に関してはもはや前世の世界のままである。

 直近に迫るみどりの日やらこどもの日の桜華王国における起源は何処なんだと聞きたくなるが、それが休日であることに変わりはなく、些細な問題に過ぎない。強いて違いをあげるとするならば、ゲームの仕様に合わせてその祝日が何日なのか毎年変化するという変則的なことくらいだろうか。

 この世界におけるゴールデンウィークというのは、大変ありがたいもので確実に5月の第二週の月火水が確定で休みとなる為、五連休が毎年やって来るのだという。社畜だった前世の私にはあまり関係のない話だったが、学生となった今では心底嬉くなるような、ならないような……。そんな黄金期を前日に控えた聖稜学園の生徒たちは期待と興奮で皆一様に浮き足立たせている。

 しかし、そんな中にあってもやはり例外というものが存在していた。

 

 

「に゛ゃ゛ぉ゛お゛お゛ん゛!゛ 香゛苗゛ぢ゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ん゛!゛!゛」

「のんちゃん……。落ち着きなよ」

「う゛ぇ゛え゛〜゛ん゛!゛」

 

 

 昼下がりの一年生の教室。そこで私は親友である希海に泣きつかれていた。幸いな事に本日は売店で限定パンの販売がされており、クラスメイト達の姿が見えないことが唯一の救いである。

 彼女が何故こんなにも号泣しているのかと言うと、そろそろ始まるゴールデンウィークについてだ。

 

 例年通りなら、今年も彼女は私と一緒に過ごす予定を立てているはずだった。しかし、聖稜学園高等部の冒険学科では聖装を所有する生徒に対し、特別なカリキュラムとして特定の祝日中に魔巣窟を探索する課外活動を義務付けている。もちろん聖装を持っている希海はその合宿に参加することになっている。

 その為、彼女にとっては地獄の休暇が始まる訳だ。

 事情を聞いてしまえば彼女の涙には同情せざるを得ない。

 

 

「ひぐっ……。香苗ちゃんはいいよね……」

「ま、まぁね。うちの学校はそういうところ結構厳しいから仕方ないよ。それでも、私だって暇じゃないし」

「うあぁん! 香苗ちゃんの薄情者ぉ!!」

 

 

 私の言葉を聞いて希海はまた涙を流し始めた。

 さすがにちょっと罪悪感を感じてしまう。

 

 

「ねぇ、香苗ちゃん。お願いだから今から申請して一緒に行こ……? 香苗ちゃんが一緒だったら私頑張れる気がするんだ……」

「聖装非所持者は事前申請が必要でしょ……。もし、今から申請したのなら間違いなく参加できないと思うけど」

 

 

 希海からは一緒に行かないかと懇願されてしまうが、何日前までに申請する必要があるかは忘れたが、聖装を持たない生徒が魔巣窟探索の課外活動に参加する為には事前に申請する必要がある。

 それは冒険家を目指す学生ならば誰でも知っている常識であり、希海もそのことは重々承知していた。

 だからこそ、こうして泣いているのだろう。

 

 

「香苗ぢゃんのいじわるぅ……。うぅ……、せっかくのゴールデンウィークなのにぃ……」

 

 

 希海の嘆きを聞きながら、私は窓の外を見た。

 昨日とは違って今日はいい天気である。空を見上げれば、雲一つ無い青空が広がっている。絶好のお出かけ日和だろう。

 

 とまあ、現実逃避はそこまでにしておく。

 希海の方へと視線を戻すと、彼女は目尻に涙を溜めて私のことを見つめていた。正に臨海寸前といったところだろう。

 

 

「香苗ちゃんと会えないなんて嫌だよぉ! うえぇえん!」

「あー、もう。よしよし、泣かないの~。ほら、ハンカチ貸すから鼻水拭いて」

 

 

 ついに泣き始めてしまった私は希海を宥めつつ、たまたま教室に人がいない事に安心感を覚えた。この様子を見られていたのなら、勘違いされるまでは行かなくても変な空気になっていたことは間違いない。

 そっと彼女の頭を撫でてあげると、少しだけ落ち着きを取り戻したようだ。

 

 

「ふにゃぁああぁ……。香苗ちゃんの優しさが心に染みる……。うわぁん! ありがとう! 大好きぃ、結婚してぇ……!」

「はいはい。わかったから。冗談でも勢いで求婚しない。取り敢えず落ち着こう。ほら、深呼吸」

「冗談じゃ……。ひっく、すぅ……、ふぅ~」

 

 

 彼女は言われた通りに息を大きく吸って吐く。

 

 

「落ち着いた?」

「少しだけ……」

 

 

 希海は未だにしゅんとした様子で言う。しかし、先程まで泣いていたために顔は真っ赤だし、瞳は潤んでいる。そんな姿も可哀想可愛い。

 我が推しに一片の欠点なし。完璧美少女だ。

 

 

「香苗ちゃんは寂しくないの? 折角のゴールデンウィークなのに……」

「まぁ、ちょっと残念だけど。しょうがないよ」

 

 

 希海からの問いかけに対して私はそう答えた。

 

 

「む……。香苗ちゃんのいけずぅ」

 

 

 私の返答を聞いた希海は不満げな表情を浮かべる。

 ほっぺたがぷっくりと膨らんでいて可愛らしい。思わず指先でつついてしまうと、希海は慌てて口元を押さえる。

 

 

「あ、ごめん。つい……」

「えへへ、別に気にしないよ」

 

 

 希海は頬を緩ませて言う。

 それから彼女は両手を広げて何かを催促している。何かを訴えるかのように見つめるその瞳からは、ハグを求めている事が伺える。

 

 

「……香苗ちゃん、ぎゅっとして?」

「えっと、ごめん……」

 

 

 推しに自ら触れに行くのは恐れ多いというものだろう? 今の私には無理である。

 私は首を横に振った。すると、希海は悲しげな表情を見せる。

 

 

「うぅ……。私、香苗ちゃんに嫌われちゃったのかなぁ……」

「ち、違うから! 嫌いになったとかじゃないからね!?」

「最近、香苗ちゃんが冷たいような気がするの。気のせいなのかなぁ」

「うぇ、ご、誤解だってば!」

 

 

 確かに前世の記憶が戻ってから希海との距離を置くようにしてきた。だが、それは決して彼女を疎ましく思っているからではないのである。

 むしろ逆で、彼女に対して申し訳なさを感じている節すらある。というのも、前世の記憶が戻る前の私は彼女の好意を素直に受け入れていたのだ。それは勿論、友達としての好意であって、それ以上のものでは無かったのだが。

 しかし、今はどうだろうか。

 

 彼女に抱きつかれたり、手を繋いだりする度に心臓が高鳴ってしまう。それは紛れもなく前世の記憶がもたらした下心なのだ。

 だからこそ、私は希海と距離を置かなくてはならないと考えている。彼女の純粋な気持ちを踏み躙るような真似だけは絶対にしたくはない。

 

 

「本当に?」

「ほ、本当だよ」

「そっかぁ……。良かったぁ」

 

 

 希海は頬を緩ませて安堵のため息を漏らす。

 

 

「じゃあ、今度こそぎゅーってして?」

「……うん」

 

 

 上目遣いでお願いされたら断ることなど出来ない。私は希海の要求を受け入れることにした。

 私は嬉しそうに笑みを浮かべる希海へと限りなく近づき、15FPS位のぎこちなさでゆっくりと背中に手を回す。そして、軽く抱きしめると希海の体温や柔らかさが伝わってくる。

 女の子特有の甘い匂いが鼻腔をくすぐり、脳髄を刺激する。

 

 

「ん~」

 

 

 希海は満足そうな声を漏らすと、私の胸に顔を押し付けてきた。

 希海の身長はここまで高かっただろうかと疑問に思う。中学の頃はまだ私と背も変わらず横並びになるくらいだったはずなのだが。

 いや、ゲーム本編に登場する時点での身長は162cmだったはずだから希海がそこまで成長していても不思議ではない。というか、今まで希海が私にしてきたハグは身長に合わせて屈んでいた……?

 

 

「えへへ、幸せだなぁ」

 

 

 希海はそう呟く。

 彼女は私の胸の中で顔を埋めているため表情を見ることは出来ない。ただ、その言葉は嘘偽りのないものだと確信出来る程に明るいものだった。

 

 

「ん゛ん゛っ!」

「ひゃっ!」

「むぐっ!?」

 

 

 何者かの咳払いに驚き、希海は私を強く抱き寄せた。当然、私の口元は希海の柔らかい膨らみに押し潰されてしまうわけである。

 私の視界は真っ暗になり、何が起きたのか理解できないままに呼吸困難に陥る。何とか酸素を取り込もうとするが中々うまくいかないものだ。

 

 

「……ええと、お邪魔だったかしら」

「と、ととと、東條先輩!?」

 

 

 焦ったような声を上げる希海によってより強く抱き寄せられてしまう。柔らかいという感触よりも先に息が出来ないと言う極限の状態が私の意識を奪い取らんとしている。

 

 

「どど、どうしてこちらに!?」

「ノゾミに用事がありまして。というよりも、カナエがそろそろノックアウトしそうにみえますわ。……大丈夫でして?」

「はっ、香苗ちゃん!?」

 

 

 窒息による死とはどんなものなんだろうなぁ……とぼんやり考えていたのだが、突然の浮遊感に襲われていた。どうやら解放されたらしい。私は息を大きく吸い込み新鮮な空気で肺を満たし、むせていた。

 

 

「ごめんなさい香苗ちゃん! 私……」

「ゲホッ、ゴホ……。と、東條先輩……、ごきげんよう。お、お見苦しい所をお見せしました……」

 

 

 涙目になって謝ってくる希海はひとまず置いておき、私はどうにか東條先輩に挨拶をすることが出来た。

 そんな状態の私のことを気遣ってか、東條先輩は心配そうに見つめてきている。

 

 

「いえ、こちらこそ悪かったですわ。まさかそんな、お楽しみの最中だったなんて……」

「ちょ、ちょっと待ってください!? 何かとんでもない誤解をしている気がするんですが!?」

 

 

 私が大声で抗議をすると、東條先輩はきょとんとした様子を見せた後、「ふふふ」と笑っていた。希海の方を見ると、満更でもなさそうな表情を赤く染めながら目を泳がせている。恐らく東條先輩が言った『お楽しみ』の意味が分かっているのであろう。なぜ否定しないのか。……ああ、穴があったら入りたい。

 東條先輩は楽しげに笑って私達を見比べた後に、こう言い放ったのだ。

 

 

「二人とも可愛らしい反応ですわね。そういう関係になった時は是非とも教えてくださいな。お祝いの品を送りましてよ」

「お祝いだなんて、そんな……」

「のんちゃん、遠慮を覚えておくれ」

 

 

 東條先輩がこちらに向けていたのはもう清々しい程の笑顔であった。私はそれに対して返す言葉が思い浮かぶことはなかったが、その沈黙を肯定と捉えられたらしく東條先輩はとても満足げにしている。希海に至っては「そこまでして頂けるとは」と言わんばかりにテレっと溶けたような顔をしてしまっている始末だ。

 ネタにされているとしか思えないのだが、弁明をしていると墓穴を掘る予感しかしない。これ以上は余計なことを言わずに黙っている方が良い気がした。

 

 私か希海が天城先輩とくっつくとか変に考えてもらうよりかは断然マシだと思いたい。こういったバックがデカい人間が敵でいない分にはとても心に余裕ができるのだ。

 

 

「ところで先輩? 私に用事と先程聞きましたが?」

 

 

 どことなく上機嫌な様子で希海が東條先輩に尋ねる。

 その質問を受けた途端、それまで微笑んでいた東條先輩の顔つきはそれまでの穏やかな雰囲気ではなく、鋭い目付きへと変わった。

 

 

 

「ええ、本日の放課後に第一会議室で課外活動の班分けの話でしてよ。カナエにも伝えようと思っていましたので、丁度良かったわ」

「へ? 香苗ちゃんにもってことは……」

「私も課外活動に参加するんだ」

 

 

 私がそう言うと、希海は呆気に取られた顔を見せてきた。参加しないとは一言も口にしていないからか、それで凄く驚いたらしい。

 

 

「行くなら行くって早く言ってよぉ! ……びっくりさせないでぇ」

「あはは、ごめん。のんちゃんを驚かせたかったの」

 

 

 私はいつもの仕返しと言わんばかりに悪戯っぽく笑い、希海に謝った。そんな私を見て希海は口を尖らせて文句を言いたそうにしていたが、結局は何も言わなかった。

 

 

「……まあ、紀々ちゃんも行くって言ってたし実戦の空気を肌で感じようかなって」

「ふーん、そっかぁ。紀々ちゃんが……、ふーん」

 

 

 希海の態度は明らかに面白く無さそうだ。紀々が希海に何か悪いことをしたとでも言いたいのだろうか……。いや、そもそも何もしていないと思うのだが。

 

 

「のんちゃん。紀々ちゃんに嫉妬?」

「ち、違うもん。紀々ちゃんにヤキモチなんか妬いてないし!」

「あら、嫉妬ですか。ふふ」

 

 

 東條先輩は希海の言葉を聞いてとても嬉しそうな顔をしている。ライバルが減ったように見えて嬉しいのか、まるで自分の妹を見るかのような慈愛に満ちた表情だ。

 

 

「むぅ〜〜」

「ノゾミは可愛いのねぇ?」

「のんちゃんは可愛いんですよ~」

「もう、先輩! 香苗ちゃんまで!」

 

 

 東條先輩にまで言われてしまい、いよいよ不貞腐れてしまった希海だが、それでも頬っぺたを膨らませながらではあるが東條先輩に抗議をする程度に元気ではあるようだ。東條先輩の言い方が面白かったのもあって、つい吹き出してしまった。それを見た希海がジト目でこちらを見つめてくる。

 

 

「……ふぅ、少々からかいすぎましたわね」

 

 

 東條タリアは少し反省しながら一息つく。少し間を開けて東條先輩は「最後に忠告を」と再び口を開く。今度は元の優しげな雰囲気に戻っていたものの、声色から感じられる威圧感にまだ笑いが止まらなかった私はおろか、拗ねていた希海をも押し黙らせることになった。

 

 

「……カナエが分かるかは存じ上げませんけれど、チユキが珍しくカナエのことを話していましたわ」

「風森先輩が、ですか?」

「……」

 

 

 希海が不思議そうに呟いた。

 もし、この会話が風森千々という人間についてよく知らないのであれば彼女の発言の意図がよく分からないかもしれない。だが、彼女に関して()()()()()()()私としては理解できざるを得ない。

 風森千々という人物は興味のないことにはとことん反応せず、例え言葉を交わしたのだとしても3歩歩いただけで、記憶どころかそこにいたことすらも忘れてしまうような奇特な人物だ。そんな彼女が私の事を話していたというのだ。

 

 恐らく、東條タリアもその不穏さを感じ取って忠告をしてくれたのだろう。まだ二度しか話したことの無い間柄であるのにこうやって気にかけてくれていることには本当に感謝しかない。

 あれだけ天城総司に入れ込んでいても、やはり本質はゲームの時と変わらず善人なのだと感じさせてくれる。

 

「そうです。だからあまり関わらないことをお勧めしますわね。友人のことを悪く言うつもりはないのですけれど、チユキ……風森千々は能天気に見えて何を考えているのかよく分からない方ですので」

 

 

 東條先輩の発言を受けて希海は何も言い返すことが出来ずにいるようだった。それも仕方のない事だと私は思う。

 風森千々は一見すると、明るく活発な女の子に見えるがそれはあくまでも見た目だけだ。中身はかなり打算的で腹黒いし計算高い。

 そしてその事実を表に出すことが無い。

 

 当然の事ながら前世の私も風森千々の猫被りに騙された口だ。彼女の本当の性格が分かった時には、全てが馬鹿らしく思えた。こんなものがメインヒロインなのかと思ったくらいだ。

 だからこそ彼女は危険だ。油断をすれば喰われると絶対的な確信がある。

 

 要件を伝え終えた東條先輩は去っていく。その背中を見送り終えると私は改めて希海を見る。

 むくれたような表情でアッシュグレーの髪の毛を指先でクルクルさせているその姿はとても可愛らしく見える。まるで小動物のような愛らしさを孕んでいる。

 私が男であったなら、きっと放っておくことは出来なかったに違いないと断言できるほどの美少女だ。なぜ男に転生できなかったのだろうかと残念でしょうがない。

 

 

「関わるな、なんて。風森先輩ってそんなに警戒する程なのかな……?」

 

 

 不安げな様子でそう呟く希海。確かに東條先輩の警告は早計と言えるかもしれない。まだ出会ってから日の浅い希海は風森千々のことを深く知らないし、私に至っては昨日初めて話をしたばかりなのだ。

 しかし、それでも彼女が『何か』を抱えていることを私は知っている。だが、何かあってからでは遅いと考えた東條先輩の懸念は決して大袈裟とは言えないだろう。

 

 

「大丈夫。……何も起きないよ。うん、大丈夫」

 

 

 自分に言い聞かせるように希海の肩を叩きつつ笑みを浮かべる私。その言葉を聞いて一瞬キョトンとした顔を見せた後、「そうだよね!」と言って満面の笑顔を見せる希海。

 希海がグラトニアルを持つ以上、天城総司との繋がりは避けられない以上、彼の取り巻きの一人である風森千々を無視することは出来ない。風森千々を警戒して天城総司との繋がりを断つことは、即ち希海を失うことと同義となる。

 天城総司の持つ聖装、マルグラースに代わる存在は少なくとも私は知らない。故に東條先輩には悪いが、彼女の心配は余計なお世話だと言えた。

 

 

 

「のんちゃん、ごめん。あんまり可愛くて」

「もういいよ。香苗ちゃん、許す。……その代わり、もう一度ハグして」

「え、いや、その……。そろそろクラスメイトも戻ってくるだろうし、恥ずかしいんだけど……」

 

 

 頬を赤らめて上目遣いに見つめてくる希海にドキッとする。可愛い。何この生き物。抱きしめたい。……じゃなくて! いかん、落ち着くんだ、私。

 

 

「ダメ?……お願い」

 

 

 うるっと瞳を潤ませて懇願してくる希海。ああ、これはズルい。

 仕方が無い。覚悟を決めよう。一度深呼吸をして気持ちを整える。そして意を決して両手を広げると、希海が勢いよく抱きついてきたのだった。

 

 もし風森千々に目をつけられたのが私なのだとしても、希海がいればきっとどうにかなる筈だ。この不安は杞憂だと、そう思いたかった。




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