ギムナジウム(プール)→学生寮へ
ユフィ達は、モニカの歓迎会を30分くらいやったのだった。クライン部長は、新入生が4人も増えたことに感激していた。マイン副部長も女子が増えたことに感激していた。
帰りも第2学生寮の前までやって来て、クライン部長達、パスカル達と分かれて、ユフィとラウラは第3学生寮へ歩き出す。
2人が第3学生寮に帰っていたら、キルシェのマスターのフレッドが何やら困った顔で表に立っていたのだ。ユフィはすぐに何かあったのかと思い、マスターのフレッドに話しかけたのだ。
ユフィ「どうかされたのですか、フレッドさん?」
フレッド「うん?ユフィか。ちょっとまずっちまったんだよ」
ユフィ「まずったとは?」
フレッド「いやそれがな、いつもウチで使っているある調味料があるのだが…それをさっき使いきってしまってな」
フレッドは調味料を切らしたことで、今から買いに行くことも注文をとることも出来ないでいるようだ。だが調味料は絶対に持っておきたい。何故ならその調味料を使った料理を、楽しみにしている学院生もいるようだ。ラウラが代用はできないかって聞いてるが、フレッドは出来なくもないが、風味が大きく変わるからできない。
ユフィは、これも生徒会の依頼の延長だと言ってフレッドに
ユフィ「フレッドさん、その調味料ってどんなものでしょうか?」
フレッド「ああ、大陸南部が原産の【パッションリーフ】と呼ばれる少し珍しい香辛料だ」
パッションリーフ、大陸南部にそう言う香辛料があるって聞いたことあるとユフィは思った。
フレッドはいつもならブランドンのお店で特別に仕入れてもらってる。こまめに在庫チェックしていれば、切らすこともなかったって嘆いている。
パッションリーフ、調理部のニコラス部長なら、知ってるかもしれないとユフィは考えた。
ユフィ「フレッドさん、少し待っててもらえないでしょうか?」
フレッド「ユフィ、良いのかい、頼んでも?」
ユフィ「構わないですわ。これも生徒会の依頼の一環だと思えば、なんとでもなりますしね」
生徒会の依頼と思えば筋は通ると心に思った。トワ生徒会長を通さずに、やるのはちょっと引け目を感じるユフィだが、やるしかないと腹を括る。
ユフィ「それにちょっと心当たりがあるので、なんとかなると思いますわ」
フレッド「ユフィ、ありがとよ」
ユフィ「フレッドさん、確実な保証ありませんが、よろしいでしょうか?」
フレッド「ああ、わかってる」
ラウラが心配そうにユフィを見ている。
ラウラ「ユフィ、そなた」
「大丈夫ですよ。これでもわたくしは、これでも生徒会の端くれです。ラウラは先に第3学生寮へ帰ってもらって構いませんわ」
ラウラ「ユフィ、良いのか?私も手伝おうか?」
ユフィ「大丈夫です。何かあればラウラに頼りますから」
ラウラ「…そうか。ユフィ、何かあれば、私も手伝おう。……ではまた後でな」
ユフィ「ラウラ、わたくしの荷物を持って帰って貰えませんか?」
ラウラ「構わないぞ」
ユフィは、ラウラに荷物を預ける。彼女は、何か言いたそうだったが、言わずに第3学生寮へ帰って行った。
ユフィは、ラウラにごめんと言って、フレッドの依頼を開始する。まずは、ニコラス部長に会ってパッションリーフのことを尋ねてみることした。
ユフィは再び本校舎2階の調理部を目指した。
調理部の部室に入ったユフィはニコラス部長に話しかける前に向こうから話しかけてきた。
ニコラス「やあ、ユフィ君か。調理部に何か用事かい?」
ユフィ「ニコラス部長、少しよろしいでしょうか?」
ユフィはニコラス部長に事情を伝えて、【パッションリーフ】をもってないかを尋ねた。
ニコラス「なるほど、そういう事情で【パッションリーフ】を探しているのか…。でもすまないね。僕も使ったことはあるけど、今は持ち合わせていないんだ」
ユフィ「あ…あ、はい。わかりましたわ」
ユフィは、やっぱり駄目だったと肩を下ろす。仕方がない、大陸南部原産だから帝国では手に入りにくいからと聞いていたとおりだと思い出した。でもニコラス部長は何かあるようで
ユフィ「ふむ、だが諦めるにはまだ早いよ、ユフィ君」
ユフィ「どういうことでしょうか、ニコラス部長?」
ニコラス部長は、調理部には無いが、学生会館の食堂、学生食堂にはあるのではないかと教えてくれた。ニコラス部長が、以前学生食堂で食べた日替り定食から、パッションリーフの風味を微かに感じたみたいだ。それも隠し味に使ってる程度だが。流石ニコラス部長だとユフィは思った。
学生食堂は、ラムゼイさんが仕切って調理をしているようなので、ラムゼイさんに聞いてみることに。
ユフィ「ニコラス部長、どうもありがとうございました」
ニコラス「いや、すまないね、ユフィ君」
ユフィ「いえいえ、これがわたくし達のお仕事ですから」
ユフィはニコラス部長に挨拶を済ませてから、本校舎から学生食堂がある学生会館へ歩き始めた。
そして学生会館の学生食堂へやって来たユフィは、調理室へ入った。
ラムゼイ「うん?何か用か?……もしや、摘み食いにでも来たか?」
ユフィ「違いますわ。わたくしはラムゼイさんに用があって来たんです!」
ユフィは、つまみ食いをしに来たわけではないと、改めてラムゼイさんに事情を話した。
ラムゼイ「なるほど。【キルシェ】のために、パッションリーフが欲しいのか?」
ユフィ「はい」
ラムゼイ「それなら…確かにここにある」
ユフィ「本当ですか!」
これでキルシェのマスターのフレッドも、フレッドの料理を食べる学院生も困らなくてすむとユフィは安堵した。
ラムゼイ「ああ、これを持っていくといい」
ユフィはパッションリーフの束を受け取った。
ユフィ「すいません、ラムゼイさん。あっ、お代金を払わないといけませんわね」
ラムゼイ「ふむ、そんなものをとるつもりはない。とりあえず…それだけあれば、2週間は凌げるだろう。これで足りないようなら、また来るといい」
ユフィ「分かりました、ラムゼイさん。どうもありがとうございました」
ユフィはラムゼイさんにお礼をして、調理室から出た。しかしラムゼイさん優しい人だったと感謝した。そしてキルシェへ向かうことにした。
キルシェに到着したユフィは、すぐにマスターのフレッドに話しかける。
フレッド「もしかして……パッションリーフを持ってきてくれたのか?」
ユフィ「ええ、パッションリーフは持ってきましたわ」
ユフィは、パッションリーフの束をフレッドに渡した。
フレッド「はは、…まさか本当に持ってきてくれるとはな。どうもありがとな、恩に着るぜ、ユフィ」
ユフィ「わたくしは、“承った依頼は必ず達成させる”がモットーですので」
しかしパッションリーフの束を見て、かなり値がはるのではないかと言われた。
ユフィ「それなんですが、実は調理部ではなく、学生食堂から貰ったものなんです」
ユフィはフレッドに事情を話した。
フレッド「なるほど、そんなことが…学生食堂のラムゼイさんか…。改めてお礼を言いにいかないとな」
ユフィ「わたくしからもお礼を致しましたけど、フレッドさんからもお願いしますね」
フレッド「ああ、そうさせてもらうよ。あと、ユフィにも感謝しないとな。お陰でお客さんをがっかりさせずに済むし。何より、ここまで一生懸命に動いてくれたことが、嬉しかったぜ。つまらないものだけど、是非これを持っていてくれ」
ユフィはフレッドから、クリスビーピザを3個受け取った。
ユフィ「こんなに沢山…いいんでしょうか?」
フレッド「はは、もちろん良いに決まってるさ。生徒会には、いつもこの商店街は、助けられてるからな。今回はユフィにもな」
ユフィは、フレッドと世間話を少ししてから、クリスピーピザを持って第3学生寮へ帰った。
クリスピーピザは、Ⅶ組のみんなと分けて美味しく頂きましたとさ。
ーー第3学生寮ー306号室ーユフィの部屋ー夜
ユフィが、フレッドさんからもらったクリスピービザをⅦ組全員で食べた。やはりキルシェのフレッドが作ったものであるため、誰も食べ残しは無かった。
後は、各自自由時間になり、消灯の時間までは、自由に過ごせる。シャワーを浴びる時間は決められている。ユフィはすでにシャワーを浴びている。
勉強を教え合うよし、Ⅶ組メンバーと絆を高めるのよし、男女間の部屋を訪れるのもよし、つまり風紀を乱さない限りはOKなのだ。
そんな中ユフィは、1日の記録を付けていた。その日に起きた出来事、たあいもない事なども記載されている。
しかし今日の記録には、いろんな事がかかれている。まずは生徒会の依頼を達也とこなしたこと。次に水泳部に入部して、クライン部長、マイン副部長やパスカル、モニカとも友達になったこと。3番目に、キルシェのフレッドさんの依頼を引き受けて、解決したことを書いてある。
【パーションリーフ】
大陸南部が原産であり、主にリベール王国で栽培されている香辛料なのだ。パーションリーフ好きな人間は、それが無いと料理を食べた感じがしないと云わしめる香辛料なのだ。
しかし、今では東方から【唐辛子】や【醤油】などの輸入品も多く帝国内に入って来ているため、絶対というほどでは無くなった。
むしろ、【唐辛子】や【醤油】などが、【パーションリーフ】よりも価格が安く、帝国企業もリベールから日本からの輸入に切り替えが起きている。
ユフィの太刀を置いている刀置き台も日本からの輸入品である。
今のユフィは、キャミソールにショートパンツというラフなスタイルで、長い金髪もポニーテールに結んでいる状態である。
ユフィ「ふふっ、今日は色々ありましたわ」
依頼の仕事を通じて親友になったコレット。
水泳部に入部してきたモニカ。
それだけではない。旧校舎地下探索では、前回の入学式のオリエンテーションの時と違い、地下構造が全く異なっていた。
ユフィ「…うん…あの旧校舎の地下がまるっきり構造が変わってましたわね」
父や兄、オリヴァルトから聞いていた話とは、全く違う。地下構造が変わることは、2人の話からは聞かされてはいないのだ。
トワ生徒会長からも去年までは、こんなことは無かったと聞いている。
だが今年になって、旧校舎の構造が変わることが起こるとは誰も説明が出来ない。
いくら考えても、ユフィに何か考えが出るわけでもない。ただ分からないがずっと続くだけである。
ユフィ「旧校舎の事は、一端置いときましょう」
ユフィは、ふとベッドのところに置いてある自分の洗濯物に気が付く。おそらくエマ当たりが部屋に運んでくれたのである。
洗濯物を片付けるために立ち上がる。片付けていると自分のパンツを手に取る。
ユフィは、今日の休憩エリアでの一こまを思い出す。男子生徒達に自分のパンツを見せて恥ずかしかったこと。マキアスにも見られたが、彼にだったらと良いかなという自分がいることも。
ユフィ「マキアスさんの好みの色の下着って…何色なんでしょう?」
彼女は、自分がとんでもないことを口にしたことに気がつき、思わず身体中が赤く暑くなる。
ユフィ「わたくしったら、何をいってるんでしょう!」
ユフィは、冷たいベッドにダイブして火照った身体を冷やすのだった。
そんな感じで、夜も更けていく。
ーー第3学生寮ー302号室ーアリサの部屋
アリサは、先程までアンジェリナが部屋を訪れていたのだ。
なぜ彼女がアリサの部屋を訪れたのは、ラクロス部での夕方の片付けの件である。彼女は、アリサの手伝いをするつもりだったが、フェリスによって妨害されてしまったのだ。
フェリスの言葉
【大貴族である貴女が、平民のやるお片付けをやる必要はないですわ】
アンジェリナはそうは思わない。大貴族だからと言ってふんぞり返るつもりはない。
アリサもアンジェリナを以前から知っていた。彼女は、よくログナー侯爵家の屋敷を抜け出して、ルーレの礼拝堂で教会のお手伝いをしていた。それをよく見ていたのだ。
姉アンゼリカとは、違う意味でアンジェリナはルーレの民から慕われている。
そんなアンジェリナを支えてるのは、あの時の達也の言葉であり、彼女が強くなろうとしたのも達也の言葉からである。
アリサ「ふぅ…ライバル宣言されちゃったな…」
アンジェリナ【私は達也さんをお慕いしています。アリサさんが達也さんを好きな事も知っています。それでも私の気持ちは変わりません】
アリサはふと窓を開けて、トリスタを吹き抜ける風を入れた。火照った身体にはちょうどいい気持ちよさの風だ。
アリサ「それにしても、達也が昔そんなことをね…」
アリサも小さいとき、達也とリィンの故郷のユミルで、助けられた事がある。
アリサがユミルの地で迷子になって泣いた事がある。父親と母親と離れ離れになり、寂しくなって泣いていた。そんな時、ヒーローのように現れた少年である。
その少年は、泣いていたアリサを寂しくない、寂しくない、必ず父親と母親のもとに連れていってくれると頭を撫でてくれたのだ。
泣いていたアリサは、いつの間にか安心していた。少年に引っ張られ父親と母親のもとに連れてきてもらったのだ。
アリサは、少年に名前を聞いた。だが少年は
??「名乗る程の事はしていないから。君もお父さん、お母さんを心配させたらだめだよ」
そう言って少年は去って行った。アリサは少年の事は心と身体に焼き付いていた。
それから父親が事故で亡くなり、いろんな事が起きる。そんな慌ただしい時に、母親によって達也が連れてこられる。
母親曰く彼の能力は、目を光らせるものがあるから、RF社にバイトという形で入ってもらうことにしたと。
アリサは、母親に連れてこられた達也を見て、忘れていたあの時の事を思い出した。
そう迷子になり、助けてくれたあの少年だってことを。
だが彼自身は覚えてはいなかった。あの時の事は、彼の中では、日常の一こまだったのだろう。でもアリサの中では、彼を好きになるきっかけだったのだから。
アリサ「私も、負けない。この気持ちに嘘は付きたくないから」
夜空の星達がアリサを応援するかのように輝いていた。
ーー第3学生寮ー201号室ー達也の部屋→1階の応接室
達也は、風呂に入った後に、ユフィがフレッドから貰ってきたクリスピーピザをみんなで食べた。フレッドの料理は達也も美味しいのは知っていた。
学生食堂のラムゼイの料理も旨いというのも忘れていない。つまり順位は決められないってことになる。
そして達也は、サラ教官に呼び出されて、1階へ行った。サラ教官は1階の応接室で何かをしていた。
達也「…サラ教官、何の用でしょう?」
サラ「達也、あんたに届け物よ」
達也「届け物?一体誰からですか?………九重の師匠からですか」
サラ「へぇ…あの九重八雲から?」
達也「へぇー、サラ教官も九重の師匠をご存知で?」
サラ「ええ、もちろんよ。日本での依頼を何度か一緒にやったことがあってね。その時に知り合ったわ」
達也「なるほど…」
達也が九重八雲と知り合ったのも、ユン老師の飲み仲間であったからである。彼も帝国・ユミルに滞在していた。達也は、しばらく九重八雲からも指導を受けており、同じくリィンも指導を受けている。
達也「この荷物は…一体」
荷物の中身は酒だった。酒はサラさんに渡してくれと書いてあった。あと別に手紙も添えられいた。
達也「サラ教官…喜んで下さい。九重の師匠が酒を贈ってくれました」
サラ「何!酒だって?あの八雲が酒を?まあいいわ、頂くわね」
達也「日本の…【サムライ酒】だそうですよ」
サラ「そう…じゃあさっそく飲みますか」
サラ教官は、さっそくサムライ酒を飲むためにつまみを取りに行った。
達也「俺は、部屋で手紙を読みますのでこれで失礼します」
達也はサラにそう言って、自室へ帰ってから九重八雲からもらった手紙を読むことにした。
第3学生寮ー1階応接室→2階ー201号室
達也は椅子に座りながら手紙を読み始める。
【達也君、元気にしているかい?風の便りで君が士官学院に入学したことを聞いたよ。ユン老師も僕も君やリィン君が少しずつ前に進んでいること良いと思ってるよ。ユン老師は、今、昔のお弟子さんのところに滞在してるそうだよ。僕の方はね、新しい弟子が入って来たんだ。男の子なんだけど、中々のセンスのあるだよね。何だか君達兄弟と初めて会った時の感覚だね。これからみっちり鍛えていくつもりだよ。士官学院を卒業したら、一度日本に招待しよう、君達兄弟やエリゼさんやご両親も一緒に。
あと決して無茶だけはしないようにね。
九重八雲
九重八雲からの手紙を読んだ達也は、
達也「全く九重の師匠らしい言い方だな。九重の師匠も元気でやってるみたいだし安心か。それにしても師匠が言っていた新しい弟子か……」
達也は思った。九重八雲の目にとまるような人間はそういないと。達也やリィンが、九重八雲の目にとまったのも単なるユン老師の弟子ってだけで目にとまった訳ではない。その事はユン老師からも聞かされている。だからこそ達也は、その弟子になった人間の事を興味が出たのだった。
達也「九重の師匠の弟子になったのなら、いずれ会えるだろう」
そう決意して達也は、製作中のとあるものを作り出したのだった。