ーー1204・4・24・朝・第3学生寮ー306号室ーユフィの部屋。
ユフィは、身支度と荷物の最終確認をしていた。特別実習は、2泊3日の予定である。
ユフィ達B班の人間達は、朝早く起きている。
A班が行くケルディックは、トリスタから1時間くらいで行ける距離だが、B班ユフィ達が行くところは、帝国南部の紡績街パルム。トリスタから、約8時間は列車で過ごして到着する距離にある。つまり朝早く出発しても夕方近くに到着することになる。
ユフィ「2日前から準備しましたし、忘れ物はないですよね?」
ユフィはそう言いながら、旅行用のバックの中身を確かめている。ちなみに旅行用バックは、Ⅶ組の特別実習のために用意されたバックである。ちなみにバックの製造元は、日本企業(四葉の配下の企業)である。確かめ終えた彼女は、自分の得物である太刀とARCUSが入ったホルダーを身につけて、姿見の鏡で最後の身嗜みを確かめる。
ユフィ「それでは行ってきますわ」
ユフィは、帝都の方を向いてそう言った。言った後、旅行用バックを持って部屋を後にした。
彼女が第3学生寮の1階に降りてきたら、みんなが既に来ていた。
マキアス「ユフィ君、おはよう」
リィン「おはよう、ユフィ」
エマ「おはようございます、ユフィさん」
スハルト「ユフィ、おはようさん」
ユーシス「フン、おはよう」
ユフィ「みなさん、おはようございます。わたくしが一番最後みたいですね」
どうやら男子で最初に来てたのは、スハルトらしく次にリィンとマキアスで、エマが来てユーシスだったようだ。スハルトが
スハルト「紡績街パルムが実習先だから、さっさと出発した方が身のためだぜ」
ユーシス「そいつの言うとおりだな。パルムは、帝国、サザーラント州南部の街だ。ゆっくりしている時間は無い。とっとと行くぞ」
スハルトとユーシスは、そう言うと荷物を持って第3学生寮から出ていく。
マキアス「き、君達…ま、待ちたまえ…」
リィン「…全くあの2人は…。焦らず行こう、マキアス」
マキアス「…あ、ああ、そうだな」
マキアスをなだめながら、荷物を持って第3学生寮を出るリィンとマキアス。最後に残ったユフィとエマは
エマ「アハハ…何だか賑やかですよね」
ユフィ「そうですわね。わたくし達も行きましょうか」
エマ「そうですね、ユフィさん」
ユフィとエマも学院指定旅行用バックを持ってから第3学生寮を出た。
ーー第3学生寮→トリスタ駅
まだ朝焼けがする空の下で、小鳥達のさえずりが聴こえる中、すぐ側のトリスタ駅へ向かう。トリスタの住宅の方から、風に乗って、朝ごはんの匂いが漂ってくる。鼻腔を刺激され、お腹が鳴るのを必死に我慢しながら、トリスタ駅の中へ入るB班一行であった。
ーー西トリスタ街道出入口の所
ユフィ達がトリスタ駅の中に入っていくところを見ていた人物が2人いる。
そのうちの1人が、クロウ・アームブラストである。
クロウ「ユフィ達はパルム組か。あっちはあっちで問題が山積みだろうが」
もう1人は、緑の制服を着た女子生徒である。クラスは1ー4組、マリア・ハーティアである。髪の色はとあるのインデックスみたいな髪の色。目も同じか。別にシスターではない。バストは普通でスタイルは良し。部活は入ってないが、生徒会には所属している。生徒会での役目は、書記兼情報管理職に付いている。
マリア「クロウ、ケルディックの方には行くの?」
クロウ「ちょっくら、散歩がてらにな」
マリア「そう…今回はわたしはパスね。生徒会の仕事が忙しいもの」
クロウ「分かってるさ。俺達はケルディックの方に専任するさ。パルムの方は、スポンサーの日本の獅童一派がやってくれるだろう」
マリアは怪訝な表情をする。
マリア「わたしは、あんな奴らと手を組むのは反対だった。人身売買をやってるような連中だよ!」
クロウ「マリア、お前の言うことは分かっている。あの鉄血を倒すためだ、仕方がない」
マリア「それは分かってるわ。目的のためなら、鬼にも修羅にだって…なって見せる」
クロウ「………」
マリア「どうかした?」
クロウ「いいや…」
クロウは思っていることがあった。本当にマリアみたいな子を自分達の目的のために引き込んだ事は、良かったのか。彼女は自らが進んでやってきたのだから、良いのではないかと。そんな考えが試行錯誤していた。
マリア「人が来るわ、わたしは先に戻るね」
マリアはそう言って第2学生寮へ戻って行った。
クロウ「…なるようにしかならないか。ユフィ、お前さんのお手並み拝見といこうか」
クロウはそう言って、そのまま学院へと足を運んだ。
ーー
ユフィ達B班一行は、駅の改札口で駅員のマチルダから、乗車切符を購入しホームの方へ行く。パルム行きは2番ホームの列車に乗り込む必要がある。すぐに駅のアナウンスがなり
アナウンス【まもなく2番ホームに帝都行き旅客列車が到着します。ご利用の方は連絡階段を渡ったホームにてお待ち下さい】
アナウンスが終わった直後にパルムへ向かう帝都行き旅客列車が、トリスタ駅へ入って来た。列車が止まるとすぐにドアが開き、ユーシスとスハルトが乗り込む。幸い朝が早いので、降りてくる乗客はいなかった。
マキアス「き、君達、待ちたまえ!」
マキアスはそう言いながら、列車に乗り込んで行った。
リィン「さてと、行くとするか」
リィンもそう言って列車に乗り込んでいく。
エマ「ユフィさん、私達も乗りましょう」
ユフィ「そうですわね」
ユフィとエマもそう言って列車の中に乗り込んで行った。
これからB班の最初の特別実習が始まっていく。実習地パルムの地に置いて、いろんな陰謀が渦巻いているとは、このときのユフィ達には、知るよしもなかった。
ーートリスタ→帝都ヘイムダル
ーー帝都ヘイムダルで、サザーラント本線の列車に乗り換えて再び帝国南部へ。
ーー帝都ヘイムダル→西トウキョウ移民街
乗り換える途中で、ヘイムダル中央駅で駅弁を買ったユフィ一行。パルム行きの列車の中で、駅弁を食べ始める。
リィン「初めて、駅弁ってのを食べるけど、旨いな。マキアスは、こういうのを食べてたのか?」
マキアス「あるわけないだろ…。さっき調べたんだが、あの駅弁売り場は、4月になって出来たものだ。僕がトリスタに向かう時には無かったからな」
ユフィ「マキアスさんの言うとおりですわ。わたくしも帝都出身ですが、3月まではヘイムダル中央駅に無かったですね」
スハルトがため息をはきながら会話に入ってくる。
スハルト「…駅弁…東方の国…東ゼムリアの大国、日本のやつだな。日本の駅には普通にある。日本国内の列車なら、駅に停車中にも駅弁を売ってるおばちゃんが売りに乗車してくるな」
リィン「へぇー詳しいんだな、スハルト」
スハルト「まあーな…」
ユーシス「日頃の行いとは、えらく違うのだな?」
スハルト「別にいいだろ…。まあ、サラ、サラ教官にクギをさされてんだよ…」
スハルトは、出発前にサラ教官にクギをさされている。特別実習中に問題を起こせば、問答無用で赤点決定、虹の旅団の団長の墓と恋人のソフィアの墓に問題を報告するとまで言われた。
スハルトは、団長やソフィアに恥を報告されたくないので、真面目…いや本来の性格ではないにしろ、そうしなければならないわけである。
マキアス「自業自得だな、スハルト」
スハルト「はぁ~?ムッツリメガネだけには言われたくはないな!」
マキアス「だ、誰がムッツリだ!」
リィンとユーシスが笑い出すと、ユフィとエマも笑いだした。そしてスハルトも笑いだした。
マキアス「君達、笑うんじゃない!」
そんな会話をしながら、朝ごはんの駅弁を食べるのであった。
帝都ヘイムダルを出発して約4時間あまりが経過した頃、新しく出来た新駅に停車する。新駅とは西トウキョウ移民街にある西トウキョウ駅である。
しかし西トウキョウ駅、平時なら駅弁を売りに乗車するおばちゃん達がいるはずだが、今日はどうやらいないようだ。その代わりいるのは、鉄道憲兵隊とサザーラント州の領邦軍の兵士達だった。
列車の中からユフィ達をそんな状況を見ていた。
マキアス「鉄道憲兵隊と領邦軍が西トウキョウ駅にいるんだ?」
スハルト「鉄道憲兵隊と領邦軍…そうか…」
リィン「何か分かったのか、スハルト?」
スハルト「いや、別に…。ただ、鉄道憲兵隊と領邦軍が動くってことは、何かあったと踏みべきだなと思ってな」
ユーシス「確かにな。領邦軍は余程がない限りは動かん。それが動いてるとなると……」
ユーシスはなにやら考え始めた。
ユフィ「それにしても、鉄道憲兵隊のみなさんも領邦軍のみなさんも、荷物を重点に調べてますわ」
鉄道憲兵隊の隊士達と領邦軍の兵士達は、共同で貨物列車や西トウキョウ駅から乗ってくる乗客の荷物を調べている。
そして、一部の鉄道憲兵隊の隊士達がユフィ達が乗ってる列車に乗り込んできた。
??「ちょっと失礼しますね。自分達は、鉄道憲兵隊の者であります。本来ならセントアークに出発しているはずですが、事件が起きまして、皆様には協力してもらいます。えーと私の自己紹介がまだでしたね、私は、クロード・クラリスと申します。以後お見知りおきを」
列車の中の乗客が騒ぎ出す。早くセントアークに行きたい乗客もいるようだ。
クロード「大変失礼ですが、荷物検査にご協力して下さい」
クロード達は、1人1人の手荷物を調べている。しかし何故手荷物検査までするのか批判が出てきた。事件とは一体なんだと言っている。1人が批判の声をあげたため、検査を拒否する人間まで出てきた。
クロード「みなさん、お気持ちはわかりますが、事件解決のためにご協力ください」
クロードはそう言っているが、乗客達は聞く耳を持たない。そんな中、列車の先頭車両の方から女性が歩いてきた。その女性は、金髪ポニーテールに白いブラウスにタイトスカートをはいている。
??「みなさんすいません、私は、帝国軍情報局所属、ミサキ・カミジョウと申します。皆様に少しばかりお手間を取らせてもらえないでしょうか?パルムの東の日本人街から、とある犯罪の犯人が逃走しています。西トウキョウ駅内に逃げ込んだ情報があるので、それを調べているのです。我々に協力してくれれば、時間もかかりませんので」
その女性ことミサキが頭を下げて、協力を求めた。すると反発していた乗客達が大人しく協力的になった。乗客のなかにはミサキを知っているものもいるらしく、かなり歓声が上がっている。
ミサキ「クロード君、分かった?頭を下げるときは下げるのよ」
クロード「分かってますよ、それにしても全くミサキ先輩には敵わないですよ…」
ミサキ「そんなことはないわよ。クロード君は、帝都知事閣下に買われてるんだから、これからこれから」
ミサキは、クロードの肩をポンポンと叩いた。
これから、ミサキとクロードによる乗客の手荷物検査が始まった。
ミサキとクロードを見て、ユフィ、マキアス、スハルトは、三者三様の表情をしていた。
ーー西トウキョウ駅ー列車内
乗客の手荷物検査が始まって、10分が経過した頃にユフィ一達B班のところにミサキがやって来た。
ミサキ「今から手荷物検査を致しますね」
ユフィ「ミサキさん、お久しぶりですわ」
ミサキ「あら、ユフィちゃんじゃないの?それにマキアス君に…スハルトじゃないの?」
マキアス「ミサキさん、お久しぶりですね」
スハルト「ったく…会いたくもない女だよ…」
リィン「3人共、この人と知り合いなのか?」
ユフィ「ええ」
マキアス「父の仕事関係で知り合ったかな」
スハルト「まあ、色々だな」
リィン「色々って何だよ?」
スハルト「別にいいだろ」
ユフィ、マキアス、スハルトがそれぞれの説明をやった。説明に困ったユフィやスハルトに対して、ユーシスが本題を聞き出した。
ユーシス「領邦軍はともかく、鉄道憲兵隊や帝国軍情報局が出張るほどの事件が起きていると言うわけか?」
ミサキ「そうね。パルムの東の日本街での犯罪ね、そこから西トウキョウ駅に逃げ込んだみたいね」
スハルト「大体、その犯人は何をやらかしたんだ?」
ミサキ「まあ…色々とね。トールズ士官学院の学生さんは、気にしなくて良いからね。手荷物検査はさせてもらうけどね」
ミサキがトールズ士官学院と言ったので、みんなが驚いた。ミサキがⅦ組設立提起人の1人とは、思わないだろう。彼女はそう言いながらユフィ達の荷物を調べていく。ユフィ達もその事件の事が気になったが
ミサキ「パルムに特別実習に行くのでしょう?事件の事に興味を持ってくれるのは、嬉しいのだけど、学生さんは学生さんらしく特別実習に勤しんでね」
ユーシス「何故、そんなことを貴女が知っている?」
ミサキ「貴方達の教官であるサラさんと知り合いだからね。サラさんから聞いたの」
スハルト「サラか」
エマ「ミサキさん、パルムの方は大丈夫なのでしょうか?」
ミサキ「パルムは大丈夫よ。あくまでも日本人移民街と西トウキョウ駅内…その周辺が捜索の対象だから」
エマ「そうですか」
ミサキの説明によれば、パルムの東にある日本人移民街と今列車が停車している西トウキョウ駅とその周辺が捜索の対象だと。特別実習先のパルムは関係がないとのこと。ユフィやスハルトは、気になる事があったが、ミサキに言うのを止めた。なぜならもう1人彼、クロードがやってきたからだ。だがクロードの表情は渋い。
クロード「半分より後方の車両は全てチェックしました」
ミサキ「クロード君、ご苦労様。その顔だと犯人、犯人の痕跡も見つからなかったんでしょ?」
クロード「ええ、何も…」
ミサキ「私もこの子達を調べて終了だから」
マキアスがクロードに話しかける。
マキアス「やはり、クロードさんでしたか。遠目からそうじゃないかと思ってましたが。クロードさんは、帝都庁勤めじゃなかったですか?」
クロード「アハハ、そうなんだがね、マキアス君。君の父、カール帝都知事閣下から、4月から鉄道憲兵隊に出向を命じられたんだ」
マキアス「父が…出向を?」
クロード「でも、俺は鉄道憲兵隊に出向させてもらって、良かったと思ってる。帝都庁勤めでは、わからないことがわかるからね」
マキアス「そうですか」
クロード「なに、マキアス君が気にすることではないよ。これは、俺が選んだ道だからね。そうだ、俺の妹もトールズ士官学院にいるんだ。名前はカトリーナ。カトリーナ・クラリスって言うんだ」
クロードが自分の妹がカトリーナと話すと、ユフィが立ち上がる。
ユフィ「か、カトリーナですか!?」
クロード「君、えーと…」
ユフィ「ユフィです。ユフィ・レンハイムですわ」
クロード「ユフィさん、なるほど、君がカトリーナが言っていたお友達か」
ユフィ「カトリーナには、わたくし以外にもお友達は、いっぱいいますわ」
クロード「そうみたいだね。だけど、ユフィさんやフィーさんやヴィヴィさんや、部活の先輩のことを書いてたからね。カトリーナがちゃんとやれてるみたいで安心したよ。田舎娘だけどよろしくお願いするよ」
ユフィ「はい」
ミサキ「はーい、おしゃべりはここまでね。あまり列車を停めるわけにはいかないし、Ⅶ組の生徒さんのパルム到着が夜にするわけにはいかないでしょ?」
クロード「そうでしたね。俺とミサキ先輩は引き続き犯人捜しですが、みなさんは、パルムまでの列車旅をお楽しみ下さい」
ミサキ「列車旅を楽しんでね、Ⅶ組のみんな。あ、それと昼ごはんは、セントアークで購入してね。セントアークには、美味しいあったか弁当屋さんが、駅のホーム内で売ってるおばさんがいるから」
スハルト「……!!」
ミサキは、スハルトに対してウインクをした。つまりスハルトとあったか弁当屋のおばちゃんと何かあると言うわけだが、まだユフィ達は気がついていない。
ミサキ「それじゃあ失礼します…」
クロード「みなさん、俺達はこれで…」
ミサキは、スハルトのそばを通った時、口パクでこう言った。
ミサキ【貴方はいつまで立ち止まるの?いつまで、過去を引きずってるの?私が知ってる男達(ロイド、和也)は、悲しみを乗り越えて戦ってるわ。もちろん私も。貴方はいつ立ち上がるの?】
もちろんマキアス達は気づかない。わかるのは、もちろんユフィとエマである。ユフィは、ミサキが言った悲しみの過去が気になったが、追及は出来なかった。人の過去に勝手に踏み込んではならないと思ったからだ。スハルトも何かに耐えるような表情をしていた。
乗客の手荷物検査を終えたミサキとクロードは、列車から降りた。
そして列車は再び動き出した、白亜の旧都セントアーク、そして紡績街パルムへと。
だが、この騒動はもうすでに始まっていたのだった。