ーーー日本人移民街・工場団地
ミサキから頼まれていたステイル達は、日本人移民街の近くにメルカパ漆号機を着陸させ、アクアエルを漆号機に残した。アクアエルには連絡係として残ってもらうことにした。万が一何かあった場合、アクアエルの座標移動(ムーブポイント)で漆号機ごと逃げるためだ。
ステイル、桜子、クラレットの3人は、ゴールド・マウンテン帝国支社の工場団地に入ってきた。
ゴールド・マウンテン帝国支社以外の工場からは、いろんな音が響いている。
ステイル「…何故、ゴールド・マウンテン帝国支社の工場から音が聞こえてこないんだ?」
クラレット「今日お休みってわけないですよね?」
桜子「休みは無いわね、さっき帝国支社の掲示板を見たところ、工場が休みでは無いわね」
ステイル「俺達が乗り込んで来たことがわかったのか…あるいは…」
ステイルは、工場の入り口の扉に手をかけた。すると扉が開いたのであった。扉の横にはセキュリティを解除するための装置があるのだが、どうやらセットされていないようだ。
ステイル「…とにかく中を調べてみる必要があるな」
桜子「拉致してきた日本人や武器の密輸品が見つかれば、良いけどね」
クラレット「気をつけて下さい、敵が隠れている可能性もありますから」
ステイルは、己の特殊な目である第3の眼を使って、先の通路や部屋の中身を歩きながら調べている。
第3の眼、ステイル(和也)の特殊能力の力の1つ。
施設の構造、配置人数、配置情報、予測行動、危険探知、未来予測、人の命の光など等も見える。
だがステイルは、第3の眼でこの辺りを見渡しても何も見えない。すると渡り廊下が見えてきた。ステイルは桜子とクラレットに合図を送り、警戒しながら渡り廊下を渡り隣の工場の方に移った。すると突然血の匂いがしてきた。
桜子「…!血の匂い…!」
クラレット「私達の他に誰かが侵入したってことですか?」
ステイル「………ああ、クラレットのいう通りにビンゴだ」
ステイルは、自分の第3の眼を駆使して、工場の様子を伺っている。
ステイル「…工場の働いてる連中は…いないな…猟兵やマフィア、ヤクザの連中の死体が先には転がっいる…その死体達の血の匂いってことか…」
桜子「あたし達以外に誰がこんな事を…?」
ステイル「わからない…とにかく最大限に警戒しながら行くぞ!」
桜子「わかったわ!」
クラレット「了解しました!」
警戒しながら工場の中を歩いていくステイル達であった。ただ、1つ知った炎の光を放つ人の気配を感じ取ったが、ステイルは警戒を強めた。
ーーー日本人移民街・ゴールド・マウンテン帝国支社・工場
静江は、表の見張り、巡回兵士達を片付けて工場内部へ侵入する。すると猟兵達が4人が静江を囲むように現れた。
静江「すんなり入らせてくれるとは思わなかったけど…」
猟兵1「侵入者か!」
猟兵2「うん?帝国人ではなさそうだな」
静江「確かに帝国人じゃないわね。。貴方達はゴールド・マウンテン帝国支社の社員じゃ無さそうよね?」
静江はデスガンを構えながら猟兵達に問う。猟兵達がまともに答えないことも想定済みである。
猟兵3「女一人でノコノコと来るところではここは無いぞ」
猟兵4「“トールズ士官学院”の生徒でも教官でもなさそうだな」
静江「なるほど…トールズ士官学院の生徒達も捕まえたの…」
猟兵1「おっとしゃべりすぎたな。心配する必要は無い。どのみちお前もトールズの連中も死ぬのだからな」
猟兵達は、静江に向かって導力銃を撃ちまくろうとするが
静江「死ぬのは貴方達の方よ…」
静江は、デスガンの引き金を素早く引く。デスガンの弾が猟兵達の心臓を貫いていた。猟兵達は、絶叫をあげることなく絶命し赤い鮮血の血溜りを作っていた。
静江「……私に勝とうなんて100年早いわよ」
デスガンをホルダーにしまうと、再び工場内を歩き出す。歩きながらちょっと考える。
静江「トールズ士官学院の生徒が捕まってる…」
静江は、フデレリック卿からトールズ士官学院の生徒達が、パルムの街に特別実習に来てることを聞かされていた。彼女の脳裏にあの生徒達の顔が浮かんだ。
静江「パルムで会った子達か…。なんで捕まってるのかしら…」
普通にパルムで特別実習とやらをやっていれば、日本人移民街の自警団、ゴールド・マウンテン帝国支社の連中に捕まるはずがないと考えた。
静江「自警団の連中、ゴールド・マウンテン帝国支社の連中がパルムまで来るわけが無いし、あの子達が日本人移民街に入ったってことかしら…」
静江はちょっと考えたが、すぐに猟兵や日本のヤクザみたいな連中が現れた為、戦闘思考に切り替える。
猟兵1「いたぞ!侵入者の女だ!」
ヤクザ1「逃げられると思うなよ!」
猟兵2「お前か、仲間達を殺して回ってるのは?」
ヤクザ2「問答無用、やっちまえ!」
静江「…全くうるさいわね」
静江はすぐに物陰に隠れてホルダーからデスガンを取り出す。猟兵達やヤクザ達が一斉に銃を撃ち始めた。工場の窓ガラスや壁などに銃の弾が貫いている。静江はデスガンの引き金を引く。デスガンの弾が人数分発射され、猟兵やヤクザ達の心臓を貫き、叫び声もあげられずバタバタと倒れていった。
静江に撃たれた連中は全て死んだ。これが七草家の戦い方では無いが、静江と真由美がコンビを組んだら、普通の軍隊じゃすぐに全滅するだろう。
静江「猟兵やヤクザがこの先を守ってるようだけど、何かあるとふんだ方が良いかしら」
静江が視線を向けた先には、工場の最奥でありそこには頑丈そうな扉がある。何か隠されているような感じがするようだ。
静江「あんな頑丈な扉の向こうに何があるのかしら?」
静江は、マルチスコープで扉の向こうを覗いた。すると中には、東方人がかなりの数で捕らえれている。
静江「ビンゴって事ね。日本から連れ去られた高校生ってとこかしら」
静江は、頑丈な扉に近付く。ちょっと触ってみたが、やはり扉には鍵がかかっている。
静江「当たり前と言えば、当たり前か…」
デスガンの弾数は、限りがあるからあまり撃ちたくはない。かといって簡単に開けられるような扉でもない。
静江「なら、奥の手の原子崩し(メルトダウナー)を使うしかないわね」
静江が扉に向かって原子崩し(メルトダウナー)を使おうとした時、背後から足音が聞こえてきて
ステイル「待て!後ろ向きで、手を挙げろ!ここまでに来るまでに転がっていた死体はお前の仕業か!」
静江は、ステイルに言われたとおりに、手を上に挙げた。静江は静江なりに背後から来た3人組を様子見ようと思った。
静江「猟兵やヤクザのことかしら?」
桜子「貴女、ゴールド・マウンテン帝国支社の人間じゃなさそうね」
静江「私はゴールド・マウンテン帝国支社の人間では無いわね」
桜子「でしょうね。もし社員だったらこんなことをする理由がわからないわ」
クラレット「とにかく、話を聞かせてもらいます。おとなしくしてくだー」
クラレットがものを言い終える前に静江は動き、彼女の足をかけて転がした。桜子が木刀を取り出して、静江に向かって斬りかかる。だが静江は楽々と避けながら、桜子の背中を蹴り飛ばす。桜子は工場の機材の中に突っ込んでしまう。
ステイル「桜子!クラレット!」
静江「…貴方はかかって来ないのかしら?」
ステイル「貴女の挑発には乗るつもりはない」
ステイルは、鞘から太刀を取り出して、静江に向ける。
ステイル「貴女が何の目的でここにいるのかは知りません。俺達の目的は、ここに…ゴールド・マウンテン帝国支社に捕らえれている日本の高校生と武器の密輸を見つけ出すこと…」
静江「へぇーそうなんだね」
ステイル「邪魔をするつもりなら、俺は貴女を倒しますよ!」
静江「ふーん」
静江は、すぐさまステイルとの距離を詰める。ステイルも後方へ移動する。静江は、大胆にも思い切り蹴りを入れてくる。ステイルはギリギリの所で回避する。
そしてステイルが静江に対して攻めの姿勢に入る。太刀で静江を攻撃するが、肝心なところで避けられている。
そう思った時、静江が回し蹴りをステイルに放って来た。
ーーー
静江が放って来た回し蹴りを地面を転がりながら避ける。
ステイルは、目の前の女を見たことがある。だがどこで見たのか記憶が無い。ただあの戦い方は、日本の九重寺の九重流派の戦い方だとステイルはわかった。
静江「さっきの回し蹴りも避けるのね」
ステイル「貴女は、九重寺の流派の者なのか?」
静江「へぇー、貴方、日本の九重寺のことを知ってるんだ」
ステイル「まあね。九重寺に通う知り合いがいたものでね」
ステイルは、太刀をしまい静江と同じ素手に切り替えた。
静江「貴方も太刀だけじゃなく、格闘術も使えるんだ?」
静江はパンチとキックを組み合わせた格闘術を使ってステイルを翻弄する。ステイルもパンチとキックを組み合わせた格闘術を使い戦う。
ステイルも少しは九重寺の九重八雲から格闘術を指南されたことがある。藤林朱里や風間定晴が九重八雲の弟子でもあった。からである。
ステイル「衝撃波!!」
静江「甘いわね!」
静江は、ステイルの衝撃波を余裕でかわす。しかしステイルは次なる一手をうってでた。
ステイルは右手から、炎の刃を作り出し、静江に放った。静江は不意をつかれ、スカートの一部が斬られる。
ステイル「なるほど…先ほどの炎の刃も避けるわけか」
静江「中々、やるじゃないの」
静江も内心ビックリしている。自分の動きにここまでついてくる人間がいることに。おまけに炎の刃にてスカートの裾が斬られたこと。
ステイル「もう一度尋ねますが、貴女はここで何をしてるんですか?」
静江「質問を質問で返すようで悪いけど、貴方達こそ何者なの?帝国人では無さそうだけど日本人なの?」
ステイル「……!日本人では無い。俺達は…」
桜子「あたし達が何者だろうと関係ないでしょ?」
ステイルが何か言おうとしたら、桜子が口をはさんできた。どうやら桜子とクラレットが体勢を整えていた。
静江「…私の攻撃を受けて立ってられるなんて只者ではないわね」
クラレット「私は身体が丈夫なのが取り柄ですので」
静江はずっとステイルを見ている。静江はさっきのとっさにステイルが何を言おうとしたのか気になったのもあるが、昔自分を慕っていた男の子を思い出していた。
その男の子は、真由美がいつも連れていた。名前は“光井和也”という。彼は新ソヴィエト軍の北海道侵攻の際に死んだとされている。
【和也君は、新ソヴィエト軍の侵攻の際に死んだ】
真由美も静江も七草弘一の言葉を信用していなかった。和也は、侵攻の際の唯一の生き残りとして、言われていたのに突然死んだと言われて信用出来るわけが無い。
それは和也の妹であるほのか、妹分の雫も同じだった。両親や北山父から言われたとしても信用できなかった。
なんで大人達は、和也を殺したがっているのかわからなかった。
それは和也の頼みでもあった。
世間を黙らせるには、和也自身も死んだことにしなければ、納得しないだろうと。
だから七草弘一、雫の父親、九島烈に頼んでそうしてもらったのだ。
“光井和也は死んだ”と
この発表は、真由美やほのか、雫に深い傷を負わせることになってしまった。静江もしばらくは落ち込んでいたのだ。
だが目の前にいるのは、死んだとされている“光井和也”に似ている。戦っていて彼のくせや仕草が、死んだとされている彼に似ているのだ。だから静江は真実を知りたくなった。目の前の彼が光井和也なのかを。
静江「貴方、和也君じゃないの?」
ステイル「……!!!」
静江「やっぱり…和也君だね」
ステイル「ひ、人違いだ…“静江”さん」
ステイルはぽろっと静江の名前を言ってしまい苦笑いを浮かべる。桜子とクラレットも驚く。
静江「ほらっやっぱり和也君だね。貴方のその苦笑い、変わらないわね」
ステイル「ふっ、静江さんには敵わないな。桜子、クラレット、彼女は俺の知り合いだから、武器は収めて」
クラレット「ステイル卿の昔のお知り合いですか?」
ステイル「ああ、俺がまだ光井和也を名乗っていた頃のね」
桜子「知り合いなのはわかったけど、何故こんなところにいるのかしら?」
静江「ゴールド・マウンテン社が七草の支援企業なのよ」
静江は、ゴールド・マウンテン社を七草家が支援しており、ゴールド・マウンテン社が人身売買に関わっていて、日本国内から、多数の日本人を拉致にしていると情報を得ていた。
この事件を日本の警察やマスコミは動かずにいるため、真由美が独自に困っている人達のために行動を起こしているようだ。そのために静江を帝国へ派遣したことも話してくれた。
ステイル「なるほど、真由美らしいな」
静江「ええ、真由美はそういう子よ」
ステイル「それを聞いて安心したかな…」
静江「私は答えたわ。次は和也君、貴方が答える番。貴方は、死んだとされた後、どこに行ってたの?」
桜子「ステイルがどこに行こうが、貴女には関係ないでしょう?」
静江「私は貴女に聞いていないわ。和也君に聞いているのよ?」
クラレット「えーと、静江さんでしたっけ。ステイル卿のその事は、機密情報ですので、教えられません」
桜子とクラレットは、ステイルの秘密を知られまいとして断固拒否する。だがステイルは
ステイル「別に機密情報でもないです。俺が話したくなかったからだけですから。静江さんなら話しても良いかな。そのかわり、真由美や妹達には言わないでほしい。それだけを約束してくれませんか」
静江「真由美や貴方の妹さん達も、生きてる事がわかれば、きっと喜ぶと思うわ」
ステイル「…今の俺は、真由美やほのか、雫に会う資格なんか無い」
静江「どうして?会う資格がいるのよ?幼なじみと妹さん達でしょ?」
ステイル「俺は、“光井和也”という名前を捨てました。“弱かった自分”とおさらばしたんです。今の名前は、師匠の名前を受け継いだステイル・アレフガルドです。静江さんが七草家に所属してるように、俺も桜子もクラレットもみんな七耀教会・聖杯騎士団に所属しているんです」
静江「聖杯騎士団!?和也君が…!魔法が使えなかった貴方が?」
桜子「ステイルに対して失礼なことを言わないで下さい。魔法が使えない?それは貴女達の国、日本での話でしょ?」
クラレット「ステイル卿は、聖杯騎士団の中でも指折りの中の強さを持つ1人なんです。総長や副長にもその強さを認められてるんです!」
静江「…ごめんなさい、和也君を馬鹿にするつもりじゃないのよ。私は素直にすごいなと思っただけ。日本人で聖杯騎士団に入るなんて凄いことだなって…」
ステイル「俺は別に凄くはないよ。ただがむしゃらにやっただけだから…」
静江「がむしゃらにか…アハハ、和也はやっぱり和也君ね。例え名前を変えたとしても貴方は貴方よ。そこを覚えておいて。安心して真由美達には貴方が生きてるなんて言わないから」
ステイル「ありがとうございます。真由美達には、いずれ自分で会って説明します、だから」
静江「わかったわ」
この話を終えたステイル達と静江は、閉ざされた扉の中に入り、日本から拉致していた多数の日本人を保護に入る。ゴールド・マウンテン社と帝国支社は、タッグを組んで、人身売買を行っていた事実が明らかになった。
保護した日本人達は、七耀教会の名の元に日本に帰国させようとメルカパで待機していたアクアエルを呼び出した。だがステイルの計画に待ったをかけた通信が入る。