ーーーー紡績町パルム
1204・4・25・昼→夕方ー元締めの家にて。
昼から夕方に陽が傾き始めていた。15:00から始まった帝国政府代表と日本政府代表の会談は続いていた。
帝国の代表のミサキと日本の代表の深夏は互いに意見を述べ、一歩も譲歩するつもりはない。
当たり前だろう、互いに国のメンツを絡んでいるからだ。ここで弱みを見せれば、そこをつかれ、防戦一方に成りかねない可能性を秘めている。
互いに油断ならない相手だと、ミサキも深夏も感じ取った。
ただ絶対的な対立は避けたい両者でもある。カルバード共和国である。
帝国にしても日本にしても、東ゼムリアでカルバード共和国の影響力がこれ以上大きくなることは避けたいからだ。
そんな中、机を中心にして、ミサキと深夏が両端に座っている。
ミサキ「私達帝国も日本と対立するつもりはないわ」
深夏「それは私達日本だって同じです。ただ、帝国軍情報局の人間を日本国内で自由に捜査させる権利を与えることはできません!」
ミサキ「どうしてかしら?ゴールド・マウンテン社は日本企業でしょう?その企業が帝国国内で悪さしてるのだから、私達に捜査する権利はあるでしょ?」
深夏「な…何を仰られるんですか?日本は独立国家です。帝国軍情報局が捜査することは認められません!議会も野党も国民も納得できるわけがないです!」
ミサキ「まあ、それはそうでしょうね…。簡単に認められるわけがないわよね。日本の警察が信用できるのなら、捜査は日本側に任せることもできる。でもね」
ミサキは小悪魔な表情を浮かべながら深夏を見る。深夏も普通の顔してミサキを見据える。普通ならここで落ちるのだが、深夏は落ちなかった。リベールとの交渉や他の事で場数も踏んできている。だが深夏が相手にしてるのは、どんな相手よりも厄介な相手であるのは変わらない。
深夏「確かに日本の警察は、日本の高校生の拉致事件を捜査することはしなかった。現場の人間達は捜査をしようとしていたようです。ですが警察トップは、獅童や七草の圧力によって動かなかった」
ミサキ「それで、まともな捜査ができるのかしら?」
深夏「まともな捜査はできないでしょうね。七草家は国防軍以外には、かなりの影響力がありますから、きちんとした捜査はできません」
ミサキ「まあ、そう落ち込まないで。これは、ゴールド・マウンテン帝国支社の裏の資料よ」
ミサキは鞄から、ゴールド・マウンテン帝国支社の内部から押収した資料のレプリカ。本物は帝国政府代表、ギリアス・オズボーンの手元に送られている。そのレプリカ資料を深夏に見せる。
レプリカ資料の中身は、ゴールド・マウンテン帝国支社が密かに行っている事がかかれていた。
日本国から帝国への武器の密輸。運んできた武器を、帝国の貴族派、クロスベルのルヴァーチェ商会、カルバード共和国の移民反対派、猟兵団などに売りさばく。
ルバーチェ商会やD∴G教団から密かに得ていたグノーシスを日本国内に回すことや教団が行ってきた実験を引き継ぎ、日本の高校生や一般人達で実験していたと書かれている。
◯年◯月◯日、536回実験をし、生存者は0
帝国支社の支社長の佐藤が、金城にもっと実験体を増やすように通達している。
◯年◯月◯日、新たに金城より、125名の実験体を手に入れ、実験を始めた。
◯年◯月◯日、何度も実験をするが、一回とも成功はしなかった。
1204・3・30、125体の実験体を実験失敗し、再び金城に依頼を出す。
1204・4・20、新たに25名の新しい実験体を得た。金城には感謝しなければならない。だが妙な連中がかぎ回り始めている。気をつけて続けなければならない。
レプリカ資料は、ここまでしか書かれていた。深夏は、プルプルと震えている。おそらく資料の内容を見てのことだろう。
深夏「…これがゴールド・マウンテン帝国支社の内部資料なんですよね?」
ミサキ「そうね。それを破棄をしようとしていた連中をねじ伏せて得た資料だからね」
深夏「…なるほど」
ミサキ「深夏さん、これを踏まえての意見です…」
ミサキがその先を言おうとした時、深夏が口を開いた。
深夏「ミサキさん、貴女が帝国軍情報局の代表ならば構いません。国内の十師族の連中を何とか説き伏せます」
ミサキ「深夏さん、貴女」
深夏「日本国首相の桐条や内閣関係者からは、私に全権を任せられているので」
深夏は、リベールにて在リベール日本大使館にて、日本の首相である桐条と十師族の四葉、一条、五輪、九島、十文字の当主と通信会談を行っていて了承を得ている。十師族の五家が了承しているし、日本国首相の了承を得て、日本国全権を持った人物である。ミサキは
ミサキ「わかったわ深夏さん。そこは帝国政府、オズボーン宰相にも伝えるわ。それと、これは内密にだけど、金城潤矢の捜索を合同にやらないかしら?」
深夏「金城潤矢を捕まえるための合同捜索ですか」
ミサキ「そうね。私は金城を捕まえない限りは、また再び起こると思ってるの。高校生の拉致事件はね」
深夏「……」
ミサキ「難しいのはさっきも言ったとおりなんだけど、四葉家が黙認してくれれば、帝国政府は関与しないし、日本政府に対しても拝め無くすこともできるわ」
深夏「認めるのは簡単にはいかないです。金城潤矢には、七草家や獅童一派がいます。強引にやれば、カルバード共和国派の連中がさらに勢いつきます」
ミサキ「まあ、そうなるでしょうね。日本がカルバード側につけば、帝国が東ゼムリアに置けるものが全て失われてしまうわね」
ミサキはそう言ってため息をはいた。そして髪の毛をかきあげて、愚痴を喋りだした。
ミサキ「私、いじわるな事を言ってるわね。鉄血の子供達の立場でいる私だから。遊撃士やあの人の意思を継ぐものの立場なら、深夏さんの味方になるわ」
深夏「遊撃士はわかりますが、あの人の意思を継ぐものとは…なんでしょうか?」
深夏があの人の意思を継ぐものとは何なのか聞こうとした時、外から爆発音が聞こえてきた。それだけではない、銃撃や車両の音も聞こえてきた。
ミサキ「ば、爆発!?」
深夏「何が起きてるの!?」
深夏はとっさに自身の目がすぐ先にの未来を見せる。つまり未来予測と危険探知が両方が働いたのだ。
日本人移民街の方から車両がパルムの町に入ってきた。車両が停まると同時に武装した連中が降りてきて、銃撃を始めたのだ。
そして会談をしていた元締めの家にも襲撃犯が突入してきた。それも突然部屋の中に現れた。
襲撃犯「ミサキ、カミジョウ!死ね!」
深夏「させないわよ!!」
深夏は制服の懐から出した緋色のCADみたいな導力銃を襲撃犯に向けて撃つ。深夏が撃った弾丸は、襲撃犯の心臓を貫いていた。赤い鮮血がその辺りに飛び散った。
深夏「大丈夫ですか、ミサキさん!」
ミサキ「大丈夫よ、さすがは四葉のエージェント…四葉深夜の娘さんね」
深夏「はぁ~、先程から四葉がと仰っていましたものね。私が四葉深夜の娘だと見抜いて…ミサキさんには隠しとおせませんね」
深夏は苦笑いを浮かべながらミサキを見る。
外では銃撃戦が始まっているようだ。ミサキと深夏は外に出ようとしたが、再び襲撃犯が襲ってくる。ミサキと深夏は背中合わせになり
深夏「ミサキさんやれますね?」
ミサキ「深夏さん、貴女もね」
ミサキは、持ってきていた袋から何かを取り出す。それはクロスベル製のトンファーだった。トンファーのある部分に【ミサキ・K・バニングス】と書かれていた。
このトンファーは、ガイ・バニングスがミサキへのプレゼントだったのだ。ガイは、ミサキを正式に自分の妹として受け入れるつもりで、クロスベルの役所に届けるはずだった。ガイが死んでうやむやになっていたが、セシルから渡され、その事を聞かされたのだ。
ミサキは大粒の涙を流しながらありがとうと言ったのだ。
ミサキ「もう誰も悲しませない。ミサキ・K・バニングスがさせはしない!」
深夏「ええ!」
ミサキと深夏は、襲撃犯達との戦闘になった。
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帝国政府代表のミサキと日本国政府代表の深夏がパルムの元締めの家で会談を行っているとき、ユフィ達は宿酒場(白の小道亭)で待機していた。ユフィ、マキアス、スハルトは別々のテーブルについていた。
スハルト「まさかあの女が帝国政府代表とはな」
ユフィ「ミサキさんの事ですか?」
マキアス「ミサキさんはできる女性だからな。父さんも褒めていた」
スハルト「あの女…ミサキ・カミジョウを敵にしたくはないな」
ユフィ「どういうことですの?」
スハルト「色々あるんだよ、色々」
スハルトはそう言うと、自分の得物の手入れをし始めた。スハルトは、ミサキと何回か戦っているのだ。依頼主が敵対関係の時に戦っただけだが。いずれの戦いも決着はしなかった。
ユフィ「ミサキさんに託さないといけないなんてもどかしいですね」
スハルト「そうだな」
マキアス「仕方がないだろう。あいつも言っていたが、僕達は学生なんだ。何かができるわけでもない」
ユフィ「確かにそうですが」
宿酒場(白の小白亭)には、パルムの人達が集まって来ている。それもそのはずだろう、陽は西に傾き夕方になっているのだから。
リィン達が逃がした女の子は、ヴァンダール流の道場の方々に保護してもらっている。ミサキが万が一の事を考えてそうしたのだ。
スハルト「マキアス、レポートはなんて書くんだ?この一連の事を書くのか?」
マキアス「ぼ、僕に聞かれても困るんだが…。そもそも書いて良いのか?」
ユフィ「わたくしは、書きますわ。洗いざらい今回の事件を」
マキアス「ユフィ君、本気で書くつもりなのかい?」
スハルト「ユフィは、真面目だな」
ユフィは、今の帝国で何か起きているのか、自分達の目で感じたこと、思ったこと、考えること…それを養うための特別実習だと考えていた。ユフィの意気込みを聞いたマキアスは
マキアス「ユフィ君が書くなら僕も書こう」
スハルト「カッコつけが。まあそうだな。ユフィが書くなら俺も書くか」
マキアス「スハルト、君もそうじゃないのか?」
スハルト「はぁ~俺はムッツリメガネとは違うが?」
マキアス「だ、誰がムッツリだ!!」
スハルト「すぐ怒るところがそうじゃないか!」
ユフィ「マキアスさん、スハルトさん、静かにしてください。恥ずかしいですわ」
ユフィに怒られ、ケンカをやめるマキアスとスハルト。
そんな感じで時間は過ぎていく。しかしその静寂の時間は終わりを迎える。それは日本人移民街からパルムに複数の車両が入ってくる。そしてすぐに武装した連中が銃を撃ち出す。
逃げ惑うパルムの人達。夕方から夜に変わろうとしていた時間帯の襲撃である。近くの領邦軍の詰所は襲撃され、領邦軍の兵士達は絶命していた。
夕食の準備をしていたこともあり、住宅から火の手が上がる。
そして宿酒場(白の小白亭)にも襲撃犯達が襲撃してくる。
襲撃犯1「おとなしくしろ!!」
襲撃犯2「騒ぐと撃ち殺すぞ!」
スハルト「撃ち殺せるもんなら、やってみな!」
ユフィ「何なんですか、貴方方は!」
マキアス「貴方達はこんなことして許されるとも思っているのか!」
襲撃犯1「許すも許さないも関係ない。主の命でこの町を襲撃しているのだからな!」
襲撃犯2「そうだ、我々にはもう帰る場所もねえ!だったら最期に帝国と日本の間に亀裂を入れ戦乱を起こすようにするだけだ!」
マキアス「何だって!」
スハルト「主に…主って誰だ?日本人移民街のトップか!」
襲撃犯1「貴様らが知る必要がない!死ね!」
ユフィ「マキアスさん、スハルトさん!やるしかありませんわ!」
スハルト「それしか俺達の生きる道は無いだろうな!」
マキアス「ああ、当然だ。こうなることを見越して、みんなには2階の部屋に避難してもらって正解だったな」
スハルト「あれはユフィのおかげだな。これで、快き戦える!」
スハルトは己の武器を構える。ユフィも太刀を鞘から出して構える。マキアスも導力銃を持ち構える。
ユフィ「マキアスさん、スハルトさん、無茶だけはしないでください!」
マキアス「君もな、ユフィ君!」
スハルト「わかってるさ!」
ユフィ「トールズ士官学院特科クラスⅦ組B班、ユフィ組、これが最後の実習の課題のそう仕上げですわ!」
マキアス「了解!」
スハルト「了解!!」
ユフィ達と襲撃犯との戦闘が始まった。
ーーー
襲撃犯達がパルムを襲撃するきっかけになった出来事があった。
それは、日本国内で、とある週刊誌にゴールド・マウンテン社が裏で武器を不正に輸出していることや日本の高校生を拉致して生体実験をしている等がすっぱ抜かれていた。
金城達一派から、ゴールド・マウンテン社との契約を破棄され、七草家から協力体制を破棄された。最後の頼みの綱であった獅童一派からも
明智「ゴールド・マウンテン帝国支部の支部長の山中さん、あの人も金城達や七草家のように、関係を破棄したいってさ」
山中友晴、ゴールド・マウンテン帝国支部の支部長である。これまで出世街道を歩んできたが、今回の失態でエリート人生も終わりを迎える。
山中「この私の…私だけの失態だと仰るのですか?」
明智「お前の責任じゃなくて誰の責任だというのかい?」
山中「それは…無能の部下が研究体を逃がしたばかりに」
明智「無能って…部下を切り捨てるか…。あんたさ自分が無能だってこと気がつかないの?」
山中「え…?」
明智「お前の工場にいろんな連中が入り込んでるみたいだけど?それにも気がつかないなんて、それを無能と言わずしてなんと言うのか」
山中は驚いて監視カメラを見る。そこには、ステイル達が侵入している映像や、誰もいない工場などが映し出されている。
山中「な、何なんだこれは…」
明智「まあ、そういうことさ。わかる、お前は誰からも見捨てれたんだよ」
山中「……」
明智「さてと僕もこれにて引き上げるとするか」
山中「ま、待って下さい!明智さん!助けて下さい!」
山中は、明智にすがる思いで食らいつく。だが明智は山中を蹴り飛ばす。
明智「ええい、触るな!!」
山中「助けて下さい…お願いします」
明智はポケットから何かを取り出す。何かとは、グノーシスである。だがクロスベルでD∴G教団の生き残りであるヨアヒムが持っていた青や赤出はない。
黒色のグノーシスである。これは獅童一派がグノーシスを回収して、獅童一派の研究所で作らせたものである。効果がどんなものかはわからない代物である。
明智「それが最後の土産さ。最後のね。死にたくなければ使うといいさ。残念だけどあの人も協力体制は切るみたいだからさ」
山中「こ、これは……」
山中はこれを使えばどうなるかはわかる。日本人の高校生達を使い実験をしていたのだから。明智は何も言わずに薄ら笑いをしながら去っていく。
明智が去っていくと、1つの監視カメラがパルムのとある家の画像を映し出す。それはパルムの元締めの家の中であった。
そこには帝国代表のミサキと日本国代表の深夏が映し出された。
山中「こいつらは、ミサキ・カミジョウと司波深夏……なんでこいつらが……。そうかこいつらが…くくくっならば…」
何かのスイッチを押す。工場自体に非常ベルが鳴り出す。
非常ベルが鳴り響く中、山中は、残存している工場の人間と雇っていた猟兵団とヤクザを使い紡績町パルムを襲撃をすることを考える。
山中「ミサキ・カミジョウと司波深夏の首を手土産になんとか……」
山中は、残存する工場にいる者達に命令を下す。
山中「…今からパルムを襲撃する。七草も獅童も金城も私達を見捨てた。ならば最期にすることは、奴等を1人でも多く道連れにすることだ!」
最悪の事態がここに動き出した。