第1章ー3ー1話ー2週間が終わって。
第1章ー初めての特別実習編~闇は動き出す~編
ーー1204・4・17ー朝ー第3学生寮ー306号室ーユフィの部屋
激動の2週間が過ぎようとしている。その2週間の内には色々とあった。ユフィ達が第3学生寮に来た頃は、とても学生寮として、生活を出来るものではなかった。あのオリエンテーリングが終わった後にユフィ達は簡単な掃除を全員で疲れた身体にムチを打ってやっていたのだ。
それだけではなく、第3学生寮には、お風呂がなくユフィ達は、第2学生寮に行ってお風呂を借りなくてはならない始末だった。そして昨日やっと急ピッチで作れた第3学生寮のお風呂が完成したのだった。お風呂は男女にちゃんと分かれてるみたいだし、簡素の作りではなかった。
流石は、ユーシスやユフィがいる手前、本当の簡素のお風呂には出来なかったのだろう。まあ学院のトップは知っていても当然だろう。
そんな中ユフィは机の方へ行き、帝国時報を手に取り、気になる事がないか見てみる。
【クロスベル警備隊の一部、暴走しクロスベル市内を一時占拠】
【クロスベル警察特務支援課とクロスベル遊撃士支部の協力により解決される】
暴走の原因は、ウルスラ病院のヨアヒム・ギュンター教授が深く関与しており、クロスベル警察捜査一課は慎重に捜査を進めている。
マクダエル市長から、ロイド・バニングス、ミサキ・カミジョウの2人は表彰される。
帝国時報・クロスベルタイムズのページの真ん中にロイドと嬉しそうにとなりに写るミサキの姿が写真があった。
ユフィ「ミサキさん…良かったですね」
ユフィは、ミサキの事は知っている。オリビエが前に連れて来たことがあるのだ。
ミサキは、自分の素性をユフィにも話したのだ。包み隠さず全てを彼女に。
ユフィは、大粒の涙を流しながらミサキの話を聞いていた。そしてミサキの身体を抱き寄せてたのだ。力強く抱きしめたのだ。
ミサキは、自然と涙が零れた。強く抱きしめられたのは、ガイとオリビエに抱きしめられた以来だったからだ。
少しでもオリビエの力になってあげたいと心に決めていた。そこにユフィも抱きしめてくれたから、この兄妹は偉大だなと心に思った。
もちろんユフィも同じ気持ちであるのは変わらない。ミサキの力になってあげたいと思っている。ただ皇女である以上、表だって手助けが出来ないのが、歯痒いところでもある。
ユフィは、部屋の窓を開ける。するとトリスタの街を包むひんやりした風が部屋を吹き抜ける。
ユフィ「春先のひんやりした風が気持ちいいですわ」
今の彼女の姿は、下着姿である。シルクの白の花柄が入ったブラとブラと同じ模様のパンツである。
彼女の好みの色は白だが、別に色モノを持ってないわけない。青や緑、ピンク系なども持っているのだ。
それとミサキからのプレゼントで貰った赤と黒の下着もあるが一度も身に付けたことはない。
ユフィ「ふふっ、わたくしにもミサキさんみたいに、素晴らしい殿方と巡り会えるのでしょうか」
ユフィは、ルンルン気持ちで身支度を始めた。
ユフィ達が第3学生寮で、学院へ行く準備を整えている頃、学院の方ではサラ教官とヴァンダイク学院長と通信でオリヴァルト皇子が話していた。
トールズ士官学院ー学院長室
オリヴァルト「……ということだ。サラ教官、引き受けてくれるかい?」
サラ「皇子殿下からの提案ならば、断れないでしょう」
ヴァンダイク「突然の言い出しですまないのぉ、サラ教官」
サラ「ええ、あたしもうすうすとは感じてはいましたから」
サラ教官、オリヴァルト皇子、ヴァンダイク学院長が話しているのは、1ー1組 アンジェリナ・ログナー、1ー3組 スハルト・オルランド。
アンジェリナとスハルトは、入学試験の時は、ARCUS適性検査で数値が離れていたものの、ここ2週間でⅦ組と同じ数値まで伸ばしてきた。
今のクラスにいるより、Ⅶ組に編入させて伸ばした方が良いと、緊急リモート理事会が開かれ、全会一致で2人のⅦ組への編入が認められていた。
すでにアンジェリナ、スハルトの両名には、Ⅶ組編入の話が担任教官からされている。両名とも編入の意思を示したようだ。
ヴァンダイク「Ⅶ組運営が上手くいってるということで、日本のFLT社が出資を増額してくれるそうだ」
サラ「日本のFLT社がですか。まあARCUS開発に携わっていますが」
オリヴァルト「サラ教官の疑問は、何故FLT社が出資を増額してきたのかってとこかな?」
サラ「まあ、簡潔に言えばそうですね」
オリヴァルト「RF社の会長からの直々の連絡でね。4月から学院に対する新たな出資社が決まったって。他の理事からも了承を得たと言われてしまったからね」
帝国のRF社と日本のFLT社が提携を結んだ事は、業界人でもなければ一般的な人間には知られていない。
サラ「今年になってから、FLT社製の戦車や装甲車などが、正規軍に大量に導入されてますよね」
ヴァンダイク「そうじゃな。ワシの軍の古き知り合いからの話なんじゃが、どうやら帝国政府の意向らしいんじゃ」
オリヴァルト「革新派…オズボーン宰相の意向ってのが本当なんだろうがね」
ヴァンダイク「そうじゃな、今年になってから、領邦軍に対抗して軍拡を推進しているようじゃからな」
領邦軍とは、貴族の軍隊のようなものである。主に四大名門が保持する領邦軍は、正規軍の数には届かないが実力者が揃っていると言われている。その領邦軍も正規軍に対抗して、軍拡を行っている。
領邦軍の軍拡を唱えてるのは、四大名門の筆頭であるカイエン公である。
カイエン公は、革新派が推し進める政策を否定し古き帝国へ戻そうとしている。カイエン公を支持して集まる集団を貴族派と呼び、オズボーン宰相を筆頭に改革を推し進めている政策集団を改革派と世間一般では呼ばれいる。
その貴族派と改革派と対立が今年になって激しさを増している。その1つが軍拡である。そしてその2つめが軍拡を推し進めるために、四大名門は各地で税金を高くしている。
これが帝国の現状であり、個人的にどうこう出来るような状態でないことは、サラ、オリヴァルト、ヴァンダイクもわかっているのであった。
そのための光となりうるのがトールズ士官学院、【特科クラスⅦ組】である。
すると学院長のドアがノックされる音が聞こえてから男子生徒と女子生徒の声が聞こえてきた。
スハルト「1ー3組 スハルト・オルランド、入ります」
アンジェリナ「1ー1組 アンジェリナ・ログナー、入ります」
ヴァンダイク「スハルト君、アンジェリナ君、ようこそ学院長室へ。そして彼女が編入先のⅦ組の担任教官のサラ・バレスタイン教官じゃ」
サラ「学院長の紹介もあったけど、貴方達が編入するⅦ組の担任教官、サラ・バレスタインよ、これからよろしくね」
アンジェリナ「よろしくお願いしますね」
スハルト「よろしく」
達也とリィンは、いつもの朝練を西トリスタ街道までやっている。
たまにそこにユフィとラウラも加わることもあるが、今日は早めに切り上げていた。もちろん達也とリィンもだが。
サラ教官から、Ⅶ組はいつもより早く登校して頂戴と言われたためである。
達也とリィンとユフィとラウラも、何故Ⅶ組だけだと考えていたが、わからなかった。
もちろんユフィ達だけではなく、アリサ達も疑問がわかるわけでもなく、Ⅶ組はまだ誰も登校していない時間に登校することになる。
ーー1204・4・17・早朝・Ⅶ組教室
まだベッドで寝ていたいという雰囲気が漂うⅦ組内。ユフィ達は朝練で、とっくに目は覚めてるけどこんなに早く学院に来ることはないから戸惑いもある。するとサラ教官が教室へ入ってきた。
サラ「グッドモーニング!ほらっそこ!眠そうな顔をしない!」
サラから注意を受けたのは、マキアス、エリオット、ユーシス辺りである。まあ、マキアスのあくびで、エリオットとユーシスが巻添えをこうむった形になった。エリオットは笑い、ユーシスはしかめ面になった。マキアスは恥ずかしさをごまかすために
マキアス「一体何ですか!サラ教官?僕達をこんな早く呼び出して?」
エマ「そうですよ。朝方に急にⅦ組全員を起こして早く登校するようにって…。何かあったのでしょうか?」
サラ「まあ、学院にもあたしにも事情があるのよ。まあ、あんた達を呼び出したのは他でもない。Ⅶ組に新たな仲間が加わる事になったのよ。それも2人ね」
サラ教官の話を聞いて、Ⅶ組内が騒ぎ出す。入学式のオリエンテーションで11名で、Ⅶ組を発足させたから、人数は増えるとは考えてはいなかったのだ。サラ教官は、例外の説明を行う。
サラ「まあ、他のクラスでその2人は一つ飛び抜けているのよ。ARCUSの適性検査でもあなた達と変わらない数値になってるしね。話が長引いたわね、2人共入って来て」
サラ教官の呼び掛けで、Ⅶ組のクラスの中に2人の生徒が入ってきた。1人は男子生徒で、赤髪のロン毛の中肉中背の身体付きをしている。もう1人は女子生徒で髪の色は紫でお尻のあたりまである。2人共に元のクラスの制服を着ている。男子生徒は緑を。女子生徒は白の制服を。
男子生徒の姿を見るなり、ユフィとアリサが声を上げる。
ユフィ「貴方は…!?」
アリサ「3組のスハルト・オルランド!」
スハルト「ああ!白とシマの女か」
スハルトの言った事にマキアスとエリオットが反応する。
マキアス「白?」
エリオット「シマ?」
ユフィとアリサが顔を真っ赤にしながらマキアスやエリオットに
ユフィ「マ・キ・ア・スさん…!白とか忘れてくださいね?」
マキアス「ひぃ!?」
アリサ「エリオットもよ?」
エリオット「うんうん!」
マキアスは、ユフィの優しい笑顔の中の笑ってない目を見てビビり、アリサの笑顔の怒りにエリオットも聞かなかった事にした。
まずユフィは、Ⅶ組に向かってる途中にスハルトにスカートをめくられた。ただ幸いに彼以外には誰もいなかった。
アリサは、達也がいる図書館へ向かう途中にスカートをめくられた。しかしユフィの時と違い、他クラスの男子生徒が2人いたのだ。アリサはすぐにひっぱたいてやろうと追っかけたが追い付けなかった。
サラ「スハルト、あんたね!なに問題を起こしてるのよ!ったくそんなことをしてたからなのね。スハルトがⅦ組に加入するって聞いた3組の女子生徒達が嬉しそうにしてたのが、わかったわ」
スハルト「あいつらにしたら問題児が消えて、さぞや嬉しいだろうな」
アリサ「ただ、Ⅶ組に問題を移しただけでしょ?」
マキアス「…スハルトとか言ったな。Ⅶ組でそのような事をしないでもらおうか!」
スハルトははぁ~とため息をはいて
スハルト「なんだよ、ムッツリスケベメガネ。説教から間に合ってるぜ」
マキアス「な、な、な、ムッツリ…」
ユーシス「フッ」
マキアス「き、君、何がおかしいんだ?」
ユーシス「な~に、アイツの言葉が言い当てているなと感心しただけだ」
マキアス「なんだと…!」
リィン「やめないか、2人共!」
リィンに宥められて、渋々2人はケンカをやめた。サラもため息をはいて、スハルトに自己紹介を促した。
スハルト「えー一部の女子から紹介がありましたが、1ー3組から編入してきたした、スハルト・オルランドだ。まあ、よろしく!」
スハルトのせいで戸惑っていた女子生徒も自己紹介をやり始める。
アンジェリナ「1ー1組、貴族クラスから参りました、アンジェリナ・ログナーと申します。今後ともよろしくお願いしますね」
スハルトとは違い深々と頭を下げてお辞儀をしたアンジェリナ。そして達也の方を見てにこやかに微笑んだ。アリサはすぐに
アリサ「アンジェリナさん!」
アンジェリナ「アリサさん、よろしくですね。それと達也さんも」
達也「よろしく、リーナ」
達也とアリサとアンジェリナが知り合いなのは、RF社の本社があるルーレは、ログナー侯爵の足下である。アンジェリナはログナー侯爵の次女である。
つまりRF社関係で、ログナー侯爵家とは付き合いがあるというわけだが。
アンジェリナ「Ⅶ組に編入は少し不安でしたたけど、達也さんやアリサさんがいるのは正直助かりました」
達也「そうか?リーナなら貴族クラスでもやっていけると思ったが?」
アリサ「達也ったらもうー」
リィン「達也は俺と違って顔が広いな。まさかログナー侯爵家のお嬢様と知り合いだったとはな」
達也はリィンを見ながら
達也「あのなリィン、前にリーナの事は話したぞ。お前が忘れただけだろ?」
リィン「そうだっけ?」
達也「話したぞ」
リィンはあくまでも始めて聞いた表情をしている。達也はまたもやため息をはいた。するとスハルトがアンジェリナの背後に回り、スカートをめくり上げた。
達也やリィン、ユーシス、ガイウス、マキアス、エリオット、男性陣は、アンジェリナのオーシャンブルーのパンツを目撃することになる。
それと同時にアンジェリナの悲鳴も早朝の本校舎にこだましたのだった。
スハルトとアンジェリナの2人を新たに加えた特科クラスⅦ組。
スハルトという大問題児を抱えたⅦ組は、この先どうなっていくのか。
まだユフィ達にわかるハズはなかった。
嵐のような朝のホームルームが過ぎ去り、授業に入っていくのであった。
そして──この時間はトマス教官の帝国史である。《獅子戦役》についての授業である。ユフィは小さい頃から、皇帝である父親やオリビエからずっと聞いていた話しだから、復習みたいなものになってる。
トマス「…………ある1人の流浪の皇子が辺境の地立ち上がったのです。ドライケルス・ライゼ・アルノール、第73代エレボニア皇帝にして【獅子心皇帝】と呼ばれる中興の祖である」
ドライケルス軍は最初は少数だった。しかし帝国の各地で人心をつかみ、心ある有力者を得ることで、一大勢力になった。ユフィは大帝を尊敬している。小さいときは、大帝みたいになりたいと思っていたほどだ。それで父親やオリビエに、ユフィは、やんちゃだな~と言われていた。
トマス「そのドライケルス皇子が最初に挙兵した辺境の地ですが──達也・シュバルツァー君、その地がどこかご存知ですか?」
達也がトマス教官に指名された。達也が席から立ち上がり
達也「ノルド高原です。帝国北東部に広がる高原地帯です」
トマス「おお、知っていましたね。当時ドライケルス皇子は放浪の果てに異郷の地ノルドで遊牧民たちと暮らしていました。そして帝国本土での内戦を聞き遊牧民の協力を得て挙兵したのです」
ノルド高原。ガイウスの故郷である。ユフィは、ノルド高原に行ってみたいなと内心思っている。アルノール家とノルドの民は不思議な力で繋がっていると父親やオリビエに言われていた。ユフィもガイウスとは、不思議な縁で繋がってるような気がしたのだった。
今日も一通りの授業が終わって、そして放課後──
サラ「─お疲れ様。今日の授業も一通り終わりね。前にも伝えたと思うけど、明日は《自由行動日》になるわ。厳密に言うと休日じゃないけど。授業はないし、何をするのも生徒たちの自由に任せてるわ」
トールズ士官学院の教育精神は、生徒たちの自主性を育成するのが目的である。サラ教官の例は参考にならないなとⅦ組の誰もが思っていた。学院の施設は開放されてるようなので、部活動も自由行動日にやってるのだ。ユフィも何か部活動をやってみようかと思っていた。リベールで旅をしていた頃、クローゼの学校生活や部活動や生徒会の話を聞いていたから、興味があるのだ。
サラ「それと来週の水曜日に【実力テスト】があるから」
アリサ「それは一体どういう………?」
アリサが疑問に思ったことを聞いている。
サラ「ま、ちょっとした戦闘訓練の一貫ってところね。一応評価対象のテストだから体調には気をつけておきなさい。なまらない程度に身体を鍛えておくのもいいかかもね」
ユーシス「…フン面白い」
スハルト「めんどくせーことやるのかよ!」
エリオット「ううっ、何か嫌な予感がするな」
フィー「ふぁぁ………」
サラ教官の話しを聞いたユーシスは面白がり、スハルトは、めんどくさいと言い、エリオットは不安感を抱き、フィーは相変わらずのマイペースだ。サラ教官の話しはまだ続く。
サラ「そして─実技テストの後なんだけど改めて【Ⅶ組】ならではの重要なカリキュラムを説明するわ」
エマ「そ、それは……」
重要なカリキュラム。一体何を【Ⅶ組】させる気だとみんなが思っていた。ただ何が来ようが不安はないとユフィや達也は思っていた。
サラ「ま、そう言う意味でも明日の自由行動日は、有意義に過ごすことをお勧めするわ。HRは以上…副委員長、あいさつして」
マキアス「は、はい。起立─礼」
Ⅶ組の面々は、部活動見学に行くようだ。ユフィもアリサ達と見学しに行くことにした。身体を動かす部活動を選ぶことを考えていた。ユフィは、パンフレットで部活動紹介を見たときに大方決めていた。水泳部に入部することを。