1ー1話ーミサキ・カミジョウ
ユフィ達が、元凶へかけて行った同時刻、東の方では、クロスベル自治州クロスベル市のとある喫茶店でミサキは、とある人物とコーヒーを飲んでいた。
ミサキは、本来なら紅茶派なのだが、何故コーヒーの飲んでいるのか。
それは、彼女を救ってくれた人物
【ガイ・バニングス】
彼女を救ったガイが、ミサキに最初にコーヒーを奢ってたのが始まりだった。
ミサキにとって、コーヒーの味は初恋の味。
でも同時に失恋の味でもあるのだ。ガイには、婚約者のセシルがいたからだ。
ミサキは、ガイさんが幸せになってくれるのを陰から見守るつもりで、遊撃士になったのだ。
遊撃士になって、2度だけガイとコンビを組んだ事がある。
主にD∴G教団事件であるが。
ミサキは、ガイやセルゲイ達、他の遊撃士、各国の協力者達と協力して、教団のロッジを片っ端に潰してきた。二度と自分と同じ運命を辿る子達を生まないためにと。
そんな中、救い出されたのが、ティオである。
ミサキは、ティオを救い出すとその体を抱きしめて泣いていた。
さらわれた我が子を抱きしめる家のように。
かつて、彼女がガイに抱きしめられたように。
D∴G教団事件からしばらく経って、遊撃士クロスベル支部から訃報が飛び込んできた。
【ガイ・バニングス】の死亡の訃報が。
訃報を聞いたのは、遊撃士の仕事の終わり、レミフェミアからの飛行船の中だった。彼女はいち早くクロスベルへ降り立ち、クロスベル警察、遺体安置場所へ急いだ。
急いだ先には、泣き崩れるセシルと弟のロイドがいた。他にセルゲイ、ダドリー、そして同僚のアリオスがいた。
遺体安置場所に入ったミサキは、アリオスに詰め寄った。それも怒りに満ちた表情で
ミサキ「…貴方も一緒にいたんでしょ!!」
アリオス「ミサキ、済まない。自分が駆けつけた時には、もう……」
アリオスは申し訳なさそうに下を向いた。セシルさんは、ずっと泣いていて、弟のロイド君はセシルさんの横で泣いていた。
ミサキ「…駆けつけたって…ガイさんと分かれて行動をしてたの?」
アリオス「ああ、ガイは何者かに呼び出されたようだった」
アリオスは、1枚の濡れた紙切れをミサキに見せた。
【クロスベル警察所属、ガイ・バニングス、話がある。オルキスタワー建設予定地まで来てもらおうか……】
それ以上濡れていて文字が読めない。
ミサキ「これって……呼び出し……」
ダドリー「しかし、バニングスは何故1人で行ったんだ?」
ミサキは、ちょっと考え事をしていた。ガイが相手していたのは、小物の悪党ばかりではない。クロスベルに住み着く、マフィア、カルバードから入り込んできたマフィアである【黒月】、帝国派議員、共和国議員、その他…とも相手にしていた。少なくともこいつらにもガイを殺害する動機もある。
だがこいつらが、ガイ1人を殺すためにこんなことをするだろうか?
こんな呼び出し状を使ってまで?
ガイ本人が1人でノコノコと誰にも告げずに行くだろうか。
ミサキ「……いや、いかない…」
ミサキが突然そんなことをしゃべったのでセルゲイが
セルゲイ「どうした、ミサキ?」
ミサキ「セルゲイさん、ちょっと…」
ミサキは、セルゲイさんに外で話そうと促した。ダドリーとアリオスも一緒に遺体安置場所から出た。
遺体安置場所から、階段の踊り場までやって来て、人がいないか確認してから話し出した。
ミサキ「…ガイさんが何故1人で行ったのか…そこが引っ掛かるんです」
ダドリー「1人で来いと呼び出されたからじゃないのか?」
ミサキ「確かに1人で来いと書かれてます。でも本当に1人で行きますか、ダドリーさん?私なら絶対に行きません。1人で行くとしても、みんなに話します」
ダドリー「確かに、カミジョウの言うとおりだな…バニングスのヤツ何故…」
ミサキ「アリオスさん、何か心当たりあるんですか?さっきから黙ってますけど?」
ミサキは、アリオスが一言も話さないので、何か知ってるのではないかと話しかけたのだ。
アリオス「ミサキ、すまない。突然の事で驚いている」
アリオスは、窓の外の空を見ながらそう言った。ミサキもそれ以上は追及はしなかった。アリオスも奥さんを失い娘の視力を失わせてしまった事を悔いてるのを知ってるからだ。そして相棒のガイまで。
クロスベルの理不尽さと、人一倍戦ってるのも知っている。それがアリオスの強さである。
でもミサキは、ミサキのやり方でやる決意をした。
初恋の相手、ガイ・バニングスを殺した事。
姉のように慕っていたセシルの婚約者を殺した事。
弟のように見ていたロイドの兄を殺した事。
全部この手で捕まえてやると、心の炎を燃え上がらせた。
ミサキは、セルゲイやダドリーに一礼をするとクロスベル警察署から出た。
そしてどこへともなく走り出す。走り出した彼女の頬には大粒の涙が零れ落ちていた。
ミサキは、遺体安置場所では、涙を見せることはなかった。歯を食いしばって涙が出るのを押さえ込んでいた。
誰にも見せたくはなかった。自分自身が泣いている姿を。
泣いてる姿は、ガイ・バニングスしにしか見せてない。
ミサキは、ひたすら走る。クロスベル市内から、マインツ方面の山を走る。何も考えずに。
頭に浮かんでくるのは、ガイと冒険した時の思い出が走馬灯のように流れてくる。
D∴G教団のロッジから、ガイによって救われたあのときから、ミサキはガイの背中を追って強くもなったし、遊撃士にもなった。
例え恋が成就しなくても、仕事上のパートナーにはなり得ると信じて頑張ってきた。ガイと一緒にクロスベルを守っていきたかった。
それが、ガイの死によってミサキの信念、存在意義が揺らぎ始めていた。
ミサキの心に、【復讐】の炎が灯り始めていた。
ガイ・バニングスの死亡事件から、しばらくして裏通りのルバーチェ商会のある建物の玄関先で戦闘が起こっていた。
ミサキとルバーチェ商会の若頭のガルシアがぶつかりあっていた。
2人の戦闘を周りで見ているルバーチェ商会の構成員。そのほとんどは傷を負っていた。ミサキの襲撃によって付けられた傷だ。ミサキは怒りに任せて、ルバーチェ商会を襲撃していた。ガイを殺したと思い込んで。
戦いは五分五分から徐々にガルシアが押し始めていた。
ガルシア「おらおらっ!どうした?さっきまでの勢いは?」
ガルシアは、蹴りの連続攻撃を加える。ミサキはガードしているが、いつ破られてもおかしくない。そして重い一撃をミサキの身体に加えた。
ミサキ「……かぁっ!!」
ミサキの身体は、数メートルも吹き飛ばされ荷物置き場に突っ込んだ。
「ミサキ・カミジョウ!てめえ…怒りの感情で何を見失っている?てめえの冷静の判断なら、こんなバカをするわけねーよな。ガイ・バニングスは、確かに厄介な人物だった…てめえもそうだが…。厄介だからと言って、殺して何の得がある?捜査官1人殺して、状況が変わると思うか?」
ガルシアは、荷物置き場に突っ込んだミサキに言い放った。
ルバーチェ商会にとってガイ・バニングスを殺して何の得があると。
ミサキも冷静な判断が出来ていた時には、そう判断していた。
だが復讐の気持ちにかられ、冷静な判断すら出来なくなっていたのだ。
ルバーチェ商会の構成員達がガルシアとヒソヒソと話している。
ガルシア「ほっとけ…それと後でルバーチェ商会の医者がくる手配になっている。怪我を負ったやつは、見てもらえ」
ガルシアとルバーチェ商会の構成員は、ルバーチェ商会の屋敷に入っていった。
ミサキはそのまま気絶していた。
そしていつしかクロスベルに雨が降ってきた。もちろん気絶していたミサキがいる裏通りにも雨が降っていた。
雨にうたれたことにより、目が覚めたミサキ。
ミサキ「……いたっ…」
ミサキの痛みは、ガルシアとの戦闘によるものだ。怒りに任せて戦った結果がこれだ。ガイに教えられた事の1つに、【怒りで我を忘れて戦うな。常に冷静になおかつ熱くなれ】
ミサキ「…アハハ…ガイさんの言い付け…破っちゃった………」
傷だらけになった手の甲や手のひら。両足もあちらこちらから擦り傷、切傷があり血が滲み出ている。服もあちらこちらに破けており、ミサキの白い肌が見えている。
おまけに雨に濡れて、中の白いブラまで透けて見えていた。
ミサキ「…さっさと…こんなところから出ないと…」
ミサキは痛みを堪えながら、ルバーチェ商会の屋敷がある場所から裏通りを抜けて、西通りの自分のアパートまで帰った。
そしてしばらく時が経った。ミサキは、ルバーチェ商会からクロスベル遊撃士支部に苦情の連絡があると思っていたが、何もなかった。襲撃をかけたのに、何もないのはおかしいと思っていた。
ミサキは、ルバーチェ商会がクロスベル遊撃士支部に何もしないはずがないと思っていた。支部の受付のミシェルにも聞いてみたが、抗議の文句は入ってないと言われた。
ミサキ「……ルバーチェ商会…ガルシア…アイツは…私を…いつでも殺れる…そう思って…!」
いつでもお前のような輩は殺せる。そんな事を言われたような気がしたミサキは、腹が立ったが、前みたいに暴走はしなかった。
ミサキは、あのときぼろぼろになって帰った後に、様子を見にきたセシルによって看病されていたのだ。
セシルは、ミサキを本当の妹のように可愛がってきたのだ。ガイが助けて連れ帰ってきた時からずっと。
ガイを失って悲しいはずなのに、ミサキに笑顔を見せ続けていた。
それがミサキにはつらかった。胸がはち切れそうになるほどつらかった。罵倒される方がまだ楽だと思うこともあった。それでも前を向くことを決めたミサキだった。
そしてまた月日が流れ、ガイのを殺した犯人捜索が難航する中、1枚の手紙がミサキ宛てに届いた。
手紙の送り主は、帝国政府代表ギリアス・オズボーンと書かれていた。
ミサキ「帝国の宰相がなんで私に?」
ミサキは、恐る恐る手紙を取り出して、読み始める。
オズボーン【ミサキ・カミジョウ殿。突然の手紙にさぞ驚かれてるだろう。クロスベルで起きた貴殿の不幸な事件の事も把握している…】
ミサキ「…ギリアス・オズボーン…そんなことまで…嗅ぎ回って!」
オズボーン【貴殿の大切な人間の殺した犯人の捜索は難航しているようだ。現状のクロスベル警察では、一生かかっても解決はできないだろう】
ミサキ「………」
クロスベルの現状。帝国派、共和国派、地元のマフィアに牛耳られてるクロスベル警察では、犯人を特定するのは難しい。いやギリアス・オズボーンが言ってることが正しく聞こえてくるミサキであった。
オズボーン【貴殿が私の元に来るなら、君の大切な人間を殺した犯人を特定、逮捕することを協力することを誓おう】
ミサキは、静かに深呼吸をしてそっと決意した。クロスベルを出て帝国へ行くことを。セシルには置き手紙を書いた。
前にガイに言われたことがある。
ガイ【ミサキ、一度でいいからクロスベルを外から眺めるのも良いぞ】
ミサキ「外から眺める?」
ガイ【そうだ。クロスベルの中にいたらわからないことも有るが、ふと外から眺めるんだ。するとわからなかった事がわかることもあるんだ】
ミサキ「ガイさんもやったの?」
ガイ【アハハ…そうだな。俺はいつも壁にぶつかってばかりだが、セシルやロイド、そしてミサキがいるこのクロスベルが好きだし愛してる。だから何度くじけそうになっても立ち上がることができるのさ】
ガイの事を思い出しながら、涙を流しながら
ミサキ「…ガイさん、私、帝国に行くわ。帝国からクロスベルの現状を見てみる。そしてクロスベルをいずれ変えて見せるわ」
そうしてミサキは、帝国のギリアス・オズボーンを訪ねて、鉄血の子供達の仲間入りした。コードネームはクイーン。
鉄血の子供達入りした後も遊撃士の仕事はやっていた。あくまでもミサキは隠密的な役割りであり、遊撃士協会を通じて情報収集をしやすいのもあった。その後、セシルから一通の手紙が来て、ガイの弟のロイドはカルバード共和国の親戚に預けられたことをミサキは知った。
そして再びクロスベル入りするのは、約3年ぶりだった。
ギリアス・オズボーンの命で、レクターとカップルのふりをして、黒の競売会が行われるミシュラムのハルトマン議長宅へ潜入するのがミッションだった。
そんな中、くしくも同じように潜入する男女がいた。ミサキは、その男性が誰かの面影が重なった。すぐにわかった。
ガイ・バニングスの弟のロイド・バニングスだと。
クロスベル警察の中に特務支援課が出来ていたのは、遊撃士や帝国軍情報局から情報を得ていた。
クロスベル警察にガイの肝いりの部署が出来た事は誇りに思っていた。
ロイド達が謎の少女をかばいながら、ルバーチェ商会の構成員やガルシアから逃げている時、ミサキはロイド達を援護した。レクターの静止を無視をして。
ミサキ「…セルゲイさん、ロイド君!ここは私に任せて行ってください!」
セルゲイ「ミサキ、お前…」
エリィ「ミサキさん、貴女は一体…?」
ミサキ「私は、鉄血の子供達でもあり、遊撃士であり、ガイ・バニングスの意志を継ぐ者でもあるわ」
ロイド「やはり、あのミサキさんだったんだね…」
ミサキ「…ロイド君、カッコよくなったわね…。何だかガイさんがいるようだわ」
ロイド「アハハ…兄貴にはまだまだ追い付けないけどね」
話しているうちにルバーチェ商会の構成員がどんどん集まってくる。
ミサキ「セルゲイさん、ロイド君達を頼みます!」
セルゲイ「そっちこそな、ミサキ」
セルゲイが操縦するボートは、ミシュラムから離れていく。それを見届けた後ミサキは、
ミサキ「ガルシアさん、お久しぶりですね」
ガルシア「ミサキ・カミジョウ…。へぇーあの時よりもマシな表情になってんじゃねーか?」
ミサキ「それはどうも…。私にも色々ありましたからね」
ミサキはそっとガルシアを見据えて構える。ガルシアもまたミサキを見据えて構える。
そして両者は激しく激突した。
ボートで逃げるロイド達からも閃光の光が見えた。
ロイド「ミサキさん!!」
ティオ「ミサキさん!」
セルゲイ「ミサキ、お前ってやつは…」
そして数日が経ち、ルバーチェ商会のことや黒の競売会などが表に出ることになった。ルバーチェ商会は、人身売買までやっていると烙印を押されて、急速に勢いが衰えていく。
ミサキは、レクターからなんで手を貸したかは追及しなかった。オズボーンから、クロスベルでの件では、ミサキの好きにさせてやれと言われていたからだ。
ミサキは、あの日ルバーチェ商会の若頭のガルシアを倒したのだった。3年前は倒され苦汁を飲まされたが、今度は倒した。あの後、クロスベル市内に戻って高級ホテル内にいたのだった。
クロスベルの高級ホテルの一室にて。
レクター「気がすんだのか?」
ミサキ「あの時の借りを返しただけ。根本的なことは何もできてないわ」
レクター「そうか…」
そしてレクターは一度クロスベルから、帝国へ戻りミサキはクロスベルに滞在することにした。気になることが数個あったからである。
そして七耀暦1204・3・31・昼間
ミサキは、ロイドと共に喫茶店でコーヒーを飲んでいた。ミサキは資料をロイドに渡す。
ミサキ「ロイド君、セルゲイさんから頼まれていたやつね」
ロイド「セルゲイ課長が?」
ミサキが調べていたのは、近頃発生している暴走事件のことについての資料である。
ミサキ「セルゲイ課長から依頼が来てね。まあ、私自身も気になってたから調べてたの」
ロイド「…ミサキさん…」
ミサキ「なんで、鉄血の子供達である私が貴方達に協力的かって気になってるの?」
ロイド「…それは……」
ミサキ「私はクロスベルには、鉄血の子供達は持ち込まないようにしてるの。クロスベルでは、ガイ・バニングスの意志を継ぐ者でいたいから…」
ミサキは、前を見据えてロイドと話している。それがロイドには真っ直ぐ眩しく見える。
ロイド「ミサキさんの中では、兄貴が生きてるんだな」
ミサキ「…ロイド君、君の中にもガイさんは生きてるわ」
ロイド「どうでしょうね。それと俺の事はロイドでいいですよ」
ミサキ「じゃあ、私の事もミサキって呼んでね」
ロイド「わかりましたよ、ミサキ」
ミサキ「うん、よろしい…あっ」
ミサキはハンカチをテーブルの下に落としてしまった。ロイドがすぐに
ロイド「俺が拾いますよ」
ロイドはすぐにハンカチを手に取り何気にミサキの方を見た。するとミサキは、足を開いてパンツを見せていた。ロイドは、テーブルに頭をぶつけて
ロイド「み、ミサキ、何してるんですか?」
ミサキ「何って何?」
ミサキは小悪魔的な笑みでロイドを見ていた。3年間で色々と成長していったミサキ。
ロイドもドキドキしていた。ミサキの白のパンツをちょっと見ただけなのに、その光景が目に焼き付いていたのだ。
そんな日常が、ユフィ達オリエンテーションが行われている時にクロスベルではあったのだった。