ーー1204・4・24ー白亜の旧都セントアークー夜
ステイル達と通信を終えたミサキは、クロードを連れて、セントアークの鉄道憲兵隊の支部にいた。帝都の帝都憲兵隊本部や帝国軍情報局へ対しての報告もあったからである。
パルムの東にある日本人移民街からの逃走犯は、見事ミサキとクロードの連携プレイで確保することが出来た。
だが問題がある。確保したのは良いが、とても取り調べができる状態ではない。そのまま、帝国からクロスベルのウルスラ病院へ搬送したのだ。クロスベルは、レミフェミアや日本と医療協力協定を結んでおり、最新の医療システムが拡充してるのだ。それに先のクロスベル騒乱の件で、ウルスラ病院はフル活動でグノーシス患者の治療に当たったのだ。夜に染まっていて、明かりによって照らしている姿を見ながらミサキは話し出す。
ミサキ「さて、どうしたものかな…?」
クロード「そのまま、報告すればいいのでは?」
ミサキ「うーん、そうもいかないのよ…。あれは間違いなく、グノーシスを射たれてるわね」
クロード「グノーシス…ミサキ先輩がさっき、話していた事ですね。あのD∴G教団が作り出したという…悪魔の薬だとか」
ミサキ「そうね、言葉通りの悪魔の薬…あんな薬を作り出すために…何人も子供が犠牲になった…」
ミサキは思わず握りこぶしを作っていた。せっかくヨアヒム・ギュンターを倒し、教団の残骸その物を葬り去ったと思ったら、今度は日本の方にグノーシスが渡り改良されているということになる。
ミサキ「…クロスベルの誰かが、日本の金城達に渡したのは明白…。だけど誰かまではわからないし……」
クロード「日本人移民街にある工場を査察するという目的で踏み込めば…」
ミサキ「無理でしょうね…確たる証拠も無いまま、踏み込めば外交問題になるわね…その辺りは…帝国政府も…あの人も黙認してる可能性もあるか」
クロード「人身売買をですか…!?」
ミサキ「貴族派達が金城達と繋がりがあるのは、前々の調査でわかってたけど、完全に貴族派を潰すために、わざとやらせてる可能性はある」
クロード「でもそれはリスクが高いのでは?下手をすれば、国際的な批判は避けられないのでは?」
ミサキ「まあ、その辺りの計算は、クレアが導き出した答えでやってるんでしょうけど」
クレア・リーヴェルト。出向先の鉄道憲兵隊のクロードの直属の上司であり、階級は大尉である。ミサキと同じく鉄血の子供達の一員。導力演算機並みの処理能力を持っている。ミサキは、クレアを姉的存在で見ているし、クレアもミサキを妹のように接しているのだ。
クロード「へぇーちょっとわからない世界ですね」
ミサキ「まあ、そうだよね。普通の人からはわからないでしょうけど…」
クロード「それだけすごいって事がわかりますよ、クレア大尉もミサキ先輩も」
ミサキ「クレアさんはともかく私はそんなに凄くないから」
クロード「ミサキ先輩も凄いですから」
ミサキ「…褒めても何もでないわよ?」
クロード「別に褒めてもらうつもりで言ってませんよ」
クロードはそう言うと、鉄道憲兵隊本部に報告する資料を作り始めた。
ミサキは、ステイルからの情報と自分の得た情報をまとめあげていく。
帝国南部のパルム近郊の日本人移民街の工場団地エリアのどこかに人身売買のためのアジトがあること。人身売買とは別に日本製の武器をどこかに売りさばく拠点があること。
それが帝国のパルム近郊の日本人移民街か西トウキョウ街か。それは明日から調べることにしている。
クロードは、西トウキョウ街をミサキは日本人移民街を調べることにしている。西トウキョウ街なら鉄道憲兵隊も介入できるが、東の日本人移民街は鉄道が来ていないため、鉄道憲兵隊が介入できない。だからミサキが自ら調べに行くことにしているのだ。
クロード「ミサキ先輩、本当に1人で大丈夫ですか?」
ミサキ「あらっ心配してくれるの?」
クロード「そりゃあ、心配しますよ。日本人移民街の工場エリアって治安が悪いって評判ですから。領邦軍だって手を焼いてるんですよ。心配するなって言う方が無理ですよ」
ミサキ「まあ、そうみたいね」
クロードが言ってるのは、日本人移民街の自警団のことを言ってるのだ。日本人移民街は、サザーランド州に属しているが、自治が認められているのだ。あくまでもパルムの東にある日本人移民街だけだ。西トウキョウ街は、サザーランド州にちゃんと属している。
ミサキ「まあ、何とかなるでしょう」
クロード「何とかって…」
ミサキとクロードがそんな話をしていると、帝国軍情報局と鉄道憲兵隊からの通信が入る。
それは帝国軍情報局と鉄道憲兵隊のクレアが、ミサキ達の情報を元にして導き出されたのは、
西トウキョウ街の【ウエスト・ジャパン商会】と日本人移民街の【ゴールド・マウンテン】という企業が、裏では人身売買や武器不正輸入や輸出に関与していることがわかった。
クレア自身もケルディックでの問題で直接出向いているようだ。ケルディックでは、パルムのように日本と帝国の問題ではなく、帝国自身の問題である。
ミサキ「クレアのおかけで、的を絞れたし、日本人移民街の【ゴールド・マウンテン】という企業か」
クロード「西トウキョウ街の【ウエスト・ジャパン】…確かこの企業は、食料品を扱う企業だったはず…」
ミサキ「まずは、現地に行ってみないと…クロード君、君も気をつけて」
クロード「本当に大丈夫なんですか?」
ミサキ「なーに、さっきちゃんと助っ人は頼んだでしょ?」
クロード「……え!?まさか何でも屋の彼らに?」
ミサキ「ご明察。だから安心してちょうだいね」
クロード「わかりました。あのステイルさんなら、安心できます」
ミサキ「へぇー、クロード君もステイルさんと仕事したことあったっけ?」
クロード「ええ、何度か。若いのに…なんと言うか…すごいなって」
ミサキはクスクス笑いだした。
クロード「…笑うところですか?」
ミサキ「ううん、何でもないわ…。さてと夜の内に侵入しないとね」
クロード「わかってますよ…、それじゃあ俺は鉄道憲兵隊の何人かと西トウキョウ街に向かいます。ミサキ先輩も気をつけて」
クロードはそう言うと、会議室から出ていった。ミサキはそれを見て
ミサキ「フフっ、クロード君、貴方も和也さんと同じってことよ。根っこの部分は、“妹さんを守ること”だからよ…だから…羨ましくも思えてくるのよ…」
ミサキは、ちょっと前にキーアに言われたセリフを思い出した。
キーア「ミサキも、キーアの大切な家族だよ!」
ミサキ「家族か…」
ミサキは一度深呼吸をして、落ち着かせた。
ミサキ「…センチメンタルに浸る場合じゃなかったわね。今は与えれた任務を遂行するだけ」
ミサキはそう言うと、会議室から出ていく。目的はもちろんパルムの東にある日本人移民街だ。そこの【ゴールド・マウンテン】という企業を調べに行くのだった。