【凍結】帝国の緋き皇女の軌跡~七の絆と奇蹟~   作:龍造寺

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第1章2話です。


第1章ー4ー2話ー4月の夕暮れ。

Ⅶ組の教室からいち早く出たスハルトは、本校舎の屋上に来ていた。そして北の空を眺めていた。

 

スハルト「フッ、変態大魔王か…。今の俺にピッタリの徒名じゃないか」

 

スハルトは、自分の懐から何かを取り出す。それは家族のように写っているスハルトとその他の人間達。そして小言で喋り出す。

 

スハルト「…団長…副団長…団のみんな、なんで俺も一緒に逝かせてくれなかったんですか…何故俺だけ、生かせたんですか!俺には……この世に未練なんかもうないんです。赤い星座を出てから行くとこがなかった俺を拾ってくれた団長と団と最期まで共に…」

 

スハルトは崩れ去るように屋上の床に座り込んだ。

 

スハルト「…赤い星座の連隊長時代には、大切な恋人のソフィアを亡くし…虹の旅団時代では…団長、副団長、団のみんなを失ってしまった…俺は…死神だな…。ははっ、死神は、ランディ兄貴の徒名だったな……」

 

ソフィア・クロサバード。スハルトの赤い星座の連隊長時代の恋人。スハルトは猟兵、ソフィアは、遊撃士という異色のカップルであった。

 

初めて出会ったのは、どこかの戦場の近くであった。

 

戦場に迷いこんできた民間人を守るために、スハルトは身を挺して守り、崖の下に落ちたが運良く川に落ちた。

 

川で流されているスハルトを助けたのが、後々恋人になるソフィアだ。

 

 

ここまで語ったが、これ以上は本人の口から語られる日がくるだろう。そのときまで待つとしようか。

 

屋上の片隅で、スハルトが座り込んで泣いているところに、誰かがやってきた。スハルトはすぐに写真を懐になおして、平常心を取り戻した。

 

??「うーん、先客がいたのか?」

 

スハルト「あ、あんたは、2年の変態大魔王先輩じゃないですか」

 

??「誰が変態大魔王先輩か!誰だそんな噂を流してるヤツは……って変態大魔王後輩じゃないかよ」

 

スハルト「変態大魔王後輩ですが、先輩は何の用で屋上に?」

 

??「それはだな、屋上に女子がいないからなってな。夕方の屋上って北風が強くなってな…それを知らずに屋上に出てくる女子のスカートがまい上って…な!」

 

スハルト「なるほど…」

 

スハルトはこの先輩の話を聞いていた。それとなんだか自分と同じような匂いがするなとも感じた。

 

??「おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名前はクロウ・アームブラストだ」

 

スハルト「俺は、スハルト・オルランド。1ー3からⅦ組へ編入した」

 

クロウ「お前もか~」

 

クロウを急にニヤニヤとしながらスハルトに

 

スハルト「な、何だよ、クロウ先輩?」

 

クロウ「Ⅶ組って、女子のレベルみんな高いだろ。他のクラスの連中が羨ましがってたぜ」

 

スハルト「確かにレベルは高いと思うぜ。だがそれだけと思うが?」

 

クロウは呆れた表情をしながらスハルトを見る。お前は何もわかってはいないと。これだからおこちゃまは困る的なことを言われる。

 

クロウ「はぁ~それだからおこちゃまなんだよ」

 

スハルト「クロウ先輩、あんたはどう思ってんだよ?」

 

クロウ「俺か…。Ⅶ組の女子は他のクラスよりもレベルは高いと思うがな。貧乳から巨乳、色とりどりの下着…」

 

スハルト「…あんたもスカートめくりとかしてんのかよ?」

 

クロウ「誰がそんな幼稚な事をするかよ!」

 

スハルト「悪かったな、幼稚でよ…」

 

クロウは馴れ馴れしくスハルトと肩を組み

 

クロウ「そうイジけんなよ。そんなお前にとっておきのネタを教えてやるからよ。とにかく耳貸せ」

 

スハルト「な、なんだよ」

 

スハルトはおとなしくクロウの言うことを聞いた。それは本校舎階段下のあるエリアやトールズ士官学院を東西に流れる川の橋のところ、学生会館の階段下など教えた。

 

スハルト「なるほどね……」

 

クロウ「フッ、これが先輩ってやつさ。ところで、お前のクラスに金髪の女子がいるだろ?」

 

スハルト「金髪?アリサの事か?それともユフィの事か?」

 

クロウ「あっ、そのユフィって女子の方だ」

 

スハルト「ふーん、名前はユフィ・レンハイム。平民出身らしいけど、雰囲気とかしゃべり方がどうも貴族のような感じがしないでもないんだが」

 

クロウ「なるほどな。あの子はユフィっていうのか、そうか、そうか」

 

スハルトは、変態大魔王な表情をしているクロウを見てちょっと引き気味になりながらも

 

スハルト「あんた、あのユフィをナンパでもするのかよ?」

 

クロウ「さーな。お前はまあ…Ⅶ組で頑張りな」

 

クロウはスハルトにそう言って、屋上から去っていった。

 

スハルト「……。あの先輩…一体なんだったんだ?」

 

茜色に染まる空の下で、スハルトは複雑な気持ちで屋上にいたのだった。

 

 

スハルトが屋上で語り合っている頃、ユフィ達一向はグラウンドからギムナジウムへ向かう。

 

ギムナジウムでの部活動は、フェンシング部と水泳部の2つしかない。

 

アリサとアンジェリナは、すでにラクロス部に決めており、ユフィとエマとラウラの付き添いでついてきていた。

 

ユフィとラウラは、水泳部を見学していた。もちろん水泳部が活動するのはプールである。プールサイドに集まった2人男女はユフィ達を見て

 

クライン「俺は、水泳部部長のクラインだ。新入生のみんなはゆっくり見学していってくれ」

 

マイン「わたしは副部長のマインよ、新入生のみんな、よろしくね」

 

部長からの自己紹介と副部長の自己紹介があり、水泳部の人数は部長と副部長が2人だけである。そこにユフィ、ラウラと男子生徒が加わるので、5人となる。

 

ラウラ「水練、ふむ、いい鍛練になりそうだな」

 

ユフィ「確かに、いい鍛練になりそうですわ」

 

ユフィもラウラも純粋に水泳を楽しむと言うよりも鍛練のためにやるような感じか。エマは水泳部、もちろんフェンシング部でもなかった。

 

そんなエマのため、アリサとアンジェリナは、エマの部活動探しを手伝うみたいで、ギムナジウムから出ていった。

 

ユフィとラウラは、引き続き水泳部の施設を見せてもらう。見せてもらうといってもギムナジウム内のものである。施設といったが、更衣室、更衣室の中にあるシャワールーム、2階にあるくつろぎスペースの休憩ルームぐらいしかない。見せてもらっている途中にユフィのARCUSの着信がなる。クライン部長の許可をもらいユフィは出る。

 

サラ「良かった、出たわね、ユフィ」

 

声の主は、サラ教官だった。

 

ユフィ「あの、サラ教官?わたくし部活動見学の途中なんですが?」

 

サラ「わかってるわよそんなこと。大事な話があるからARCUSで連絡してんでしょうが!」

 

ユフィ「大事な話ですか?一体何の話でしょうか?」

 

サラ「とにかく、学生会館の2階の奥の部屋に行きなさい。絶対よ、ユフィ!行きなさいよ!」

 

ユフィ「わかりましたわ」

 

サラ「それじゃーね」

 

サラ教官は、そう言うとARCUSの通話を切った。側でラウラが心配そうに見ていた。

 

ラウラ「ユフィ、どうしたのだ?」

 

ユフィ「サラ教官に学生会館の2階の奥の部屋に行けって言われましたわ」

 

ラウラ「学生会館か…。まだ行ってはいなかった場所だな」

 

ユフィ「学生会館には、食堂や購買部、部活動エリアなどあって、4階には貴族専用カフェがあるのよ」

 

ラウラ「ふむ…」

 

クライン「サラ教官に呼ばれたのか?」

 

ユフィ「はい。正式には学生会館の2階の奥の部屋にですが」

 

クライン「学生会館の2階の奥の部屋かぁ…生徒会室に呼ばれたんだな」

 

ユフィ「せ、生徒会室に?」

 

クライン「とにかく、行ってみるといい。今日は部活動はしないから安心してくれ」

 

マイン「活動は明日からだからね」

 

ラウラ「水泳部の今後のことは私が聞いておく」

 

ユフィ「ラウラさんに、クライン部長、マイン副部長、すいません。わたくしはこれで失礼します」

 

ユフィはみんなに一礼すると、水泳部が活動するプールから出ていくのあった。

 

 

ギムナジウムから出たユフィは、西日に照らされてた。風も昼間とは違い冷たい風が北から吹いていた。

 

ユフィ「学生会館は確か…ギムナジウムから南に向かったところ…達也さんがいつも行く技術棟の南側だったはずですわ」

 

ユフィはギムナジウムから技術棟の前を通りすぎて、すぐに学生会館の建物が現れる。

 

ユフィ「ここが学生会館のはずですわ」

 

そう言ってユフィは、学生会館へ入ろうとしたら誰かに話しかけられた。

 

 

??「お勤めゴクローさん。入学して半月になるが調子の方はどうよ」

 

ユフィは、話しかけられた相手を見て、すぐに同級生ではないことに気が付き

 

ユフィ「あ、えぇまぁ、正直、大変ですけど今は何とかやっている状況ですね。授業やカリキュラムが本格的に始まったら目が回りそうな気がしますね」

 

??「はは、わかってるじゃん。特にお前たちさんには色々てんこ盛りだろうだからな。ま─せいぜい肩の力を抜くんだな」

 

ユフィ「は、はぁ……えっと先輩ですよね?名前を伺っても構いませんか?」

 

??「まぁまぁ、そう焦るなってまずはお近付きの印に面白い手品を見せてやるよ」

 

ユフィ「手品ですか………?」

 

??「ん─そうだな。ちょいと50ミラコイン貸してくれねえか?」

 

ユフィ「50ミラコインですか?はい、わかりましたわ」

 

ユフィは財布を上着のポケットから取り出し、50ミラコインを探し始めたとき、ふと横から誰かがやってきた。

 

達也「またやってるのですか。はい、50ミラ、クロウ先輩。今度は俺のクラスメイトから借りるんですか?」

 

ユフィ「達也さん!」

 

クロウ「ちげーよ、後輩にちょっと手品を見せるだけだから…よ…そんじゃよーく見とけよ」

 

50ミラコインが空を舞いクロウの手元に落ちてくる。

 

クロウ「さて問題、右手と左手、どっちにコインがある?」

 

ユフィ「それは──右手ですか?」

 

達也「じゃあ、俺は両方になしで」

 

クロウ「はぁ…達也…のやつにはバレたか…」

 

ユフィ「達也さん…どういうことですか?」

 

達也「ユフィ…まぁ…俺のもよく…見ていてくれ」

 

達也が、再び取り出した50ミラコインを空に放ち、コインが舞ながら手に落ちてくる。そして…

 

達也「ユフィ…コインはどちらでしょう?」

 

ユフィは、ずっと見ていてあることに気がついた。さっきも今回も真下に巾着袋があった事に。…そこから導き出された答えは

 

ユフィ「右にも左にも入ってないですわ。あるのは巾着袋ですね?」

 

達也「正解だ。右手にも左手にもない……答えはこの巾着袋の中だ」

 

クロウ「ぐぬぬ……全く可愛げのない後輩くん達だよ…。達也も()()()も。まぁその調子で精進しろってことだ。せいぜいサラのしごきにも踏ん張って耐えて行くんだな。そうそう生徒会室なら2階の奥だぜ。そんじゃよい週末を」

 

クロウ先輩は、そう言って正門の方へ歩いて行った。ユフィは、クロウ先輩がただ者ではないと己の血が騒いでるのがわかった…。達也がここに来たことも疑問がついた。

 

達也「サラ教官に頼まれたんだ。ユフィが生徒会の方から学院生活に必要な物を持ってくるみたいだから、君も手伝ってほしいとARCUSから連絡を受けたんだ」

 

ユフィ「サラ教官にですか?」

 

達也「ああそうだ。とにかく生徒会室まで行くか」

 

ユフィ「そうですわね」

 

ユフィはふと不思議に思った。さっきのクロウ先輩は、なぜ自分達が生徒会室にようがあると思ったのか。すると達也が

 

達也「さっきのクロウ先輩の事か?」

 

ユフィ「ええ」

 

達也「まあ、一言で言えば、ふざけた先輩だな。ただ、底知れぬ感じもする一面を持っている」

 

ユフィ「底知れぬ感じですか…」

 

達也「まあ、気にしないでくれ。俺のただの勘だから」

 

ユフィ「そうですか」

 

達也の言った底知れぬ何かは、ユフィも感じとってはいたのだ。だがどう説明していいのか分からなかったから言わなかっただけだ。

 

ユフィと達也は、2階奥の生徒会室に目を向ける。生徒会室って普段なら絶対こないと達也とユフィは思った。生徒会室の扉の前に立ったユフィと達也は、コンコンと扉をたたいた。

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