ーー1204・5・07・昼・???・黒の工房
黒のアルベリヒは、持ち帰ったサンプル、いや正式にはルーファスに頼まれた春雪の蘇生実験をやっていた。
アルベリヒ「うむ、どうしたものか。中々蘇生はできないな」
蘇生…本来なら亡くなった人間を蘇生すること自体そのものが、禁忌に値する。しかし黒のアルベリヒは、女神エイドスなど信じていないため、こんなことは平気である。
アルベリヒ「まてよ…あの計画のやつを参考にすれば……」
アルベリヒは何かを閃く。
アルベリヒ「平塚春雪という人物は死ぬことになるが、新たな生を与えればいいだけのこと…くくくっ……」
アルベリヒは、例の計画の予行練習を始めることにした。
ーー??・??・??
ここは、春雪の深層心理。彼の記憶から読み取った世界。
そしてここが、春雪の中学時代…これは中学3年の時
八中原「キモ春、早く昼飯のパン買ってこいよ…」
山川「アハハ、あたしの分も買って来い!」
松浦「私も!!」
原西「私もお願いね!」
八中原、山川、松浦、原西は、ギャルグループではないが、美人に入るグループであり、上位カーストに位置するグループである。
八中原は、スタイル抜群、黒髪ロングの真ん中パッつんである。スカートは、短め。
山川は、黒髪短髪でギャルに近い格好している。スカートは、短め。
松浦は、ミント色の短髪であり、普通の体型。
原西は、金髪に染めており、不良娘である。
この5人は、春雪をいじめる筆頭グループ。何かといっては春雪をいじめる。彼女達が春雪をいじめていたわけではない。最初の標的は、ローゼンシル・イーグレットというミント色のみつあみのメガネっ子であった。彼女は帝国からの留学生だった。そのローゼンシルをいじめていたのだ。
キモイ、メガネ、臭い、その他諸々をいって…
そんな中、ローゼンシルをいじめていた八中原達をとめに入ったのが春雪だった。
春雪「おい、彼女、泣いてるだろ!そんなことして、心が痛まないのか?」
八中原「はぁ?何、平塚のくせに指図すんの?」
山川「ぷぷっ、モブの陰キャのくせに八中原にバカな事を言ってる!」
松浦「キャハハ、もしかして、モブーゼンシル、クソーゼンシルの事を好きなんじゃね?」
山川「ぷっ、マジで!」
春雪「俺はそんな気持ちはない!イーグレットさんを泣かせるなと言っているだけだ!人としてやって良いことと、悪い事があるだろ!そんなのも分からないのか!」
八中原「平塚、言わせておけば…!」
春雪は、八中原にぐうで殴られた。女のパンチだったが、ローゼンシルのいる方へ吹き飛ばされた。
ローゼンシル「ひ、平塚君、大丈夫ですか?」
春雪「大丈夫だから、君は心配しないで」
春雪は、ローゼンシルを庇うように立ち塞がる。すると八中原達は白けてどこかに行ってしまう。
春雪「ふっ、行ったか…」
ローゼンシル「ありがとう、ございます、平塚君」
春雪「お礼を言われるほどじゃないよ、ちょっとびびったけど…」
ローゼンシル「平塚君、唇が切れて血が出てる」
ローゼンシルは、そう言うと、制服からハンカチを取り出す。そのハンカチはとても高そうだ。白の薔薇が画かれた絹のハンカチのようだ。そしてそのハンカチでそっと垂れている血を拭う。
春雪「そんな高そうなハンカチを僕の血で…ごめん、イーグレットさん」
ローゼンシル「なんで、平塚君が謝るのですか?」
春雪「…高価なハンカチを汚すのはやっぱり…」
ローゼンシル「心配はいりませんの。このハンカチは実家にも沢山ありますから」
それから春雪は、八中原達からの嫌がらせを受けるローゼンシルを庇い続けていた。
だがそれから3ヶ月が過ぎたある日、ローゼンシルから春雪はあることを告げられた。
ローゼンシル「春雪君、今日貴方に告げなければなりません」
春雪「ローゼ、告げなくてはならないことって?」
ローゼンシルは、真剣な表情で春雪を見据える。放課後の屋上で、夕日に照らされた2人は神秘的に見える。
ローゼンシル「わたくし、明日で留学期間は終わりです」
春雪「明日…」
ローゼンシル「学校に来れるのは、今日までですわ。明日は帰国するための引っ越し作業がありますからね…だからわたくし、春雪君に伝えることがあります」
春雪「伝えたいこと?俺に?」
ローゼンシル「はい、わたくしは、平塚春雪君の事が好きです。あの人達から救ってもらったあの日から…ずっと」
春雪「!!!!」
春雪は腰を抜かしそうになった。実際に思考回路がパニック状態になっている。ローゼンシル自身も今日の朝からこの告白をするために決意していたのだ。春雪は、今まで女子に告白したことは、一度もない。ましてや初めて告白された女の子は、帝国人でそれだけではない、貴族の娘である。だから春雪は、普通の家庭である自分とローゼンシルとは、釣り合わないと判断したのだ。自分なんかと付き合っても彼女を不幸にするだけだ。春雪は本心は、ローゼンシルが好きなのだ。好きだからこそ、あえて反対のことを言うためそう決意し
春雪「ごめん、ローゼ。君の告白は受け入れられない。俺を好きなったのも…つり橋効果だと思う。君にはもっと僕なんかより、相応しい男性が現れる…僕はイケメンじゃなくブサイクだから」
ローゼンシル「春雪、なぜ自分自身を卑下するんですか?それとも貴族や平民だからですか?」
春雪「……貴族や平民とかは、君が関係ないと言ってたから、別にそれはいい。僕の顔…クラスの連中や家族だって僕の事、ブサイク、ブサイクって言ってる。ローゼだって…」
ローゼンシル「わたくし、春雪の事をブサイクなんて一度も思っていません!あの方達は、お顔ばかり言ってらっしゃいますし、内面の事を見ていらっしゃいません。前に春雪は、わたくしに夢を語って下さいましたよね?弱き人々を助けるそんな仕事をする職業につきたい。もしくはこの国を変革出来る職業につきたいって言ってましたよね。夢を語る春雪の表情はとくに…カッコ良かったよ…わたくしにとって春雪は王子様…」
春雪「……ローゼ……」
春雪は、ローゼンシルに真剣に見据えながら
春雪「僕、立派になるよ!立派になってローゼンシルを迎えに行くよ!」
ローゼンシル「はい、わたくしも春雪に相応しい女になりますわ!」
ーー??・??・終了。
再び黒の工房のアルベルヒに視点は移る。古代の秘宝という書本や黒の工房内における資料を調べ尽くしていたが、蘇生というのはない。
黒の工房の古代図書館で見た覚えがあると思っていたが、勘違いだったのかと思い始めた時、黒の工房にお客さんがやって来た。格好は全身黒で固めており、顔も仮面で見えない。男か女かさえわからない。
アルベルヒ「おや、珍しい客人のようですね。はてさてどのようなご用件でしょうか?」
???「お前が、黒の工房の工房長のアルベルヒか?」
アルベルヒ「私をご存知のようでなりよりですね。ご用件はどのような事でしょうか?」
???「お前がやろうとしていることに、手を貸してやると言っている。私の力なら、あの者を生き返す事もできるが?」
アルベルヒ「古代の禁忌の古文書ですら、載っていない禁忌の蘇生魔法を?」
???「当たり前だ。私は、禁忌の力が使えるんでね」
黒の仮面が手をかざすと、アルベルヒの横にあった壊れたアンドロイドがみるみるうちに直り、正常に動くようになった。
アルベルヒ「なるほど。我が主…それ以外の力も…これはおもしろい」
黒の仮面「協力する気になったか?」
アルベルヒ「ああ、こちらとしても貴方の協力は頼もしい」
黒の仮面「私の名前は、緋のフレイムソウルとでも名乗ろうか…」
ーー1204・5・07・昼・???・黒の工房
アルベリヒ「黒のフレイムソウル…それではフレイム殿とお呼びしましょう」
フレイム「単刀直入に言おう。彼は彼としては戻せない。彼には彼女になってもらう」
アルベリヒ「それも禁忌の秘術では無いのかね?」
フレイム「ああ、そうだな。禁忌の秘術…性転換の魔術…」
アルベリヒ「それをフレイム殿は使用出来ると?」
フレイム「そうだ。それではさっそく試してみよう」
フレイムは、禁忌の秘術の詠唱を始めた。この世界は、エイドスが封じたものは使えないようになっている。例えそれが魔女の一族であっても地精であっても使えない。
だが目の前の仮面を着けた人物、フレイムソウルは、禁忌の秘術の性転換の魔術の詠唱をしている。
暗く薄暗い黒の工房内に明るく光る魔法陣。ただ明るいだけの魔法陣ではない。緋白く力強く光っている。
アルベリヒ「ほぉ~なるほど。本当に禁忌の魔法ですね…。それをどこちらで覚えられたので?」
フレイム「長い時を得て取得したようなものだ。まあ見ててほしいものだ」
アルベリヒ「そうですか、それは頼もしいことで」
フレイム「ふっ、素となる、新しき肉体は左に犠牲とする肉体は右に…」
フレイムが指をパチンと鳴らすと、左には、スカイブルーの髪の色の女性が現れた。右には平塚春雪の肉体がプカプカと浮いている。
「…右の者の精神を左の肉体へ委譲させたまえ!新たなる人としての人生を。この者に与えたまえ!」
フレイムがそう言い終えると、物凄い目映い光で何も見えなくなる。アルベリヒも光の遮断のサングラスをはめて成り行きを見ていた。
光が収まると、そこには、スカイブルーの髪の色の女性だけしかいなかった。春雪の肉体はどこにもなかった。
フレイム「ふっ、どうやら成功したようだな」
アルベリヒ「な、なんとすごいことだ」
フレイム「成功だ」
宙にふわふわと浮いていた、スカイブルーの髪の女性は、ゆっくりとベッドの方へゆっくりと落ちた。
それと同時に転移の魔法陣が現れルーファスが現れた。
ルーファス「彼の様子を見に来たのが、うむ?仮面の方と、ベッドの真っ裸な彼女は?これは何事かね?」
アルベリヒ「彼はフレイム殿により、彼女になりました」
ルーファス「何?」
フレイム「アルベリヒ殿の言われたとおりだ。彼は彼女として生き返ったのです。元の彼と違って力を持った彼女へとね」
フレイム、アルベリヒ、ルーファスが会話していると、“彼女”の意識が回復したのか、目を開ける。目はエメラルドグリーンの瞳であり、こちらに気づいたのか起き上がる。しかし彼女は、自分が何も身に付けていないことに気がつき悲鳴を上げる。その悲鳴は、男のような悲鳴ではない。女の子がラッキースケベイベントで上げるような悲鳴である。アルベリヒとルーファスは驚いている。
フレイム「彼女は女ですよ。男に裸を見られたら悲鳴を上げるのは当然かと」
アルベリヒ「精神まで女性になったのか?」
フレイム「ああ、そうだ。精神そのものが完全に女性になるのは、時間の問題だろう」
アルベリヒ「なるほど」
フレイム「まあ、裸では可哀想だな」
フレイムは指をパチンとたたいた。
すると女性の回りが光り、彼女自身も光った。ものの数秒で光が収まり、彼女自身の光が収まると真っ裸だった彼女は、帝国婦女子が着る服を着ていた。
フレイム「ふっ、これで良いだろう」
アルベリヒ「アルバレア公子、彼女を救う依頼は達成した。次はどうするのかね?」
ルーファス「それには、礼を言わせてもらおう。肉体も精神も女性になったと仰っていましたが、記憶はどうなのかね?」
フレイム「記憶はある。だが記憶だけってことだな」
ルーファス「そうか。なら私が彼女を引き取ろう」
アルベリヒ「ええ、最初からそのつもりであったのでね」
フレイム「おっと、私の自己紹介がまだでしたね、黒のフレイムソウルとお呼び下さい、ルーファス卿」
ルーファス「ルーファス・アルバレアだ、お見知りおきを」
ルーファスがそう言うと、彼女の手を取り、
ルーファス「さあ、行こうか」
???「い、行くってどこへ?」
ルーファス「ついてくれば、わかるさ」
ルーファスの足元に転移の魔法陣が現れ彼と彼女は転移の光に包まれたのだった。