ーー1204・5・05・昼間・FLTプリンセスホテル。
ゴールデンウィーク最終日、雪奈、蓮、竜司、杏の姿は、十師族、百家が来るようなホテル、FLTプリンセスホテルにあった。杏が予約したのは、FLTプリンセスホテルだったのだ。回りの客層は、セレブのようなものばかりであり、普通の人間はいない。
FLTプリンセスホテルは、FLT社が設立したホテルである。司波龍郎が、深雪と深夏が双子で誕生した時に記念に設立したのだ。四葉家が最大のスポンサーではあるが。
テーブルの上に並んでいる料理も普段では絶対食べれない代物ばかり。蓮達は眼を輝かせていた。
雪奈はフルーツ系や野菜系を食べていて、蓮と竜司は、肉系、杏はスイーツ系を食べている。
雪奈達は普段では食べれないだけあってガツガツと食べている。
杏「そういえば、学校に警察が聞き込みに来るらしいよ」
モルガナ「厄介だな」
雪奈「うーん、そこはなんとも出来ないわね。容疑者の務め先とか、矢面に立たされるし」
竜司「絶対、俺らの名前、出ちまうよ。鴨志田のことで、妙な噂されてるし…けど、学校のヤツら盛り上がってるぜ!『怪盗が本当に心盗んだ』ってな。マジで信じてはいないだろうが、中には割りと本気あで感謝してるヤツもいる。見ろよ」
そう言うと、竜司は自分のスマホを雪奈達に見せる。
そこには【怪盗お願いチャンネル】と表示されていて、ファンサイトのようになっているようだ。
杏「怪盗お願いチャンネル?」
雪奈「【怪盗よくやった】【これで私も頑張られる】【勇気をくれて、ありがとう】」
竜司「ちょっと嬉しくね?」
杏「今まで自分の事で精一杯だったけど、こんな風に言われると、なんか不思議…」
蓮「確かに」
雪奈「そう言う風に言われたことなかったわ」
竜司「なあ、これからどうする?」
蓮「時間は大丈夫か?」
雪奈「杏、ここって1時間だけだよね?」
杏「うん、1時間だよ」
雪奈「もう30分は過ぎたと思う」
竜司「やべぇ、急いで堪能しなとな」
杏「急がないとね」
竜司と杏は、共に料理を取りに行った。残された雪奈と蓮は話し出す。
雪奈「蓮は、こういうところに来るの、初めて?」
蓮「初めてと言われれば初めてかな」
雪奈「そうか。私は初めてじゃないかな。まあ、プライベートでは初めてだからね」
蓮「結社の任務?」
雪奈「蓮、良く結社の任務ってわかったわね。まあ、私の生い立ちを知ってるか」
雪奈は、回りの人間達を見ている。その目は、この中にもしかしたら母親を殺した犯人達が、いるのではという疑いの目である。
雪奈「うん、ついついそう思ってしまうのよね。もしかしたら、この中にお母さんを殺した犯人達がいるんじゃないかってね」
蓮「雪奈…」
雪奈「ごめん、ごめんね。蓮にまで暗くなる必要はないわよ。せっかくの祝杯を上げてるんだから」
蓮「俺も結社の人間だ。雪奈の敵は俺の敵でもあるから」
雪奈「蓮…ぷっ…それって口説いてる?」
蓮「い、いやそんなつもりじゃないから」
雪奈「うん、わかってるわ。蓮が軽い気持ちでそんなことしないのは、わかるから」
雪奈は、苦笑いしながら蓮を見ている。彼女の心は、雨宮蓮と出会った事で、少しずつ自分の中の氷が溶けていく感じがするのだ。そんな話をしていたら、杏と竜司が戻って料理?を持って来た。
杏「雪奈、スイーツを持って来たわよ」
竜司「ほらっ、蓮、肉を持って来たぞ!」
テーブルの上にスイーツ、肉がドサッと置かれる。
雪奈「スイーツと肉…偏りすぎてない?」
蓮「…だな」
雪奈「うーん、私達がスイーツと肉以外の食べ物を取ってくるわね」
蓮「ご飯系、魚系、野菜系がないな」
モルガナ「今から取りに行くのか?」
雪奈「バランス良く食べないとね」
杏「う…それは…」
蓮「時間も無いし、ぱっぱっと取ってから食べるとしよう」
雪奈は、野菜と肉系、蓮は魚系とご飯系と帝国風朝ごはんを取ることにしたのだった。
ーー1204・5・05・昼間・FLTプリンセスホテル。
雪奈、蓮、竜司、杏の4人は、FLTプリンセスホテルで、鴨志田戦勝利のお祝いを兼ねて祝杯を送ることに。FLTプリンセスホテルは杏が予約してくれたお店である。
だがそこは、セレブ御用達のホテルのようで、雪奈達は随分と浮いてるようにも見えたが、雪奈や杏がどこかのお嬢様にも見えなくもない。だから何とかなったのだ。
かくして短い時間であったが、雪奈達には贅沢な時間になった。普段食べることも出来ない素材で作られた料理を食べることもできたから、大変有意義な時間を過ごすことが出来た。
だがそんな有意義な時間に水を差す輩がいるのも実情である。
裕福な女性「ちょっとアレ見て…」
裕福な男性「多目に見てあげようじゃないか。普段、ロクな物を食べてないんだろう、きっと」
裕福な女性「親御さんの顔を見てみたいわ」
竜司「……ンダト」
雪奈「竜司、やめなさい」
竜司「だけど…!」
雪奈「……アノモノにサバキのテッツイをクダシタマエ…」
裕福な男性と女性は、雪奈達の横を抜けて去っていく。雪奈は裁きの鉄槌をあの2人にかけた。かけたと言っても殺す魔法ではない。
後々に人前で、男性のズボンのベルトと女性のスカートのが落ちて大恥を書くことになる。
竜司は吐きそうと言い、蓮がトイレまで連れていく。残された雪奈と杏は世間話をしていたら、雪ノ下分家の勘当息子である雪ノ下隆信が現れた。
隆信「君達は、どこかの良家なのかい?」
杏「はぁ~?なんなのアンタ?」
雪奈「ナンパのつもりなら、お帰りください。私達、間に合ってるんで」
隆信「間に合ってる?君達は何を言ってるんだ?せっかく僕が話しかけてるんだ!ハイハイと聞いてれば良いんだよ!」
雪奈「私達が知らない男性にハイハイと言うことを聞かないといけないんでしょうか?」
隆信「僕は、雪ノ下隆信だ。知らないわけがないだろ?」
杏「知らないわよ!アンタなんか!」
雪奈も杏も隆信に従うつもりはない。ここで怯んだら、なんのために鴨志田を改心させたのかわからなくなる。だから雪奈達は怯むわけにはいかない。
隆信「2人共、僕の女にしてやるよ!」
隆信は、杏の腕を掴む。
杏「ち、ちょ…何、掴んでるのよ!さわらないで!」
雪奈「杏を離しなさい!」
雪奈は隆信の前に出て抗議をする。すると隆信は雪奈を平手打ちする。平手打ちされた衝撃で、雪奈は転んでしまう。こんな騒ぎになっても周りの大人達は見て見ぬふりをしている。中には運の悪い2人の女の子としか見ていない。杏は雪奈の名前を呼ぶ。
杏「雪奈…!」
隆信「へぇー、大人しそうな顔して、黒のショーツとか履いてるんだな。誘ってるんだろ、お前!」
そんなことを言いニヤニヤと笑いながら、雪奈のスカートの中を見ている。雪奈もあわてて足を閉じて起き上がる。
雪奈の表情は、恥ずかしさと怒りが込み上げている。だからそんなことを誤魔化すため雪ノ下隆信を睨み付ける。
隆信「なんだよ、その目はよ!」
雪奈「貴方、そうやって女性を扱ってきたのかしら?雪ノ下家だから何?貴方自身が何かしたの?」
杏「雪奈…」
隆信「下級国民のくせに上級国民である十師族百家の人間に逆らうつもりか!」
隆信は握りこぶしを作って雪奈を殴ろうとする。しかし彼のパンチは雪奈に当たることはなかった。彼のパンチは、深夏の手の平で受け止められていた。
ーー1204・5・05・昼間・FLTプリンセスホテル。
隆信のパンチは、雪奈に当たる事はなかった。隆信のパンチは、深夏によって防がれた。司波深夏、四葉家の次期当主候補であり、司波深雪の双子の姉である。本来ならリベールに留学しており、日本にはいないのだが、とある事情で日本に帰国している。そして彼女は緋色のドレスを身に纏っている。ロングの黒髪には炎をあしらった髪飾りをしている。
そんな深夏は、隆信のパンチを手の平で受け止めていたのだ。
隆信「…司波…深夏…!」
深夏「女の子を平手打ちして倒した挙げ句に、無理やり自分のモノにしようとして、断れたから殴ろうとする…貴方、最低ね」
今まで、見向きもしなかったギャラリーがこちらを見て騒いでいる。
セレブ女「あの方は、四葉家のご息女の深夏様よ」
セレブ男「本当だ、深夏様だ、司波深夏様だ!」
隆信「くっ…」
深夏「今度は、私を殴りますか?別に殴って構いませんよ、貴方がそれで気が済むなら」
深夏は隆信の手を放してそう言った。隆信は、深夏がそう言ったがバツが悪そうで、このフロアから出ていく。そして深夏は雪奈と杏に頭を深く下げる。
深夏「あの者がお客様に対し大変な無礼を働いた事に対し深く誠に申し訳ありませんでした」
雪奈も杏も深夏の美貌に見とれていた。自分達よりも年下の彼女に。
杏「い、いえ…貴女に謝られると流石にね、雪奈?」
雪奈「ええ、そうね。でも貴女…ギャラリーから聞こえたけど、四葉家のお嬢様なんでは?」
深夏「アハハ、聞こえてましたか。ええ、その通りです。私は四葉家当主の長女の司波深夏と申します。訳あって父方の司波姓を名乗ってますけど」
杏「あ、そうなんだ」
雪奈「十師族…四葉家のお嬢様って大変じゃないんですか?」
深夏「うーん、大変かって聞かれれば、大変かな。四葉家を背負い、交渉によっては、日本を背負ってるから…」
杏も雪奈も驚いた。司波深夏という女の子は、すでに世界と戦っているんだなと感心していた。自分達は、鴨志田の件で立ち上がったばかりだ。
杏「本当に凄いんだね、深夏さんは」
深夏「ううん、別に私自身が凄い訳じゃないわ。周りの方々がふがいない私を支えて下さってるからですわ」
杏も雪奈も十師族の事は好きではない。十師族=威張りちからかすみたいなイメージがついている。だが目の前の司波深夏という女の子は、そんな感じを微塵にも感じさせないものであった。
深夏「お二人のお名前を伺っても宜しいですか?」
杏「ええ、もちろんです。私は高巻杏です」
雪奈「私は緋里雪奈です」
深夏「高巻杏さんに緋里雪奈さんね、よろしくお願いします」
自己紹介が終わると、ホテルのスタッフが深夏を呼んでいる。
スタッフ「深夏お嬢様、お連絡が…」
深夏「わかりました。それでは杏さんに雪奈さん、有意義なお時間を過ごしください」
深夏は、頭を深々と下げてから、杏、雪奈のいる場所から去っていった。
杏「…アハハ、深夏…凄かったね」
雪奈「そうね…自分の席に戻ろっか」
杏「そうね」
雪奈と杏は、自分の席に戻ることにした。
ーー
一方出ていく途中で隆信は、蓮と竜司とすれ違い様に暴言を吐いていた。
隆信「司波深夏…おのれ…許さぬ…お前は…あの男と麦野静江と同じようなことを…!」
竜司「なんだあれ?」
蓮「さあ?なんだろうね」
蓮と竜司は、雪奈と杏のところへ戻って行く。
ーー1204・5・05・昼過ぎ・FLTプリンセスホテル
蓮と竜司が雪奈と杏のいる場所まで戻って来た。2人は何だか仲良くしていて、それを見た蓮と竜司は何だか安心した。
雪奈も杏も親友と呼べる人物は少ないだろう。杏も親友は鈴井志帆しかいない。雪奈に関しても親友と呼ばれる人物はいない。それに陰キャとして回りから見られている。普段の雪奈は、みつあみ、メガネというスタイルだから。
竜司も鴨志田の件以降親友と呼ばれる人間はいなくなった。蓮に関しては、鴨志田のホラ情報のおかけで友達なんかできるわけがない。
全て腐った大人達のせいで、苦しんでいる人達がいることを改めて感じた。
先程、司波深夏が言っていたようなことは自分達には出来ない。だが自分達は自分達なりに困った人達を助けたいと思っている。
怪盗団として。怪盗団、身喰らう蛇(ウロボロス)として。
竜司「きっと俺達なら、やれる。困ってる人々を救える」
杏「そうだね。私達ならできるよね」
雪奈「やれると思う、ねえ、蓮?」
蓮「うん、やれると思う」
モルガナ「ああっやってやろうぜ!それにワガハイもついているんだからな!」
雪奈「怪盗団の名前は、身喰らう蛇(ウロボロス)って竜司と決めたから」
竜司「ああ、雪奈に年を押されて身喰らう蛇(ウロボロス)にしたんだ」
杏「身喰らう蛇(ウロボロス)か…何だかよくわからないけど、良いんじゃないかな」
蓮「俺もそれで良いと思うよ」
怪盗団の名前は、雪奈が身喰らう蛇(ウロボロス)付けた名前に決まった。
杏「名前は決まったしターゲットは誰にすんの?」
竜司「クソ大人なんて、嫌ってほどいやがるけどな。あえて大物だけ狙うってのはどうよ?」
蓮「有名人か」
竜司「まあ、そんなところだ。大物ならニュースになんだろ?そしたら、俺達を信じるやつら、今よりもずっと増える気がしないか?」
モルガナ「リュージにしては、面白い意見だ」
雪奈「でも日本の報道だけじゃ圧力で報道されない。だから帝国、クロスベル、共和国、日本の報道番組、ニュースからターゲットを決めましょう。私達が世界で知られることになるば、世界の人々に勇気を与えることができると思う」
杏「そうだね。私達がもっと知られれば…みんなに勇気を与えられる…」
雪奈「ターゲットは、誰か構わずにやるのではない。みんなが賛成できるターゲットにしようと思う」
モルガナ「うむ、全会一致で決めた大物か」
杏「いいね、全会一致!なんだか掟っぽい…」
モルガナ「怪盗団の結成だぜ」
雪奈「みんな、これから頑張っていこうね」
蓮「ああ!」
雪奈「まだ話したいけど、ここの時間が終わりそうだよ」
竜司「マジか…仕方がない、話の続きは明日にするか」
蓮「そうだな」
時間切れになった雪奈、蓮、竜司、杏、モルガナは、満腹な気分のままFLTプリンセスホテルを後にした。