ーー1204・5・02・秀尽学園・体育館・
すみれは、職員会議中の新体操の教師から、今日は新体操の活動は無いとチャットが来た。だから新体操の練習着から制服に着替えた。
女子更衣室で他の部活動の先輩達が何か話している。
先輩女子1「鴨志田、やっと捕まったわね」
先輩女子2「あんたさ、鴨志田に媚ってたじゃん」
先輩女子1「別に媚びてなんかいないわよ?あれは鴨志田が誘ってきただけだから」
先輩女子2「マジで?それマジ受けるんですけど!」
先輩女子3「バレー部の女子って、みんな鴨志田に食われたって本当なの?」
先輩女子2「マジらしいよ…だからバレー部の鈴井、飛び降り自殺を図ったんでしょ?」
先輩女子3「アレ本当だったの!鴨志田アウトじゃん!!」
そんな話をしながら他の先輩女子達は、すみれの横を通りすぎていく。
すみれ「………」
すみれは、表情は怒りに満ちていた。あの先輩女子達は、鈴井志帆の飛び降り自殺未遂すらも笑い話にしていることが許せない。いや自分のクラスでも鴨志田の事を笑い話にしている者達がいることに驚いていた。
すみれ「この学園は、鴨志田以外にも闇を抱えている。いや…学園だけじゃない…この国自体が…」
スマホをポケットから取り出して、ニュース一覧を見る。
一面のニュースは、鴨志田の件が大々的に書かれている。
他には、東京都の職員による女子高校に痴漢をして逮捕、札幌市の市議会議員が、金銭を不正授与。大阪で今月最初の精神暴走事故。などが最新ニュースとして流れてきた。
すみれ「また精神暴走事故…」
すみれは、ぐうっと息が苦しくなる。精神暴走事故で失った、母親と姉かすみを思い出したからだ。深呼吸をやって、精神を落ち着かせる。
すみれ「精神暴走事故のニュースを見ただけで、乱しちゃダメ。そんなんじゃ、困ってる人々を救えないわ」
そう言ってからすみれは、女子更衣室を後にした。
体育館から出たすみれは、夕暮れに染まる校舎内を歩いて靴箱に向かって歩いている。歩いていても鴨志田の話題はみんなが話している。
靴箱で上履きと靴を履き替えると、そそくさに学園を出る。学園の最寄りの駅に向かって歩いていると、帰りがけのサラリーマン達が、鴨志田の悪口を言っている。そんな中をすみれは歩みを進めている。
駅に向かう途中、上着のポケットに入れているスマホのバイブがなる。すみれはスマホを取り出してみると、お助けチャンネルに依頼が来ていた。
ーー1204・5・02・ ・蒼山一丁目→渋谷、七草記念公園
ここは、渋谷内にある七草記念公園。先の大戦にて破壊された渋谷を十師族の七草家が再建し復興させた。それを記念に市民により建立された公園である。
休みの日の公園には、家族連れやカップルがたくさんくる場所でもある。夜になるとライトアップもされる。
ただ今は平日であり、人はまばらである。
そんな中、すみれは黙って歩いている。お助けチャネルに依頼してきた依頼主はここにいると言って来ている。
秀尽学園の生徒ではない生徒達も結構いる。親友同士、恋人同士でいるかの違いはあるが。
すみれ「…目印にみっしぃのぬいぐるみキーホルダーを付けているんだったわね」
みっしぃ…クロスベルのあのテーマパーク(MWR)のマスコットキャラである。依頼主は、そのみっしぃのキーホルダーを目印にしているという。
すみれ「みっしぃのキーホルダーって言うから女の子の依頼者ってことかな」
すみれはそんな事を考えながら、依頼者を探す。
だが段々と人が増えていく。学生から大人のサラリーマンまで人が増えているのは間違いない。
ただ変な悪目立ちをしているのは間違いない。
“秀尽学園の生徒”
“鴨志田卓の勤めていた学園”
これだけで、今は注目の的である。
同情の目、奇っ怪な目、憐れんだ目、色んな目がすみれを含めた秀尽学園の生徒達は見られていた。そんな目に耐えきれなかったのか、秀尽学園の生徒達はほとんどいなくなっていた。
すみれは、みっしぃのキーホルダーを探している。すると鞄にみっしぃのキーホルダー付けたサラリーマンの方を見つける。そのサラリーマンは、ベンチに座っていた。すみれは一瞬驚いたが、すぐに冷静に判断する。固定観念は抱いてはダメだと。
すみれは、ベンチが背中合わせにあることもわかり、背中合わせに座る。スマホを取り出して、話してるふりをしながら背中合わせのサラリーマンに話しかける。
すみれ「貴方が依頼者の山田さんですね?」
サラリーマン「あ!来てくれたんですね?」
サラリーマンの山田は、反対側を見ようとするが、すみれは
すみれ「反対側を見ないで下さい。互いに顔は合わせない約束でしょ?」
山田「はい、すみません」
すみれ「こちらこそすいません。これが私のスタンスなので。えーと、依頼と言うのは、とある事故で亡くなったお姉さんのことを調べて欲しいと?」
山田「はい、姉は元々斑目の弟子でしたが、師匠の斑目に盗作の疑いを掛けられ破門にされました」
すみれ「斑目一流斎…美術界隈では、かなりの有名人ですね。彼自身もさゆりを始め…いくつも美術作品を世に出してますね」
山田「…確かにそんな風になってます。ですが!あれは全て弟子の作品を盗作して作り上げたものなんですよ!」
すみれ「全て盗作!?」
山田「ええ!斑目自身の絵なんてとうの昔に枯れてるんですよ!」
山田は、斑目一流斎には、かつてはかなりの弟子を抱えていたが、盗作やパワハラ、モラハラなどで弟子は辞めていった。山田の姉も自身の作品を盗作され、斑目の元を去った。
そして美術とは関係の無い食品加工や文房具会社であるゴールド・マウンテン社のエレボニア帝国支部で働いていたが、2月の下旬頃に体調を崩して、帝国支部を退社して日本に帰国していた。だが4月に入って姉は、体調が良くなったので、4月5日付けでゴールド・マウンテン社の本社復帰を許されたようだ。そしてその夕方に交通事故に遭って、そのまま亡くなったそうだ。
警察は、“姉が車に飛び込んで自殺した”と発表したようだ。
山田は、姉が自殺する原因は見当たらないし、斑目の破門の件は、吹っ切れていたし気にしないと説明したが、警察は受け入れなかった。
警察がダメならとマスコミに言ってみたが、マスコミも相手をしてもらえなかった。
そして山田は、失意のあまりに落ち込んでいたら、お助けチャネルを見つけたようだ。
山田「あの、姉の謎の死の事、調べてもらえますか?」
すみれ「……わかりました。お姉さんのこと調べて見ますね。斑目やゴールド・マウンテン社についても調べたいと思います」
山田「ありがとうございます!それでは、自分は失礼します」
山田はそう言ってベンチから立ちあがり、すみれの向いている方向に歩いていく。
すみれは、漆黒の空の中に輝く星を見ながらそっと握りこぶしを作って、斑目とゴールド・マウンテン社を調べる事にした。