アルフィンside
ーー1204・5・22・昼前・10:25・駅前通り→旧市街
和菓子を購入してきたアルフィンは、再び旧市街に戻ってきた。さっききた時よりも人の数は増えている。彼女が目指すのは、アークライト解決事務所である。先ほど見つけておいた老舗モンマルトが入る雑居ビルの前まで来る。
雑居ビルの階段を登って、アークライト解決事務所であることを確認すると、【訳あり客以外お断り】と書かれている。
アルフィン「訳あり客以外はお断りですか」
大賢者「解、マスターは訳あり客に該当するとは思われますが」
アルフィン「まあ…お忍びで来てますしね…」
アルフィンは、扉をノックする。
???「ふぁ~客か……せっかく人がいい気分で眠ってたのに…」
???は、扉の方へやって来て、扉を開ける。
アルフィン「久しぶりですわね、ヴァンさん」
ヴァン「……う~ん、お、お前さんはあの、ア、アルフィンか!?」
アルフィン「あのアルフィンですわ、お久しぶりですわ、ヴァンさん」
ヴァン「まさか…お前さんが客として来たのか?」
アルフィン「ええ、わたくしはアークライト解決事務所に用があって来ましたわ」
ヴァン「はぁ~とにかく中に入れ。話はそれからだ」
アルフィン「わかりましたわ」
アルフィンは、ヴァンにアークライト解決事務所の中に案内される。そして中のテーブルがある椅子に足を組んで座る。ヴァンは、コーヒーを淹れてくる。
ヴァン「コーヒーで構わないか?」
アルフィン「ヴァンさん、お構い無く」
ヴァン「で、《帝国の皇女殿下であるお前》さんが共和国にいるんだ?」
アルフィン「わたくしが共和国にいる理由…まずは、これを見てくださいな」
アルフィンは、懐から導力写真で撮った斑目の写真や美術作品の盗作疑惑の資料とかをヴァンに見せる。
ヴァン「これって何だ?」
アルフィン「東ゼムリアの大国、日本の美術界の巨匠、斑目一流斎という人物ですわ」
ヴァン「斑目一流斎、美術界の巨匠ねぇ…。で、そいつが他人の美術作品を盗作していると言うことか…」
アルフィン「そうですわ、それだけではなく、自身の弟子にも虐待をしている疑惑もありますわ」
ヴァン「疑惑か…聞いてる限りでは、最悪だな」
アルフィン「ええ。それで受けてくれるかしら?」
ヴァン「そうだな……」
アルフィンは、そっと徳川和菓子屋で買ってきた和菓子を取り出す。
ヴァン「これは?」
アルフィン「貴方への贈り物ですわ。甘いものが大好きだと以前聞いていましたので」
ヴァンは、袋の中身を確かめる。そこには和菓子のどら焼きとカステラが入っている。
ヴァン「これは…共和国のお菓子ではないな」
アルフィン「このお菓子は、和菓子と言って、東ゼムリアの日本のお菓子ですの。この丸いのは、どら焼きで長方形なのがカステラですね。徳川百貨店の中の地下の徳川和菓子屋から購入してきました」
ヴァン「東ゼムリアの日本のお菓子か。食べたことはなかったな。で、この飲み物はお茶か?」
アルフィン「お茶はご存知なんですね」
ヴァン「昔、師父と共に東方に行った時に飲ませてもらったことがある。というか帝国生まれのお前さんが知ってるのが不思議なもんだが」
アルフィン「まあ、わたくしは、お忍びでどこでもですから」
ヴァン「それにしても徳川百貨店か…。あるのは知っていたが、中までは入ったことはなかったな」
アルフィン「東方と言えば、昔は中華圏をさしてましたが、今では日本になりつつあると思いますわ」
ヴァン「まあ、そうなりつつあるな。日本からの移民の連中が共和国の議員の中に結構増えてるしな」
アルフィン「帝国も日本からの移民は受け入れてますが、共和国のようにはまだ至ってはいませんわ」
ヴァン「移民を受け入れ始めたのは、共和国が先だからな。そこらへんはあるだろ」
アルフィン「それで、依頼は引き受けて、もらえるのですか?」
ヴァン「……いつもならこんな面倒な案件、お断りだが以前の借りがあるからな。引き受けてやるよ」
アルフィン「ヴァンさん、ありがとうございますわ」
ヴァン「斑目の盗作疑惑と虐待疑惑を調べるんだったな」
アルフィン「ええ」
アルフィンは、日本で得ている情報、帝国で得た情報をヴァンに教えるのであった。
アルフィンside
ーー1204・5・22・昼前・11:00・イーディス内
アークライド解決事務所(旧市街ー8区)→タイレル通信(タイレル地区ー4区)
アークライド解決事務所からヴァンが運転する導力車(スポーツカー)でイーディス内の4区タイレル地区にやって来たアルフィンとヴァン。助手席に座るアルフィンが運転席のヴァンに話しかける。
アルフィン「ここがタイレル地区ですか。エンターテイメントの集まりでもありますね」
ヴァン「エンターテイメントねぇ、まあそんなところか。まあここならカルバードや世界の情報ならすぐに手に入るだろう。斑目の件もな」
アルフィン「ええ、斑目の件を扱っている記者さんとかいればいいんですけど……」
ヴァン「記者か……。知り合いの記者がいないこともないが…」
ヴァンは、運転をしながら窓の外を見ている。それを見たアルフィンは
アルフィン「知り合いの記者さんがいらっしゃいますの?」
ヴァン「いるっちゃいるが、ゴシップ紙の記者だが…」
アルフィン「ゴシップ記事の…。わたくし、その記者さんに会いたくなりましたわ」
ヴァン「マジかよ?」
アルフィン「マジです。わたくしはおおマジですわ」
ヴァン「ったく仕方がないな…。待ってろ、今すぐに連絡スッからよ」
アルフィン「はい、よろしくお願いしますわ」
ヴァンは、スポーツカーを路肩に停め、エニグマを取り出して、ゴシップ記事に連絡を取る。
ヴァン「…ディンゴか?ちょっと良いか?」
ディンゴ「ヴァンか?何かまた新しい依頼でもやってるのか?」
ヴァン「まあ、そんなところだ。今から会えるか?」
ディンゴ「今から?まあ構わんが?いつものベルモッティで構わないか?」
ヴァン「ベルモッティか、わかった、そこで落ち合おう」
ヴァンがそう言うとエニグマをホルダーにしまう。
アルフィン「今からそのベルモッティというお店に向かわれるのですか?」
ヴァン「そうだな。そこでゴシップ記事の記者のディンゴという人物と会う。そいつから斑目の事を聞き出せればいいが」
アルフィン「そうですわね」
ヴァン「とにかく、ベルモッティがあるリバーサイドに向かうぞ」
アルフィン「わかりましたわ」
そしてヴァンは、タイレル地区からリバーサイド地区へ向かうことになった。
アルフィンside
ーー1204・5・22・昼前・11:30・リバーサイド・ベルモッティ
リバーサイド、川沿いにある商業地区。河川をつなぐ2つの歩道橋や飲食の屋台が並ぶテラスエリアが特徴的で、その開放的な雰囲気は観光客の人気を集め、若者達のデートスポットにもなっている。その他倉庫も建ち並んでおり、首都イーディスの商業の要所として発展を遂げてきた。導力車の販売や整備を手掛ける整備屋【ブラッドレイ】やライブハウス【ブルースコア】など、他の区域には無い独自の店も並ぶ。
ヴァンのスポーツカーを近くのパーキングエリアに停めてから改めてリバーサイドに降り立った、アルフィンとヴァン。
アルフィン「ここがリバーサイドですわね」
ヴァン「ここがリバーサイドだ。イーディスの商業の要ってとこか。まあ今は若者のデートスポットになってやがるが…」
アルフィン「デートスポット、何だか羨ましいですわね」
ヴァン「デートスポットくらい帝国にもあるだろうが」
アルフィン「ありますが、やはりリバーサイドが良いですね」
ヴァン「まあ、無いものねだりだな。ベルモッティに行くぞ」
アルフィンとヴァンは、ベルモッティへ行く。昼間ということもあり、ベルモッティにもお客がいるようだ。もちろん昼間の顔であるカフェであるが。
ベルモッティ「あ~ら~いっらっしゃい。ヴァンちゃんがもうそろそろ来る頃だと思ったわ~そっちのカワイコちゃんが依頼者かしら~。ちゃんとディンゴちゃんも来てるわよぉ~」
ディンゴ「ヴァン、奥の方のテーブルに来てくれ」
ヴァン「わかった」
ヴァンとアルフィンは、ディンゴが座っている奥のテーブルの場所まで行って座る。アルフィンは軽く会釈をしてから座る。
ディンゴ「ヴァン、この子が新しい依頼者なのか?俺としてはどこかで見た顔だが?」
ヴァン「まあ、色々とわけありでな。そこの辺りは許してくれ」
アルフィン「すいませんわ、ディンゴさん。一応はアルフィン・レンハイムと申しますわ」
ディンゴ「アルフィン・レンハイム、ねえ、まあ、俺もお嬢さんのことを深くは詮索しないさ」
アルフィン「ありがとうございますわ。ところでディンゴさん、斑目一流斎画伯をご存知ででしょうか?」
ディンゴ「斑目一流斎、日本の美術界の巨匠だったか。その人物がどうかしたのか?」
アルフィン「ええ、表の顔は日本美術界の巨匠、顔ですが、裏の顔は盗作、虐待の数々だと噂がありますわ」
アルフィンの言葉を聞いて、ディンゴの表情が変わった。
ディンゴ「ほう、お嬢さん、その情報をどこで仕入れたんだ?カルバードでも一部でしか知らない情報だ」
ヴァン「アルフィンは、顔が広いようでそんな情報が手に入るみたいだな」
アルフィン「日本やカルバードの協力者からの情報を元にわたくし自身で調べたんですわ」
ディンゴ「なるほど。わかった斑目の事をこちらも知ってる限りを教えよう」
アルフィン「ありがとうございますわ」
ディンゴは、黒い手帳からとあるモノを取り出した。それは、とある男性がカルバードの裁判所に訴状を出しにいくところの導力写真である。その後マスコミ向けに会見を開いた導力写真もある。
ディンゴ「この男性の名前は、ノイマン・カガ。日系カルバード人だな。彼は斑目に憧れて、日本に渡航し斑目の弟子になったそうだ。だがそこで待ち受けていたのは、虐待と斑目の盗作だったそうだ。弟子が描いた美術作品を自分の名前で作品を世の中に出す…。弟子が中々作品を出さなければ、虐待をする……。そんな感じだ。ノイマンさんは、日本の裁判所で訴えを起こすために訴状を出したが、裁判所は受理せず門前払いだ」
ヴァン「ひでーな」
アルフィン「今の日本は、獅童とかいう人物が牛耳ってるようですわ」
ディンゴ「獅童正義、与党議員でありながら野党側と共闘してるふしがあるな。それだけではなく、帝国の貴族派側、共和国の反移民派との繋がりも指摘されてはいるが、確かな証拠がない」
アルフィン「彼はずる賢い人物です。中々しっぽを出しませんし、つかましてくれませんし」
ディンゴ「獅童正義の話は今は置いといて、斑目の話だったな…。ノイマンさんは、カルバードの裁判所に斑目の事で訴状を提出して、受理されている。それでCIDが動き出してるようだ」
ヴァン「CIDがね…」
アルフィン「そのノイマンさんには、会うことはできるんでしょうか?」
ディンゴ「普通に会えないだろうな。どうせCIDの護衛かついてどこかにいるんだろうが。流石にそこまでは、俺もつかんではいない」
アルフィン「そうですか」
ディンゴ「CIDならヴァン、お前の知り合いから情報を貰えないのか?」
ヴァン「…お、俺?はぁ~俺がアイツに頼むのかよ?」
ディンゴ「それしかないだろ、他に知ってるヤツなんて皆無だと思うぞ」
アルフィン「ヴァンさん、わたくしからもお願いしますわ」
アルフィンから頭を下げられ、一瞬考えたがすぐに
ヴァン「わかったよ…。CIDのアイツに連絡しなきゃとは思ってたところだ。ちょっと連絡するから待ってな」
アルフィン「わかりましたわ」
ヴァンはそう言ってからアルフィンとディンゴから離れる。
ディンゴ「帝国からわざわざ出向いてくるあたり、帝国でも何かあったのか……。いや先月の帝国南部のパルム騒乱の繋がりでもあるのか?」
アルフィンは、びっくりした表情でディンゴを見る。
アルフィン「流石、一流の記者さんですわ」
ディンゴ「一流の記者じゃねえ、ただのゴシップ記事を書いてるだけさ」
アルフィン「いえいえ、そんなことないですよ。中々の鋭い勘をお持ちのようですし」
ディンゴ「帝国南部のパルム騒乱の話は、エルフィン・スナイパーのカズヤから聞いた話だ。実際にリベール経由でパルムに足を運んで現場の状況を見てきたさ。カズヤの説明していた通りだったさ」
アルフィンとディンゴが話していると、ベルモッティが話しに入ってきて
ベルモッティ「帝国南部の都市パルムの話よね?」
アルフィン「ええ、そうですわ。ってベルモッティさんもそのことをご存知で?」
ベルモッティ「そうね、これでもわたし、情報屋ですもの。いろんな情報網ももってるわね」
アルフィン「なるほど。それではパルムで起こった事件もご存知なんですね」
ベルモッティ「東ゼムリアの日本の企業…ゴールド・マウンテン社が帝国に進出している帝国支部が独断で問題を起こしたことになってるわね。なにやらきな臭いと思って調べたわけ」
ディンゴ「それで何か分かったのか?」
ベルモッティ「ええ、ゴールド・マウンテンの帝国支部は、日本から子供達をさらってきて、生体実験をしていたそうね」
ディンゴ「ちっ、あのD∴G教団の真似事か!」
アルフィン「帝国支部の悪事は、トールズの生徒さんと教会関係者、エルフィン・スナイパーのお二人やミサキさんや深夏さんにも協力にて潰えたと思われますが…」
ディンゴ「まあ、日本でゴールド・マウンテン社は健在だし、帝国支部の勝手な行動で片付けてるところからして、胡散臭いがな」
ベルモッティ「それで、アルフィンちゃんはヴァンちゃんとどうするつもりなの?」
アルフィン「まずは、ゴールド・マウンテン社の共和国支部を調べるつもりですわ」
ディンゴ「共和国支部もあまり良い評判は聞かないな…」
ベルモッティ「そうみたいよね。以前共和国政府機関からゴールド・マウンテン社共和国支部の業務体制の改善や指導も入ったみたい。改善をしたみたいだけど、悪い部分は闇の中にでも隠したんでしょうね」
アルフィン「闇の中ですか。まああり得ない話ではないでしょうね」
ディンゴ「共和国支部も帝国支部ほどでないにしろ、黒いってことには変わりはない。それでも危険が伴うがやるのか?」
アルフィン「もちろんですわ。
ディンゴ「そうか…なるほど順平やゆかりから聞いていたとおりだな」
アルフィン「ディンゴさんは、順平さんとゆかりさんをご存知なんですか?」
ディンゴ「まあな…。2人共、芸能人だからな。そういう取材もあるのさ」
ベルモッティ「順平・伊織、プロ野球、彼は首都イーディスのチームに所属し活躍しているのよ。それにカルバード野球会に必要な人材だわ。ゆかり・岳羽、カルバードの特撮界のホープ的存在なの。でもそれは表の顔、裏の顔はCIDの外部エージェントって肩書きね」
アルフィン「そうみたいですね」
ディンゴ「順平もゆかりもCIDの真田明彦の部下…仲間って関係か。敵に回すと厄介そうだな」
アルフィンは、ディンゴとベルモッティと話をしていたら、ヴァンが戻ってきた。
ヴァン「アルフィン、なんとかCIDの許可を取ったぞ」
アルフィン「ヴァンさん、ありがとうございます。それでCIDから何か情報は掴めたんですの?」
ヴァン「CIDも明白な共和国支部の悪さの証拠を持ってはいなかった。帝国支部で起こったことは、さすがにCIDも把握済みみたいだが」
アルフィン「CIDに情報提供したのは、わたくしですけどね。帝国軍情報局だけに情報を預けておくわけにはいかないので」
そんなことをニコニコしながらヴァン達に話すアルフィン。
ヴァン「…ったくとんだ女だよ、お前さんは…」
ディンゴ「それで、共和国支部を2人で調べに行くのか?」
アルフィン「ええ、そのつもりですが」
ヴァン「危険じゃないかって心配してんのか?」
ディンゴ「まあな、ヴァンはともかく…アルフィンの方は…」
ヴァン「ハーッ、アルフィンは、俺なんかより強い女だ。結社の使徒や執行者を1人で撃退できるほどにな」
ベルモッティ「…あら、まあ~」
ディンゴ「それでもだ、過信は禁物だと肝に刻んどけ。ヴァンもアルフィンもだ」
ヴァン「ったく、わかったよ」
アルフィン「ディンゴさん、ご忠告ありがとうございます。過信せずに謙虚に行きますわ」
ヴァンとアルフィンは、ディンゴとベルモッティに挨拶してからゴールド・マウンテン社の共和国支部に向かうことにしたのだった。