東方 過去と未来のシンフォニア   作:ももんがぴょん

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9話 月の観察者

 光り輝く満月の下、夜空にベレー帽が一つ落下している。それは風に揺られてゆっくり落ちていく。強い風が吹くとそれは風に流され軌道を大きく変える。突如、空に一筋の光が走る。その光はベレー帽を目掛けて進む。光がベレー帽に触れた瞬間にベレー帽はその場から姿を消していた。光は少しずつ高度を落としていき、森の中に落ちる。木を掻き分け進み、それが地面に触れた瞬間に少し大きなクレーターができた。クレーターの中には光ではなく、先ほどのベレー帽を片手に持つ私がいる。私は着ているワイシャツに付いた土埃を払いながらベレー帽を被った。

 

「……67月39日34時47分972秒」

 

 空に浮かぶ月を見ながら呟く。私は月を見ることで現在の時刻、いる場所が分かると言う能力……と言うよりも特技がある。私は気がつけば時間と言う概念がおかしくなっていた。まだ私が普通だった頃なら先ほど呟いた情報で時間を理解する事は不可能。しかし今の私では理解できてしまう。もう普通には戻れないのだと思う瞬間でもある。

 

 私はゆっくりとクレーターから出る。しばらく木を掻き分けながら歩いていると、何か視線を感じるので周りを見渡す。すると、狼のような鋭い爪と牙を持つ妖怪に囲まれていると言うことが分かった。恐らく私が先ほど着地に失敗してクレーターを作ってしまった音を聞きつけてやってきたのだろう。妖怪は唸り声を上げながら威嚇している。私が普通の人間では無いと本能が察しているからこそすぐに襲わないで警戒しているのだろう。

 

「かかって来なよ。薄汚い穢れめ」

 

 ニヤリと笑って挑発すると一匹の妖怪が私の足に噛み付く。私は一歩も動かなければ抵抗すらしない。それを見た他の妖怪も私に噛み付く。

 

「何?その程度しかできないの?」

 

 私は噛み付かれているにも関わらず、両腕を前に突き出す。腕に噛み付いている妖怪が驚いた顔をしているのがまた面白い。

 

「ちょっとでも楽しめると思ったけどがっかりよ」

 

 私はそのまま両腕を広げると、私の身体が爆発するかの様に神力を解放した。妖怪達は吹き飛ばされ、木にぶつかり気絶していた。その後、私は少しジャンプするとふわふわと宙に浮かび、高度を少しずつ上げていく。普通に飛ぶだけならば何とも無いのだが、先ほどの様に身体に光を纏って光速で飛ぶとブレーキをかけることができずに結局墜落してしまう。どうすればその問題を解決できるのか考えながら私は街へ向かって飛ぶ。ふと、地上を見ると15人くらいの人間の集団が歩いていた。いや、正確に言えば一人だけ人間では無い者がいる。その者の事を私は月夜見と呼ぶ。

 なぜその様に呼ぶかと言うと彼が私の月夜見だからだ。理由になっていないと思うかもしれないが他の人に理解してもらうつもりは無い。私は妖怪が嫌いだ。けれども半妖の月夜見を見ているとなぜか罪悪感を覚える。それもその筈。私は彼から全てを奪っている。母親、娘、挙句の果てには力を。

 私は街と外の世界の境界線となっている壁の上に立つ。私は月を見上げながら懐から一本の小刀を取り出し、鞘を抜く。

 

「私の終わりで始まりの小刀……三日月之劔」

 

 その場に座り込んで月に被さる様に持ち上げる。月の光が反射して、劔はとても綺麗に見えた。劔を鞘に収めそのまま寝転がる。私は何時も自分を信じてここまでやってきたけれど、月夜見の母親を殺してしまった事だけは自分を信じる事ができない。あれは自分勝手な行動であると冷静になればなるほど分かる。八意に呼ばれたからその場に行ってみれば穢れと交わった女性がいた。私はあの存在が妖怪以上に嫌いだった。だからこそ八意の言うとおりに裁きの光を落とした。嫌いな存在を裁いたとその時は気分が良かった。私は全てを犠牲にしてでも目標を達成させるつもりであった。けれども私の中に眠る神力はそれを嫌がっている。人間だけは犠牲にするな、と。それがあの女性を殺してしまった私を許さないのかもしれない。

 私は考えるのをやめてまたジャンプしてからふわふわと高度を上げていく。ただひたすら高度を上げる。ある程度まで高度を上げてから私は神力で透明なドレスを作り、それを身に纏う。そしてまた高度を上げる。私は地球が小さく見えるところまで来るとその場に留まる。今私がいるのは宇宙。だからこそ先ほど身に纏ったドレスが無ければすぐにこの身が死んでしまう。私は月から発せられる謎の力が一番強い場所にいる。地上には居場所が無い私の唯一の居場所だ。この力を私の物にする為には八意の頭脳が必要だと考えている。しかし、八意とコンタクトを取ったとしても協力は得られないだろう。幸い私は街の上層部を完璧に掌握している。少しずつ八意を誘導していけば良いだろう。

 これからの行動を大雑把に考えた私は地上で見るより遥かに大きく見える月を見ながら腰にチェーンでぶら下げている白銀の懐中時計を手に取る。元の持ち主の影響か、この時計を使えば私の体感速度を遅める事ができる。つまり、私が認識している時間の流れを早くするのだ。なぜその様な事をするかと言うと暇だからだ。まだ普通の人間としての感覚が残っているせいか、それがとても苦痛なのだ。私はそっと目を閉じて呟く。

 

「私は月の観察者……月夜見よ」

 

 ねえパパ、ママ、メリー……私の事を許さなくていいから私の成すべきことが上手くいくように祈って欲しいな。

 

 

 

 

「じゃあ文夜君と咲奈は俺についてきて。他のメンバーは……」

 

 静琉は森の中でホルダーのメンバーに支持を出している。僕は地面にアヴァランチを突き刺し、それに寄りかかって説明を聞いていた。咲奈は落ち着きがなさそうに僕の周りをぐるぐる回っている。

 

「大丈夫咲奈?」

 

「初の実践なんだよ!緊張しない方がおかしいよ!」

 

「分かった!分かったから落ち着いて!」

 

 声をかけると彼女は興奮しながら僕に顔を近づけるので、僕は彼女を両手で押して遠のける。

 

「そういえば文夜は今日の討伐目標を知ってる?」

 

「咲奈は俺の話聞いていなかったの?」

 

 頭の上にハテナマークを乗せているような彼女の後ろから静琉は声をかける。突如だった為か彼女は悲鳴をあげながら飛び跳ねる。僕はその光景を見てお腹を抱えて笑っていた。

 

「最近好戦的な妖怪が増えてきたからそれの退治って作戦室で言ったよね?」

 

「全く聞いていませんでした!」

 

 敬礼をしている上に堂々とした態度の彼女に対して静琉はため息をついてデコピンをする。

 

「いったーい!」

 

 咲奈はおでこを抑えてとても痛いとアピールしてい。が、その光景がツボに入ってしまい噎せるほど僕は笑っている。

 

「文夜君も笑わない!ここから先は遊びじゃないんだよ!」

 

 静琉が怒鳴った事で僕と咲奈だけではなく、騒がしかった周りの人達も静かになった。

 

「白けちゃったね。まあとりあえずみんな死なないようにね」

 

 静琉は愛用の太刀を肩に担ぎ歩き始める。僕と咲奈は急いで後を追う

3人とも一言も喋らないでただ歩く。僕は何か聞きなれない音が聞こえたような気がした。

 

「ねえ静琉さん」

 

「何?さっきの事で謝ろうとしているのなら喋らないで」

 

 静琉はどうやら話を聞いてはくれないみたいだ。どうやってこの違和感を伝えようかと思っていると僕は隣を歩く咲奈を体当たりをしていた。何故だかは分からないけど嫌な予感がしたからだ。

 

 

 

 

「何するのよ文夜!」

 

 体当たりされた私は尻餅を着いてしまい、立ち上がらずに文夜に文句を言う。しかし、これ以上文句を言う事ができなかった。文夜が狼のような妖怪に引っ掻かれて数メートル程吹き飛ばされていたから。

 

「文夜君!」

 

 静琉さんは太刀を直ぐに構えて妖怪に斬りかかったが、妖怪はそれを避けて距離をとる。私はその隙に文夜の元に寄る。

 

「あ、危なかった……」

 

 近づいて文夜を見ると、どうやら大剣で受け止めたは良いけど吹き飛ばされてしまっただけのようだ…

 

「大丈夫!?」

 

「僕は大丈夫。だけど……囲まれているよ」

 

 私は辺りを見渡すと確かに囲まれていた。先ほどまで姿を見せていなかった妖怪の仲間だろうか?私は腰にぶら下げている一本の棒を取り出す。それのスイッチを入れると先端から40cm程のレーザーでできた刃が出る。私がそれを構えると文夜は私の横に立ち、剣を構える。

 

「うりゃぁぁぁ!」

 

 私は自分を奮い立たせる為に叫びながら走る。いきなり叫んだせいか、妖怪は驚いて動けていない。私はその隙を見逃さないで手に持つ物で妖怪を縦に真っ二つにした。

 

「やった……!!」

 

 私は初めて妖怪をこの手で退治した。私はその事が嬉しくて油断していた。後ろから物音がすると思い振り返ると、妖怪が私に噛みつこうとジャンプして私に迫っていた。私は咄嗟に腕を前に交差させて目を閉じる。何時になったら激痛が走るのかとしばらく目を閉じていたが、それはやってこなかった。不思議に思いゆっくり目を開けると、静琉さんが太刀でその妖怪を斬り裂いていた。

 

「油断大敵だよ」

 

 静琉さんは私の頭を撫でながらにっこり笑っている。辺りを見渡すと生き残っている妖怪は今、文夜が相手しているものだけであった。たった数十秒でほとんどの妖怪を退治した静琉さんはやっぱりすごい人なんだと思い静琉さんを見ると、太刀を構えていた。文夜の助太刀をするのかと思っていたけれど、どうやら狙いは明らかに文夜のようであった。

 

「ねえ文夜君。なんで君はその妖怪を殺さないの?君ならそんな妖怪如き直ぐに殺せるよね?」

 

 静琉さんは今まで私が見たこと無いような冷徹な目で文夜を見ている。確かに文夜は峰打ちばかり使って刃の部分を使っていない。しかも自分から斬りかかろうともしていない。何故そうしているのか?私には全く理解する事ができない。

 

「まさか自分の仲間だからとか言うんじゃ無いよね?仲間だから殺さない無いとか言わないよね?」

 

 私は静琉さんの囁きを聞いて思い出す。文夜は半妖だと言う事を。だから何処かで割り切れていないのでは無いかと考える。

 

「君の仲間ってなんだい?俺たち人間?それともそいつらのような妖怪?何方でも無い?」

 

 静琉さんは文夜が人類の敵だと判断したら直ぐに排除しようと思っているのだろう。今まで楽しく過ごしてきた仲間が模擬戦では無く殺し合う姿なんて見たくない。けれど私にはこの人を止める力はない。だから私は文夜を信じる。友として、仲間として。

 

「もしも俺たちの仲間って言うなら……今すぐその妖怪を退治してみせてよ」

 

 それを聞いた文夜は目がカッと開いた風に見えた。何も持っていない右腕を突き出すと、妖怪はその場で転んだ。きっとあれは文夜の能力によるものだろう。そして文夜は両手で剣を持つと、青紫色の刃が剣を覆う。

 

「僕は……人間だ!」

 

 そう叫んで文夜はジャンプしてから剣を振り下ろす。その刃は妖怪だけでなく地面も斬り裂く。それを見届けた静琉さんは満足そうに太刀を肩に担ぐ。私は肩で息をする文夜の元に寄る。

 

「肩貸そっか?」

 

「大丈夫だよ……一人で歩けるから……」

 

 そうは言っているが、明らかにフラフラしながら歩いている。ある程度歩くと、文夜はその場で倒れた。私は側に寄って文夜の体調を確認する。どうやらただ疲れて眠っているだけのようだ。先ほどの選択は相当辛かったのだろうか?よくは分からないけど気持ち良さそうに寝ているな、とは思った。

 

「俺は文夜君を運ぶから咲奈はその剣を持ってきて」

 

 静琉さんは文夜を脇で抱えて歩き始める。文夜を抱えている方の手で太刀を持ち、空いている手で電話をしている光景はシュールであった。こうして私達の初陣は終わったのだった。

 

「……こんな大きな物を女の私に運ばせるなんて」

 

 私は自分の身長を軽く超えている剣を見つめている。とりあえず運ばなければいけないと思い、それを持つと予想外の軽さに驚いた。なんと女である私ですら片手で振り回せる程軽い。

 

「文夜ってバスターソードを何時も使ってたからこれもバスターソードなんだろうけど……バスターソードじゃないよねこれ」

 

 私は剣に向かって呟く。しかし、これの持ち主の文夜がバスターソードと言い張るのならこれはバスターソードなのだろう。私は鼻歌を歌いながら剣を片手に静琉さん達を追いかける。

 

 

 

 

 また何時もの天井だ。目を覚まして思った事がそれだった。永琳と一緒に寝た時以外は何時も僕の部屋のベッドの上で目を覚ます。まるでゲームの世界でゲームオーバーになって最後にセーブした場所で目を覚ますみたいで面白いと思った事すらある。

 僕はベッドから降りて白衣姿になると、自分の机の上に永琳からの置き手紙と段ボールの箱が置いてある事に気がついた。手紙を読むと、机の上に置いてある段ボールの中にはアヴァランチを持ち運ぶ為の何かが入っているのと静琉が起きたら連絡してくれと言っていたということが分かった。永琳が置き手紙を書いている時は大抵忙しい時だ。僕は永琳にお礼をしたかったが、また後でしようと思いながら段ボールを開ける。

 中には黒色のチェストガードと腰に巻く用のベルトが二つ入っていた。これがアヴァランチの持ち運ぶ為の道具なのか?とりあえず僕は全て身に纏うことにした。白衣を脱ぎ、タンクトップの様な形のチェストガードを着る。どうやら伸縮性の素材を使っているらしく簡単に着ることができた。これを身につけると僕はとても驚いた。なんと全く何かを身に纏っているとは感じないのだ。これが最新の技術だと考えるととても感動する。しかし、下着として着なければとてつもなくダサい事に気がついたのでそれの上に白衣を身に纏う。その後、ベルトをどうやって巻こうかを考えていた。二つあるのなら二つとも使ってしまおう。そう考えた僕は一つは右斜めに、もう一つは左斜めになる様に腰に巻いた。二つ使うのならこれで良いだろうと思いながら鏡の前に立つ。はっきり言ってダサい。白衣にベルトはとてつもなくダサいのだ。これを期にちゃんと服装を整えてみようと思いながら壁に立てかけてあるアヴァランチを肩に背負いながら部屋を出る。玄関に向かおうと歩いていると、永琳と鉢合わせたので挨拶をした。

 

「あら?まだアヴァランチを手で持ってたの?」

 

 永琳は腰に巻いているベルトとアヴァランチを交互に見ていた。

 

「一緒に入ってたやつは着ているかしら?」

 

「下着として使わせてもらっているよ」

 

「そういえば手紙に書き忘れていたわね……」

 

 永琳は胸をトントンと叩き着ている事をアピールしている僕からアヴァランチを奪う様に取ると、僕の背後に回る。するとアヴァランチを僕の背中にピッタリとくっつけた。

 

「これで良しっと」

 

 永琳は僕の正面に立ちウインクをする。

 

「どう?すごいでしょ?」

 

「何がすごいの?」

 

 僕は何がすごいのかさっぱり分からない。永琳はため息をつくと自分の背中を見ろとゼスチャーをする。言われた通りに背中を見て初めて気がつく。アヴァランチの先っぽが地面についていないのだ。先ほどの永琳の行為はただ単に背中に寄りけただけだと思っていた。

 

「どうなってるのこれ?」

 

「すっごく簡単に言っちゃうとアダマンタイトにしかくっつかない磁石の様な物を素材に使っているのよ。因みにベルトにも同じ物を使っているわよ」

 

 永琳は説明をすると思い出したかの様に手をポンと叩いた。

 

「ちょうど良いから少しそこで待っててちょうだい。直ぐに戻ってくるから」

 

 永琳は早歩きで自分の部屋へと向かっていった。僕は永琳が戻ってくるまでに静琉に連絡をとる為に電話をかける。

 

「あっ文夜ですけど」

 

「目が覚めた?なら作戦会議室に来てね」

 

 また一方的に言われて電話を切られてしまった。ため息をつきながら電子端末をポケットにしまうとちょうど永琳が手鏡と謎の液体が入ったフラスコを持って帰ってきた。

 

「とりあえずこれを飲んでくれないかしら?」

 

 永琳はフラスコと手鏡を僕に渡してメモをとる用意をした。どうやら新しい薬がちょうどできたから試して欲しかったのだろう。僕は何も言わずにその薬を一気に飲み干す。一体どんな激痛が走るのかと構えていたが、特に何もなかった。

 

「その手鏡で自分の顔を見てちょうだい。驚くわよ?」

 

 ニヤニヤしながら永琳は言うので僕は期待しながら手鏡に映る自分の顔を見る。

 

「……何これ!?」

 

 そこには普段見慣れた自分の顔は無かった。なんと瞳が黒色から赤色になっており、毛の色が綺麗な金髪から銀髪に変わっていたのだ。顔だけでなく尻尾の色も変わっていた。

 

「なんなのこの薬?」

 

「……今は聞かないで頂戴。ある薬が完成したらちゃんと説明するから」

 

「今は言えない事なんでしょ?無理に聞こうとは思わないから気が向いたら話してよ」

 

「ごめんなさい……」

 

 にっこり笑って答えるも、永琳は顔を俯けたままなので僕は無理やり顔を上げてキスをする。

 

「僕は永琳の事を信じているからさ」

 

 僕はそう言い残して玄関へ向かって家から出発する。静琉をこれ以上待たせるのは良くないと判断したからだ。

 

 

 

 

「明日から文夜君がホルダーの隊長だよ。と言うかイメチェンした?」

 

 これが作戦会議室に入るとソファに座っていた静琉が立ち上がって発した言葉であった。

 

「俺は軍から身を引くからさ」

 

 突然すぎる展開に僕は対処ができない。静琉が身を引く?僕が隊長?訳がわからない。

 

「とりあえず咲奈でも分かる様に説明してくれませんか?」

 

「それは簡単な理由。俺には特別な能力が無いのに強いって言うのと変人って理由だけでこのホルダーの隊長をやらされていたからね。そして君になら後を任せられると判断したからだよ」

 

「僕である必要はありませんよね?他にも適任な人はいますよ」

 

「文夜君。俺は君に英雄になってもらいたいんだよ」

 

「英雄……ですか」

 

「俺はね、この街にある差別が大っ嫌いなの。意味もなく周りに流されているだけって感じがするしね」

 

 ニコニコとしていたその顔を真剣なものに変えていた静琉はまたソファに座る。僕も何と無くその隣に座る。

 

「ホルダーは言ってしまえば嫌われ者の部隊。文夜君だってみんながとても良い奴って知ってるでしょ?」

 

 半妖である僕を受け入れてくれ、一緒に笑ってくれた仲間の顔を思い出しながら頷く。

 

「そこでこの街の最大の嫌われ者の文夜君が英雄になっちゃえばみんな差別なんかしないで受け入れてくれるって考えただけなんだけどね!」

 

 静琉は両腕を天井に向けて笑う。僕はそれを聞いて相変わらず自分勝手だと思って苦笑していた。

 

「なんでこのタイミングでこの話を出したかって言うとね。文夜君って実は割り切れていないんじゃないかなって思ったからなんだ」

 

 僕は初めて妖怪の命を奪った瞬間を思い出す。僕はあの時に人間として生きたいと強く願った。

 

「もしかしたら嫌気が刺して人類を敵に回すんじゃないかなとすら思っていたけど、君は人間の味方だって前の任務で確信したからなんだ」

 

 数秒の間沈黙が続く。静琉は突然立ち上がって頭を掻きはじめる。

 

「ああもう結局何が言いたいか言えない!とりあえず明日から君が隊長!結婚式には俺も呼んで!あとブン屋を使うのオススメだから!以上!」

 

 そう言い残して静琉は作戦会議室から出て行ってしまう。結局何が言いたかったのか全部は理解できなかった。けれど一つだけ理解できた事はある。あの人は僕に期待をしてくれている。この街を変える存在として。

 僕は静琉を超える隊長にならねばならない気がした。前の隊長より弱いなんて仲間にも言われたくない。僕は自分の戦い方を思い返す。僕の戦い方と言えば妖力で物を作ってその場の状況に合わせる事。なら妖力で物を作る……つまり妖力の扱いを極める事にしよう。今では物を作るとしてもレパートリーが少なく、形が歪だし少し作るのに時間がかかる。課題は沢山ある。けれどもそれを全てクリアーしてしまえば僕は最強になれるのでは無いだろうか?最強な自分を想像して笑みが零れる。想像するだけでは駄目だ。それにならなければ。

 

 新たな目標と使命ができた僕はある場所へ向かう。そこは商店街にある服屋さん。まずは格好だけでも変えてみよう。

 




こんばんは!
今回は何時も最後にやっていたコーナーはありません!

とある条件下ではやらないと決めてみたのでその条件をちょっとでも考えて頂けると幸いです

この描写って無理があるよね?こんな表現で分かるかボケなどありましたら是非感想で御指摘お願いします!

では…次回も見てください!
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